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  2. S1E2 権力は自分の意思を誰か..
2025-04-14 14:11

S1E2 権力は自分の意思を誰かに強制する手段です

今回は、政治学の基本概念である権力(power)について解説しています。はじめに哲学者バートランド・ラッセル『権力』(1938)に少し触れていますが、主たる内容は政治学者スティーヴン・ルークスが1974年に出した『現代権力論批判』で整理された3つの枠組みを紹介する内容になります。

音声教材の内容を少し文章で補足しておくと、ルークスの権力論は彼の独創ではありません。1961年にロバート・ダールは権力関係を集団的な意思決定の結果から評価する方法を提示し、ピーター・バックラックとモートン・バラツが集団的な意思決定の前提となる議題(agenda)を操作することも権力行使の一種として取り扱い始めました。こうした成果を踏まえ、ルークスは、決定を下す際に人間が示す選好(preference)さえも操作の対象となる可能性を考慮すると想定し、幅広い政治現象を研究対象に組み込むための枠組みを整えています。

ポッドキャスト制作はまだ不慣れですが、このシーズンを何とか完走できるように頑張りたいと思います。不定期更新となりますが、どうか宜しくお願いします。

  • Bachrach, P. & Baratz, M. S. (1962). Two Faces of Power, American Political Science Review, 56: 947–52.
  • Dahl, R. A. (2005). Who governs?: Democracy and power in an American city. Yale University Press.(邦訳『統治するのはだれか : アメリカの一都市における民主主義と権力』河村望, 高橋和宏監訳、行人社、1988年)
  • Lukes, S. (2021). Power: A radical view. Bloomsbury Publishing.(邦訳『現代権力論批判』中島吉弘訳、未來社、1999年)
  • Russell, B. (2004). Power: A new social analysis. Routledge.(邦訳『権力 : その歴史と心理』東宮隆訳、みすず書房、1992年)

Summary

権力の概念は、誰がどれだけの価値を得るかを決定する政治の仕組みを理解するために重要です。特に、集団的な意思決定における権力関係の機能について考察されています。権力の本質についての探求が行われ、人々の認識を操作する力が重要視されています。また、自己の利益を追求する中で権力の行使が不可欠であることが強調されています。

権力と政治の関係
皆さんの周りに いっつも偉そうにしてるなって思う人いませんでしょうか
職場で声が大きいだけで 自分はあんまり何もしない人とか
とにかく周囲を自分に従わせないと気が済まない人とか こうした人々が
周囲に対してですね偉そうにすることができるっていうのは、これはどういうことなのか
考えたことはあるでしょうか こうした現象っていうのは社会科学の中でも特に政治学がすごく
得意とする現象であって、その現象を読み解くためにですね この権力という概念を使っております
この権力という概念について今回は皆さんと一緒に考えてみたいと思うんですけれども
まずですねこの政治という言葉がどういう意味を持っていたのかということをちょっと 振り返ってみたいと思います
以前皆さんにお話ししたように政治学という学問では政治というものを少しこう 変わった仕方で定義しているんですね
それは何かというとその価値というものを 権威的に配分するというものを政治というふうにみなしているということをお話ししました
価値っていうのはまあその主にはお金のようなものをイメージされると良いかと思うん ですけれども
そうしたものっていうのはみんな欲しいものですよね 欲しいものなんですけれどもそれを権威的につまりこの自分の意思とは無関係に誰か他の人によって
勝手に強制的に 配分されてしまうと
こうしたものが政治というものなんだよということを皆さんにお伝えしたところですね ここで少し気をつけてもらいたいのはこの権威的という言葉です
これはまさにこの権力っていうものを前提にしている言葉になっているんですね ですから政治というものはどういう現象なのかということを
もう一歩踏み込んで説明するとそれは権力を使って 社会の中で誰がどれだけの価値を得ることができるのかということを決めてしまうと
そうしたメカニズム仕組みのことを政治というふうに呼ぶんだということになってくるんです けれども
そうなってくるとですね じゃあこの権力っていうのは何なのかということが気になってくるところになります
この権力っていう概念について勉強する際に一つ参考としてですね この紹介しておきたいのは昔イギリスの哲学者のラッセルという研究者がいたんですけれども
彼はですね 彼の権力というものに対する定義としては自分の意図したものを実際に実現する そうした手段のことを権力というふうに呼んでいたんですね
意思決定における権力分析
専門的になりすぎない優しい定義だと思うんですけれども これを私なりにもうちょっと具体的に説明するとすれば
それは他者に対して自分の意思を強制する手段なんだというふうに まずは押さえておいていただくと良いかと思います
この権力という概念については政治学者でスティーブン・ルークスという研究者がいるんですけれども
彼はですね この権力というものを分析する方法について いろんな考え方が政治学の中でもあるんですけれども
それを大きく3つのパターンに分けることができるというふうに論じた研究者なんですね
この権力というものをどういうふうに分析するのかというと 人間の意思決定のやり方に注目するというのが政治学の共通のスタンスといいますか特徴になります
私たちは普段からいろんなことについて決定を下しながら行動というものを決めているわけですよね
そうした行動を決めるにあたって 自分の判断だけで一方的に決めることができるものもあれば
友達と旅行に行くっていうふうになった際には その友達の行きたい場所と自分の行きたい場所をすり合わせないといけない
そういう集団的な意思決定っていうものも当然出てくるわけですね
政治学では通常権力っていうものを考える際には 一人だけで完結しない意思決定
集団的な意思決定というものをまず考えます 一人は海に行きたいのにもう一人は山に行きたいとか
一人一人の行きたい場所とか あるいは一人一人の利益とみなしているものが違っているということが起こり得るわけですね
そうなった際にルークスっていう人は 3つの視点に分けてこの権力っていうものを考えることができるというふうに説明しました
山に行きたい川に行きたいっていう2人の人物が集団で意思決定をしないといけない場合 どちらの意思がより優先されるのか
ということでその権力関係というものを評価する そういう権力関係の見方ですね
山に行こうか海に行こうかっていうそういう議論が2人の間で起きた時に 結局じゃあ山行こうかっていう風になったならば
その2人の間の権力関係としては山に行こうというふうに言った方が意思決定においては有意な立場に立っているということが判断できるわけですね
これはすごくわかりやすい権力の見方だと思うんですけれども それぞれの利害というものが対立した時にそれをどういうふうに解決して全体としての意思決定を下すことができるのか
ということを見れば権力関係というのがわかるということですね もう一つは何を問題として設定するのかということで権力の関係を分析するっていう方法もあるというふうにルークスは説明しているわけですね
そもそもこの山に行こうかあるいは海に行こうかっていう立場の隔たりっていうものが出てきたのは2人で一緒に旅行に行こうという問題が出てきたためであって
そうした問題が出てくるっていうこと自体がですね 一つの意思決定の結果だというふうに考えることもこれもできるわけですね
まず旅行に行くっていう意思決定が終わった後で旅行のプランをどうするのかっていうことをめぐって この権力関係がどうなっているのかなっていうのを見ていたんですけれども
これはもうちょっと目に現れにくい権力関係だと言えます 例えばですけれどもある大学の教員が今の大学の運営方針についてすごく不満を持っていると
しかしその教授会って言いますかそういう会議の場でこれはおかしいんじゃないですか みたいなことを言ってしまうとなんかこうみんなにねあの
空気を読まない人だとかねまああるいはその何かこう過激な人だとかまあそういうふうに 思われることが怖いのでまあそういうことを問題にするっていうこと自体を思い留まっていると
そういう場合っていうのはそのそもそも何を問題にするべきなのかっていうことがその意思決定の場に現れてこないのでそうした意思決定っていうものを思い留まらせるような別の権力関係っていうものを示しているんじゃないかというこれが二つ目の視点ですね
権力の視点
で三つ目の視点っていうのは人々の認識ですねそうしたものを操作するっていうようなことができるような形の権力であってですね私たちのこの行動とかを変えようとあるいは私たちの認識とか態度っていうものを変えようと意図して設計された情報っていうのがあのすごく世の中には溢れているわけですね
でそうしたその認識を操作するっていうような可能性があるというふうに考えられるのであればそうした私たちの持っている認識を変える力もまた権力として考えることができるとこれがまあ三つ目の視点で何かを決めないといけないっていうふうになった際に人々がどこまで自分の意思っていうものを持てるのかっていうことをより根源まで突き詰めて
あの問い直すっていうことによってあの権力っていうものがどういうものかっていうことがわかってくると私たちがねこう普段考えている権力っていうのはあのもっとわかりやすいものだと思うんですある人が別の人に対して命令を下してその命令を受けた人がそのいやいやその子それをねやるっていうこれはもう一番わかりやすい権力ですけれどもそうした権力だけではなくてその政治学ではいろんな形態の権力
っていうものを扱っているとでなんでこうした幅広い権力の捉え方が必要なのかって言ったら私たちの意思決定っていうのはいろんな方向から操作可能だっていうことですね私たちの意思決定っていうのは実はその自由にできる範囲っていうのがいろんな形で制限されていてそうした制限の中で私たちは普段生活しているということですね
その自分の意見がそもそもこの場で通るはずがないっていうふうに判断して何か会議の場で発言すること自体を諦めたことっていうのは結構あると思うんですねそういう経験っていうのは割と日常的に体験することだと思うんですけれども
その何か本当はそれそんなにやりたくないんだけれどもなって思いながらも仕方ないなっていうふうに思って何か折り合いをつけてねその言うことをそうしましょうかっていうふうに決めたことっていうのはあると思うんですね政治っていうものが成り立つためには権力が必要だっていう話を一番最初にしましたけれどもすごくミクロな形でも権力っていうのはたくさん存在しているので
そうした自分の自分が沈黙してしまったりとかあるいは嫌々同意してしまったりとかあるいはもうしょうがないなって思ってやったこととかそういう経験っていうのはより深い政治的な理解にたどり着くための足掛かりになるんだということをちょっと覚えておいていただければと思います
ですから私たちが社会の中で自分の利益っていうものを最大限追求しようっていうのは実はすごく難しいことなんですね
社会にはいろんな人たちがいてそれぞれが自分の思う利益というものを追求しようと行動しているので
そうした行動をとるにあたっては他の人に対して自分の意思をいろんな形で強制するっていうようなそうした権力の行使っていうのは欠かせないわけですよ
私たちの短いいる偉そうにしている人っていうのはまさにそうした政治の仕組みっていうものをよく理解した上でそうした行動をとっているということも言えると思います
そうしたことは普段あんまり意識するっていうことがないかもしれないんですけれども
こうした権力っていう概念を持っておくとその権力っていうものがこういうものだっていうことを知っておくだけでそうした人たちにどう対処するべきなのかっていうことについてもいろんな知見が得られるわけですね
今回はその権力っていうものについて一般的な話しかできなかったですけれども権力っていうものに対抗するためにはやはり自分自身もそれに応じた権力っていうものを持っておく必要があって
そうした権力を対立させるっていうことによって社会全体の利害調整っていうものがかえって円滑にできるようになったりすると
こういう考え方を政治学では採用していたりもします
それでは今回の内容はこれでおしまいにしようと思います
お疲れ様でした
14:11

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