アネスの決意
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、さまざまな人がいることをテーマにお送りいたします。
シャウロ、本気で言っているのか?
私がそう言うと、シャウロは剣を磨く手を止め、私の方を見た。
本気だ。俺たちは明日決起する。そして、軍の司令部へ乗り込む。
そんなことをして何になる?
国を変える。そしてみんなを救うんだ。
シャウロは立ち上がると、私の前に立った。
頼むアネス、お前も来てくれ。お前が来てくれたら、みんなどれだけ心強いか。
私は…
わかってる。弟の病気を治すために、龍の鱗を探しているんだろう?
でも考えてみてくれ。そもそもお前の弟の病気は、王族が原因だ。
王族が無理に玉庫の採掘をしたばっかりに、国中が魔女の呪いにかかっちまったんだ。
だったら、一緒に王族を倒しに行こう。
でも、龍なんて本当にいるかどうかわからない生き物を探すより、
王族やそいつらの側近が、他の治療法を知っているかもしれないぜ。
シャウロの言うことも一理あった。
私は村のおばぼの言うことを信じて、龍を探すために出たが、
そもそも王族たちは、他の手立てを知っているかもしれない。
シャウロ、わかった。私も行く。
戦いの始まり
ありがとう、アネス。
アネス、来てくれたのね。
次の日の朝、レジスタンスがあじとにしている洞窟に行くと、ミルマが出迎えてくれた。
ミルマ、あまり期待しないでくれ。
どうして?あなたがいてくれたら百人力だわ。
私はただの傭兵の娘さ。武器はある?
ああ、私はこの剣さえあればいい。お父上の剣ね。
父が残していったのはこれだけだった。
みんな、そろっているか?
シャウロが台の上に立ち、声をかけた。
いよいよ決起のときだ。失ったものを取り戻すときだ。
その場に集まっている群衆が、「王!」と声をあげる。
進め!俺たちの未来のために!
そうして、レジスタンスは首都、ペルイダへ向け出発した。
ミルマ、このまま首都へ向かうのか?
進み出した列の中で、私はミルマに話しかけた。
周りには武器を持った人や、中には農家具を持っている人もいた。
男が多いが、女もいる。
ここにいる人たちはみな、この国のあり方に限界を感じている。
まずはここから、一番近い軍の施設のあるヒスゴスという町へ行くの。
そこを拠点にするのか?
ええ、私たちも足場がないと持たないからね。
そのとき、隊列の後方から悲鳴が上がった。
何?
敵襲!敵襲!
隊列からどよめきの声が上がった。
アネス、どうしよう?
とりあえず、逃げ切ることが先決だ。
全軍、武器を構えろ!迎え撃つ!
馬に乗ったシャウロが、前方から声をかけながら、
アネス、どうしよう?
迎え撃つ!
馬に乗ったシャウロが、前方から声をかけながら、走ってきた。
シャウロ、本気か?
アネス、当然じゃないか?
俺たちの目的は国王軍を全滅させることだ。
それは違うだろう。
王族を撃つことと国王軍を全滅させることは全然違う。
でもあいつらは、俺たちの家族や仲間を何人も殺した。
しかしこの状況じゃ勝てない。
やってみないとわからない。
分からない みんな俺に続け
大 という声が上がるとシャウロと仲間たちは襲われている後方へ向かった
を 俺
やっぱり怖い 私の斜め後ろにいた若い男がつぶやいた
振り返るとその男はガタガタと震えていた 大丈夫か
私が声をかけると後ろの若い女は泣き始めた 私やっぱり帰る
みんな落ち着いてシャウロが向かったから大丈夫よ ミルマがみんなを落ち着かせようと声をかける
みんな戦闘などほど遠い一般人だ 実際の戦闘を目の前にしたら怖くなるのは当然だ
後方からの叫び声がだんだん大きくなっている
えっいやだー その時先ほど震えていた男が走り出した
ちょっと
その時鈍い音が響き 地面に何かが叩きつけられた
よく見ると走り出した男が血まみれで倒れており オレンジの国王軍の軍服と灰色の鎧を着た男が立っていた
一瞬オレンジの軍服で気がつかなかったが 国王軍の男は帰り血を浴びている
その場にいた全員が 息を呑んだ瞬間
かかれー
草陰から何人もの国王軍がかかってきた 逃げろみんな逃げるんだ
私は剣を抜き応戦しながら叫んだ 走り出した人たちもいたが何人かは足がすくんだり腰が抜けて動けなくなっている
逃げろ とにかく逃げろ
私の叫び声は土煙の中にかき消されていった 何人かの軍人を斬りながら私も後退していった
ミルマの姿が見えない シャウローは今どこにいるのだろうか
レジスタンスはどうなったんだ 混乱の中全てが気にかかるが
私はそれでも生き残らなければならない 弟の病気を治すまでは
まったく 馬鹿な娘だねぇ
人の声ではっと目が覚めた 私は疲れ果てて森の中で眠ってしまったようだ
殺し合いなんかに参加して本当にバカ あなたは
見た目は若そうな女は楽しそうに私のことを見ている 私
私は魔女のマルシャ 愚かな人間は嫌いなの
魔女 魔女がこの世に本当に存在すると
この時まで知らなかった いかがでしたでしょうか
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小島千尋でした