しらいしあいとあるまいとせんめんき
こんにちは。こんにちは。さて、今回はですね、送ってくれた方が共有してくださった資料をもとに、えーと、福島市ご出身の漫画家、しらいしあいさんの世界、これをさらに深く掘り下げていきたいなと思います。
おー、しらいしあいさん。はい。以前の配信で、代表作のバージンオンドには少し触れたんですけれど、今回は他の作品、特に、あの、あるまいとせんめんきに注目してみようかと。
いいですね。1970年代から活動されてて、もう半世紀近く第一線で描かれている方ですもんね。そうなんですよ。時代ごとの、まあ、空気感みたいなものを捉えつつも、なんか一貫して人と人との関係の繊細な部分を描き続けている、そういう作家性、注目したいですね。
まずは、やっぱり、あるまいとせんめんき。これ、1978年から月刊セブンティーンでの連載だったそうです。えー。いや、タイトルからしても、あの銀色の、ちょっとこう、懐かしい感じのせんめんきが目に浮かびますよね。浮かびますねー。あるまいとの。
日本から上京した大学生カップルの同棲生活がテーマということなんですが、当時の少女誌で同棲を、しかも結構リアルに描くっていうのは、なかなか踏み込んでる感じがしますけど、どうだったんでしょう?
そうですね。あの、70年代の前半には、上村和夫さんの同棲時代とか、まあ同棲ブームみたいなものはあったわけですけど。はいはい。でも、多くはやっぱり男性側の視点で、ちょっとこう、うしったというか、影のある雰囲気の作品が多かった印象ですね。
あー、なるほど。それに対して、このあるまいとせんめんきは、少女誌っていう場で、ちゃんと女性の視点から、しかもどっちかというと生活感のある、カラッとしたタッチで同棲を描いた。これは、うーん、当時としてはかなり新しい試みだったんじゃないかなと思いますね。
へー。資料によると、物語の中心にあるのが、2人が最初に一緒に買った、確か100円のあるまいとせんめんき。
ええ。これが単なる小道具じゃなくて、2人が過ごした時間の象徴になってるって書いてありました。
うーん。
戦闘に持って行ったり、まあ、時には酔って吐いちゃったりとか、そういう生活の傷みたいなものが、そのせんめんきに刻まれていくと。一つのものにそこまで意味を重ねるっていうのは、面白い手法ですよね。
いや、これは非常に巧みだと思いますよ。
タイトルにもなってるそのせんめんきがですね、2人の関係性の変化とか、共有した時間の積み重ね、それからまあ、避けられない摩擦とか傷つきみたいなものを、物理的な傷として目に見える形にしてるわけですよね。
なるほど。
ラストシーンでその意味合いがグッと効いてくる。その構成力は見事だなと思います。
うーん。
それに当時の仕組みの額とか家賃とか、そういう具体的な生活描写、これがまた70年代後半の若者のリアルな感じを伝えていて。
確かに。
今ではもうほとんど見かけなくなったアルマイト製品自体が、時代の承認みたいな役割も果たしてるんですよね。
そうか。送ってくれた資料の秘書も方も、ご自身は同性経験がないからこそ、そのリアルな描写に、へえ、こういう世界があるのかって、すごく新鮮な驚きを感じたって書かれてましたね。
うーん。
なんか最終回の後には、娘を嫁に出すお父さんの視点を描いた短編も収録されてるそうで、そういう視点の転換も面白いなと思いました。
ええ。多角的にその関係性っていうものを描こうという、そういう意欲が感じられますよね。そしてその視点っていうのは、また他の作品にもつながっていくわけですけど。
時代と恋愛の変遷
そうですね。時代が進んで、90年代後半から2000年頃ですかね、哺乳類人化親締め。
来ましたね。
40代のおじさんたちの恋愛オムニバス。
いやー、このタイトルちょっと、ふふ、思わず笑っちゃいますけど。
なんか分類学みたいですもんね。
ですよね。
でもこれ、内容は意外と切実というか、大人になっても変わらない恋心のきびとか、まあ中年男性ならではのちょっとした哀愁みたいなものが描かれてて、じんわりくるんですよ。
へー。
青春時代の恋愛とはまた違い、人生の深みみたいなものを感じさせる作品ですよね。
そしてさらに時代は進んで、2010年代の作品と思われる、嫁らvsババラ。
これはまた、嫁シュート問題とか、夫婦間の力関係とか、より現代的なテーマに切り込んでますね。
これもコミカルな感じなんですか?
ええ、そうですね。嫁vsシュート目っていう、ある意味普遍的なテーマを、現代の生活様式の中で、時にはちょっとシニカルに、時にはコミカルに描いてる感じです。
なるほど。
ただ、その対立構造の中にも、それぞれの立場とか感情が丁寧に描かれていて、単なるドタバタ劇には終わらない深みがあるなと感じますね。
いやー、しかし、70年代の若者の同棲生活から始まって、中年男性の恋、そして現代の家族問題まで、半世紀にわたって本当に多様な人間関係の形を描き続けてるんですね。
未来への問いかけ
まさにそうなんですよ。時代に合わせてテーマとか登場人物は変わっていくんだけど、その根底にあるのは、一貫して人と人の間に生まれる感情の機微を、すごく丁寧に観察して、描き出すっていう視点なんですよね。
白石愛さんの作品が示しているのって、社会が変わっても変わらない人間関係の本質みたいなものだけじゃなくて、その時代の空気感とか生活感っていうのが、いかに日常の本当に些細なものとか出来事に凝縮されて現れるかっていう、そういうことなのかもしれないですね。
アルマイトの洗面器みたいに。
福島からこういう作家さんが長年活躍されているっていうのは、本当に意義深いことですよね。
ええ、本当に。
今は電子書籍とかで手軽に読める作品も増えているみたいですし、今回送ってくれた方の資料のおかげで、私たちも他の作品もっと読んでみたくなりました。
いや、本当そうですね。改めて素晴らしい作家との出会いのきっかけをありがとうございますという感じです。
さて、こうして白石愛さんの作品群を探ってきたわけですが、最後に一つちょっと考えてみたいなって思うことが浮かんできたんですけど。
おっ、と言いますと?
これらの作品を通して70年代、90年代、2010年代とそれぞれの時代の当たり前とか関係性が描かれてきたじゃないですか。
はい。
じゃあ今の私たちが描いたり、あるいは経験している恋愛とか家族の物語っていうのは、数十年後にどんなふうに読み解かれるのかなって。
未来のアルマイト洗面器にあたるような今の時代を象徴するものとか出来事ってなんだろうなって、ちょっと考えてみるのも面白いかなって思ったんです。
なるほど、なるほど。いやそれは興味深い問いかけですね。時代を映す鏡としての物語ということですよね。
資料を送ってくれた方、本当にありがとうございました。白石愛さんの作品世界、とても深く興味深い旅でした。
次回の配信もお楽しみに。さようなら。
次回の配信もお楽しみに。さようなら。