産経新聞のポッドキャストでお送りするスポーツここが知りたい、担当する産経新聞運動部の田中光鶴です。
今回は株式会社明治で管理栄養士を務め、スピードスケートの五輪金メダリスト高木美穂選手や、
プロボクシングでバンタム級3団体統一王者に輝いた井上直弥選手らをサポートされている村野あずささんに、
トップアスリートの栄養管理についてお話を伺いたいと思います。本日はよろしくお願いします。
村野さんはプロボクシングの井上直弥選手の栄養サポートをされていると伺ったんですが、
今回埼玉での試合も見に行かれたということで、どのような感想だったんでしょうか。
試合もちろん見させていただいたんですけれども、試合の前日に前日計量というものがありまして、
その計量に立ち合わせてもらいました。そこから直前のサポートは始まるので、
実際に計量の前に、少し前に会場に足を運んで状態を確認して、
もちろん計量は一発でリミットでクリアパスするんですけれども、その直後から水分を取ったりとか糖質を取ったりすることで、
体がそのままに減量していますので、減量後で胃腸も少し弱っている可能性もあるし、
いきなりガーッとかなり脱水もしている状態なんですけれども、
そこで急激に水分だったりとか食事を入れてしまうことによって胃がびっくりしてしまって、
その後コンディションを整えるのが難しくなってしまう可能性もあるので、
そこら辺はもう長年、井上選手の場合はきちんと計算されて行っているんですけれども、
そういうのもきちんとできているかどうかというところも見ながら、
その後食事をするところも何を取っているのか、どれくらい取れているのか、
次の日体重はどれくらい戻っているのかというところにつなげていくために、
井上選手の様子をずっと追いかける状態でサポートに入っています。
試合を見る楽しみというよりもギリギリまで結構神経を使われた状態ですね。
本当に当日も9時から夜の21時からの試合でしたけれども、会場には2時ぐらいに入って、
井上選手が到着する前にはこちらとしてはスタンバイをして、
被害室の方にずっと試合のギリギリまでは居させてもらっていました。
そうですか、我々はもう軽量を終わるとある程度好きに食べたりとか、
体重もある程度戻すためにできるのかなと思っているんですけど、
その戻し方であるとか、取る食べ物によってやっぱり当日のパフォーマンスに影響が出てくるということなんでしょうか。
そうですね、本当にこの1日がとても重要で、ここで失敗してしまうと本当に当日のパフォーマンス、
体の動きだったりとかスピードにもそうですし、
まずはベストの状態でリングに上げることができなくなってしまうので、
体重もやっぱりきちんといい状態に戻せなくなってしまうので、
この軽量後の水分補給だったり栄養の取り方というのはとても重要ですね。
そうなんですか。今回の例えば井上選手の場合、どういったものを取りながらコンディションを、
軽量などを整えていかれた感じなんでしょうか。
まず最初に一時の軽量が行われるんですけれども、
その後すぐに軽量が終わったその瞬間に水分を入れるんですが、
これは蛍光水液といって水分の補給だったりとか、
ミネラル分ですね。塩分だったりとかミネラルがきちっと取れる状況、かなり脱走していますので、
水分だけじゃなくてそういった電解質が入ったものをきちんと取る。
それはこまめにこまめに、一気に飲むのではなくて少しずつ飲んでいくということをまず行います。
その後、ヒカシスに戻って、一旦そこでリカバリができるんですね。
糖質補給用のすぐに糖分が体の中に入っていて、
血液の中にもエネルギーが蓄えられるような糖質補給用のジェルを水で溶かしたものを飲んでいきます。
その後、いつもお父様がご自身で作られているサマゲタンというものがあるんですけれども、
鶏肉だったりとかキクラゲとか椎茸とかニンニクもたくさん入ってスポンスープで作られているんですけれども、
特製のサマゲタンを摂って一旦落ち着かせます。
それも一度にたくさん一気に食べるのではなくて、時間をかけながらゆっくりゆっくり食べていきます。
それは胃腸への負担というものですね。
あとはタンパク質も少し体の中に入れてあげるというところで、プロテインミートも少し体の中に入れて、
そこですぐに移動して食事会場に移動して、今度はお昼を食べるんですけれども、
一度ちゃんとした食事をするんですね。
その食事会場に行くのがだいたいその後1時間、行ける後終わってから1時間ぐらい経ってからなんですけれども、
そこからは食事をするんですが、食べるものは主に炭水化物を中心に、お粥だったりとか雑炊だったりとか、
炭水化物が中心になるんですね。
もう明日試合ですので、まずは一番体の中にエネルギーを蓄えていくというところ。
体を作る材料というよりは、本当に体の中の筋肉に栗光源を蓄えていくというところでおいて、
炭水化物中心の食事をしていきます。
揃っているものとしていれば、うどんもそうですし、パスタもそうですし、
さっき言ったご飯系ですね、おにぎりだったりとか、雑炊、お粥、そういったものをお店の方にバーッと用意してもらって、
それを自分が食べたいものを順序食べていくというような感じで、結構時間をかけて食べますね。
2時間くらい、今回はかけて食べています。
2時間くらい、へー、なるほど。
試合まではそうすると、そこでコンディション的には村野さんなんかから見ると、割と万全の状態に持っていけた感じだったですか?
そうですね、そこで食べている様子を見ているんですけれども、
食べる量だったりとか、食べるスピードだったりとか、やっぱりかなり減量もしているので、
体が小さくなっている状態から顔色もすごく良くなっていくのがわかりますし、
まったく固形物を食べない日が何日も続いているわけではないんですけれども、
直前、大体1週間くらい前になってくるとかなりの食事量を減らして、
最後1日2日はやっぱり固形物は食べられないので、
あとは水分もかなり脱水している状態ですので、
そこで胃腸に負担がかからないような状態で、
食事ができているかどうかというところはすごく大事なところかなと思って、
様子を見ています。
でも、大体無理な減量をしていて、極端な減量をしたりとか、
とにかく食べない直前まで脱水をものすごくして、
その後食事ができないような状態になってしまっている選手は、
その後食事をしてもなかなか胃腸が受け付けないので、食べられないんですよね。
井上選手と一緒に食事をしていて、
気持ち悪くなってトイレに駆け込む選手もこれまでも見てきたんですけれども、
井上選手の場合はそういうことは今までも一回もなくて。
じゃあ、その前の逆算からしていく、体重を落としていく過程から、
プロセスからきちんとコントロールできるということですか?
そうですね。やっぱりペースをきちんと自分の中で作っていますので、
もう長年の経験から、この時期にはこれくらいということが分かっていますし、
自分の試合前のコンディションを確認する上でも、
軽量後の食事というのは一つのバロメーターになっているというか、
ここでしっかり食べられるかどうかで、
状況に合わせて自分で考えたことを私の方に確認を求めていくとか、
必要に応じて情報を提供しながら、それを高口選手が考えて応用していくとか、
というやり取りをこの4年間はしていったかなと思います。
高口選手が取り組む主体性としては、かなり変化があったという感じですかね。
やっぱり本人が、選手が主体でないと、
やっぱりこういったサポートは生きてはこないのかなと思うので、
一方的な、ただ提案だったりアドバイスをその通りに聞くということではなくて、
自分でまずは考えてみて、それができているかどうかを確認していくとか、
悩んだ時に相談をするとか、そうやって積み重ねていくことによって、
いろんなケースに対応できる知識だったりとか、
経験が自信になったりということにつながっていくと思うんですね。
高口選手の場合は、特にこの2年間はコロナ禍で、
本当に練習環境が大変な時もありましたし、
海外遠征に本来だったらずっと秋から冬にかけては行くんですけれども、
それもできなくなってしまったりとか、
今までとように、ちょっと違った環境の中で練習も試合も向かっていかなきゃいけないという時に
どうしていくかというのを、その時にベストなことがどんなのかというのを
一緒に考えて対応していったというのが、特にこの2年間はそういうような形でした。
サポートする立場としては、理想的な関係で最後、北京オリンピックまで突き進めたようなイメージだと思うんですけど、
実際に今回の高口金メダルも獲得された、この活躍というのは皆さんどのように見られたんですか?
嬉しかったというか、どんな感じでしたか?
やっぱり目指していたオリンピックでの金メダルを最後、本当に最後の最後で獲得できたことが
本当に心からも嬉しく思いますし、
まずは4年に一度のオリンピックという大舞台にピークを合わせられること自体が難しいと思うんですけれども、
この2週間で5種目、トラレースという過酷な挑戦を
本当に体力が限界に近い状態で全力を出し切ることができた。
そこは本当に素晴らしいなというふうに思いました。
結果はもちろんなんですけれども、やりたいと思っていたことがやり切れたというところに、
私もそれを向けて一緒にサポートさせてもらってきたところがあるので、
まずはそれが達成できたことをすごく嬉しく思いましたし、
あとはこのサポートというのは、先ほどもお話しした通り選手が主体であって、
選手のしたいこと、目指すところに向けて一緒に考えていくという形なんですが、
それが理想だと思ってサポートさせてもらっているんですけれども、
そういうのはできるだけないように練習だったりとか、
コンディション作り方というのはすごく大事かなというところは、
自分の経験の中でももちろんあるんですけれども、
私、そんなにすごい選手だったわけでもないので、
自分の経験が彼らみたいな世界のトップアスリートに対して生きているかどうかというのは、
ちょっとおこがましくてお話ししにくいんですけれども、
やっぱり相当の覚悟を持って試合だったりとか、目標としている大会に向けて準備をするという準備の大切さみたいなものが、
やはりすごく大事だということが感覚として持っているというか、分かるところもあるので、
そういったところは、ただ試合の前にこうしましょうとか、
ということを言えばいいわけではなくて、
やっぱり選手ってある程度計画通りに大会に向けて、
どういうふうにコンディションを作っていきたいかとか、
どういうふうに練習をしていこうかという、ある程度の計画というものを持っているんですね。
それはもちろん短期間でも長期間でも長いスパンでというところもいろいろあると思うんですけれども、
自分の思い通りにやっぱり行った時っていうのはすごく自信を持って、
その大会に何の不安もなくスタートラインとか、試合の始まる時を迎えられることができると思うんですけれども、
途中で怪我をしてしまったりとか、体調を崩してしまったりすると、
どうしてもその計画通りに行かなくなってしまって、調整が難しくなったりすることがやっぱりありますので、
そういう意味では、私は苦い経験をたくさんしているので、
やっぱりそういうふうに怪我をしてしまった時の選手の気持ちだったりとか、
その辺はわかると言いますから、経験している分、一番何が辛いかというと、
怪我をして走れない時とか、怪我をして練習がもうようにできない時という時の苦しい部分というのを
感じるところはあるので、そうならないためにも日頃からの栄養の取り方がすごく
関わっているというところは伝えていきたいなと思いますし、
コンディションの取り方、疲れの取り方とかも、ただ休めばいいというわけではなくて、
食事とか睡眠とかすごく関わっているという重要性みたいなものを伝えていくことによって、
少しでもその選手たちが自分の思い通り、思い描いた通りに調整していくことにつながればいいなという、
そういった思いは持っていません。
高木選手と井上選手でも競技も全然違うと思うんですけれども、