1. 小島ちひりのプリズム劇場
  2. #061 シュレッダーされた人
2026-01-24 10:18

#061 シュレッダーされた人

引き裂いたのは己の行いが故。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

noteに本文を掲載中。
https://note.com/child_skylark

◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本 #小説 #モノエフ朗読
#出向 #打ち合わせ #シュレッダー
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サマリー

このエピソードでは、主人公が美名川建設での困難な状況に直面し、その中で職場での振る舞いや人間関係について理解を深めています。特に、ハラスメントの問題や職場での協調性の重要性がテーマになっています。

00:01
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、様々な人がいることをテーマにお送り致します。
出向の決定
2週間の自宅禁止、大変ご苦労様でした。
大島さんの今後の処遇につきまして、決定致しましたのでお知らせ致します。
禁止が明け、いつも通り出勤し、自分のデスクへ向かおうとすると、人事部の島村さんに止められた。
そして、一番狭い会議室に連れてこられ、一枚の紙を差し出された。
その紙を見ると、出向、美名川建設株式会社、と書いてあった。
出向ですか?
ええ、大島さんくらいの若い人にはよくある話です。
外で経験を積んで、戻ってきた暁には市民のために尽力していただきたいと考えています。
左遷ってことですか?
何をおっしゃいます。大島さんの上司の朝倉さんだって、大島さんくらいの頃には土木建設の会社に出向していたんですよ。
どうして元の部署に戻れないんですか?
確かに俺は浜田を殴りました。でも浜田は移動して、もういないのにどうして戻れないのか分かりません。
あのですね、あれだけの暴力事案を起こしておいて、懲戒面職にならなかっただけ感謝してほしいくらいですよ。
あなたの暴力を目撃して、出勤できなくなった職員が3名いるんです。
他にも前々からあなたの怒鳴り散らす声や、他の部署の職員に対する上から目線の態度が不快だったという声が20件以上上がっています。
あなたをこのまま元の部署に戻せるわけないでしょ。
あいつらが仕事できないのが悪いんですよ。
ハラスメントの研修動画はご覧いただきました?
もちろんですよ。でもね、あんなの弱者の言い訳でしょ。
なんで仕事ができる俺の足を引っ張られなくちゃいけないんですか。
多少怒りっぽいところはあったとしても、この市役所に必要なのは仕事ができない人間よりも俺の方じゃないんですか。
あなたは大きな勘違いをしているようだ。
まず、我々が求めているのは、第一に協調性です。
協調性?あるに決まってるじゃないですか。俺に合わせられない奴らが悪いんですよ。
第二に、あなたはご自分が思っているほど優秀ではない。
はい?
今回の暴力事案でどれだけ上層部の労力を使ったと思っているんです?
我々人事部も対応のために役者に止まったこともありました。
あなたたった一人で3人の職員を給食に追い込み、また関わった全ての職員のモチベーションを下げている。
そんなの仕事ができない奴らのせいですよ。
あなた一人ができる仕事量より、あなた一人が奪う仕事量の方が多いんですよ。
つまり、あなたがいない方がこなせる業務量は増え、効率的になるんです。
あなたが上層部だったらどうしますか?
俺が全体の足を引っ張ってるってことですか?
出港先でぜひ勉強してきてくださいね。
島村さんはそう言って会議室から出ていくと、入れ替わるように数人の職員が俺のデスクやロッカーに入っていた荷物を運んできた。
新しい環境での葛藤
くれぐれも元いた部署には近づかないように念を押された。
出港さん、これシュレッダーお願いします。
美永川建設に出港して一週間がたった。
俺の指導役にはナンバという俺と年もそんなに変わらない人間が担当になった。
本気で言ってるんですか?こっちは遊びじゃないんですよ。
俺も遊びじゃないんですけど。
じゃあなんでそんな誰に出てくるんですか?
じゃあなんでそんな誰にでもできる雑用ばっかりなんですか?パソコンすら与えられていないんですけど。
ああ、大島さんの業務にパソコンいらないんで。
はあ?
俺が大きな声を出すと部屋中の人間が俺を睨んできた。
そもそも建設会社なんでパソコンなんて事務方しか使わないっすよ。
俺らの仕事は本来肉体労働なんで。
それは俺の仕事ではありません。
いやいや何言ってるんですか?大島さんの仕事を決めるのはこっちですよ。
肉体労働なんて俺がやるべき仕事じゃない。
大島さん、勘違いしないでくださいね。
急にナンバさんの声のトーンが変わった。
本来なら俺らにあなたを引き受けるメリットなんてないんですよ。
なのに朝倉さんからあんたを叩き直して欲しいってじきじきに頼まれたから仕方なく引き受けてるんです。
追い返したっていいんですよ。
でも追い返されたらあなた、役所でどうなるか分かってるんですよね。
俺はごっこりと唾を飲んだ。
もうそこら中の噂になってますよ。
役所の若い建設家の職員がパワハラで訴えられたらしいって。
名前もとっくに広まってる。
あんた、自分が思ってるより追い詰められてるって気づいたほうがいいっすよ。
自己認識の変化
じゃあ、シュレッダーお願いしますね。
ナンバさんは俺に書類を押し付けた。
みんな、飯行こうぜ。
ナンバさんがそう言うと、部屋の中にいた全員が立ち上がり、俺を一別した後、ナンバさんについて出ていった。
俺はシュレッダーが書類を吸い込んでいくところをぼんやりと見ていた。
自分の中の自分という人間も、シュレッダーに吸い込まれてコマ切れになったような気がした。
ぼんやりしていると、デスクの電話が鳴った。
あたりを見渡し、そういえば全員出てしまっていることを思い出した。
はい、源建設でございます。
あ、どうも。お世話になっています岸田法務の川端です。今、社長さんいらっしゃいますかね?
今、あいにく全員出ておりまして。
あ、そっか。お昼時でしたね。すいません。掛け直します。
あ、いえ。私でよろしければ、要件をお聞きしますが。
いいですか。すいませんね。先日の柳様の件なんですけど、正式にご依頼いただけることになりまして、早速打ち合わせできればと思ったんですが、
本当ですか?ありがとうございます。
急で申し訳ないんですけど、今日この後とかどうですか?
この後ですか?正直、社員のこの後の予定など一切わからなかった。しかし、逆にこれはチャンスかもしれない。
大丈夫です。すぐ行きます。
大丈夫です。すぐ行きます。
いいですか。いつも急ですいません。じゃあお待ちしてますんで、よろしくお願いします。
俺は手レッターをそのままに、早速岸田法務をスマホで検索した。
よし、車で5分程度のところだ。俺は自分の車のキーを取って事務所を出た。
あれ?見かけない方ですね。
岸田法務に着くとすぐに応接間に通された。さっき電話を遅れた川端さんが不思議そうな顔で俺を見た。
実は先週から美名川建設でお世話になっておりまして。
入ったばっかでもう打ち合わせ任せられてるんですか?いやー優秀な方なんですね。
いやーそんな、頑張らせていただきます。
そうだ、お名前は?
大島です。大島雅人と言います。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
そう言った瞬間川端さんの顔がこわばった。
あーなるほど。少々お待ちくださいね。
川端さんはそう言うと席を立った。そのままどれぐらい待っただろうか。
あまりに戻ってこないので声をかけようかと立ち上がった時、勢いよく扉が開いた。
そこには南波さんと美名川建設の人たちが立っていた。
だからさ、勘違いするなって言いましたよね。
ご、ごめんなさい。
俺は自分は完全にシュレッダーされたのだとようやく気づいた。
いかがでしたでしょうか。
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それではあなたの一日が素敵なものでありますように。小島千尋でした。
10:18

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