集団浅慮とは何か?
組織を考えるメディア、オーガナイズ。このポッドキャストは、エールの篠田さんと山田で、組織を考える我々の話題で、我々が面白い課題の関連観点をシェアしていこうという番組です。
じゃあ、篠田さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
いろいろこれまで話してまいりましたが、我々もこのポッドキャストで、何回か出てくるDI的なものからの集団浅慮というキーワード。
この言葉を聴いただけで皆さんわかるのか、ちょっと今、しゃべって不安になりましたが。
集団はね、人の集まりの集団で、浅慮は浅い、深いの浅いに、配慮の慮です。
集団浅慮。こういうタイトルの本が、翻訳書なんですけど、出てるんですよね。もともとの英語のタイトルは『Group Think』です。
この辺のあたりをぜひ、このポッドキャストも書かれてる、講演とかで篠田さんが話されるようなこととかも、ちょっとたっぷりめに時間をとれるので、ちょっと丁寧に話しいただこうというところで、そのあたりを今日話しいただけるといいんじゃないか。
はい。じゃあ、ちょっとしゃべってみますね。今、DIとつながって集団浅慮っていう紹介をしていただいたんですけど、
それで、「は?」ってなった方と、「そうかも!」ってなった方といるかなと思うので、ちょっと順番に話していこうと思います。
この文脈で言ってる、ダイバーシティー&インクルージョンの定義をいっぺんおさらいをしますと、これは教えてくださった方がいて、
3M Japan、3Mってポストイットとか一般的には作ってる会社の日本支社の社長さんだった昆さんっていう方がこれを教えてくださって、もう確かにと思った、その定義をそのまま引用すると、
ダイバーシティーとインクルージョンでこの2つの概念の整理をしてくれたんですね。で、ダイバーシティーっていうのは数字で把握可能な部分ですよっておっしゃってました。で、これがパーセントが50を超えたらマジョリティーになります。
例えばそのジェンダーで言うならば、役員で2割が女性、8割が男性だったら男性がマジョリティーですねと。ここはダイバーシティーがあります。このぐらいって言えるんだけど、この状況で仮に男性は男性、女性は女性で部屋分かれて、それぞれが議論して結論を持ってきて、最後多数決で決めるってなったら、
それは男性の側の意見が通っちゃうから、そうしたらあんまり意味ないじゃないですか。男性100%であっても女性が、男性が70%であっても結論同じになっちゃうから。
そういうことじゃなくて、大事なのはインクルージョンの方ですよねっていうのを教えていただいたんですね。インクルージョンっていうのは、ここで言えば女性が2割、男性8割なのか、お互いに刺激しあって、つまりお互いがいることで考えがちょっと変わるとか進むっていう関係になってる必要がある。これがインクルージョンの状態ですよと。
ということは、お互いに刺激をしあうということは、まずお互いの価値観を認めるということだよねと。あなたはそうなんですねと、私はこうですよと。価値観をお互いに認めるということは、さらに考えると、そもそもお互いの価値観や考えが違うっていうことを理解する必要がある。
違いが表面化してこないとインクルージョンにならないよと。こういうことなんです。かつ、その異質なもの、考えが違うってものが入ってきたときに、その考えを受け取る。で、お互いに取り入れていくっていうことができて、始めてダイバーシティ&インクルージョンって意味が出ますよね。こういう話なんですよね。
ここまで、このポッドキャストを好きで聴いてくださっている方っていうのは、聴くとかコミュニケーションにすごい関心があるし、知識もある方だと思うんで。もうこれだけで、つまりそれは聴き合うっていうことがあって、初めてインクルージョンですよねっていうふうに受け取ってもらえるかなと思います。
で、ちょっとこれを一旦頭に置いといてもらって、次、この集団浅慮とは何ですかっていう話をしますね。で、その後にこれをちょっと2つがこう繋がりますっていうことまで、ちょっとしゃべってみて、そこでちょっと山田さんに質問とか解説をお願いしたいなと思います。
で、今度集団浅慮なんですけども、この本、そういうタイトルの本です。改めて、英語のタイトルは『Group Think』っていうタイトルなんですね。で、日本でこれ出版されたのは2022年だったと記憶してるんですけども、実はアメリカで出版されたのってこれ1980、私が持っている本は1982年なんですよ。
で、さらに1970年代に元となる論文が書かれているんですね。結構アメリカでは古い、もう50年近く前にできた概念で、非常にポピュラーだったというか、多くの影響を与えた考え方なんです。
だからなんか私からすると、当時のアメリカで直面していた組織の課題を今私たちが直面しているっていうことでもあるのかなって思うんですよね。で、この本は何を取り上げているかというと、アメリカの軍事行動を中心にどういう意思決定がなされたかと、それの失敗例を詳細に分析してるんです。
もうそれこそ真珠湾攻撃って予測できてたはずなんですけど、情報は全部あったのにことごとく握り潰されてるんですね。ないでしょ、みたいな。そこから、例えばベトナム戦争が、やっぱり訂正のタイミングを失って拡大しちゃったよねっていう、そういった判断までいくつか事例を挙げて。
そこで一言で言うと、みんなここが仲間だよねっていう仲間意識が強すぎるがゆえに、独自の意見が出にくくなって客観的な判断が難しくなる状況が繰り返し起きてますっていうことを言ってます。
今取り上げた事例って、アメリカの中では本当に英語で言うベスト&ブライテストって本当に人格的にも頭脳的にもトップオフザトップの人らが集まって話し合ってものすごい間違いを犯したっていう、こういう話が能力の問題じゃないんですっていうところが出発点なんですよね。
そこで、じゃあなんでこういうことが起きちゃうのっていうのを3つのステップで説明しています。一つ目がまずそうなる原因、まずそもそもこういう状況がありますと。それが二つ目はそうするとこういう兆候に発展することがあります。
そうすると3段階目の本当に間違った意思決定をしちゃう。このステップをどんどん進んでいっちゃうと集団浅慮が起きますよっていうこういう説明をしています。
1個目のその原因というか、この本で言うと先行条件、先に行く条件ですねって言ってるのはまずみんな仲いい。すごい俺たちもうまさにベスト&ブライテストもうこの国のために頑張るぞって、おおーっていう感じなんですよ。プライドも高いし。
で、あと結構リーダー強いリーダーがそこに存在をし、かつですねちょっと外部の情報が入ってきづらい環境、秘密を扱うとかねちょっとあったりして、さらにそこに時間的なプレッシャー早く決めないのとか忙しいとかこんな要因が入ってきます。
で、この条件が重なった時にですね、症状としてだんだんこういうことが現れてくると。あの一つはですね無敵、もう自分たちの決定は絶対正しいってなんかいつも思っちゃう。こうだよねそうだよねだよねーっていう。で、そうなるとちょっと違った角度の意見を軽んじてしまう。そんなことないでしょ。
で、さらに一歩酷くなると、いや明らかにこれおかしいですよねっていう兆候があった時にも、ほんと瞬時に頭いいから、無意識のうちに瞬時にその矛盾をちゃんと辻褄合わせするようなねロジックを思いついちゃうんですよ。
で、あのそうすると外部からの人たちちょっと大丈夫ですかねみたいな声に対してもわかってないっていう風にプライドと組み合わさって下に見てしまったり攻撃的になっちゃう。そうするとわかりますよね。そうするとリスクはちっちゃく見るし、だいたいあの検討もしないし、十分な情報も集めずに、なんで旗から見るとあんだけ頭いい人たちがそんなことやっちゃったのっていうことを起こしちゃう。
ので、これの対応策って本にはいっぱいいっぱい書いてあるので、ほんとかいつまんでお話ししますけど、なんか特徴的なのは構造で解決できる部分が結構ありますって言ってるんですよね。で、それと一人一人の意識とか振る舞いで変える部分ももちろん必要だけど、大きく両立てになっているところが特徴かなと思います。
で、構造っていくと、例えばそのグループを小グループに分けて、それぞれでまず議論してもらって、で、その結論を持ち寄ってくる。で、そうやってその異なる意見が表面化しやすい状況を作るとか、あとあえて反対意見、批判的な意見を述べる役割っていうのを作る。
その係を作るとか、あとリーダーが議論から一時的に退席することで、あるいは声が大きい人を退席させることで、ちょっと同調圧力を和らげるみたいな、結構これ構造で解決しましょうっていう話なんですよ。
こういう部分と、あとはどっちかっていうと、このマインドとかそのコミュニケーションに関わる部分で、その失敗を恐れない文化を育もうとか、少数意見を受け入れて互いに尊重し合うような振る舞いをしましょうっていうような指摘もなされています。
ここで始めに言ったダイバーシティとまとめると、これ結構近いことを言っていて、違う価値観を持ち込んで、それが違うって分かった上でお互いそれが刺激になって取り入れあったり、刺激になった結果、元の案とは違うアイディアを出してくるっていうことがインクルージョンであって。
だからインクルージョンがないダイバーシティはあんまり意味がないですよねっていう前半の話と、今した集団浅慮っていう現象を防ぐには、あえて異なる意見が場に出るような構造を作っていこう、プラスまあマインドを作りましょうっていうのって結構同じ話をしているなっていうふうに受け取りました。
インクルージョンは構造とマインドがセットで初めて実現する
ちょっとここまで私がずっとベラベラ喋ってきちゃったんですけど、ここまで聴いてもらってどうですか。
違った、構造で解くよねって話で一個思い出したのが、『レッドチーム・イノベーション』かな、っていう本があって、レッドチームって対案を持ってくるチームを別に作るんだっていうことで、要はA案と反対のB案を必ず持ってくるっていうチームを作って、あえて戦わせるっていうことによって、
よりクリエイティブな案を作りに行くっていうのを、どこだっけな、アメリカのどっかの軍かなんかがやってて、要はやっぱり現状延長で作ろうとすると改善しかされないじゃないですか、じゃなくて、むしろ対案をちゃんと持ってきて戦わせるみたいなことを、むしろちゃんと構造として作るからイノベーションの案が生まれるみたいなことって、構造で解きに行くっていうことでいくとすごく似てるんだなって思ったんですよね。
なんか手の打ち方だなって思ったんですよね。っていうのと、一方で最後に言われたインクルージョンのところって、構造の話とそのスタンスとかマインドみたいなことがセットで初めてインクルージョンのところって実現するなっていうのが、なんか構造でもあり、その人の振る舞いでもあるっていうところ。
なんか組み合わせるっていうのが、あえてDEIであり、集団浅慮ってことを持ってこられて、篠田さんがお話しされたので、両面だよねって言ってる感じが改めてすごい大事なところなんだなって聴いてすごい思ってました。
そうですね、どっちかだけっていうのは難しいのかもなって、今聴いてて思いました。構造だけでマインドをちょっとお留守にしちゃうと形ばっかりになって、なんか反対意見を言う係ね、みたいな感じで。係として言ってくれたらいいよと。
でも結局元の案と大して変わらないとか、例えばマインドが欠如すると、極論するとそういうことが想定されるし、マインドに依存しちゃうと、いやもともとの課題が集団浅慮って本当に心理的な話なんで、それは言うって心構えしようって言ってもできないからこうなっちゃったわけだから。
またその、なんか一人一人の気合いみたいなところに解を求めるのは違うよねっていうことも割と論理的に導けるんだと思うんです。だからやっぱり両方いります。両方がこうある意味お互いに作用し合うことで集団浅慮を防ぐ状況が作れるっていうことかなって今聴いてて改めて思いました。
なんか今の話で思い出した事例1個言っていいですか。この今のこの集団浅慮の話ってある企業であの講演をしたときの話をして、そこでも同じエピソードをご紹介したんですね。これはあのモスフードサービスさんの会議の仕方で、あの統合報告書にも書いてあったり、あの時々そのメディアでもこの話されているのでその引用なんですけれども、
彼らの中でじゃんけん大会みたいな、大会じゃないかな。じゃんけんでは必ずしもないんですね。例えば役員会とかでも意思決定するときに、例えば次のキャンペーンどっちがいいかみたいな、でA案B案C案ってあるとするじゃないですか。
そうしたらまあ一通りそれぞれあの3つの案の背景とか狙いを説明があった後に、役員の方々全員で最初はグーじゃんけんポンってやって、で例えばA案の人はグー、B案がいいと思う人はチョキ、C案がいいと思う人はパーって出す。まあそんなことらしいんですね。
別にこれねあの多数決じゃない、多数決じゃないというか、あの分布は見たいんだけど多い人で決めましょうではない。まずの自分の立ち位置の表明をすると。でそこで数が少なかった、例えばチョキが少なかったらチョキの人からなんでB案が自分いいと思ったかって言うとっていう話をする。
でそうやって全員が等しく自分が支持する案に対してなぜかっていうとっていう意見表明をする。お互い聴き合って変えてOKだからここまで話聴きましたね。じゃあもう一回やりましょうかって言って出す。であのそうすると結構ひっくり返ったり平気でするし、でそうやってあの意見集約を図っていく。
最後は社長が決めますとかじゃ全然ないんですって。社長があのB案とか言って出したやつがもう全然なんかあの却下されるとかも普通にありますっていうお話だったんですね。それもなんか構造と心理の工夫だなと思って。構造で今の話出たんだけど最後に結局社長が言ったのになるとかだとダメじゃないですか。
社長が自らいや私がいいって言った案がダメになることもよくあるんですよとか、いうふうにいうことでその場を作っている。
ちなみに今の事例でいくと最後はどう決めるっていうのは決まってるんですか決め方。
最後は何回かやるのかな。で最後ある程度集約したところでやっぱり支持者が多かった案に決まるんだそうです。
最終的にはいろんな論点をそれぞれが咀嚼した上で一番支持されたものが選ばれる。
これについてあの計画者の楠木健さんが解説をされていたんですけど、これが優れているのってそのいくつもあってその意思決定のプロセスとしてもなんだけど実行段階になったときにこの案が良いのであるという意図がかなり言語化されているのでこれを通して何を実現したいんだっけっていうところまでの理解が進んでいるから実行段階にもこれ多分プラスに効くでしょう。
ということと、あとこういう話をするとその他の案を選ばないことで何を失ったのかっていうこともみんな理解していると。
そういう意味でもあのすごく意思決定と実行のところにまですごく良い影響を及ぼす形ですねっていう話をされてたんですよね。
この話とさっきの集団浅慮の本で言っていたこういう構造を作った方がいいよっていうのは結構近い話だなと思って私はこの例を思い出していました。
強いリーダーシップがインクルージョンを阻害する?
3つ目の先行条件と3段階あって。
そうすると症状が兆候が現れて3つ目が、実際欠陥のある意思決定をしちゃうっていう。
その代替案がちゃんと見られないとか違うことを考えないとかがすごく排除されるし、ある種の異論がちゃんと出るみたいなこととかっていうのが構造としてもちゃんと担保されてるみたいなのが、さっきのじゃんけんの例ですね。
はい、ですねですね。
でもそれ何回も構造と姿勢みたいなセットだよねって話のまさにで、じゃんけん出した上でお互いに聴こうと思えなかったら全く意味ないじゃないですか。
本当そうですよね。
社長がパー出してるからパーに肯定的になるみたいな。
途中でモニョモニョってやりながら、グーなのパーなのみたいな。
社長が出してから出そうとするみたいな。
とかだとすごい意味がなくて、その構造は安全な心理的安全性が高くお互いの意見を聴き合うという前提があるから、フラットにマイノリティ意見でもちゃんと出せるっていうのはセットですよね。
そうなんですよね。
だから本当、この本だけ読むとアメリカの昔の軍の話ですよねってちょっと思ってしまうかもしれないけど、
しかも私がこの例、自分が触れた時にいや最高だなって思ったのは、やっぱりモスフード、モスバーガーってみんな知ってるじゃないですか。
割と好感度があるブランドで。
で、その中でそういうことが起きてるって、なんかちょっと嬉しい話なんですよね。
確かに。
身近なね、ザ・エクセレント・カンパニーっていうのはちょっと違うんだけど、でもやっぱりキラッと光る会社が社内でそういうことをやってるっていうのはなんか身近に感じられるし、
自分もちょっとやってみようかなって思わせてくださる、なんか、モスバーガー好きだし、その話を聴いてモスフードサービスという会社もすごいファンの気持ちが上がりました。
さっきの最後の集団浅慮の本に戻ってきた時に、冒頭その条件として結束力が強いとかリーダーが強いとかいくつか前提条件がありますよねって言ってたのが、
別にそれ自体が悪いことではもちろんないにしても、それが発揮され方が間違っているとかいうこととか、
いい意思決定をむしろ阻害してしまうっていうことがありうるよねっていうことを考えた時に、リーダーシップってある種強い強烈なリーダーシップが必要な場面もあるし、
同じモスフードサービスでもそういうのが必要な場面ももちろんおありでしょうし。
ただ、いい意思決定しようとしたときに、インクルージョンには逆マイナス要件というか、阻害要因になるよねっていうのって、
どっちも見なきゃいけないですねっていうのはすごい大事なところだなという気がしましたね。
本当そうですね。
状況に応じてベストなリーダーシップって違うよねっていうのが今の山田さんの示唆だったかなと思うんですけど、
もうちょい解像度上げると、本当に優れたリーダーって多分この事象を多分わかっていて、
そう陥らないように自分の行動とか周りへの影響の仕方を制御するんじゃないかなとも思うんですね。
これよくビジネス書とかで私見かけた例で、本当に本人言ったのかっていうのは若干裏が取れてないんですけど、
ジェネラルモーターズってアメリカの自動車会社を世界一、当時のトップ企業に作り上げたアルフレッド・スローンっていう中興の祖のような経営者がいて、
彼が言ったとされる言葉が取締役会で全員賛成ってわりとサラッとなった案件に関して、皆さん賛成ですかと。
だったらこれ次回に持ち越し。つまり、ちゃんと考えたら違う見方が出てくるかもしれないし、
そもそもこのクエスチョンでいいんだっけっていうこともあり得るから、反対が出ないっていうのはダメだねっていうことを言ったってエピソードがあるんですよね。
今申し上げたのは実績がある方だから、リーダーとしてはスーパー強いわけなんです。だけど彼がそういう決め方をすることで集団浅慮を防いでいたということなんだなって、ちょっと思い出して言ってみました。
ありがとうございます。DIからの集団浅慮からだいぶ話を僕らも相変わらず膨らませましたから。
はい、じゃあそんなところでこれぐらいですかね、今回。
はい、今回はこんな感じで。ありがとうございました。
はい、ありがとうございました。