実は、マクドナルドのハッピーセットを巡る転売騒動は、これが初めてではありません。
2024年4月に上映されたスノーマンの舞台、本人確認を必要に拒否した影響で、警察が介入する騒動にまで発展しました。
こんにちは、株式会社KAZAORIの矢澤彩乃です。
推し活未来研究所へようこそ!
この番組では、ますます盛り上がりを見せる推し活をビジネスの視点から、
そして時には私自身の経験も交えながら、楽しくそして深く紐解いていきます。
私は普段、推し活をテーマにしたビジネスを提供すると同時に、ベーシストとしてアーティストさんのバックを務めることもあるので、
推す側と押される側、両方の視点から推し活の面白さや可能性を皆さんと共有できたらと思います。
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さて、この放送はリアルタイムではお盆明けの月曜日に配信なのですが、今日から通常営業という方も多いかもしれませんね。
先週はこの番組も一週夏休みをもらいまして、その間に久々に老い子たちとたくさん遊んできました。
今、小学校の3年生と1年生なんですが、最近の小学生ってポケモンカードめっちゃ好きなんですよね。
なかなか普通の店では売ってないっていうので、渋谷のポケモンセンターに連れて行ってみたら、もうレジがものすごい大行列。
海外から来てるインバウンドの観光客も多いし、夏休みということもあって、ファミリーで楽しそうにしてる人もいっぱいいたんですが、
明らかにこれは転売目的だなっていう大人の方々もちらほらいましたね。
そして、大きな話題になっていたマクドナルドのハッピーセットのポケか転売問題。
これは、老い子たちもポケかが欲しくてマックに行ったそうなんですが、すでに売り切れだったそうです。
そんな現状を踏まえて、今回のテーマは推し勝つと転売です。
大気な推しを応援するためにお金や時間を費やす推し勝つですが、その盛り上がりの裏で転売という影も見え隠れしていますよね。
今日は最新の事例から転売との長い戦いの歴史を紐解き、企業や運営側が打ち出す最新の対策まで探っていきましょう。
まずは、今まさにホットな話題、マクドナルドとポケモンのハッピーセット炎上事件からお話しします。
2025年8月、マクドナルドがポケモンとコラボしたハッピーセットを発売しました。
特に8月9日から11日までの3日間は、ハッピーセットを1セット購入ごとに限定のポケモンカードが2枚もらえるとあって、発売前からファンの期待は最高潮でした。
しかし同時に、「これは転売屋に狙われるのでは?」と懸念する声も上がっていましたね。
実際蓋を開けてみると、案の定ポケ化争奪戦が発生。当日朝から各店舗に長い行列ができ、開始数時間で品切れになった店舗も出たようです。
また、メルカリ場では発売直後から多数の出品が相次ぎ、中にはカード配布開始前日の段階で中国のフリマサイトにまだ買ってもいないポケモンカードが出品されるなど、想像以上の金つぶりでした。
さらには、中国のSNS上で、札幌で代わりにハッピーセットを食べてくれる人募集、費用はおごりますといった謎の代理食事の依頼をする人まで現れたのです。
カードをたくさん入手するために大量のハンバーガーを食べてくれる人を探す。まさに前代未聞の事態ですよね。
実はマクドナルドのハッピーセットをめぐる転売騒動はこれが初めてではありません。
今年春に実施されたちいかはマインクラフトのハッピーセットでも大量購入して食品を受け取らず廃棄する転売屋が現れ大きな悲観を招きました。
おまけだけを目当てに食べ物を捨てるなんてさすがにひどいですよね。
SNSでも怒りや嘆きの声が聞こえました。
こうした事態を受けて、今回マクドナルド側も事前に対策を打ち出しました。
具体的には、日本マクドナルドとフリマ大手のメルカリが連携し、発売前後の注意喚起、著作権侵害となる画像転載出品の削除、悪質な詐欺出品の削除などに協力することを発表。
また、店舗ではお一人様5セットまでという購入制限を設け、公式サイトでも転売や営利目的の購入、食べきれない量のご注文はご遠慮くださいと異例の呼びかけを行いました。
しかし結果として、前回の地域化争動の時の教訓は生かされず、返売やフードロスを防ぐには至りませんでした。
SNS上は、そもそも数量限定にするからだ、最初からおまけだけ子供に配ればいいのに、といった運営側への批判も少なくありません。
確かに、購入制限を5セットまでではなく1セットにするとか、子供同伴に限るなど徹底すればよかったのでは、という意見も一理ありますよね。
このように、ポケモンとマクドナルドのハッピーセット騒動は、ファン心理と商業戦略、転売やあの欲望が絡み合った象徴的なケースとなりました。
推し勝つのつもりがフードロスにつながったり、転売市場を活性化させてしまう、熱心なファンほど複雑な思いだったのではないでしょうか。
そして、商品の転売以上に深刻なのが、ライブやイベントのチケットをめぐる問題です。
特に絶大な人気を誇るスノーマンのコンサートチケットは、高額転売のターゲットにされています。
定価9700円のチケットが、販売サイトで1枚20万円というとんでもない価格で取引された例もあるそうです。
この状況には、メンバーのラウルさん自身も意気通りを表明するなど、アーティストの方々も本当に心を痛めています。
でも、もちろんアーティストや運営側も手をこまねいていたわけではありません。
ここからは、ファンとアーティストが歩んできた、転売との長い戦いの歴史を時系列で紐解いていきたいと思います。
まずは2000年代。
インターネットオークションの普及で、個人の転売が問題になり始め、アーティストたちは対策を模索し始めます。
その中で、かなり早い段階からテクノロジーで対抗しようとしたテクスチャが現れました。
その代表格が、桃色グローバーZです。
彼女たちは、2014年には顔認証付きのICカー印象試験導入し、チケット転売に立ち向かいました。
当時はまだ画期的な試みでした。
そして、ビーズやMr.Childrenといった大規模なツアーを行うアーティストたちも、2015年頃から相次いで顔認証システムを導入しました。
これは、何万人ものお客さんをスムーズに入場させつつ、高額転売を防ぐという両立を目指した、まさに業界の先駆けとなる挑戦だったんです。
個別のアーティストの戦いが続く中、2016年に大きな転換点が訪れます。
2016年8月23日、日本の音楽業界4団体が中心となり、サザンオールスターズ、ドリームスカウントル、Mr.Children、嵐など、実に116組のアーティストと24のイベントが賛同して、チケット高額転売取引の防止を求める共同声明を発表したんです。
この声明は、新聞の一面にも掲載され、社会に大きなインパクトを与えました。
それまでは個別の問題と捉えられがちだったチケット転売が、音楽文化の未来を脅かす社会問題であるという認識を広める決定的なきっかけとなったんです。
そして、この社会的な流れがついに国を動かします。
2018年12月にチケット不正転売禁止法が成立し、2019年6月14日に施行されました。
これは、定価より高く商品を売る転売を繰り返し、ビジネスとして行うことを禁止にする法律です。
このルールを破ると、最大で1年間の懲役が100万円以下の罰金が課されるというかなり重い罰があります。
実際に、この法律によって宝塚歌劇団のチケットを不正転売した人物が書類送券されたり、人気アイドルのコンサートチケットを不正転売した人物に有罪判決が出たりと、献挙事例も報告されています。
法律という大きな武器を手に入れた後も、転売や後の攻防はさらに激化し、対策はより多角で高度な総力戦の時代へと突入します。
まず一般化したのが、休業で行けなくなった人が定価で他のファンに譲れる公式リセールサービスです。
保持の源さんや坂なくしょんさんといったアーティストも早くからこうした仕組みを導入し、ファンに寄り添う姿勢を示してきました。
チケプラなどのサービスでは、チケットは必ず定価で取引されるルールで、詐欺や偽造チケットのリスクがない安全性が最大のメリットです。
ただ、出品しても必ず売れるわけではなかったり、逆に買いたくても抽選だったりと、その使いにくさが課題として指摘されているのも事実です。
公平性を保つルールが、かえって高くても今すぐ確実に欲しいというファン心理を非公式マーケットに向かわせてしまう側面もあり、利便性と公平性のバランスが今後の大きな課題だと思います。
次に、転売チケットでは入場させないための切り札が、顔認証システムの普及です。
事前に登録した顔写真と入場ゲートのカメラで本人確認を行う仕組みで、物理的ななりすましに絶大な効果があります。
しかし、この対策強化は新たなリスクも生み出しました。
記憶に新しいのが、2024年4月に上映されたスノーマンの舞台、祭りガラでの出来事です。
大観列付近にいた観客が本人確認を必要に拒否した影響で、なんと開演が1時間以上も遅れ、警察が介入する騒動にまで発展しました。
たった一人の行動が、多くの善良なファンの貴重な時間を奪ってしまうという現実を浮き彫りにした、本当に難しい問題を示した一件でした。
そして、企業が取る最も厳しい姿勢が法的措置です。
特に、スノーマンが所属するスタートエンターテインメントの動きは画期的です。
大手転売サイトに対し、法律に基づいて悪質な高額出品者の個人情報開示を請求しました。
そして、2025年3月には、裁判所が転売サイトに対し、出品者の情報開示を命じるという画期的な判断を下したことが報じられました。
これは、転売や個人を特定し、ファンクラブからの強制大会や、今後のコンサートへの申し込み資格を永久に失わせるという極めて厳しい措置を取るための大きな一歩でした。
さらに、スタート者は、2025年6月23日から公式リセールサービスリリーフチケットも開始しており、転売を許さないという強い意志を明確に示しています。
さらに、最先端のテクノロジーもこの問題に立ち向かおうとしています。
一つが、AIによる不正購入の検知です。
転売屋が使うBotという自動プログラムによる買い占めを、AIが人間らしくない動きとして検知し、購入をブロックする技術です。
あるECサイトでは、導入後に不正注文が3分の1にまで減少したというデータもあるそうです。
私たちが気づかないところで、技術が公平性を守る重要な防衛性になってくれているんですね。
そして、転売問題の最終兵器になるかもしれないと期待されているのが、NFTチケットです。
ブロックチェーン技術を使い、定価以上では取引できないといったルールをプログラムで強制的に組み込みます。
2022年には、旧ジャニーズ事務所の舞台や人気格闘技イベントライジンなどで実証実験的に導入されました。
まさに夢の技術ですが、ウォレットというアプリが必要だったり、法整備が追いついていなかったり、まだまだ問題も多いのが現実です。
ここまでチケットの話をしてきましたが、グッズや商品の転売問題も深刻です。
こちらについても、企業がどう立ち向かっているのか見ていきましょう。
チケットだけではなく、様々な商品で高度な転売対策が進む中、まさに総力戦と呼んべき戦略で転売問題に挑んだのがNintendoです。
家庭用ゲーム機市場では、PS5の発売時に自動購入ボットがオンラインストアの在庫を瞬時に買い占め、一般のファンが全く購入できないという混沌とした状況が生まれました。
この苦い教訓を生かし、Nintendoは2025年のNintendo Switch2発売にあたって何十人も防御策を張り巡らせたのです。
まず驚きだったのは、公式ストアでの抽選条件です。
単なる運任せではなく、Switchのソフトを累計50時間以上遊んでいるなど、本当にNintendoのゲームを愛しているファンが優先される仕組みを導入しました。
これは販売業者の参入を阻むと同時に、ファンに報える画期的なアイデアでしたね。
また、物理的な保証書を付けず、納品証保証対象とみなすことで、無償修理の際には個人の情報の記載のある納品証を見せなければならず、販売のハードルを上げています。
さらにNintendoは海外への転売対策まで行っています。
円安を狙った海外バイヤーの買収めを防ぐため、価格の安い国内専用版と割高な多言語対応版の2種類を用意しました。
この価格差で、海外転売のメリットそのものを消滅させたのです。
このように、ファンを大切にし、転売品の価値をなくし、市場の仕組みそのものをコントロールするという、まさに総力戦で挑んだNintendoの視線は、多くの企業にとって新しいお手本になったのではないでしょうか。
Nintendoのような大がかりな仕組みは難しくても、特にグッズの転売に対しては、多くのファンが一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。
最初から欲しい人全員が買える数を作ってくれればいいのに、と。
その最もシンプルで強力な答えが、予注生産です。
予約期間内に注文すれば、誰もが必ず手に入れられる。
転売屋が入り込む隙を与えず、企業は在庫を抱えるリスクもない。
ファンにとっても企業にとっても、まさに理想的な仕組みに見えますよね。
では、なぜ多くの限定グッズは、いまだに私たちをやきもきさせる数量限定で販売されるのでしょうか。
ここでは、ビジネスの少しシビアな現実が隠されています。
希少性が価値を生むという現実です。
発売開始即完売というニュースは、それ自体がこのコンテンツはこれほどまでに人気があるというこれ以上ないほどの強力なアピールになります。
手に入らないかもしれないという気が感や、かえってファンの熱狂を煽り、ブランドの価値を押し上げる。
このお祭り感や、熱狂の渦を意図的に作り出すマーケティング戦略も残念ながら存在するのです。
企業側も、ファンを大切にしたい気持ちとビジネスを成功させたいという論理の板挟みになっているわけですね。
だからこそ、最近ではこのジレンマを解消する、より賢い戦略を取る企業が増えています。
まず、あえて少量を限定販売して即完売という話題性を最大限に利用するのです。
もちろんこう聞くと、結局最初に売り出された限定品が転売されるだけじゃないのか、という疑問がわきますよね。
その通り、最初の限定品は間違いなく転売案の標的となります。
しかし、この戦略の本当の狙いはその先にあるんです。
ファンの買えなかったという声が最高潮に達したタイミングで、すかさず皆様の熱いご要望にお答えして受注生産が決定しましたと発表する。
この一手が、転売市場に致命的なダメージを与えます。
なぜなら、待てば必ず定価で手に入るという事実が明らかになった瞬間、高額な転売品を買おうとするファンは激減するからです。
転売屋は、買い占めたはいいものの、買い手がつかずに在庫を抱えるという大きなリスクを負うことになります。
つまり、この戦略は、転売という行為そのものを不可能にするのではなく、転売しても儲からない状況を作り出すことで、転売屋のビジネスモデルそのものを破壊しに行く非常に高度な市場コントロール術なんです。
最初に熱狂を生み出して話題を作り、後からファンを救済することで感謝と信頼をも手に入れる。まさにファンの真意とビジネスの両方を深く理解した戦略だと言えるかもしれません。
ここまで色々な対策を見てきましたが、最後は私たちファン自身の倫理観も少しだけ考えてみたいと思います。
どうしても都合が悪くなったチケットを、低価で他のファンに譲る。これは推しのために空席を作りたくないという自然なファン心理ですよね。
でも、規約上は優勝条度の禁止に触れてしまうグレーゾーンになってしまったりします。
一方で、買う人がいるから転売がなくならないという正論と、でもそれでも推しに会いたいというファンの葛藤もあって、本当に難しい問題です。
転売屋がなぜこれほど反感を買うのか、それはファンにとって大切な推しとの絆の証を人質にとって、私たちの真意に付け込んで利益を得るからなんだと私は思います。
さて、推し勝つと転売というテーマで見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
推し勝つは本来、私たちの好きという気持ちをポジティブに表現する文化だと思うんです。
それが転売によって悲しい思いにつながってしまうのは本当に残念なことですよね。
幸いこの問題に対する戦いは、法整備、テクノロジー、企業の断固たる姿勢、そして公式リセールという救済策を組み合わせた総力戦になっています。
どの施策も一長一短があり、魔法の杖は存在しません。
そして何より大切なのは、やはり私たちファン自身の意識と行動なんだと思います。
転売を許さないという声が広がり、アーティスト自身がメッセージを発する。
そういう一つ一つの声が大きな力になってきたんだと感じます。
任天堂の事例が示したように、企業が本気でファンと向き合い、体験そのものをデザインする時代が来ています。
単純な先着順モデルはもはや時代遅れなのかもしれません。
推し勝つ未来研究所としては、推す側も押される側もハッピーになれる形を模索していきたいです。
熱量が、搾取ではなく健全な応援につながるように。
ファンも企業も、そして社会全体も一緒に知恵を出し合って、誰もが悲しい思いをしない素敵な推し勝つ文化を育んでいけたらいいですよね。
それでは、今日の推し勝つ未来研究所はこの辺で。
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最後までお聞きいただきありがとうございました。また次回お会いしましょう。