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#458 古川日出男の魔法!郡山が幻想都市になる、郡山が異世界だった
2026-08-23 06:53

#458 古川日出男の魔法!郡山が幻想都市になる、郡山が異世界だった

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ピョン吉の航星日誌「#1638 古川日出男さんの『夏迷宮』に酔う、郡山市民は別な愉しみも、という話」をGoogle notebookでポッドキャスト化したものです。

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- こんにちは。今回の深掘りなんですが、送ってくださった方の資料をもとに、 ちょっとものすごい世界観の作品についてお話ししていきたいなと。
古川秀夫さんの小説、夏めぐりですね。
- はい、非常に強烈な作品ですよね。
- そうなんですよ。私、最初資料を読んだとき、 え、これどういうこと?って、完全に頭がショートしちゃいまして。
- ああ、わかります。
- だって、第三次世界大戦が起きて、 東京じゃなくて福島県の氷山が日本の人になるっていう、 そのものすごい設定なんですよね。
- そうですね。一見すると、なんていうか、 突拍子もないギャグみたいに聞こえるかもしれないんですが、
実はこれ、現実の地理とか、震災後の喪失感、 それに神話が猛烈な勢いで混ざり合うような、
緻密なマジックリアリズムの傑作なんですよ。
- その緻密さっていうところをぜひ、紐解きたいんですけど、 まず最大の疑問で。
- はい、何でしょう?
- なんで、第三次世界大戦中に、東京の代わりに 氷山が首都になるんですか?
理屈がちょっとわからないというか。
- ああ、なるほど。これ実は、歴史的な資格を うまくついている設定なんですよね。
- 資格ですか?
- はい。日本の歴史上、実は東京への 正式な戦闘の記録っていうのは存在しないんですよ。
- えっと、そうなんですか?
- ええ、その歴史的な曖昧さっていうのがありますし、
それに戦争になれば、真っ先に標的になるのは、 当然、東京ですよね。
- まあ、確かにそうですね。
- そこで、原発事故後の福島県三保田というところに建設された、
氷山ピースランドという巨大テーマパークに シラブの矢が建つんです。
- ちょっと待ってください。テーマパークに、 国会議事堂とかを置くってことですか?
- そういうことです。
- それって、現代の政治そのものが 一緒のテーマパークというか、
なんていうか、現実の傷跡から目をそけるための 巨大な張りボテみたいに聞こえるんですけど。
- あ、まさにその視点が重要なんですよ。
ただの遊園地ではなくて、 これ、平安京を成功に模した施設でして、
日本三大レジャーランドを狙うような規模なんです。
- すごい規模ですね。
- ええ。で、ピースランドのピースは、 そのまま平安を意味していますよね。
- ああ、なるほど。平安京の平安。
- そうです。中央には、かつて天皇の庭園だった 新千円という池まで完全再現されていて、
- そこまで徹底してるんですか?
- はい。つまり、すでに都としてのインフラとか 象徴が完成しているから、
首都機能をそのままスライドできるっていう、 そういう論理なんです。
- いやあ、ただのギャグじゃなくて、 ものすごい強烈な皮肉が効いてるんですね。
- そうなんですよ。
- しかも、そこにはご当地マスコットの 将軍マロンっていうキャラクターがいるって資料にあったんですけど、
栗のキャラクターですよね。
- はい、そうです。ただ、モチーフになっているのは、 平安時代の武将の坂上田村麻呂なんです。
- 坂上田村麻呂って、歴史の授業で習った、 東北地方を平定した大将軍ですよね。
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- ええ、その通りです。
- かつての征服者を東北の福島のキャラクターにするって、 ものすごく皮肉というか、ちょっとブラックジョークすぎませんか。
- おっしゃる通りです。
かつての征服者を、あえて可愛らしいマスコットに 仕立て上げている、ここにも歴史のねじれが表現されているんですよね。
- で、ここからさらに物語が加速していくんですよね。
- はい、ここからがもう怒涛の展開になります。
- あの、そのゆるキャラの将軍マロンが、 なんと本物の大将軍として復活を遂げると。
- ええ、そうなんです。
- これ、送ってくださった方もここで、 ええ、どういう飛躍って混乱したんじゃないかと思うんですが、私も全くついていけなくて。
- あはは、ここからが神話的展開の新骨頂なんですよ。
キーワードは、あの稲羽白子のユーマ、稲羽シロンです。
- 稲羽シロン、70年代のネッシーみたいな未確認生物ですよね。
それが大将軍とどうつながるんですか。
- 稲羽シロンは、もともと山クジラなんですが、 島が水没したことで水中に適応をして、 淡水の人魚へと進化するんです。
- 淡水の人魚。
- はい、日本の古い伝説にも淡水の人魚は存在しまして、 そして伝説通り、人魚の肉を食べると不老不死になるんです。
- ああ、弥生卑怯鬼みたいな話ですね。
- ええ、まさに。
で、この肉を食べて1600年以上生きている アマゼという女性が登場するんですが、
彼女が見せ物としてアジアからヨーロッパの 教会付近まで運ばれていくんです。
- ちょっとスケールが急に地球規模になりましたね。
- そうなんです。
- なんか、現実の福島のトラウマとか、歴史の傷口の上に、 都市伝説とか古代神話で作ったド派手な絆創膏を 何重にもベタベタ貼り付けているような感覚がしてきました。
- ああ、素晴らしい比喩ですね。 まさにその絆創膏が物語を突きよごかすんです。
- というと?
- ユーラシア大陸の果てで戦って、飢餓状態に陥った一人の日本人兵士が、 そのアマゼの肉を食べてしまうんですよ。
- あ、そこで不老不死の兵士が誕生するわけですか。
- はい。彼は水の匂いに導かれて、稲羽城湖から実際に存在する水路、 アスミソスイを伝ってクーユマヤに帰ってくるんです。
- 実際の場所を通って帰ってくるんですね。
- ええ。そして駅前のタワーマンションにそそんで、 あの将軍マロンの着ぐるみの中に入り込むんです。
- えっと?着ぐるみの中にですか?
- はい。着ぐるみという気を得たことで、 あらゆるものを飲み込んで、真の大将軍として復活するんですよ。
- なるほど。着ぐるみはただの衣装じゃなくて、 過去の歴史とか神話とか兵士の記憶を全部詰め込むための器だったんですね。
- そういうことです。
- ようやくこの狂気のパズルが繋がりました。
- アスミソイスイとか、実大のタワーマンションといった、 生々しい現実の風景と、フロフシや巨大テーマパークという幻想が、 圧倒的な熱量で溶け合っているのがわかりますよね。
- はい。本当にすごいです。
- 地元を知る人にとっては、現実の地図を歩きながら、 神話を追体験できる、究極の聖地巡礼のような作品になっています。
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- 確かに。送ってくださった方が、 この迷宮に魅了される理由がよくわかりました。
- へえ。
- ただ私の中で最後に一つ、重い問いが残りまして。
- はい。何でしょう。
- 原発事故という、決して消えない現実の深い傷跡がある土地で、 なぜ著者はこれほどまでにスケールの大きな、 そして高等無形な神話や伝説を新たに立ち上げる必要があったんでしょうか。
- それは非常に深い問いですね。
- はい。
- おそらく、事実をそのまま語るだけでは到底言えない痛みに対して、 フィクションという巨大な器だけが受け止められる現実があるのかもしれませんね。
- なるほど。フィクションという器ですね。
- 送ってくださった方も、ぜひご自身の視点で、 この巨大な迷宮に隠された意味をさらに探究してみてください。 次回の配信もお楽しみに。さようならー。
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