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2023-07-13 19:18

e34 アルツハイマー病による認知症を防ぐ遺伝子

コロンビアのアルツハイマー病家系から、アルツハイマー病の遺伝子を持つのに認知症にならない人が見つかりました。そして、その人の遺伝子を調べることで、アルツハイマー病を抑制する遺伝子が見つかったという話です。


用語:「老人斑」に「アミロイドβ」、「神経原線維変化」に「タウ」


https://www.nature.com/articles/d41586-023-01610-z?WT.ec_id=NATURE-202305&sap-outbound-id=D442ACE09B7871EAD387768E9236B264D3ADA50D

https://www.nature.com/articles/s41591-023-02318-3

https://www.tmghig.jp/research/topics/201703-3382/

https://forbesjapan.com/articles/detail/63349

サマリー

アルツハイマー病は、認知症の主要な原因であると説明され、高齢化による問題や家族性のアルツハイマー病の特定の遺伝子の変異、脳の機能の低下などについて話されました。現在、アルツハイマー病による認知症を防ぐ遺伝子の研究が進められており、特定の遺伝子の変異がアルツハイマー病から守る可能性が明らかになりました。さらに、リーリンとアポイーという遺伝子が同じ場所に作用し、そのバランスによってアルツハイマー病の発症が決まることが示唆されました。

アルツハイマー病の概要
皆さんこんにちは、こなやです。 今日はですね、認知症の主要な原因であるアルツハイマー病の研究で、興味深い進展が見られたので、それについて話していこうと思います。
まずはじめに、アルツハイマー病はどんな病気なのか、それから、アルツハイマー病を克服していく上で何が問題なのか、というところから話していきたいと思います。
日本がすごく高齢化をしているっていうのは、皆さんよくご存知だと思います。
でもまあ、日本だけではなくって、高齢化っていうのは世界的なことなんですね。
人が長生きするようになって、まあいいことではあるんですけど、人が長生きするようになると問題になるのが認知症なんです。
今65歳以上の人の5、6人に1人ぐらいが認知症なんです。 それが85歳を超えるとですね、3割から5割の人が認知症になるんですね。
この認知症っていうのは、記憶障害に代表されるように、知的機能が低下するっていうものなんです。
で、これっていうのが年を取ると共に進行していって、まあ社会生活が遅れなくなって最終的には死に至るっていう、まあそういうものなんです。
で、まあそういうふうに記憶ができない本人にとって大変であるっていうのはもちろんなんですけど、介護などの問題がありますから、まあ社会的な負担になるっていうところなんです。
で、高齢化っていうのはさらに進行しているので、今後世界的に問題がより深刻になっていくと予測されています。
で、この認知症のうちですね、6、7割を占めるのがアルツハイマー病なんですね。
だからアルツハイマー病の治療法を開発するっていうのは、今後の社会の維持のために必要な課題と言えるわけなんです。
なので今非常に多くの研究者がこの問題に取り組んでいるんです。
で、まあその会もあって、アルツハイマー病の薬っていうのはすでにいくつか開発されて実際に使われているんですね。
なんですけど、まあこれらの薬っていうのはいずれも対象療法で、その症状を一時的に抑えるっていう効果はあるんですけれども、
その病気の原因を治すということができないので、病気を感知させるということができないんです。
もっと言うと、この認知症というのは進行していくわけなんだけれども、その進行を食い止めることすらできないわけなんです。
だから根本的にアルツハイマー病を治療する薬、あるいは予防する薬の開発っていうのが待ち望まれているんです。
遺伝性のアルツハイマー病
で、このアルツハイマー病っていうのは今も話してきたように、高齢になるとなりやすいんですね。
で、そういうふうに高齢になってからなる認知症の多くのケースっていうのは、親からの遺伝でなるわけではなくて、
個発性と言われるんですけれども、多くの人がなる可能性があるわけなんです。
で、こういったタイプのアルツハイマー病の方が多いんですが、遺伝性のアルツハイマー病っていうのもあるんです。
で、その場合は親から声が伝わりますから、そういったアルツハイマー病になる家系っていうのがあるんですね。
で、この家族性のアルツハイマー病を引き起こす特定の遺伝子っていうのがもうわかっていて、そういう遺伝子に変異があると、結構若いうちにこのアルツハイマー病を発症するんです。
で、アルツハイマー病っていうのは脳の機能がおかしくなる病気なわけですけれども、脳の中で何が起きているのかっていうところですよね。
で、アルツハイマー病の患者ではですね、脳の萎縮が見られるんです。
つまり脳の中の神経細胞が死んで、脳がスカスカになっていくんです。
で、特に記憶とか工事機能って言われるんですけれども、複雑な脳機能を司る部分が特に萎縮して失われていくというわけなんです。
で、こういうアルツハイマー病の患者の脳ではですね、特徴的な異常な沈着物が見られるんですね。
つまりなんか変なものが溜まっていってるんです。
で、それが2種類あって、1つが老人肺と呼ばれるもので、もう1つが神経厳選異変化と呼ばれるものです。
で、この老人肺の方にはアミロイドβっていうものが溜まっていて、神経厳選異変化の方はタウと呼ばれるものが主成分なんです。
今ちょっと急にですね、聞き慣れない単語がたくさん出てきて、しかもどんな漢字を書くのかちょっと想像しにくいと思うので、これらの用語は書ノートの方に書き出しておきます。
でも今ここで重要なのはですね、アルツハイマー病の人の脳の中にはアミロイドっていうのが溜まっているのと、それから別にタウっていうものが溜まっているのがあるんです。
で、このアルツハイマー病っていうのは冒頭でも言ったようにすごく研究されているんですけど、未だにですね、原因もはっきりわかってないんです。
そのさっき言っていたアミロイドが原因で脳が萎縮していくっていう考えもあるし、タウが原因であるっていう考えもあるんです。
でまぁ僕自身はちょっとこの分野が専門というわけではないんですけれども、最近の話をいろいろ聞いているとタウが原因であるっていう仮説の方がやや優勢という雰囲気があるんですね。
でもアミロイドが原因であるっていう仮説も全く捨てきれない状況ではあるんです。
でその理由なんですけれども、遺伝性のアルツハイマー病にはこのアミロイドの元の遺伝子が変異してアルツハイマー病になるっていうタイプのものがあるんですね。
だからそれを考えるとアミロイドっていうのも何かしらの形で原因になっていると考えざるを得ないんです。
でそもそもですね、アミロイド仮説っていうのが弱くなってきた理由は、アミロイドを除去するような薬が作られて、でそれがアルツハイマー病治療の臨床試験で使われてきているんですけれども、
ことごとくうまくいかなかったっていう歴史があるんです。
でも本当最近になってですね、こういったタイプの薬がそれなりに効果を示して承認されているんです。
だからやっぱりアミロイドも関係しているって考えることができるんです。
一般的にですね、病気の研究では体の中で病気を引き起こしているものを見つけるということが行われるわけですね。
だから遺伝による病気であれば、その病気の原因になる遺伝種を見つけるということが行われるわけです。
で次にその原因が存在するときに病気にならなくするものを探していくんです。
例えばいろんな薬を試してみて、それで病気にならないものが見つかればですね、
その薬っていうのは原因になる遺伝種の効果を止めているっていうことになるので治療に使えるわけなんです。
で今回紹介する論文ではですね、家族性のアルツハイマ病になる遺伝種を持っているのに認知症にならないっていう人が見つかったんですね。
つまりその人はアルツハイマ病を止める何かを別に持っているっていうことなんです。
でさらにこの研究の中でその正体を突き止めているんです。
この論文なんですけれども、コロンビアのアンティオキア大学のフランシスコ・ロペラによって行われた研究で
ネイチャーメディスに掲載されたものです。 でこのグループはですね、ずっとコロンビアのアルツハイマ病の家系を調査していたんです。
この家系はですね、パイサ変異という遺伝子の変異を持っていて、この変異を持っている人の場合は40歳代後半でアルツハイマ病が発症するんです。
でも調査を行っていた結果、この変異を持っているんだけど67歳の時点で認知機能に大きな問題がない人が見つかったんです。
アルツハイマー病による認知症を防ぐ遺伝子の研究
この人をですね、もっと詳しく調べていくと、この人にはまた別の遺伝子変異があって、この変異がアルツハイマ病から守っているようだということがわかったんです。
この研究ではですね、このアルツハイマ病の遺伝子は持っているんだけど、アルツハイマ病にはならない人の脳の中を調べているんですね。
つまりさっき出てきたアミロイドとかタウがどうなっているかを調べているんです。
今はですね、その生きている人の中でこれらの分子をイメージングによって見るということができるんですね。
それでこの手法で調べてみたところ、この人の脳の中っていうのは他の10度のアルツハイマ病患者と変わらない状態だったんです。
つまりアミロイドもタウもしっかり溜まっていたんです。でも少し違うところもあったんですね。
そのタウの方の溜まり方がちょっと違っていて、球内皮質っていう特定の場所で溜まっている量が少なかったんです。
この球内皮質っていうところなんですけれども、アルツハイマ病による変化っていうのが初期の段階で観察されることが知られている場所なんです。
この結果を考えてみると、やっぱりアルツハイマ病にはタウっていうのが重要で、特にこの球内皮質っていうところでタウが溜まることが重要なのかもしれないっていう、そういう考えができるわけです。
この人はですね、アルツハイマ病になる遺伝子を持っているんだけれども、でもそれから守ってくれるまた遺伝子の変異を持っているわけなんですね。
その変異もこの研究の中で突き止めています。
これがリーリンと呼ばれるタンパク質を作る遺伝子だったんです。
このリーリンなんですけれども、これまでのところアルツハイマ病との関係は知られていなかったんですね。
統合失調症とか自閉症っていうまた別の病気と関係があると言われているタンパク質だったんです。
この研究ではリーリンとアルツハイマ病の関係っていうのも調べていったんです。
その結果わかったことなんですけれども、今回見つかった変異を持ったリーリンはアポイーと呼ばれるタンパク質と同じ場所に結合するということが明らかになったんです。
これっていうのがアルツハイマ病を考える上で興味深いことなんですね。
もともとですね、このアポイーっていうのがアルツハイマ病との関係がよく知られているんです。
アポイーっていうのは人間の体の中にあるタンパク質なんですけれども、人によって持っているアポイーの型が違うんですね。
リーリンとアポイーという遺伝子の関係
特定の型のアポイーを持っているとアルツハイマ病になりやすいということがすでにわかっているんです。
さらにですね、今回の研究と同じコロンビアの家系で特定の変異がアポイーにあることによってアルツハイマ病になるのから守ってくれるっていう、そういう報告もすでにあったんです。
だからアポイーっていうのがアルツハイマ病とすごく関係があるっていうことがよくわかるんですけれども、
今回のリーリンっていうのもアポイーと同じところに作用するっていうことがわかったんですね。
だからアポイーとリーリンが同じ場所にくっつくんだけど、そのバランスによってアルツハイマ病になるかどうかが決まるっていう、そういうメカニズムがあるっていうことが今回の研究から推測されるわけなんです。
というわけで今回見つかったリーリンとかアポイーっていうのは家族性のアルツハイマ病から守ってくれるわけなんです。
この家族性のアルツハイマ病っていうのは強力で40代でもう発症するようなアルツハイマ病なんですよね。
だから高齢になってから起きる遺伝性ではない、個発性のアルツハイマ病っていうのはもう少し弱いものであるって考えることができて、だからこういったタイプのアルツハイマ病からはリーリンとかはもっとよく守ってくれるかもしれないんですよ。
だから今回の研究っていうのは新しいタイプの治療法を開発するヒントになるかもしれないっていう、そういうことが言えると思います。
その多くの病気の研究ではですね、病気にするものを探していくわけですよね。
今回の研究っていうのは病気にならない条件っていうのを見つけて、だからここで見つかってきたものっていうのは病気から守るような働きをするものなんです。
もちろんまだまだやらなければならないことっていうのはたくさんあるんだけれども、アルツハイマ病の治療について新しい道を開くようなことにつながるかもしれない、そんな研究だったんです。
じゃあ今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
19:18

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