1. 小島ちひりのプリズム劇場
  2. #058 娘の写真を見せる人
2025-12-13 08:54

#058 娘の写真を見せる人

一度離れた心を取り戻すのは一筋縄ではいきません。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

noteに本文を掲載中。
https://note.com/child_skylark

◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本 #小説 #モノエフ朗読
#家族 #人間関係 #営業職
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サマリー

このエピソードでは、親の子育てや教育に対する考え方がテーマになっています。また、娘との関係に悩む父親が描かれており、彼の葛藤や反抗期について語られています。

親の教育の考え方
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、様々な人がいることをテーマにお送りいたします。
いつも通り、最寄駅の改札に入ろうとしたら、目の前のババアが急に立ち止まって、思いっきりぶつかった。
「おい、ふざけんなよ、ババア!」
俺がそう言うと、ババアは、「あっ、すいません。」と言って、恥へ酔った。
朝の忙しい時間帯に、よくもまあ人様にこんな迷惑かけられるもんだ。
まともに改札も通れないなら、外になんか出るんじゃねえ。
娘にはやりたいこと、何でもやらせてあげたいって思っているんです。
わかります。僕もね、娘が12歳になったんですけど、やりたいこと、何でもやらせたいって思っています。
12歳って言うと、次中学生ですか?
そうなんです。今年受験だから大変で。
中学受験ですか?
ええ、どうしても行きたい女子校があるらしくって。
娘さん、優秀なんですね。
そうなんですよ。誰に似たんだか。
写真見ます?
そう言って、俺はタブレットを操作して、ココロがプリンセスの衣装を着た写真を出した。
ここで、こぼんのをアピールすれば、親の信用はだいたい勝ち取れる。
かわいいでしょ。もう何でもわがまま聞いちゃって、妻には怒られるんですけどね。
本当だ。いい写真ですね。
私立の学校も恐れず通わせられるのは、学士保険のおかげなんですよ。
大学資金の心配はいりませんからね。今に集中できるってことです。
でも、中学が私立なら、大学は国立へ行く可能性もありますよね。
もちろんそうですけど、このまま私立の女子大に行く可能性だってありますから。
それだったら、18歳まで卸せない学士保険はむしろ不便なのでは?
でも、学士保険なら、お客様に万一のことがあったときも保証がつきますから。
それは、生命保険で十分ですよね。
でも、生命保険だけでご家族の生活は守れますか?
そんなことを言い出したら、学士保険をプラスしたところで、家族の生活守れるって言い切れるんですか?
意外に手強い客だった。だいたい娘の写真を見たら、
不安を煽ってアピールすれば、もうちょっと話を聞いてみようという姿勢になるのだが、
今日は点でダメだった。
ああ、お帰りわ篠くん。どうだった?
どうもこうもダメですよ。ガードが硬すぎて何しに来たんだか。
まあまあ、次頑張ろう。
父と娘の関係
事務所のホワイトボードを見る。
俺は今月まだ4件だが、松田の野郎は10件だ。
ただいま戻りました。
ちょうど松田が戻ってきた。
おお、松田くん。どうだった?
1件制約取れました。
はあ?いやあ、さすが松田くん。今日も絶好調だね。
ありがとうございます。
お前、どこから客引っ張ってるんだよ。なんか卑怯な手を使ってるんじゃないだろうな。
いやだなあ、わしのさん。僕がそんなことするわけないじゃないですか。
はあ?もしもわしのさんに契約が取れない理由があるとしたら、
性格が悪いからじゃないですか。
てめえ!
まあまあまあまあ、わしのくん落ち着いて。
年上なんだから。
じゃあ僕、本部に報告書出しに行かなくちゃいけないんで。
そう言うと、松田はさっそうと出て行った。
松田くんもほどほどにね。
ああ、ムカつくムカつくムカつく。
話を聞くだけ聞いて契約しない客も、
俺をバカにする松田も、俺を正当に評価しない上司も、すべてがムカつく。
その時、キョロキョロしている女子高生がこちらに向かってきた。
このままだとぶつかるとわかっていたが、
なんで俺がよけてやらなくちゃいけないんだ。
どんとぶつかると、女子高生は尻餅をついた。
どこ見てんだ俺!
俺がそう言うと、女子高生はヒッという声を出し、
ご、ごめんなさい!
と言って立ち上がり、走って行った。
まったく、最近の女子高生は教育がなっていない。
お父さん?
振り返ると、お父さんが、
お父さん?
振り返ると、
ココロが女の子数人と一緒に立っていた。
ココロ!どうした?こんなところで。
え?あれココロのお父さん?
やばい人じゃん。
違う!違うよ!知らない人!
ココロ!どうした?
でもココロって呼んでるよ。
知らないってば!行こう!
ココロは俺のことを無視して、女の子たちと走り去ってしまった。
まったく年頃の娘というのは難しい。
だが、また洋服の一つや二つ買ってやれば、すぐ機嫌は良くなるだろう。
ココロ!今度の休み、買い物でも行こうか。
好きなもの何でも買ってやるよ。
家に帰ってからココロにそう言うと、ココロはびくっとして俺から視線を外した。
いらない。
ボソッとした声でそう言うと、部屋に入ってしまった。
どうしたんだ?ココロのやつ。
よく分かんないけど、急にお父さんのこと怖いって言ってたわよ。
俺が?なんで?
分かんないわよ。なんで?
なんで?
分かんないわよ。なんかしたんじゃないの?
してねえよ。
さっさと仲直りしなさいよ。
へいへい。その後、2週間が経過したが、ココロは未だに俺と目も合わせないし、口も聞いてくれない。
一体俺が何をしたって言うんだ。
え?お子さん10歳ですか?うちと近いですね。
うちは12歳なんですけど、最近反抗期っぽくって。
今日の客は子供がもう大きいから学習は進められないが、まあ、やる用はいくらでもある。
女の子ですか?男の子ですか?
女の子なんですよ。
ああ、女の子だとなおさら難しいかもしれないですよね。
そうなんですよ。最近全く口聞いてくれなくて。
あら、それは重症ですね。それでも娘は可愛いんですけどね。
原因はわからないんですか?妻も教えてもらえないらしいんですよね。
ああ、まあでもわからなくはないかも。
何がですか?
だって、ワシのさんって人間に興味ないですもんね。
俺は一瞬、何を言われているのかわからなかった。
いかがでしたでしょうか。
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それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように。小島千尋でした。
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