名前の影響と心理的な関連性
みなさんこんにちは、佐藤です。
この番組では、通常私が一人で最近の研究論文を紹介しています。
時々その後に、また別の研究を、葵さんと二人で会話をしながら紹介するということをしているんですけれども、
今日はそれを3本という形になります。
内容としては、名前がその人にどのような影響を与えるかという話と、3Dプリンターに関するものになります。
では、この後その本編が始まります。ぜひお聞きください。
こんにちは、葵さん。
こんにちは、佐藤さん。
葵さんは、人の名前がその人の人生を決めるみたいな話って聞いたことあります?
いや、生命判断とかそういうんじゃなくて、もう少し科学的な話で。
はい、ありますよ。
確か、名前と響きの似た職業に就くっていう話がありましたね。
例えば、デニスっていう人がデンティストに多いみたいな。
よく知ってますね、そんなこと。
いや、そうなんですよ。
実際にそうだっていうのをちゃんとデータに示している論文が発表されてて、
だから人間は無意識に自分の名前から職業を選んでるっていう、そういう主張があるんですよ。
そう言われると、サトシさんもそうですよね。
サトスって教えるという意味ですけど、そのまま大学の先生になってるわけですからね。
まあ、そうなんですよね。
でも一応、この主張には怪異的な人っていうのもいて、
元の論文のデータが弱いっていう指摘もあるんですね。
特定の時期とか、特定のグループで好まれた名前とかがあると、
その名前が多くなったりするんですけど、
その辺をちゃんと対象をとって比較してないとか、そういう主張があるんです。
だから、本当か嘘かはわかんないんですけど、
それでも、自分の名前が仕事を選ぶのに無意識に影響するっていうのは、
全く不可能ではないって思うんですね。
でも、最近もっとありえなそうな結論の論文が出てて、
名前によって顔が変わるっていう話なんです。
つまり、名前がサトシだと、サトシっぽい顔になってくっていう話です。
えー、どういうことですか?
実験としては、知らない人の顔の写真を見せて、
4択の中から本当の名前を当てるっていうテストを、
たくさんの人についてやってるんですね。
だから、僕の写真が見せられて、
僕の名前知らないんだけど、選択肢がサトシ、ケンイチ、リョウ、タロウとか、
そういう4択なんです。
で、名前と見た目に関係がなければ、ただ手ずっぽうになるわけなんで、
正解は4分の1で25%のはずじゃないですか。
でも、もう少し高い30%ぐらいの正答率だったんです。
だから、少しなんだけど、その名前っぽさが顔にあるっていうことなんです。
えー、そうなんですか。驚きですね。
そう。でも、すでに同じことを示している先行研究っていうのもあって、
まあ、そうみたいなんです。
で、名前と顔が一致するのは、
名前をつけるときに、生まれたときに、この子はサトシっぽいからサトシにしようって、
そういう風にしてつけられた可能性があるわけですよね。
で、今話してた結果っていうのは大人のことなんですけど、
今回の研究では、さらに子供も調べてるんです。
で、そうすると興味深いことに、子供の写真のときは正答率が25%くらいだったんです。
だから、子供はランダムで、名前と顔が一致しないっていうことなんです。
で、この結果を考えると、子供の顔にはその名前っぽさがないんだけど、
成長の過程でその名前の顔になってくるっていうことみたいなんです。
うーん、ちょっと信じられないですよね。
ですよね。
で、もう少し根拠を得るために、名前と写真のデータを機械学習させるっていうことをしてるんです。
で、そうすると、そのコンピューターは、
同じ名前の大人は似てるって認識できるっていうことを、この論文では示してるんです。
でも、子供ではそうではないっていうことだったんですね。
だからコンピューターが見ても、同じ名前の大人には何か類似性があるってことなんですよ。
で、あともう一個面白いことをやってて、
子供の写真を加工して大人の顔にするっていう、なんかそういうアプリあるじゃないですか。
それで大人の顔にして、その顔と名前を一致させるテストもやってるんですね。
で、この場合だと正答率25%で、本当の大人の顔みたいに30%正解することはなかったんです。
で、さらにこの加工した顔をコンピューターに見せても、
子供の時と同じで名前による類似性がないって判断されたんです。
っていうことは、子供の時は名前の影響のない顔をしてて、
それを加工して年を取らせても、名前の影響がないままなんだけど、
実際の人間っていうのは、その名前とともに年を取っていて、
そうすると、その名前らしい顔に成長するってことみたいなんです。
なんか不思議ですね。
だから、この名前の人はこんな感じだっていうステレオタイプが社会にあって、
その当人もそれを持ってるから、それに見合うような見た目に自らなっていくんだろうみたいな説明がされてたんですけど、
ちょっとにわかには信じられないですよね。
はい。でも、ほんの数パーセントくらいだから、それくらいだったらギリギリあり得るかもしれないですね。
確かにそうですね。7割正解するとかだったら絶対信じないですけど、
少しっていうところが逆に信憑性があるっていうところはありますね。
私からは3Dバイオプリンティングについてです。
3Dバイオプリンティングの仕組み
この技術で臓器を作る試みが行われているので、その話をしたいと思います。
はい、お願いします。
3Dプリンティングは主にプラスチックや金属などの素材を積み上げて、
三次元的に物を作る技術で、もう一般的ですよね。
3Dバイオプリンティングは、生きた細胞やバイオマテリアルと呼ばれる生体材料を使って臓器や組織を作り出す技術なんです。
いわば細胞でできたインクを使って、人間の体の部品をプリントするような感じですね。
今はもうそんなことができるんですね。
そうなんです。技術的なところを簡単に説明すると、
普通のインクジェットプリンターのように、細胞を含む液体を1滴ずつ積み重ねていく方法が一般的です。
この方法では、まず細胞や材料を正確な位置に配置して、層を積み重ねていきます。
そして最終的には、プリントされた細胞が成長し、場合によっては過強処理といって、組織が安定するような処理を行います。
これによって、プリントされた臓器や組織が形を保つことができるんです。
なるほど。だからまるで普通のプリンターみたいに臓器を印刷していくということになるわけですね。
でも、そんな風に細胞をポタポタ垂らして、層を作って、それでちゃんと形ができるんですか?
すぐにバラバラになってしまいそうなんですけど。
細胞を含むインクは、ただの溶液ではなくて、粘性のあるゲルなんですね。
このゲルの素性が適切な硬さ、機械的特性を持つことが、プリントして層を作っていくのに重要なんです。
また、細胞が定着しやすいように、生物由来の成分もこのゲルには加えられます。
例えば、肝臓細胞の3Dプリンティングを行っていた論文では、
細胞外マトリックスという細胞が分泌した細胞の外にあるタンパク質や糖類を細胞が定着するための足場となるようにゲルに加えていました。
こういったゲルの素性を目的ごとに最適化することが必要みたいです。
なるほど。オルガノイドというのがあるじゃないですか。あれとはどう違うんですか?
オルガノイドは、少数の細胞から成長したミニチュア臓器のことで、
肝臓や腸、脳など様々な臓器の機能を持つ小さな構造体を作る方法が確立してきていますね。
オルガノイドの場合は、細胞が自己組織化、つまり細胞を分化する刺激を与えると細胞自ら構造を作るので、それで三次元的な構造ができます。
今のところあまり大きいものはできなくて、完全な臓器といえるものは作れないのですが、臓器としての機能を持っているので、とても有用なツールです。
3Dバイオプリンティングは、細胞を特定の位置にプリントして、意図的に組織を作るという違いがあります。
つまりバイオプリンティングでは、より大きな組織や臓器を作ることができて、より精密にデザインすることもできるという点が強みです。
この点を生かして、最近では血管を含む複雑な組織をプリントする技術も開発されています。
血管が重要なんですか?
はい、まさに聞いて欲しかった質問をありがとうございます。
血管は体内のどんな組織でも酸素や栄養を運ぶ役割を果たしているので、これがないと臓器や組織は長時間生き続けることができないのです。
特に大きな組織では、内部まで酸素と栄養が届かないので、血管のような細かい構造を再現することが完全に機能する臓器を作る上での最大の課題の一つです。
他にどんな課題があるのですか?
他には、プリントした後の細胞が適切に機能するようにすること、さらに長期間生き続けるようにすることが難しいです。
また臓器は単に細胞の塊ではなくて、神経や血流、代謝など複雑な機能を持っているので、そうした複雑さを再現するための技術も必要になります。
なので、まだ完全に機能する臓器を作るというのは難しいのですが、いくつかの試みはかなり進んでいます。
技術的課題と実用化の可能性
例えば、皮膚や軟骨のような比較的シンプルな組織はすでに成功していますし、肝臓や腎臓の一部を作る研究も進んでいます。
なるほど。で、そういうふうにできた臓器を移植することもできるんですか?
はい。動物への移植が成功した例もあります。
例えば、マウスに3Dプリントした皮膚を移植した研究がありますし、肝臓を損傷したマウスに培養した肝臓を移植して機能を回復させたという報告もあります。
ただし、人間での実用化はもう少し先かもしれません。
現在は、新薬の開発や病気の研究のために、人間の組織を模倣したモデルを作るのに使うことが試みられています。
例えば、肝臓の一部をプリントして、新薬が肝臓にどのように影響を与えるかを試験するようなことができます。
体の中に入れるものはいろいろハードルが高いですけど、外で使うものは実用しやすいですもんね。
特に動物実験を減らすことができるという点でも、バイオプリンティング技術は非常に期待されています。
人間の組織を模倣したモデルで試験することで、動物を使わなくても安全性や有効性を評価できるので、倫理的にも優れた方法だと思います。
でも、やっぱり将来的には移植用の臓器を作ることが期待されています。
移植用の臓器は常に不足しているので、臓器の提供の順番待ちは長くて、臓器移植を受けられない患者がたくさんいます。
また、臓器移植では拒絶反応が見られるので、免疫抑制剤を使い続ける必要があって、移植後も大きなリスクがあります。
ですから、理想的には患者さん自身の細胞を使って、その人専用の臓器をプリントすることが目標です。
これが実現すれば、ドナー不足の問題も解消されて、拒絶反応のリスクも大幅に減少する夢の治療になります。
遠い将来には、緊急時の医療対応として、必要な臓器や組織をその場でプリントすることができるかもしれません。
ドローンによる新たな技術
さらに、遠隔地や宇宙での医療支援にも応用される可能性があって、地球外でも必要な臓器をその場で作り出す未来もあり得るかもしれませんね。
SFみたいな話ですけど、そういった可能性もあるってことですよね。
じゃあ今、3Dプリンターの話なんで、僕の方からも一つ3Dプリンターに関するちょっと驚くような研究の話をしたいと思います。
はい、お願いします。
3Dプリンターって結構いろんなところにもあるんですけど、大きな制約っていうのがあるんですね。
だからそのインクって呼ばれるものを出すノズルがあるんですけど、そのノズルを支えないといけないんで、
大体は箱が用意されていて、その箱から出てる支柱にノズルが取り付けてあるわけなんです。
だからどうしてもその箱の中の、箱の大きさのものしか作れないっていう、そういう性格があるわけなんです。
この研究なんですけど、この研究者の人たちが、もっと大きいものを作れないかって考えたときに、
鉢を見て、これが使えるんじゃないかって思ったんです。
その鉢って自分の体から粘液を出して、大きな鉢の巣を作っていくわけなんですけど、
どこに作るかとか、どれだけの大きさのものを作るかっていう制約がないわけなんですね。
それを見て、じゃあそのノズルを飛ばせばいいだろうって考えて、
ノズルをドローンにくっつけて3Dプリンティングするっていう技術を思いついたんです。
その発想が面白いんですけど、やっぱり技術的にはかなり大変だったみたいで、
相当な試行錯誤があったみたいなんですけど、最終的には2台のドローンを飛ばすっていうことに着地したんですね。
1台目のドローンがまず飛んでいって、設計図の通りにインクを落としていくんですけど、
その後2台目が飛んで、2台目のやつはノズルはついてなくってカメラがついてて、
スキャンをして、ちゃんと狙い通りのものができてるかっていうのを確認して、
また1台目のノズルがついてるやつが微調整をしながらインクを乗せていくっていう、
そういう形になって、最終的にはですね、ミリ単位で正確なものが作ることができたっていう感じで、
アイデアも面白いですけど、そこまでの実現させるための技術がもう素晴らしいっていう、そんな研究だったんです。
えー、それってすごい発想だと思うんですけれども、どのように応用できるんですか?
そうですね。もちろん、どれだけでも大きいものが作れますから、
本当の遠い将来には、例えばマンションをドローン飛ばして作るとかもできるはずなんですよ。
今はまだコストの問題があるんで、そんな大きいものは多分できないんですけど、
実用化が近いものとしてそのフィッシャーラが挙げてたのが補修ですね。
その、なんか新しいものを作る時っていうのは工場でプリントして持っていくっていうことができるわけなんですけど、
補修の時はやっぱりそこでやらないといけないわけなんですね。
で、そういう時にこのドローンを飛ばして、人が手が届かないようなところまで飛んでいって直すみたいなことができるだろうみたいな、
そういうことが言われていました。
なるほど、すごいですね。
青井さん、think out of the boxって表現知ってます?
はい、知ってます。型にはまらず考えるみたいなことですよね。
そうそう、文字通りの意味っていうのは箱の外ってことなんですけど、
その3Dプリンターの箱の中しかものが作れないっていう制約を超える、
まさに文字通りも比喩的にも箱の外みたいな研究だったなって思いました。
はい、私からはこんなところですね。
じゃあ今日はこれで終わりにしましょうか。
皆さん最後までお聞きいただきどうもありがとうございました。
ありがとうございました。