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自分の体の状態を意識でコントロールする手法でバイオフィードバックというものがあります。生理状態をモニターすることで自ら制御する方法を習得します。瞳孔によるバイオフィードバックで、覚醒レベルをコントロールしたという論文を紹介します。

さらに、美味しいお茶のカギを握る微生物の話をします。


https://www.nature.com/articles/s41562-023-01729-z


https://www.sciencenews.org/article/mixing-root-microbes-boost-tea-flavor

https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(24)00079-4

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今日は最初にお知らせがあります。
いろいろ決まっていないことが多いんですけれども、番組の改編、リニューアルを検討しています。
これに伴って、しばらくの間、番組の配信スケジュールなど、いろいろイレギュラーになる可能性があります。
すべてが決定次第ご報告しますので、しばらくお待ちいただければと思います。
今日の本編がこの後始まります。ぜひお聞きください。
バイオフィードバックと呼ばれる手法があるんですね。
人間の体は手足を動かす骨格筋みたいに自分で考えてコントロールできる部分と不随意な調節がされている部分があって、
心臓が鼓動するのとかを含めて多くの臓器がそうやって調節されているんです。
でもそういった臓器も神経で制御されていて脳につながっているんですね。
だから例えば深呼吸をしたり瞑想したりして精神の状態を落ち着かせれば心臓もゆっくりと働かせることができるわけで、
意識的にコントロールすることもできないわけではないんです。
それから心理的なストレスを管理するためにはリラックスできた方がいいんですね。
あるいは痛みの程度には血流とか筋肉の緊張が関係していて、痛みの管理にもリラックス状態がいいわけなんです。
そこで深呼吸したりして落ち着くことができればいいんですけど、なかなか実際に体を落ち着いた状況にできているかどうかがわからなくてうまくいかないことがあるわけなんです。
それで行われるのがバイオフィードバックなんですね。
そういうふうにリラックスする練習をするときに、心拍数であったり筋肉の緊張であったりっていう体の生理的な状態を機械で計測して、その測定データを利用者に見せるということが行われます。
これをすると、こういう精神状態の時には体がこうなっているんだっていうフィードバックが得られるので、狙っている体の状態にするにはこんな感覚になればいいっていうのを学ぶことができるっていう、そういう手法なんです。
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すでに実際にストレス管理、それから頭痛管理、痛みの管理なんかに使われているし、あとは不清脈とか頭痛の治療なんかにも使われているようなんです。
フィードバックに用いる生理状態としては、心拍数、筋肉の緊張の他にも皮膚の発感とか体温、それから脳波を使うというのがあるんですけれども、
今日は目の動向の大きさのフィードバックによって、覚醒状態を自らコントロールするっていう新しいバイオフィードバックを行った研究について話していきます。
ホットサイエンティストへようこそ、こなやです。
今日紹介するのは、スイス連邦工科大学のサラ・マイスナーラによる研究で、2023年10月にNature Human Behaviorに掲載されたものです。
脳の覚醒状態は、いくつかの神経伝達物質でコントロールされているんですけど、主要なものとしては、正反角と呼ばれる場所から放出されるノルアドレナリンがあります。
目の動向というのは、周りの明るさでも閉じたり開いたりするんですけれども、明るさが同じであれば、脳の覚醒レベルの高い時には動向が開いて大きくなって、覚醒レベルの低い時には小さく収縮します。
動向の大きさというのも、正反角のノルアドレナリンによって調節されているんですね。だから、動向の大きさの変化と覚醒レベルの変化というのは一緒に起きるわけなんです。
だから言ってみれば、動向の大きさを見れば間接的に覚醒レベルがわかるということなんです。動向の大きさは普通は自分の意志では変えることはできなくて、例えば眼科の検査なんかでは動向を大きくして目の中を見たりするんですけれども、そういう時には薬を使うわけなんです。
でも今回の研究では、まずバイオフィードバックを用いることによって、動向の大きさを自ら調節できるのかを調べています。これは人間の実験参加者を対象にして行っているんですけれども、まず最初にトレーニングを受けてもらっています。
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まずそこでは心理的な戦略について指示が与えられます。例えば動向を大きくしたい時には怖いものとか嬉しいものを考えるように伝えておいて、動向を小さくしたい時には落ち着くことを考えて呼吸に集中するように言います。
これを実際にやっていくんですけれども、その時に動向の大きさを測定する装置もつけて、実際にその時に自分の動向の大きさがどうなっているかのフィードバックを受けながら動向の大きさをコントロールする練習を行います。
さらに比較の対象として、同じように指示を受けているんだけど、動向の大きさについては正しいフィードバックを受けないグループも実験に参加しています。
これでもって、動向の大きさというフィードバックの影響を調べたということになります。
トレーニングの結果なんですけれども、フィードバックを受けなかった対象のグループでは、動向の大きさをほとんどコントロールすることができなかったんです。
でも、動向の大きさを教えてもらっていたグループでは、大きくすることも小さくすることもできるようになっていたんです。
だから、動向のバイオフィードバックによって、動向をコントロールするための心理的な戦略を身につけることができるということが示されたわけです。
さらに、こんなふうに動向の大きさをコントロールできるようになった人たちの脳の活動をファンクショナルMRIで測定しています。
先ほど話したように、脳の覚醒を調節している部分というのが正反角という場所だったんですけれども、この辺りの脳の活動が動向の変化に応じて変化していて、
動向を大きくすると活動が上昇して、小さくすると低下するという結果が得られました。
つまり、トレーニングの後では、覚醒に関わる脳の領域の活動も調節できるようになったということになります。
この論文では最後に、こういうふうに動向を調節した状態でタスクをしてもらうということをやっています。
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ここでやっているのがオッドボールタスクと呼ばれるものなんですね。
オッドボールというのは変わったものみたいな意味なんです。
具体的には、特定の波長の短い音が何回も流れるんですけれども、時々音の高さが違うものが流れるというふうになっていて、
そういう変わったもの、つまりオッドボールが流れたらすぐにボタンを押すというものです。
反応するのにどれだけ時間がかかるかを計測しています。
なぜこういうタスクを行ったかというと、このタスクの成績が覚醒状態、特に正反角の活動と関係があると既に示されているので行ったということになります。
その結果なんですけれども、意識によって動向を小さくした時の方が少しなんだけどオッドボールに早く反応できていたということでした。
だから覚醒レベルが低い方が素早く反応できたという結果だったんです。
これちょっと変だと感じるかもしれないです。
でもこれは正反角の活動に関する理論によると予想通りの結果だったということなんですね。
ちょっとややこしいんですけれども、この点に関して話していくと以下のようになります。
正反角の活動にはトニックと呼ばれる持続的な活動とフェイジックと呼ばれる短時間の突発的な活動があります。
覚醒レベルが高いというのはトニック持続的な活動が高い状態なんですね。
オッドボール刺激が来るとフェイジック突発的な活動が起きるんです。
持続的な活動が低い時の方が突発的な活動が大きくなるということなんですね。
それで覚醒レベルが低い時の方がオッドボールに反応しやすくなるということなんです。
これはバックグラウンドが高いと細かい刺激がかき消されるというようなイメージになります。
動向も同じで、実はオッドボールが来ると動向が短時間大きくなります。
これも持続的に動向を大きくしている覚醒レベルが高い時よりも動向を小さくしている時の方がこの短時間の反応が大きくなるということだったんです。
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というわけで今回の研究で動向を用いたバイオフィードバックでトレーニングすれば意識的に覚醒状態をコントロールできるということがわかったわけです。
だからこの方法は覚醒レベルに異常のある病気、ストレスとか不安障害の治療に使えるのではないかと考えられます。
ただ今回の研究ではすでにあるバイオフィードバックの方法と比べて優れているかどうかはわからないという段階になります。
さらにヒッシャラは研究のために覚醒状態をコントロールするのにも使えるのではないかと言及していました。
その覚醒レベルをコントロールする手法っていうのはあまりないんですけれども、今回のこの新しい方法は覚醒状態と人間の脳の機能や行動との関係を調べるのに使えそうだということでした。
こんにちは、あおいさん。
こんにちは、このやさん。
突然ですがこのやさんはお茶派ですか?コーヒー派ですか?
僕はコーヒー派ですね。そういえばメルボルンはカフェの街と言われてますよね。
はい、そうなんですよ。なので私も最近コーヒーのおいしさがわかってきたんですけれども、それでもやっぱり私はお茶が好きです。
ところでお茶の品質に微生物が影響しているって知ってましたか?
微生物ですか?お茶を発酵させるって言いますもんね。製造過程で微生物が働いているっていうことですか?
そうではなくて、お茶の発酵っていうのは一般的に使われる微生物による代謝という意味の発酵ではなく、自然に起きる酸化反応のことで微生物は関わっていないんです。
そうなんですね。じゃあ微生物が関わっているっていうのはどういうことなんですか?
最近の研究で、お茶の根っこに住む微生物がお茶の品質に与える影響というのが明らかになってきています。
シェンチェン先進技術研究院のジェン・ビャオ・ヤンなどの研究チームが、お茶の葉の根っこにある微生物コミュニティを改善することで、お茶の品質を向上させる方法を発見したんです。
そういうことですか。お茶の木が生きている間に微生物が作用して、それがお茶の味に影響があるっていう話なんですね。
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その通りです。お茶にはリラックス効果があるわけですが、それはテアニンというアミノ酸によるものだと考えられています。さらにテアニンはお茶に豊かな味を与える要因の一つなんです。
そのテアニンの量とかお茶の味の特性っていうのは、お茶の品種だけではなく、周囲の土壌環境にも影響されるそうです。
そして、お茶の根っこに住む微生物が栄養の吸収と代謝に影響を与えることが分かってきています。
今回の研究では、テアニン含有量の違う2つの品種について、根っこに住んでいる微生物を調べたんです。
その結果ですが、テアニンが多い品種の根っこには、テアニン合成に必要な窒素の代謝を行う菌が多く存在することが分かりました。
逆にテアニンの含有量が低いお茶の根っこには、そのような微生物が少ないということも明らかになったんです。
うんうん、ということはテアニン量の違いは、根にいる菌の素性によるかもしれないっていうことですね。
はい。でも菌が住んでいても、それだけではそれがテアニン量を変える原因かは分からないので、さらに実験をしています。
彼らは、テアニンが多いお茶の根っこにいた21種類の菌を混ぜ合わせた菌のミックスを作成しました。
彼らはこれを人工的細菌コミュニティという意味で、シンコムと呼んでいます。
で、このシンコムを色々なお茶の木に巻いてみたんです。
そうしたら、シンコムを与えたお茶では、テアニン含有量が増加していたんですね。
特に窒素が少ない条件で、この効果が大きかったそうですよ。
はいはいはい。ここまでの実験をやって、それで初めて根に住む菌の構成を変えることで、お茶の品質が変わるっていうことが確認されたわけですね。
そうです。さらに重要な点としては、一つのお茶の木から別のお茶の木に菌を移すみたいなことをしなくても、
シンコムという人工的に構成された菌の集団でも、それが改善できるということが示されたんです。
それで彼らは現在、シンコムを改良して製造と流通を容易にする作業に取り組んでいます。
今後もお茶の品質向上に向けて、さらなる革新が期待されています。
ああ、なるほど。農薬みたいに使えるかもしれないっていうことですか。
その通りです。しかもシンコムで、お茶ではない別の植物でもティッスが欠乏しているものへの効果があるようで、
微生物が養分の固定を助ける。なので通常の農薬の使用量が減らせるかもしれません。
じゃあもうお茶に限らないっていう、そういう実用性のある研究だったわけですね。
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今日も面白い研究の話どうもありがとうございます。
それでは今回のエピソードはここまでです。最後までお聞きいただきありがとうございました。
ありがとうございました。
18:39

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