ガチャシステムの光と影、推しは推せるときに推せ、ファン同士の間で特に価値が高いとされているのが、自引きです。
企業側の戦略としては、結果的により多くのお金を使わせる効果もある。
こんにちは、株式会社KAZAORIの矢澤彩乃です。
推し活未来研究所へようこそ!
この番組では、ますます盛り上がりを見せる推し活を、ビジネスの視点から、
そして時には私自身の経験も交えながら、楽しくそして深く紐解いていきます。
私は普段、推し活をテーマにしたビジネス、
例えばファンの皆さんがイベントを一緒に盛り上げられるプクートというサービスなどを提供しています。
それと同時に、ベーシストとしてアーティストさんのバックバンドでベースを弾かせてもらっているので、
押される側の気持ちも色々と感じることがあります。
そんな押す側と押される側、両方の視点を持つ私だからこそ見えてくる、
推し活の面白さや可能性を皆さんと共有したいなと思い、推し活未来研究所を始めました。
さて、前回第8回では、地域を元気にする政治巡礼と推し活パワーと題して、
アニメやドラマの舞台となった場所をファンが訪れる政治巡礼が、
実際にどんな地域活性化につながっているのか、その成功事例や課題を探っていきました。
そして第9回となる今日のテーマは、
その前に皆さんに質問です。
何が出るかわからないあのドキドキ感、そして推しを引き当てた時の言葉にできないほどの喜び、
そんな経験はありませんか?
そう、今日のテーマは、推し活におけるガチャシステムの光と影です。
推し活の楽しみの中でも、特に心躍る瞬間の一つにグッズを手に入れる瞬間があります。
中でも、ガチャというシステムは何が出るかわからないドキドキ感、コンプリートを目指す達成感、
そして時には推しを引き当てたという喜びをもたらし、多くのファンを惹きつけています。
私たちの生活にもすっかり溶け込んでいるこのガチャですが、
その裏にはどんなメカニズムが働き、私たちの心や経済にどんな影響を与えているのでしょうか。
今回は、このガチャのシステムについて考え、またその歴史から最新のトレンド、
ファンを熱狂させる心理的な仕組み、
そして私たちが向き合うべき課題や未来の可能性についてじっくりと探究していきたいと思います。
皆さんのガチャにまつわる思い出やエピソードも重ね合わせながら、ぜひ最後までお付き合いください。
では、具体的に推し勝つという活動の中で、ガチャはどのような役割を担っているのでしょうか。
まず、ガチャシステムとは何か、簡単におさらいしておきましょう。
これは、お金を払うと決められた種類の中からランダムに、
つまり何が出るかわからない形でアイテムが手に入る仕組みのことです。
皆さんご存知の通り、もともとはガチャガチャやガチャポン、ガシャポンといった相性で親しまれている
カプセルに入ったおもちゃが出てくる自動販売機がその始まりでした。
子供の頃に誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
私も小さい頃、母と買い物に行くたびにガチャガチャやりたいといつも転まっていましたね。
しかも、ちょうどスーパーとかの入り口にあって、絶対子供の目に入るところに置いてあるんですよね。
あれずるいですよね。
それで、そのガチャが後に、特にスマートフォンのゲームなどを中心にインターネットを通じた形でも広く使われるようになり、
今では推し活のグッズ販売においても代表的な方法の一つとしてすっかり定着していますよね。
推し活におけるグッズ集めはファンにとって大きな楽しみの一つですが、
その中でもガチャというシステムは単にアイテムを手に入れる以上の多面的な役割を担っていると言えるでしょう。
その一番の重要な役割は、やはり何が出るかわからないというドキドキ感。
そして推しに関連する珍しいものや限定品、あるいはずっと欲しかったものが手に入るかもしれないという期待感ではないでしょうか。
結果を見るまでの数秒間、あるいはカプセルを開ける瞬間の胸の高まりは、私たちに手軽で、でも強烈な興奮をもたらしてくれます。
この、もしかしたらという不確実性が日々の生活に彩りを与えるスパイスになっているんですね。
二つ目の役割は、収集という人間の本能的な欲求を満たし、達成感を与えてくれる点です。
シリーズもののアイテムを少しずつ集めていく過程や、目標だったアイテムが手に入った時の喜びは格別です。
特に推しのアイテムをコンプリートした時の満足感は、まさに推し活の醍醐味の一つと言えるのではないでしょうか。
そして三つ目の重要な役割は、推しへの愛情を表現し、つながりを深める手段となる点です。
ガチャで手に入る景品は、ファンにとってはただの物ではありません。
推しの存在を具体的に感じられる大切な証拠であり、特別な意味を持つ宝物なのです。
例えば、自分が引き当てた推しのキーホルダーをカバンにつけていたら、同じファンの方に声をかけられて、そこから素敵な交流が生まれた、なんて話もSNSで流れてきますよね。
そういった偶然の出会いも含めて、ガチャは推しと、そしてファン同士のつながりを豊かにしてくれるんです。
だからこそ、賭けにも似たドキドキ感がより強く感じられ、自分の推しのアイテムを引き当てることができれば、その喜びも等しよ、というわけですね。
さらに、ガチャの結果はSNSなどを通じてファン同士で共有されやすく、コミュニティ内でのコミュニケーションを活性化させる役割も担っています。
限りきした、今回は残念だった、といった報告は共感を呼び、ファン同士の連帯感を強めます。
時には、グッズの交換といった具体的な交流につながることもあります。
このように、ガチャは推し活において単なる消費活動ではなく、エンターテイメントであり、自己表現であり、そしてコミュニケーションツールとしての役割を果たしています。
だからこそ、私たちはガチャに心惹かれ、時には熱中してしまうのでしょう。
さて、ここまでガチャが推し活でどんな役割を果たしているかを見てきましたが、次にこの偶然によって何かを手に入れる、という仕組みの歴史を少し紐解いていきましょう。
私たちが今、当たり前のように楽しんでいるガチャですが、実はものすごく長い歴史を持っているんです。
その始まりは、なんと古代文明にまで遡るそうですよ。
例えば、昔のローマでは、皇帝がパーティーでプレゼントを配るためにくちびきのようなものを使ったり、公共事業のお金を集めるためにも利用されたりしていました。
サイコロを使ったゲームも、昔のギリシャやローマではみんな楽しんでいたと言われています。
あと皆さん、万里の頂上ってご存知ですよね。
中国の漢の時代に建てられたものすごく長い壁です。
実はこの建設費をどうやって集めたのかというと、なんとくちびきみたいなゲームが使われたという説があるんです。
これ、現代でいうキノっていうゲームの元になったものだそうで、簡単に言うと好きな数字を選んで当たったら賞金がもらえる、いわばロトとかビンゴとかに近い感じの遊びです。
当時の中国の人たちは、このくじを通してちょっとドキドキ楽しみながら、実は万里の頂上の建設費を支えていた、かもしれないっていうお話なんですね。
民衆の信頼をよく考えているなと思います。
日本に目を向けても偶然の要素を取り入れた遊びや仕組みは古くからありました。
江戸時代には富くじという宝くじがとても人気で、お寺や神社が建物を直すためのお金を集めるためによく行われていました。
そしてお正月の楽しみの一つ、福袋も元々は江戸時代の越後屋、今の三越ですね。
そこが恵比寿袋として始めたもので、中に何が入っているかわからないワクワク感が人気を集めたと言われています。
神社やお寺で引くおみくじも、自分の運勢を占う偶然に結果が左右される昔からの習慣ですね。
こうして歴史を振り返ると、お金を払って偶然によって何か価値のあるものを手に入れるという行為が、私たちの文化の中に深く根付いていることがわかります。
これらの古来の例は、偶然性に魅了されてきた人類の歴史を示していますが、現代のガチャに直接つながる原型は、もう少し後の時代に登場します。
時代が進んで、1965年にアメリカからカプセルに入ったおもちゃが出てくる自動販売機が日本に輸入されたのが、今のガチャの直接の始まりと言われています。
初めは子供向けのおもちゃが中心でしたが、だんだんと手の込んだフィギュアやキャラクターグッズなんかも登場して、大人も含めてたくさんの人に楽しまれるようになりました。
1977年には、バンダイさんがガシャポンとしてこの市場に本格的に参加し、ガシャポンという名前も広く知られるようになったんです。
この実際に手で触れるカプセル問いの成功が、インターネット時代のガチャの仕組み、つまりスマホゲームなどで見られるガチャの発展の基礎になったんですね。
特にスマホのゲームが広まるのと一緒に、仮想のアイテムやキャラクターがランダムに出てくるガチャは、ゲーム会社にとって主な収入を得る手段として定着しました。
これによって、より複雑な確率の設定や期間限定のアイテム、ゲームの進み具合と連動したシステムなどができるようになり、そのもしかしたら当たるかもという期待感はさらに高まっていったと言えるでしょう。
では、なぜ私たちはこれほどまでにガチャに惹かれ、時には夢中になってしまうのでしょうか。
先ほどガチャの役割についてお話しましたが、私たちの心をくすぐるいくつかの心理的な仕組みについて深掘りしてみようと思います。
まず一つ目は、何が出るかわからないというお楽しみ要素。
この結果が予測できないワクワク感が、私たちの脳の中で嬉しい気持ちややるぞという気持ちに関係するドーパミンという物質を出すと言われています。
心理学ではこれを変動比率強化スケジュールと呼んでいて、つまりいつ報酬がもらえるかわからない方が、かえってその行動が強化されて長続きしやすくなるんです。
これは例えばスロットマシンみたいに、ギャンブルが持つつい何度もやってしまう性質にも通じる原理なんですね。
ガチャを回してから結果が出るまでのあの独特の期待感や高揚感は、まさにこのドーパミンがたくさん出ている状態と言えるでしょう。
また、人間はもともと物を集めたいという気持ちがあると言われています。
ガチャシステムはいろいろな種類のアイテムをシリーズにしたり、手に入りにくさを分けたりすることで、この集めたいという気持ちをうまく刺激します。
全部の種類を集めたいというコンプリートしたい気持ちは、とても強い動機になりますよね。
期間限定だったり、なかなか出ないように設定されていたりする珍しさはアイテムの魅力をさらに高めます。
そしてファン同士の間で特に価値が高いとされているのが自引きです。
これは自分の力、つまり運でお目当ての推しのアイテムを引き当てることを指します。
他の人と交換したり、お店で買ったりするのではなく、自分で引き当てたという達成感や幸運はファンにとって格別な喜びとなり、そのアイテムへの愛着を一層深いものにするんです。
この自分で引いたという特別な経験が、さらにガチャに挑戦したくなる気持ちを強くすることもあります。
さて、ガチャにはまる真理を掘り下げてきましたが、一言で推し勝つガチャと言っても、その形は本当に様々です。
手で触れるものからインターネット上のものまで、私たちの周りにはいろいろな種類のガチャがあります。
ここで少しその具体的な世界と市場の動きを見ていきましょう。
まず、昔ながらのリアルなガチャ。
カプセルに入ったオモチャは、今では子供向けだけでなく、大人も欲しくなるようなフィギュアやミニチュアも人気で、ガチャ専門店も本当に増えていますよね。
トレーディングカードもずっと人気があって、自分の推しのカードや珍しいカードを求めてパックを買うファンはたくさんいます。
そして、アニメグッズのお店やイベント会場でよく見かけるのが、袋や箱が閉じていて中身が見えない状態で売られているアクスタや缶バッジ、キーホルダー、写真といったランダムグッズです。
これらは開けるまで何が出るかわからないという、まさにガチャガチャのドキドキ感が味わえますね。
これらのアイテムは、比較的単価が抑えられているものが多く、気軽に複数回挑戦しやすいこと、
そしてコレクション性が高いことから、ガチャという販売形態と非常に相性がいいですね。
だいたい500円前後とかが一般的かもしれません。
こういう実際に手で触れるアイテムは、インターネット上のものとは違う、持っている嬉しさや推しを身近に感じられるという満足感を与えてくれます。
一方、インターネットが広まるのと一緒に急速に増えてきたのが、インターネット上のガチャです。
オンラインくじ、オンラインガチャとも呼ばれますが、これはウェブサイト上でくじを引いて、デジタルな絵やデータ、あるいは実際に送られてくる景品が当たります。
スマートフォンのゲームやファン向けのアプリでは、キャラクターやゲームで使う道具、特別なイラストなどを手に入れるために、アプリの中でお金を使うタイプのガチャが広く使われています。
最近では、ここでしか見られないイラストや、推しからの声のメッセージ、短いビデオメッセージといったデータ形式のコレクションアイテムがガチャの景品になることも増えています。
さらに面白いのは、推しとオンラインで話せる権利や、直接会えるイベントの抽選権、特別なファンイベントへの参加権などがガチャの対象になるケースです。
そして、推し勝つの関連市場はとても大きく、その中でもガチャシステムは重要なお金の流れを生み出しています。
日本のカプセル問い市場だけでも、2023年度にはメーカーから出荷された金額で1,150億円にもなると言われ、2024年度には約1,416億円に成長するとも報告されています。
トレーディングカード市場も同じようにとても大きくて、2022年度には2,348億円もの規模になっています。
これらの数字からも、ガチャの仕組みがファン関連の経済を動かす強力な力の一つであることがわかります。
そして、コンテンツを提供する企業側にとって、ガチャはファンとのつながりを深め、収益を上げるための有効な方法です。
企業側の戦略としては、期間限定のガチャを実施して、今しかないという気持ちにさせたり、アイテムの珍しさに段階をつけて集めたくなる気持ちを刺激したりすることが一般的です。
また、天井やPTシステムと呼ばれる一定回数ガチャを引くと、必ず珍しいアイテムが手に入る仕組みもよく見られます。
これは一見、私たちファンに優しいように見えますが、実際にはあと少しで天井だからそこまでは引こうという気持ちにさせて、結果的により多くのお金を使わせる効果もある企業側の巧みな戦略とも言えるでしょう。
ここまで見てきたように、推し勝つガチャはファンにとって大きな楽しみであり、企業にとっては魅力的なビジネスモデルです。
しかし、その熱狂の裏には無視できない問題点も隠れています。
一番大きな心配の一つが、ファンがお金を使いすぎてしまい、生活が苦しくなったり借金をしてしまったりする可能性です。
推しを応援したいという純粋な気持ちや、全部集めたいという強い欲求、仲間内でのプレッシャーなどが冷静な判断を難しくさせ、自分のお財布事情に合わないお金の使い方をしてしまうことがあります。
実際に推し勝つをしている人たちの間で、グッズを買うお金やゲームに使うお金が大きな負担になっているという調査結果も報告されています。
グッズの転売なども近年は大きな問題になっていますね。
推しは推せる時に推せ、という言葉があります。
この言葉自体は、ファンの方々の熱い思いを表す素敵な言葉だと思いますが、
一歩間違えると無理な範囲を超えたお金の使い方を正当化してしまう呪文にもなりうかねません。
冷静な判断を失わせる危険性もはらんでいることを心に留めておく必要があるかもしれません。
ガチャの心理的な仕組みは、ギャンブルと似ているところがあり、つい何度も繰り返してしまったり、やめられなくなったりする可能性があります。
珍しいアイテムや全部揃えることを求めるあまり、普段の生活に影響が出たり、精神的にストレスを感じたり、不安になったりするケースも少なくありません。
推し活自体は心の支えになる一方で、ガチャにのめり込みすぎてしまうと元も子もなくなってしまいますよね。
ガチャに関する問題が注目されるようになり、国や業界団体も何らかの対策を始めています。
日本では、景品表示法という法律が、確率や景品について誤解を招くような宣伝などを規制する役割を担っています。
また、ゲーム業界の団体であるセサ、コンピューターエンターテインメント業界などが、ガチャの確率表示に関するルール作りなどを進めています。
私が一時期ハマっていたポケモンカードのアプリ版のポケポケでも、しっかり確率表示がされていました。
その確率を見て、レアカード引いたなんて嬉しくなったりもしました。
しかし、これらの決まりごとが、実際に手にするグッズやインターネット上のくじなど、いろいろな形がある推し勝つガチャのすべてを十分にカバーできているかというと、まだ課題も多いのが現状です。
特に、どれくらいの確率で当たるのかという情報の分かりやすさや、目当てのアイテムを手に入れるまでに、あるいはコンプリートするまでに、一体どれくらいの費用がかかるのかという総額の不透明さについては、依然として大切な話し合いのポイントであり続けています。
ファンからは、この辺りの透明性をもっと高めてほしいという声も多く聞かれています。
インターネット上のガチャで手に入るイラストや声のメッセージ、ゲームの中で使うアイテムといったデジタルな景品の価値は、とても個人的なもので、ファンと推しとの特別な気持ちや、そのサービスの中でしか通用しないものです。
そして、一番大きな問題の一つが、それらが永遠には残らないかもしれないということです。
サービス自体が終わってしまえば、苦労して集めたデジタルな景品も使えなくなり、まるで泡のように消えてしまう可能性があります。
これは、手元にずっと残り続けるリアルなグッズとは大きく違う点で、ファンにとっては大きな悲しみや、ただのデータにお金を使ってしまったという後悔につながるかもしれません。
さて、ガチャシステムの光と影、両面を見てきました。
それでは最後に、これから推し活におけるガチャシステムはどのように変わっていくのか、そして私たちはどのように向き合っていけばいいのか、ここからは少し前向きに話もしていきたいと思います。
これからのガチャ体験って、技術の進化ですごく面白くなりそうだなと思っていて、
例えばARやVRがもっと身近になったら、お家にいながらイベント会場にいるみたいな感覚でガチャが楽しめたり、推しと仮想空間で出会えるような日が来るかもしれませんよね。
それからNFTという仕組みにも注目が集まっていて、これはデジタルの景品に本物の証明書を付けられる技術なんです。
つまりインターネット上で手に入れたアイテムにこれはあなたのものという証が付くので、サービスが終わっても価値が残ったり、安全に交換売買ができるようになるかもという流れですね。
ただもちろんNFTにしたからって価値がずっと保証されるわけではなくて、その時の人気や技術の進み方にも影響されるので、そこはちょっと冷静に見ていく必要もあります。
一方でガチャに対しては、ちゃんと中身が分かるようにしてとか未成年でも安心して遊べるようにしてほしいみたいな声もどんどん増えていて、ルールや透明性を求める動きもこれからますます強くなりそうです。
推し活でのガチャってワクワクするし、ちょっと運試し的なところもあって、やっぱり楽しいですよね。
でもその楽しさの裏に、無意識のうちにのめり込んでしまう仕掛けがあることも忘れたくないなと思います。