権力の概念の理解
今、このポッドキャストを聞いてくださっている皆さんの中にも、自分も機会さえあればですね、権力を握ってみたいなというふうに思われている方、いらっしゃると思うんですね。
こうしたその欲求を満たすためにですね、この一体どうすればいいのかということを考えた時に重要になるのが、まずその権力という概念をしっかり理解しておくということ。
もう一つは、その権力というものを強化するためにどういうことをすればいいのかということを知ることですね。
前回のお話でですね、この権力というものには、その効果の強さによっていくつかの分類があるんだということを学びました。
権力というものを最も強い形態で発動するためには、じゃあどういう準備をすればいいのかということについて今回は考えてみたいというふうに思っております。
まずですね、この権力というものを考える際に、簡単な考え方としては、やはりその権力の裏付けとなるような何かしらの資源を持っているということが重要なんではないか。
このような考え方がまずはあり得るのではないかと思います。
物理的な暴力、ですから武器であるとか、あるいは何か身体的な力ですね。
そうした実力というものは、人々に対して自分の意思を強制するために使うことができる資源の一つだと言えますね。
また経済的な富ですね。たくさんのお金を持っていて、それを例えばブランドもののバッグであるとか、あるいは腕時計であるとか、そうしたものを通じて自分に経済的な富がたくさんあるんだということを伝えるような形で
経済的な資源というものをベースにして、この人にあまり逆らない方がいいなというふうに思わせることによって、この権力というものを持つというような方法というものもあり得ます。
こうした権力というものが何か実際にこの軍事的あるいは経済的な資源によって裏付けられているというような、こうした権力の捉え方というのは、いわゆる実体説というふうに呼ばれることもある考え方ですけれども
あんまりですね、実はこうした権力の捉え方というのは、もちろん今でも非常に重要な基本的な捉え方であって、皆さんもまずはこうした点に着目するといいと思うんですけれども、ただですね、この実際に権力というものがうまく機能するためには、権力を行使するターゲットとなる人がどれだけその権力に対して服従しているのかということの方が
むしろ重要なんですね。どれだけすごく大きな軍事的経済的な資源を持っていたとしても、そうした権力資源に対して反応しないと、思ったような反応が得られないということも、これもしばしば起こるわけです。
そのような場合っていうのは、当然そうした資源を持っていたとしても、自分の意思を相手に押し付けるということができていないので、ですからそうした資源を持っているからといって、他の人々に対して権力を持っているとは一概には言えないわけですね。
じゃあ、より重要なのは何かって言ったら、相手から服従を得られているという状態、こうした状態が達成できているかどうかっていうことの方がより重要だということが言えます。
相手が自分の権力に対して服従している状態っていうのは、これはその権力っていうものが正当化されているということが言えるわけですね。
こうした服従を引き出すためには、正当化っていう、その正当性というものが権力を行使するがいないと、そこまでの服従行動っていうのはなかなか得られない。
ですから、その権力というものを分析する際には、いかにしてその権力が正当化されているのかっていう、その点に着目しないと、なかなか実際にその権力がどれぐらいの強さで行使されているのかっていうことを見ることができないですし、
もし皆さんが実際に権力を行使できるようになりたいっていうふうに考えたときには、いかにしてこの正当性を確保するのかっていうことを考えないといけないんですね。
じゃあ、この正当性っていうものは具体的にどういう要素で成り立っているのかっていうことについて考えてみたいんですけれども、これについては政治学でもう定番の学説というものがありまして、
マックス・ウェーバーという社会学でも有名な研究者がいるんですけれども、彼は、支配の正当性っていうものを成り立たせる要素として3つあるんだということを述べています。
簡単に言いますけれども、まず1つ目っていうのは伝統ですね。この伝統というものは、そのどうやって権力というものを正当化しているのかっていうと、この伝統というものの中身には昔からずっと受け継がれてきている
そうした慣習であるとか、あるいは宗教であるとか、あるいはずっと昔から受け継がれてきている血統ですね。そうしたものがこの伝統っていう言葉の中身に含まれているんですね。
天皇っていうのは、日本の長い歴史の中で何世代にもわたってその地位がずっと継承されてきたと。こうした時間の積み重ねというものが、この伝統的な正当性というものを成り立たせていて、これが昨日始まりましたみたいなものだとですね、これはもう全然伝統でもなんでもないですし
従ってその正当化の手段としては非常に使えないとは言いませんけれども、昨日から始まった伝統っていうふうに言っても、そっかっていうふうになる方も皆無ではないと思うんですけれども、ただほとんどの人はですね、そのような伝統には反応を示さないわけですね
しかし500年とか1000年とか、そういうものすごく長い時間をかけてずっと受け継がれてきたものだっていうふうになると、私たちはそうした伝統に対してそれは尊重しないといけないなっていうふうな反応を示すわけです
こうした反応を利用することによって、自分自身の権力っていうものを正当化するっていうようなことが可能になってくると。もう一つは、これが一つ目の累計ですけれども、もう一つはカリスマ性ですね
カリスマ性っていうのは、その他の普通の人たちとはちょっと違った独特な個性であるとか、あるいは独特な才能ですね。そうしたすごく飛び抜けて優れた知性を持っているとか、あるいは飛び抜けてすごく魅力的な人物であるだとか、これがそのカリスマ性の基盤になっているわけですね
こうしたカリスマ性というものも、自分の権力を正当化するための強力なツールになるということがわかっております
ただ、このカリスマ性というものは、その特定の個人に対してもともと付与されている、その人々がこの人はカリスマ性があるっていうふうに認知すると、その人に対して従っていこうと、服従したいというふうに考えるようになるわけですけれども
そのような行動をとったとしてもですね、その個人がいなくなってしまうと、解散というような感じになってしまうので、ですからすごく俗人性が高い、その人個人に起因しているというような、そういう制約が強い正当性のツールであると
これは長期的に渡って、支配関係を維持しようとした場合に、すごく大きなネックになってくるんですね。ただ、カリスマ性のすごく強いところは、そのたった一人からでもですね、始めることができると、つまり正当化というものを行う際に
ほとんどリソースがない状態であったとしても、正当化というものを行うことができる余地がある。このカリスマ性というものを強調する戦略というものは、都合が良い戦略だと言えます。最後に3つ目の正当化のツールとして言えるのが合理性ですね。
権力の持続に向けた戦略
この合理性というのは合法性というふうに呼ばれることもあるんですけれども、すごく組織化された、制度化された、システム化された権威というものをここでは念頭に置いているんだというふうに考えていただけると良いかと思います。
ですから私たちは何か伝統があろうがなかろうが、あるいはその人がすごくカリスマ性があろうがなかろうが、支配に従う、その人の言っている命令に従うということがあるわけですね。それは何で従うのかというと、その人がすごく大きな組織の中ですごく重要な役職に就いていて、
その人にそうした法令によって命令権とか指揮権が与えられているから、じゃあ従おうかというふうになる、そういうふうな形で私たちが服従している場合、その権力というものは組織的あるいは法律によって正当化がなされているということが言えるので、
そうした正当化のやり方であれば、それは合理性とかあるいは合法性というものに基づいて、この権力の正当化が行われているということが言えるかと思います。
だいたいですね、組み合わせ方という話になってくると、まずその一番最初にこの権力を獲得しようというふうに考える人が、まず最初に取るのはまずこのカリスマ性ですね。
自分は他の人々を従わせるにふさわしい人物であるということを周囲の人々に信じさせるところから、多くの政治史において新たに権力を握ろうとする人たちというのは、そうした自分のカリスマ性というものをベースにして、まず立ち上がってくるということがしばしばあります。
ただ、こうしたカリスマ性に基づく権力というのはすごく不安定なんですね。なので、その不安定さというものを補うために様々な制度を作ったり、あるいは組織化というものを行っていかないといけないと。
非常に小さなグループから始まったとしても、成長するにしたがって、いろんな役職ができたり、あるいは組織内の序列ができたりする、そうした発展のプロセスを辿ることがよくあることが社会学では認識されているんですけれども、これはカリスマ的な正当性だけでは非常に支配関係を維持することが難しいので、そういう段階に至っていくということですね。
合理的な、合法的な支配体制というものを長く続けることによって、そうした支配関係というものを長く続けることによって伝統的な支配関係というものに移行していくということもできるわけですね。
今回のお話で皆さんにお伝えしたかったのは、権力というものがどうやって出来上がってくるのかということを少し知ってほしかったんですね。権力というのは本当に様々な組み合わせがあって、ここで述べたのはごく一部なんですけれども、
まず抑えておいていただきたいのは、権力というものは単に物理的な暴力であるとか、あるいは経済的な資源というものがあればすぐに得られるのかというと、実はそうではないということですね。
これを私たちの日常生活の範囲に落とし込むとするならばですね、おそらくはいかに自分自身を、自分の存在を周囲に良いものとして見せていくのかという、こうした戦略というものが、この権力というものを獲得する上でもっともベースになる戦略になるということが言えるかと思います。
企業の戦略なんかでも、自分の企業をどういうふうにアピールするのかということについて、いろいろ議論したりすることもあると思うんですけれども、そうしたことを考える際に、いかに自分たちの存在が長い時間をかけて育まれてきたものであるのかとか、いかに社長がカリスマ性があるのかとか、
あるいはいかに大企業であるのかとか、そうした正当化をするためのいろんな選択肢があると思うんですけれども、それらをターゲットに応じて組み合わせて使うことによって、人々は自分自身の権力というものを構築しているというふうに考えると、
この権力というものが、この社会関係を形成する上でどういうふうに使われているのかということが、より深くわかってくるのではないかというふうに思います。
それでは今回の内容は、これでおしまいにしようかなというふうに思います。