ジャズと多動的思考の関係
えっと、頭の中がなんかこう、ザワザワして、思考があっちこっちに飛んじゃうような感覚ってありますよね?
ああ、わかります。ありますね。
これって、なんか、ジャズミュージシャンが即興でソロをワーッと叩く時のあの感じ。予測できないんだけど、すごいエネルギーがある、みたいな。
ああ、面白い見方ですね。ジャズの即興ですか?
ええ。自由と構造がこう、一緒になってる感じしません?
確かに。で、その一見カオスに見えるかもしれない多動的な思考が、実はそのジャズの即興みたいに複雑な状況を乗り越えたり、あるいは、斬新なアイデアを生み出す力になるかもしれない。
ほう、力になる。
そういう可能性を今日はちょっと深く掘り下げてみたいなと。手元にある資料、ジャズの認知プロセスとかADHD特性と創造性の研究、デザイン思考、あと身体値、この辺りからヒントを探っていきましょうか。
お願いします。まず、そのジャズの即興ですけど、あれってこう、ただ単に思いつきで弾いてるわけじゃないんですよね。資料を見るとかなり高度なスキルだって書いてありますけど。
ああ、もう全然違いますね。あれはなんというか、精神的なアクロバットみたいなものですよ。
アクロバットですか?
そうです。高度進行っていう、まあ、ある種の制約の中で、瞬時に判断して変化に対応して、で、新しいフレーズをどんどん生み出していく。
うーん。
柔軟性とかパターン認識、そしてそこからちょっとずらしてみる、逸脱、あとはリアルタイムでの評価とか、もういろんな認知スキルがフル稼働している状態なんです。
なるほど。その制約の中で、あるいはそれにこう、あがうことで創造性が生まれるっていうのはすごく興味深いですね。
ええ、そうなんです。
資料には、間違った音ですら熟練したミュージシャンは次へのジャンプ台にする、みたいに書いてありました。
まさに、そこが面白いところで、普通なら失敗ってなるところを逆に利用して新しい展開にしちゃう。
予期せぬ回り道が、実は新しい扉を開く、みたいな。
へえ。失敗を生かす力とも言えますか。
そうですね。で、これって、もしかしたら多動的思考って言われるものにもどこか通じる部分があるかもしれないなと。
ああ、その多動的思考。よく注意三万とか、衝動性とか、そっちのイメージが強いですけど。
ええ、まあそういう側面と関連付けられることが多いですよね。
でも、最近の研究だと、発散的思考、つまりアイデアをたくさん出すとか、ユニークなものを思いつくとか、そういう創造性との関連も結構指摘されてるんですよ。
創造性ですか。注意三万なのに。
うん、そこがポイントで、認知的抑制、まあ分かりやすく言うとフィルターみたいなものがちょっと緩めというか。
フィルターが緩い。
そう、だから普通なら気にしないような情報とか刺激も結構入ってきやすい。
で、その結果一見全然関係ないようなアイデア同士がふっと結びついちゃったりする。
なるほど。
これが多様でユニークなアイデアをたくさん生み出す力、つまり発散的思考につながる可能性があるんですね。
連想がこう豊かになるというか。
でも一方ですごく集中する過集中、ハイパーフォーカスっていうのもありますよね。注意三万と過集中の組み合わせってなんか不思議です。
ええ、そこもまた面白い点で、ジャズの演奏も実は一点集中だけじゃなくて、周りの音とか流れにも広く意識を向けている必要がありますよね。
ああ、確かに。バンド全体の音とか。
そうそう、自分の演奏に集中しつつも他のメンバーの音、リズム、時には観客の反応なんかも感じ取ってる。
この集中と拡散が同時にある感じが多動的思考に見られる注意のあり方とちょっと似てるかもしれない。
へえ、面白い対比ですね。
創造性とデザイン思考
だから、創造性における集中って必ずしも一点だけを狭く見ることじゃないっていう可能性を示唆していると思うんです。
なるほどな。で、そういう発散的な思考が特に生きてくるのがデザイン思考のプロセスだと。
そうなんです。特にダブルダイヤモンドって呼ばれるモデルがありますけど。
あ、聞いたことあります。発散して、収束して、また発散してって繰り返すやつですよね。
ええ、そうです。その最初の発散の段階、ここではとにかくアイディアの質より量を重視して制限なくワーッと広げることが求められるんです。
うーん。
ここで多動的思考に見られるような柔軟性とか独創性、あとたくさんのアイディアを出す力っていうのはもうまさに強みになる可能性がある。
なるほど。じゃあそういう人にとっては最高の舞台かもしれないですね。
そう言えるかもしれませんね。ただそのためにはやっぱり環境も大事で。
環境というと?
あの、ジャズのジャムセッションみたいな雰囲気ですね。心理的安全性って言うんですけど。
心理的安全性。
ええ。つまりこんなこと言ったら変に思われるかなとか、そういう批判を恐れずに自由にアイディアを出せる雰囲気。これがないとせっかくの発散力もなかなか引き出せないんですよ。
確かに。安心して脱線できる場みたいなのが大事なんですね。
その通りです。特に過去に何か失敗したりして自由に発想することにちょっとためらいがあるような場合には、こういう安心できる環境が思わぬアイディアの源泉になることもありますから。
うーん、なるほど。それで最後に、こういう想像性のリズムみたいなものを身体で学ぶっていう視点も資料にありましたね。
アイデアの発散と集中
ジャズも理論だけじゃなくて、やっぱり吐きながら聞きながら体で覚えていく部分って大きいですよね。
ええ、大きいです。それは暗黙値とか身体値って言われるものですね。言葉で説明できる知識、ノーイングでさ、じゃなくて実際にやってみる中で掴んでいく感覚、ノーイングハウ。
ノーイングハウ。
ええ。発散と収束を追ったり来たりするパターンも、ジャズの練習とかあるいはデザイン志向のワークショップとかを繰り返していく中で、だんだん体感的にリズムとして掴めるようになる可能性があると思うんです。
頭で次は発散だとか考えるんじゃなくて、自然に体が動くみたいな?
まあ、そこまで行くかは分かりませんけど、でもカガラで覚えた感覚っていうのは結構頼りになるガイドになると思うんですよ。発散的にワーッと探求した後、じゃあどうやって具体的な形にまとめていくかっていう収束への移行をよりスムーズにしてくれるかもしれない。
なるほど、経験を通して身体化された知恵が直感的なガイドになってくれると。
そういうことです。
いやー今回いろいろな資料を横断的に見てきましたけど、多動的思考の落ち着きのないエネルギーみたいなものが、ジャズの即興とかデザイン志向の発散フェーズで見られるある種の高度な創造的プロセスとすごく深く響いてあってるんだなっていうのが見えてきました。
ええ、そうですね。ですからもしあなたがですね、ご自身の思考なんかまとまりがないなとか、散らかりがちだなって感じていたとしても、それは見方を変えれば単なる弱点じゃないかもしれない。
むしろ適切な構造とか環境、例えばジャズで言う高度進行みたいな枠組みとか、デザイン志向の発散フェーズみたいな場さえあれば、ものすごく強力な創造性のエンジンになるかもしれないんです。
多動迷子じゃなくて創造的ナビゲーターに変わるみたいな?
そう、そういう捉え直しもできるんじゃないかなと。
面白いですね。では最後にちょっとあなた自身に問いかけてみて欲しいんですが、あなたの思考の中に存在しているかもしれないそのジャズのリズム、つまりアイデアがぶわっと自由に広がる発散の波と何かにグーッと深くもっとする集中の波、この2つの波をちょっと意識してみると何か問題解決とかクリエイティブな作業への取り組み方がどう変わる可能性がありましょうか?
そうですね。一見本筋から脱線したように思える思考のジャンプが、実はジャズミュージシャンが即興でパッと響きを拾って予想外の美しいフレーズを生み出すみたいに、あなたをまだ誰も知らないような解決策とか新しいアイデアへと導いてくれるかもしれません。少しその可能性について思いを巡らせてみていただけたらと思いますね。