政治とは何か
ニュースを見ていて、この政策ってどうしてこういうことになっているのか、なんでこんな対立が起きているのか、と思うことはありませんでしょうか。
かくゆ私もですね、この政治学という学問を勉強するまでは、政治に対してですね、この非常に不思議なものだなという印象を持っておりました。
ですから、この政治というのが、何かこうすごく無駄なような、すごく不合理なことをしているという印象を、政治学という学問を勉強するまでは持っていたんですけれども、
しかし、そうは言ってもですね、そのきちんとこれを理解しておかないといけないなというふうに思ったところが、大きなきっかけであったと。
特に私の場合は、戦争というのがなぜ起こるのかということ、これが大問題であったというふうに振り返るんですけれども、
戦争というのは、まさしくですね、この人々の尊い命を奪う悲惨な出来事であるということは、これはもう誰もがですね、同意していただけるのではないかと思うんですけれども、
それにも関わらず、そうしたことが世界では続いていると。
また、近年では、そうした戦争のような出来事が増えているような感さえ覚えるわけですけれども、どうしてこのようなことが起こるのかということ、
これがですね、私にとってはその政治というものを学ぶきっかけだったわけですけれども、
多くの皆さんもですね、この政治というものに対して、何でこんなことになっているのか、すごく不思議と言いますか、
もしかしたら、すごい不信感のようなものを持たれているのではないかと、そうした感情を持たれることは非常に当然のことだとも思うわけですけれども、
実はですね、政治学という学問の中では、その皆さんが疑問に思われるような政治的な現象というもののかなりの部分、全てとは申しませんけれども、かなりの部分が説明がついております。
なので、こういう原因が発生するとこういう結果が起こるんだなということについて、それなりの知見が、知識が蓄えられているという状況でありますので、その成果というものを積極的に共有することによって、政治に対する認識というものを強化することができるわけですね。
なので、このポッドキャストでは、政治学という学問を通じて、皆さんに政治に対する意識、認識というものをより良いものにしていただき、何か不安に駆られたりとか、ただ闇雲に起こったりとか、そういうことではなくてですね、
そのメカニズムがきちんと説明できるようになるということを目指していきたいというふうに考えております。
政治の定義と仕組み
実はですね、政治学の一番最初のお話ということになりますので、どこから始めるべきなのかということなんですけれども、実はですね、定期から始めるということが学問を学ぶ際にはとても重要なことです。
誰もがですね、この知っているような言葉であっても、改めてその定義を確認しておくということがとても大事になります。
まず政治学における政治の定義というのは、社会に対して価値がどのように権威的に配分されているのか、その仕組みのことを政治というふうに呼んでいるんですね。
ですから社会に対する価値の権威的な配分というものが政治というものの定義なんだという、今日はここだけでもですね、覚えて書いていただければいいかなというふうに思います。
まず政治というのは社会、つまり私たちが複数集まってですね、作っているこの集団のこと、これを社会というふうに呼ぶわけですけれども、
その社会の構成員である私たち一人一人に対してどれだけの資源、家とかお金とか食料とか、いろんな資源を私たちは日々消費して暮らしているわけですけれども、
そうしたものが誰にどれだけ配分されるのかというのは、私たち自身の決定で決めることができない部分というものがかなりあるわけですね。
政治が決めたルールによって私たちの暮らしというものがコントロールされていると。
このような状態を分析する際には、人々に対して、社会に対して価値がどのような形で権威的に、権威的っていうのは強制的にとか権力を使ってっていうそういう意味合いが込められているんですけれども、
その社会に対してどのように価値が配分されているのかということを考えるということが必要になってくるわけですね。
もともとこの政治学における政治の定義っていうのは、アメリカの政治学者のデビット・イーストンという研究者がいらっしゃったんですけれども、
この人物が作った定義ということになります。
この人がなぜ政治というものをこのように定義しようとしたのかっていうと、また少しずつお話しようと思うんですけれども、政治というものを一つのシステムとして捉えようとしたんですね。
ですから政治というのは、社会全体を動かしているメカニズムのようなものであって、何か一人の個人であるいは少数の人々で完全に制御できるものではなくて、
様々な内外の環境要因もありますし、システムの中の要因もありますし、様々な要因が組み合わさったことでその政治というものが動いていると。
すごくシステム的な見方というものを捉える際に、政治というものは価値というものを権威的に配分する仕組みなんだというふうに考える方がとても便利だなということに、それがわかったので政治学者はみなそれを使っているということですね。
日本の政治の転換
この定義だけ聞かれると、なんだそれはっていう、そういうちょっとよくわからない、煙に湧かれたような印象を持たれる方も多いと思うんですけれども、一つ例をちょっと挙げてみようと思います。
日本がですね、この1945年に政治状況がすごく大きく変わったということは、皆さんも歴史にそんなに興味がない方でも、その1945年っていうのは何か日本史の中ですごく大きな転換点になったんだなっていう、そういう印象は持たれていると思うんですね。
で、その大きな原因というのは、言うまでもなく第二次世界大戦。これが終結して、それまでの日本の政治の在り方というものがすごく変わったということが、これがすごく大きかったということが挙げられます。
で、もちろんですね、この時に、まず憲法が変わっていったということが非常に大きかったんですけれども、第二次世界大戦が終わった後、日本は明治以降にずっと使い続けてきた大日本帝国憲法からですね、日本国憲法という、憲法を切り替えるということをやっていて、
この仕組みを切り替えたことによって、様々な政治制度、政治行動というものが変わっていったわけですね。
で、その結果、どういうことが起きたのかというと、これも一言ではちょっと言い尽くせないんですけれども、まずその資産の構成、資産の分布というものがすごく変わりました。
もうちょっとわかりやすく言うと、1939年、第二次世界大戦が始まった時点の日本では、すごく所得の格差というものが大きかったわけですね。
1939年の時点で、日本社会の中で、上位1%のお金持ちの人が持っていた所得というのは、国民全体の所得の中で20%近くを占めていたと。
20%弱というべきですけれども、上位1%の富裕層がその所得というものを非常に大きく支配していたと。
このパーセンテージは、税金とか社会保険料とか、そういったものを差し引く前の所得ということになるんですけれども、当時の日本の中で、その所得の格差というものが非常に大きかったということが、まず一つ指摘しておきたいところですね。
これは必ずしも日本だけの状況ではなくて、アメリカとかフランスとかイギリスなどを見てみても、特にアメリカなんかでは、経済成長というのがすごく活発な時代であったので、そうした経済成長が活発な時期っていうのは、社会の中の所得の格差というものが広がりやすい傾向にあるんですね。
そうした格差というものを是正するための制度というのが、戦前の日本では十分に整備されていませんでした。
なので、その日本の政治の在り方としては、こうした所得の格差というものを放任するような状態というのがあったと。
これも、価値の権威的配分というものを一つ表している状況だと言えます。
ただ、第二次世界大戦が始まってからは、状況が一変します。
つまり、富裕層の所得水準がだんだんと低下するというような状況が起きてくるんですね。
それはなぜかというと、やはり戦争が始まると兵隊を動員したり、あるいは武器や弾薬を生産するために、その富裕層に対する課税というものが強化されるという時代が始まってくるためです。
なので、富裕層は非常に資産をたくさん持っていましたけれども、その資産の規模に応じて、戦争の費用というものを負担しなさいと。
こういうふうに、政治の方から政治的な圧力がかかって、結果的に上位1%の所得というのは、戦争が始まる前の時期であれば20%近くあったんですけれども、
戦争が終わるまでの間に、だいたい6.4%ぐらいまで所得のシェアが低下してしまったと。
ですから、ちなみに、これまでの調査では、本当に上位0.1%ぐらいの本当のお金持ちですね、そういう人たちの資産の状況についても追跡調査がなされておりまして、
彼らは1939年の時点では、国民全体の所得の中で占める割合というのが、だいたい9%ぐらいであったと。
ですから、本当にものすごい大きな資産を持っていたということが言えるわけですけれども、
戦後になると、彼らの所得というのは、全体の中で占める所得の割合としては、2%ぐらいにまで減少しているということがわかっています。
いかに日本がすごく大きな戦争をやったのかということがわかるのではないかと思うんですけれども、これは当然で、
1945年に戦争が終わった時点で、日本では500万人近くの兵隊を動員していましたし、
戦争が末期になると、主要の都市部では空襲で、不動産の多くが壊滅的な被害を受けるということもあって、
多くの資産が物理的に損なわれてしまったんですね。
また、戦争が終わった後の米軍の占領統治が始まると、今度は農地の改革で、地主の土地が没収されて、他の農民に再配分されたりだとか、
あるいは財閥の解体というものもあって、それまで一部の財閥に集まっていた富というものがバラバラにされてしまうと。
こうした政治状況の変化というものが、私たちの社会の中で、どのように誰にどれだけの富を配分するのかという、そのパターンを決める力があるということ、これは大変重要なポイントになります。
ちょっとまとめますけれども、今日皆さんにお話ししたかったのは、政治というものを理解するためには、政治学を学ぶということがとても有効であると。
ですから、皆さんがもし政治に対して、ちょっとよくわからないなというような印象を持たれているのであれば、政治学という学問を勉強してみるということは、とても良い学習になると思います。
戦後の社会改革
そうした、実際に政治学を学ぶ上で、政治学ってどんなものなのかというふうに考えた際、興味を持たれた際に、覚えておいてもらいたいのは、政治学の中で政治というものの定義というのは、一般的な政治の定義よりも具体的といいますか、少し狭い定義を使っているということですね。
政治学の研究者はですね、政治の本質っていうのはどこにあるのかっていうと、それは価値というものを社会の中で限りある価値を誰にどういうふうに配分するのか、ここが最も重要なところなんだっていうふうに考えているので、ですから、より客観的に政治を見ているというふうに言えると思います。
ですから、私たちが見ている政治の在り方っていうのは、政治学者が研究者として見ている政治の在り方とちょっと違っていてですね、その違いというのを、その面白がるっていうところが政治学を学び始める際に大事なところではないかなというふうに思います。