1. 小島ちひりのプリズム劇場
  2. #051 紫煙の流れを眺める人
2025-09-06 08:57

#051 紫煙の流れを眺める人

責任を負わないと言う責任の取り方。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

noteに本文を掲載中。
https://note.com/child_skylark

◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本 #小説 #モノエフ朗読
#舞台俳優 #先輩後輩 #男女の仲
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サマリー

このエピソードでは、主人公が女性との関係における誠実さや自己評価を問い直し、恋愛や人間関係の心理を探ります。明かりというキャラクターが登場し、結婚への期待や新しい冒険に踏み出す勇気について語ります。

人間関係の誠実さ
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、さまざまな人がいることをテーマにお送りいたします。
かつうらさんは、ポカンという顔でこちらを見ている。
かつうらさん、本気で言ってるんすか?
女に養ってもらっておいて、どの口が言ってるんすか?
向こうが俺に惚れてるんだから、別にいいじゃねえか。
惚れてる、ねえ。こんなおっさんにそこまで惚れる女の子なんて、どんな頭をしているんだか。
それにしても、35にもなって、20くらいの女の子に家賃も生活費も出してもらうなんてダサいなんてもんじゃない。
男のプライドはないのだろうか。
それでさ、レイナがさ、花火大会に彼氏と一緒に来るって言うのよ。
へえ。
ナルミは髪をとかしながら何か喋っている。
だからさ、セイジ君もさ、一緒に行こうよ。
え?やだよ。俺、行く意味なくない?
あるよ。レイナに紹介したいし。
ナルミはさ、俺の職業知ってる?
知ってるよ。舞台で活躍中の若手イケメン俳優。
そんなんが人混みに行くわけないじゃん。
ええ。つまんない。
それにさ、俺たち付き合ってないじゃん。
え?俺たち付き合ってないでしょ。
ナルミは驚いて固まっている。
え?私たち付き合ってるよね。
付き合ってないよ。俺そんなこと一言も言ってないじゃん。
だって、私何回もこの部屋来てるし、
他にも来てる女の子はいるよ。
俺は女の子には誠実なんだって言ってたじゃない。
そうだよ。俺は誠実だよ。
誠実だから誰とも付き合ってないんだよ。
ナルミはショックで言葉を失っていた。
はあ。
開けて。
ヘイヘイ。
俺が玄関の扉を開けると、明かりが入ってきた。
あれ?先客がいる。
ナルミは明かりの姿を見て口をパクパクさせている。
あんた、ちゃんと説明してないんでしょ。
したよ。俺は誠実な男だって。
バカねえ。
それじゃ逆に勘違いされるでしょ。
あ、あの、あなたは?
私?あなたと同じ、政治の遊び相手のうちの一人。
ナルミはショックを受けていた。
そして、鞄を持って立ち上がった。
最悪!最低!
ナルミ、もう俺みたいな男に騙されるなよ。
ナルミはプリプリしながら出て行った。
ああ、あんたいつか刺されるよ。
そう言うと、明かりは電子タバコを取り出した。
俺はちゃんと誰とも付き合わないって言ってるよ。
伝えるのが遅いんだよ。最初に言わなくちゃ。
だって、ナルミは向こうからホイホイついてきちゃったし。
もう一度言わないと。
ナルミは向こうからホイホイついてきちゃったし。
モテる男は辛いね。
新しい人生の冒険
明かりは、ふーっとゆっくり煙を吐く。
俺は、タバコの煙を吐くときの明かりの横側が好きだった。
私、結婚するんだ。
へえ。
明かりは、いたずらっ子みたいな顔で俺に視線を移した。
驚かないの?
驚かないよ。明かりほどのいい女が結婚なんてもったいないとは思うけど。
何それ?どういう意味?
明かりは、枠にはまるような人生。つまんないでしょ?
私もね、そう思ってた。
じゃあ、なんで?
政治といるのはさ、本当に楽。
期待しなくていいし、何も期待されないし。
そりゃそうでしょ。
でもね、私はもうちょっと欲張りだったみたい。
欲張り?
誰かと一緒にいるとね、知らなかった人生の扉が開くことがあるのよ。
どういうこと?
知らない世界を、冒険してみたくなったの。
俺には明かりの言っていることがよくわからなかった。
ただ、明かりはもう二度とここには来ないということだけはわかった。
喫煙所に行ったら、勝浦さんが大きなあくびをしていた。
お疲れっすか?
俺は電子タバコを取り出しながら聞いた。
新しいバイト始めてさ。
バイト?勝浦さんが?
なんだよ、その言い方。
だって勝浦さん、前にバイトするのは二流だって言ってたじゃないですか。
引っ越そうとしたら、練習が足りないって言われてよ。
彼女さんと引っ越すんすか?
いや、結局、一部屋も見せてもらえなくて返された。
だっせえ。
そういうお前はどうなんだよ。
俺っすか?
彼女とかいんだろ?
いないっすよ。
お前、意外にモテないのか?
俺は彼女作らない主義なんで。
は?
だって誰とも付き合っていなければ、誰と遊んでいても浮気にはならないでしょ?
はあ。
俺は一人の人といるとすぐ飽きちゃうし、女の子たちの期待には応えられないし、
だったら誰とも付き合わないのが誠実だと思いません?
お前、意外にビビりなんだな。
ビビり?
だって、彼女作る勇気がないってことだろ?
平気で彼女を踏みにじる勝浦さんには言われたくないっすね。
俺が?彼女を?
そうでしょ?
いつ?俺はいつだって彼女に誠実だ。やる必要のないバイトだって始めたんだぞ。
勝浦さんは神速不思議そうな顔をしている。
彼女に風俗でも何でもやって稼いでこいという男が誠実なんだそうだ。
そもそも、自分は誠実だという人間は、大抵誠実なんかじゃないのだろう。
そういう意味では、俺も勝浦さんも似たようなものだ。
勝浦さん、俺はね、自分の大切な人を自分で傷つけるのだけは怖いんすよ。
だからね、大切な人には遠くで笑っててほしいんです。
それがビビリというのなら、俺は一生ビビリでいいんですよ。
俺はタバコを思いっきり吸って、そしてゆっくりと吐いた。
いかがでしたでしょうか?
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それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように。小島千尋でした。
08:57

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