まず最初に、Jリーグをあまり知らないよという方のために、ざっくりとした説明をさせてください。
Jリーグっていうのは、1993年に始まった日本のプロサッカーリーグです。
今年で33年目ですね。
開幕当初から掲げてきた理念が、100年構想というもの。
これはスポーツを通じて、もっと幸せな国にしていこうというすごく壮大なビジョンなんです。
具体的にどういうことかというと、Jリーグは単にサッカーの試合をするだけじゃなくて、
日本全国の地域にサッカークラブを根付かせて、そのクラブを中心に街を元気にしていこうと、
100年かけてそういう文化を作っていこうという考え方なんですね。
でもこれを今の時代のマーケティングの目線で見ると、ちょっと違った景色が見えてくるんです。
この100年構想って、実はものすごく高度なコミュニティエンゲージメント戦略なんじゃないかと。
つまり地域住民を巻き込んで、地元のチームを一生応援したくなる推しに変えていく仕組みが制度レベルで組み込まれている。
推し勝つの本質って何だろうって考えた時、大事なのは一家制の興奮じゃなくて、持続的な感情の繋がりだと思うんです。
1回だけすごいライブを見て感動するのと、何年もずっと応援し続けるのとはまるで違いますよね。
Jリーグの100年構想は、まさにその持続的な繋がりを地域全体で作り出す仕組みなんです。
その証拠を、まず数字で見ていきましょう。
さて、2025シーズンのJリーグの年間挿入乗車数、皆さんどれくらいだと思いますか?
答えは、約1300万人です。
これ、過去最多の記録なんですよ。
1300万人ってちょっとピンとこないかもしれないんですけど、東京ディズニーランドとディズニーシーの年間入場者数が合わせて約2700万人くらいと言われているので、
ざっくりディズニーに行く半分くらいの人がサッカーを見に行っている計算になりますね。
これってすごい数字ですよね。
しかも、ディズニーは日本で2つしかないけれど、Jリーグのクラブは全国に60近くもあります。
北は北海道から南は鹿児島まで、それぞれの地元に行ける推しがいるわけです。
この分散型のエンターテイメント網って、考えてみるととんでもないプラットフォームですよね。
そしてここからが面白いんですけど、トップカテゴリーのJ1だけじゃなくて、J2が前年比111%、J3が112%と、下のカテゴリーの方がむしろ伸び率が高いんです。
これは何を意味しているかというと、一部の大都市のビッグクラブだけが盛り上がっているんじゃなくて、
地方の小さな町のクラブにも着実にうちの町のチームを推す人が増えているということなんです。
推し勝つってアイドルとかアニメだけの話じゃないですよね。
サッカーの世界でも自分の町のチームがそのまま自分の推しになっている。
これはもう地域全体を巻き込んだ一大推し勝つムーブメントだなと思います。
しかも注目してほしいのが、2025年のJ1の最終説は、1説あたりの合計入場者数が28万人を超えたんです。
ちなみにあまりスポーツに詳しくない方のためにお伝えしておくと、この説というのはシーズンの何回目の試合という時の数え方です。
つまりJ1の最終説の試合、合計10試合で28万人以上、平均すると1試合約3万人のお客さんが入っているということなんです。
シーズンの最後の最後にこれだけの人が集まるというのは、最後まで推し続けるファンの熱量の証拠ですよね。
これって推し勝つでいう、最終回はリアタイで見届けたいという心理に近いと思います。
推しの1年の集大成を自分の目で見届けたい、その感情がこの数字に現れているのかもしれません。
売上の面でもJ1の中堅クラブが30億円から40億円規模の売上を出していたり、推しに対してファンがちゃんとお金を使っているし、地元の企業もスポンサーとして投資をしている、このエコシステムが回り始めているんですね。
先日ユニクロがJリーグのオフィシャルパートナーになったんですが、社長の矢内浩次さんが就任会見の中で、サッカーには人々をつなぐ力があるとおっしゃっていたんですよね。
大企業がサッカークラブに投資する理由って単に広告を出すためだけじゃないんです。
クラブを通じて地域の人々と感情的なつながりを作れる、そのつながりの媒介社としてのサッカークラブの価値が、ビジネスの世界でもどんどん認められてきているんだと思います。
推し勝ちビジネスをやっている私としても、数字だけの広告効果じゃなくて、この街が好き、このチームと一緒に頑張りたいという感情がビジネスを動かしている。
これが推し勝ち経済の本質だと思うんです。
さてここからはJリーグが今まさに取り組んでいる大きな変革の話をします。
それがシーズン移行です。
シーズン移行って何かというと、簡単に言えばリーグ制のスケジュールを大きく変えるということです。
今のJリーグは2月に開幕して12月に閉幕する、漢字で春と秋と書いて春秋制なんですが、これを2026年から8月開幕、5月閉幕の秋春制に変えるんです。
開幕の時期が変わるだけでしょって思うかもしれないんですけど、これが実はものすごく大きな話なんです。
世界のサッカー、特にヨーロッパの主要リーグ、イングランドのプレミアリーグとかスペインのラリーガとかは秋に始まって春に終わるスケジュールで動いてるんですね。
選手の移籍市場もこのスケジュールに合わせて開いたり閉まったりする。
ところが日本だけ半年ずれているから、例えば日本の優秀な選手がヨーロッパに移籍しようとしてもタイミングが合わなかったり、
逆に海外からいい選手を日本に呼びたくても、向こうのシーズンの途中で来てもらうことになるから、なかなか来てもらえない。
Jリーグの野村義和チェアマン、会長はJリーグを世界と戦う舞台にするとはっきりおっしゃっていて、世界のサッカーカレンダーと同期させることでリーグ全体の競技レベルや魅力を上げていこうと。
これを推し活的に読み解くと、推しの対象であるリーグそのものの品質を世界基準に引き上げるための根本的な環境整備なんですよね。
もっとすごい試合が見たい、もっと世界で活躍する選手が出てきてほしいというファンの思いに応える決断でもあるわけです。
実際Jリーグは長い期間をかけて全クラブと議論を重ねてこの決断に至ったそうです。
それだけ大きな変革だし、いろんな立場の人がいるから簡単には決められなかった。
でも世界で活躍する選手が増えて、子どもたちが世界を目指せる環境を作るという目標のために前に進む決断をしたんですね。
推し活で言うと、推しにもっと大きなステージに立ってほしいというファン心理がありますよね。
地元のバンドが全国ツアーに出るとか、地下アイドルがメジャーデビューするとか、
それと同じで日本のサッカーが世界でもっと輝いてほしいという思いがこの大改革の原動力になっているのだと思います。
ただこのシーズン以降には大きな課題があったんです。
それが雪の問題です。
日本って南北に長い国じゃないですか。
東北や北海道、北新越のように冬に大量に雪が降る地域があります。
そこにもJリーグのクラブはあるわけです。
秋春戦になると12月から2月の真冬にも試合をしなきゃいけない。
ピッチが雪で埋まる。
お客さんが寒くて来られない。
選手のコンディションも心配。
雪国のクラブにとってはものすごい判例なんですね。
想像してみてください。
マイナス10度の中、吹雪の中でサッカーを見に行くこと。
どんなに好きなチームでもさすがにつらいですよね。
観客が来なければ収入が減る。
収入が減ればいい選手は集められない。
チームが弱くなるとさらにお客さんが減る。
負のスパイラルに陥りかねないです。
これってJリーグが大切にしてきた地域密着っていう理念と
世界基準を目指すっていう理念が正面からぶつかってしまう問題なんです。
地方のクラブを大事にしたいけれど、世界と戦うにはスケジュールを変えなきゃいけない。
この両立をどうするのか。
Jリーグが出した答えは、なんと総額50億円の助成金です。