今回は、志村ふくみさんの「語りかける花」。
私自身、随筆の中で、もっとも敬愛している本の1つです。
この本は、ふくみさんの日常を描きながら、
花や色を通じて、人生に大切なことを語りかけてくれています。
サマリー
志村ふくみの作品『語りかける花』では、彼女の日記から雪景色にインスパイアされた思い出や感情が語られています。特に、母との思い出や彼岸に行った人たちとのつながりが描かれ、生活の深さについての考察が展開されています。
雪景色と記憶
ちょっともう一つだけ日記紹介していいですか? せっかくだから。
気になりますね。ちょっと次の日記。
これもすごい日記なんだよな。ちょっといきますね。
1991年1月18日
朝からおやみなく雪が降る。
旗を織りながら時折窓の外を眺めると
雪の上に雪が降り積み
渓流だけが雪を吸い込むように流れていく
どこか上流でゴーッという音がしたら
窓の外が真っ白になって
風が雪を巻いて通り過ぎた
水面を黒い鳥が飛ぶ
昼過ぎ、少し小ぶりになった子貝に
かくまきを巻いて出てみる
誰もまだ踏んでいない新設の上を
小さな足跡が森の片わらまで続いている
昨夜も十時過ぎ
子貝に出てみたらすぐそばの
やぶの中を川下の方に小さな足跡が続いていた
つい今しがたここを通り過ぎたに違いない
もう三十分もしたらこの足跡は雪に埋もれるだろう
どこに行くの?寝床に帰るのかい?
私は思わず小狐の後姿を追うように足跡に語りかけた
ちょっと一旦止めましょうかね
まあそういう
いいですよね
福美さんって本当に少女みたいな人なんですよ
本当に純真な
純粋な心を持った方なんですよ
なんか情景浮かんでくるでしょ
情景浮かんでくる
読んでいきますね
ここへ来て一人旗に向かうと
遠い昔のことが鮮やかに胸によみがえる
記憶の引き出しが空いて
昔のことを今の色合いに包み込んで思い出す
鮮やかな色は消えて
いぶし銀の世界だ
若くして彼岸に行った人たち
母のことは特に思い出される
この頃自分の中のちょっとした感情の不沈浮き沈みや
ぎこちない仕草まで
ふと母が宿っているような気がする
60数年を終えて
ようやくたどり着いたこの生活の深みに
心をひたと寄せて自分自身と語ってみたい
街中の神経の休まる時とてない生活より
こんな山の中のほうが死者たちが訪れやすいのだろうか
山の上からとめどなく吹きつける白い扁平が
無数にさまよう精霊のように谷間を埋めてゆくのを終日見ていると
魂が家へ家へ向かって行き
懐かしい人たちに出会っているような不思議な温かさを感じる
旗を織る手を休めて窓の外の雪に向かって
なんとなく頭を下げてみるって言って終わるんですよ
思い出と生活の深さ
終わるんだ
すごい日記だこれほんと
ちょっと急に終わっちゃったからあれだけど
最後の一文もう一回読んでほしいです
そうだよね
ちょっと最後の2行文ぐらい読んでいいですかね
読んでほしい
街中の神経休まる時とてない生活より
こんな山の中のほうが死者たちが訪れやすいのだろうか
山の上からとめどなく吹きつける白い扁平が
無数にさまよう精霊のように谷間を埋めていくのを終日見ていると
魂が家へ家へ向かって行き
懐かしい人たちに出会っているような不思議な温かさを感じる
旗を織る手を休めて窓の外の雪に向かって
なんとなく頭を下げてみる
すごい日記です
この旗をこの日も1月18日冬の中
雪が降り積もる中織ってたんですね
そうすると遠い昔のことが鮮やかに胸に蘇ってくる
記憶の引き出しが空いて昔のことを思い出してくるんだ
って言うんですねこれ思い出させられてるんですよ
情景とかその雪とかね思いと口にしながら
そして旗を織るというこの行為の中で
大事なことを思い出すように促されているような感じですよね
そうすると若くして彼岸に行った人たち
母のことは特に思い出されると
これ若くして彼岸に行った人たちっていうのはこれお兄さんとかなんですよ
お兄さん病では隠してなくなってきてる
きっとね
でこれお母さんっていうのは自分に旗織りを教えてくれた人なんですよ
お母さんは本当に旗織り染色家だったんですよお母さんはね
でお母さんのを継いでるんですよこれ
そんかそんか
それも相まってかもしれません
恋によって
そうなんですよ
自分の中にね
ぎこちない仕草までふと母が宿ってるような気がするって
言うんですね
60数年を終えてようやくたどり着いたこの生活の深みに
心をひたと寄せて自分自身と語ってみたい
この自分自身っていうのはもうこれあれじゃないですか
お母さんとってことじゃないですか
自分の中にいるお母さんと語ってみたいってことのように見えてきます僕には
とかお兄さんとかね自分の中に宿ってるお兄さんと語ってみたい
単なる自分じゃないよね
そうそうなんですよ
その一部がやばいね
やばいねとか言って語彙力が
で最後読んだところね
雪景色
僕東山帰りの雪景色とかの絵とかちょっと思い出してますけど
なんかあれは僕には魂を描いているように思えてね
自分のマニマニっていう詩集の中にも
冬の花って書いてある作品
あれそのまんま東山の海の実は作品なんですけどね
あの作品は東山海の作品を見て僕書いたんですよ
言葉を使って実はね
あれはもう魂が描かれてあると思って書いたんですけどね
なんか本当にそういう雪がね
精霊のように思えてくると
死者と精霊って非常に近しい存在だと思うんですよ
そういうものが訪れてきてくれていると
なんかこういう人たちにどれだけ自分が支えられてきたんだろうかってことをね
年を重ねるごとに実感されていったってことが伝わってきますね
情景とともにすごいなんかスッと伝わってくる
ねえ
コウムレはすごいですね本当に
まあちょっとこういうね
ちょっとライブマニアックなところから入ってしまったんですけど
いやあのこういう世界観というかね
まあこういうふうに生きてる方なんです
いや十分手に取ってみたくなりましたよ少なくとも僕は生きだけでも
良かった
そういう人いるんじゃないかな
09:10
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