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2024-04-11 18:07

e61 ストレス、免疫細胞、うつ状態;青くないブルーチーズ

ストレスによりうつ状態になりやすくなるのはよく知らていますが、その現象に免疫細胞が関わっているという研究を紹介します。

さらに、アオイさんと青くないブルーチーズの話をします。


https://www.nature.com/articles/s41586-023-07015-2?s=09

https://www.nature.com/articles/s41538-023-00244-9

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うつ、うつ病というのは、気分が落ち込んで、喜びややる気が感じられない状態で、本人には非常に苦しいわけです。
抗うつ薬とか心理療法のように、効果的な治療というのもあるんですけど、効果に個人差があって、3分の1の人は治療後も感慨しないと言われています。
だから、うつに苦しむ人っていうのは世界中に多くいて、しかも年々増加しているんです。
うつの最も大きなリスク因子の一つが心理的なストレスで、ストレスによってうつになるっていうのはよく知られているところだと思います。
つまり、ストレスが何らかの形で脳をうつ状態にするわけなんですけれども、これがどのようなメカニズムで起きるのかはっきりとはわかっていません。
うつっていうのはとても身近な病気なのに、こんな基本的なことがまだ不明なわけです。
でも、心理的なストレスっていうのは脳が認識するわけで、単純に考えるとそれが直接脳の中に何らかの変化を起こしているんだと想像されるわけです。
ストレスは免疫にも影響を与えるっていうことも知られています。
免疫系と脳には密接な関係があって、双方に連絡を取り合っているので、脳が認識する心理的なストレスが免疫に作用することもあるわけなんです。
例えば、慢性的なストレスによって自然免疫の働きが強くなるということが報告されています。
自然免疫っていうのは特定の病原体に対して抗体を作って防御するシステムではなくて、生物が生まれながらに持っている防御機能で、
白血球の一種の胆球や甲冑球が侵入してきた細菌を食べたりするのがその作用の一つなんです。
それから、うつ病の患者の一部では免疫の作用によって低レベルの炎症がずっと起きているということも知られています。
つまりストレスによってうつ状態になるし、それと同時にストレスによって免疫の変化も起きるわけです。
そしてうつ状態の人では免疫が過剰になっているわけです。
しかし、うつと免疫の変化はただ同時に起きるものなのか、それとも何か直接の関係があるのかははっきりしていませんでした。
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そして関係があるとして、どちらがどちらを引き起こすのかっていうのもわかっていなかったんです。
今日はこの一端を解き明かした研究を紹介します。
ポッドサイエンティストへようこそ、こなやです。
今日紹介するのは、アイ・カーン・イカ大学のフルリン・カ・トーマスらによる研究で、2024年2月にNatureに掲載されたものです。
この研究では、マウスを用いて研究しているんですけれども、心理的なストレスを引き起こすために、慢性社会的敗北ストレスという実験系を用いています。
この系では、テストされるマウスは攻撃的なマウスに対峙させられます。
具体的には、一緒の檻の中で怖いマウスと短時間一緒にいるというストレスを与えるのを10日間繰り返します。
そうすると、多くのマウスは他のマウスとの関わりを避けるようになるなど、鬱のような症状を示すようになります。
だからこの実験系は、心理的なストレスによって鬱状態になるというのをマウスで再現しているということになるわけです。
この研究では、まず心理的なストレスを与えたときの免疫細胞の変化を調べています。
血液から免疫細胞を取ってきて、どんな種類の細胞が増えたり減ったりしているかを、免疫細胞を細かいタイプに分けて調べました。
その結果、特定のタイプの単球と呼ばれる免疫細胞の数が増えているということがわかりました。
さらに、このタイプの単球が脳の血管に集まるということも明らかにしています。
なので、何か脳と関係がありそうだったので、このタイプの単球をもっと詳しく理解するために、この細胞の中でどのような遺伝子が働いているかを調べていきます。
その結果、これらの細胞では他で見られない特徴があって、特にMMP8というタンパク質を作る遺伝子が働いているということが明らかになります。
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つまり、ストレスを受けたマウスでは、血液中にいる単球でMMP8がたくさん作られているということなんですけれども、
さらに、このヒッシャラはMMP8が血液中に出ていって、血液から脳の中まで入っていくというところまで明らかにしています。
その生物学に詳しい人は、「うん?」と思ったかもしれません。
血液と脳の間には血液脳関門という構造があるので、通常はMMP8のようなタンパク質は血管から脳の中へは入っていけないんです。
しかし、この研究では、ストレスによって血液脳関門に異常が生じて、糖化性が上がって、MMP8が脳の中まで入っていくようになるという驚くようなことまで示しているんです。
さて、このMMP8というタンパク質ですが、マトリクスメタロプロテアーゼという細胞と細胞の隙間の空間にある分子を分解したりして、再構成を促す働きのあるタンパク質です。
人を含めた多細胞生物では、たくさんの細胞が集まってできているんですけれども、細胞と細胞の間にもタンパク質や糖分子など大きな分子がたくさんあって、それを細胞外マトリクスと呼ぶんですね。
この細胞外マトリクスというのは、細胞の構造を支えたり、細胞間のコミュニケーションや細胞の移動など様々なプロセスに役立っているんです。
今回の研究では、ストレスによってこの構造、細胞外マトリクスの再構成が行われて、その結果、神経の働きに変化が生じてマウスが打つ状態になるということも実験的に明らかにしています。
ここまでの研究をまとめると、まず、心理的ストレスによって特定のタイプの単球、免疫細胞が増えます。そして、この細胞からMMP8が血液中に出てきて、それが脳に入って働きます。
これが神経細胞に影響を与えて、その結果、打つ状態のような行動を示す、こんなストーリーが描かれたわけです。
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もし、これが本当であるのなら、血液中のMMP8の量を人工的に減らすことができれば、ストレスを受けたマウスが打つ状態になるのを止めることができるはずです。
この論文では、MMP8が作れないマウスに心理的ストレスを与えるという実験を行っていて、このようなマウスでは打つ状態にならないという結果を示しています。
これはつまり、MMP8を抑えれば打つ状態を予防できるということで、MMP8が打つ治療の標的にできるかもしれないということです。
MMP8はこれまでの薬とは違う新しい標的だから、既存の治療で効果のなかった人にも効く薬ができるかもしれないし、
血液中という脳内よりはアクセスしやすいターゲットなので、期待が持てます。
でも、ここまでの研究はすべてマウスで行われていて、人でも同じことが起きているかというのが問題になるわけです。
そこで、このグループは何点か人のサンプルでも検証を行っています。
まず、マウスでは心理的ストレスで単球という免疫細胞が増えるということだったわけですが、
人の血液を調べて、打つの人ではそうでない人に比べて単球が増えているということを示しています。
さらに、血液に溶けているMMP8の量も調べていて、これも打つ病の人では増加していました。
もちろん、実際にMMP8をターゲットにすることで打つ病が改善するかはまだわからないわけですけれども、
少なくとも人でもマウスで見られた免疫の変化が起きているというところまでは確認されていて、今後の研究が期待されます。
その心理的ストレスというのは脳が感じているわけで、それが直接脳を打つ状態にするのかと単純には想像するわけです。
でも今回の研究は、少なくとも部分的にはストレスが脳の外免疫に変化をもたらして、そこで作られた分子が脳の中に入り込んで打つ状態を作るということを示していて、やや意外なメカニズムが明らかになったわけです。
12:27
こんにちは、あおいさん。
こんにちは、こねえさん。
今日はチーズの話を持ってきました。
チーズは詳しいですか?
いや、あんまり。食べるのも苦手で、モッツァレラぐらいは食べますけど。
なるほど。チーズにはモッツァレラチーズのように乳酸菌による発酵をしただけのフレッシュチーズのほかにカビを繁殖させて熟成させるタイプのものがあります。
カマンベールのような白カビタイプのものは表面だけにカビを繁殖させますが、ゴルゴンゾーラやロックフォールのようなブルーチーズでは青緑色の色素を作るカビを使います。
この時に空気穴を開けて内部までカビを繁殖させるので、特徴的な大理石のような断面になるんです。
ブルーチーズは風味が強くて味も濃厚なので好みが分かれるのですが、好きな人にはたまらないものなんですよね。私もブルーチーズ大好きです。
あ、そうですか。僕はあの匂いがダメで。
それはちょっと残念ですね。この青色こそがブルーチーズの象徴なのですが、最近の研究でこの色素ができるメカニズムが明らかになったそうなんです。
ノッティンガム大学のポール・ダイヤーらの研究チームは、ブルーチーズに使用されるカビの一種であるペニシリウム・ロックフォルティの生育過程を徹底的に調査しました。
こういった菌では、色素の成分はメラニンであることが多く、特にDHNメラニンと呼ばれるものについては、別の菌ではその合成に関わる酵素も知られています。
生体分子の合成では、原料になる化学物質が複数の酵素によって少しずつ形を変えるという何段階かの反応を経て、最終産物が作られます。
DHNメラニンの場合は、6個の酵素が働いているのですが、このチームは、まずペニシリウム・ロックフォルティでも同じ6種の酵素が存在することを明らかにしました。
さらに、この反応経路の一部をブロックすると、青色の色素は作られないことを確認しました。
どの段階の酵素をブロックしたかによって、異なった色のカビができたということです。
研究者たちは、このような合成酵素の変異の入った菌でチーズも作っているのですが、本来の青の代わりに、白とか黄緑、ピンクや茶色まで様々な色のチーズを作ることに成功しました。
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へー、面白いですね。で、色の変異はチーズの風味には影響があったんですか?
色の変異がチーズの風味や有害物質の生成にどのような影響を与えるかも、機械で分析をしています。
その結果、匂いには多少の変化が見られたのですが、味の成分や有毒成分には、元のブルーチーズと大きな違いはなかったということです。
実際に試食が行われたのですが、試食に参加した人々は、明るい色のチーズはよりマイルドな味わいであると感じ、濃い色のチーズはより強烈な味わいであると感じたそうです。
でも、味の成分は変わらないんですよね。じゃあ、見た目で味の感じ方が変わったとか、そういうんですかね。でも、それも面白いですよね。
そうですね。この試食に関しては、論文内には記載がなくて、ヒッシャラがインタビューで話していた部分なので、まだ細かいことはよくわからない段階です。
あれ、でも、遺伝子を改変した菌で作ったチーズを人に食べさせてもいいんですか?
そうですね。それ、すごく重要な点です。
研究の最初の部分は、遺伝子組み替えで作ったカビで解析をしていたのですが、食品での応用を考えて、UVによって変異を導入した個体を単位し直しています。
そうやって入出したカビ株を使って、チーズを製造する実験が行われました。
現在の食品規制では、遺伝子組み替えが行われたカブの使用は制限されていますが、UV変異による新しいカビ株は許容されているということなんです。
自然界で起こるランダムな変異と、実質的にはこれが同じものですからね。
なので、今回得られたカビ株は食べてもいいし、ルール上は市場に出すこともできるみたいです。
ひょっとしたら、今後チーズ業界に新たな風を吹き込むかもしれません。
なるほど。これからの研究とか市場でどんな反応があるかというのも注目ですね。
そうですね。
いつも面白い話ありがとうございます。
今日のエピソードはここまでになります。最後までお聞きいただきありがとうございました。
ありがとうございました。
18:07

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