管理職の新たな定義
組織を考えるメディア、Organize。このポッドキャストは、エールの篠田さんと山田で、組織を考える、捉え直す上で、我々が面白いと思った視点や観点をシェアしていこうという番組です。篠田さん、今回もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今回もやってまいりましたが、相変わらず、直前に今日は何にしましょうかって相談をしてた感じもありましたが。
やっぱり尽きないですね。語って解像度を上げて、やっぱりこのあたりって、私たちみんな日々働いてるし、組織ってほとんどの働く人にとっては当たり前のようにあるからこそ、逆にちょっと日頃とは違った角度で光を当てる要素がやっぱりふんだんにあるトピックなんだなって思いますね。
そうですね。特に今日のテーマも後ほど出てきますが、いろんなやっぱり大きな変化、根底の大きな変化が今まさにあるという中で、個別の課題解決じゃなくて全体が変わるみたいなことだねっていうのが結構、この過去十何回かの中でも一貫して紐解いているテーマな気がするので、今日の話はそれの一つの切り口からいくのかなという感じが個人的にしています。
今日はですね、「管理職のありよう」っていうものをちょっと一つテーマにしたいなと思います。
ここで管理職って言っても、会社によっていろんな階層があったり、階層が多い会社そうじゃない会社あると思うんですが、今一旦想定しているのは人事評価もするような経験を持っている方。
本当職場によると思うんですけれども、部下ですとどうでしょう。少なくても7、8人いて、多いともう20人とかを見てますよっていう。割と第一線で直接社員、自分の配下は管理職ではなくて社員ですっていう、そんな人たちが一旦の管理職って言った時の想定イメージ。
なんとなく課長さんと呼ばれてみたりとか、ミドルマネージャーって言葉を使われるとかの時の、その中のより現場に近い方みたいな感じのニュアンスで一旦受け取りました。
よく女性活躍みたいな文脈だと、女性管理職比率何%みたいなことを会社が、上場企業だと掲げていて、あるいは管理職にそういった方々候補どうすんだとか、あるいは若手を中心に特に管理職になりたくないんですっていう人たちが今増えていて困っています。
みたいなことで、特にこの人事や組織開発の界隈の方々は、何らかここに課題見たことあるなっていう方多いんだと思うんですよね。
でもこれちょっとちゃんと紐解きたいなと思って今日。この症状の奥に何が起きてるのか。私ってもう働き始めたのすごい昔なので、30年以上前なので、その頃は牧歌的で管理職は管理職だけだったんですよ。プレイングマネージャーなんて、ちょっとなかったんですけど。
やっぱりバブル崩壊して、かなり景気が悪くなった98年、99年ぐらいからでしょうかね。プレイングマネージャーっていうのがかなり一般的になってきたことで、まずここで管理職ってとても忙しくなったんですよね。
自分が一定現業をやりながら、いわゆる管理職として、部下をまとめて評価までしなきゃいけない。そんなこともあって、まず忙しくなってきたんですけど、にしても最近の管理職はムリゲーでしょうとか、無理ゲームでしょうとか、なりたくないとかって散々な言われようじゃないですか。
本当ですね、やりたくないっていう声が多いっていうふうに言われますもんね。
なぜそうなったかってひもときは、もうすでにやってらっしゃる方がたくさんいるので、そちらを見ていただければと思うんですけど、今日扱いたいのは、その状況の中、さらに乗っかってきたのが、
軽く言うと人的資本経営的な部分。もっとちゃんと言うと、職場が多様になってきてる。キャリア採用の方もいます、職場によって契約形態も、正社員だけではないタイプの方が結構混じります、
あるいは、シニアの方、定年延長とかもなさったような方も部下にいます。例えば、今の管理職の方が若かりし頃の職場で、自分が受けたマネジメントとは、だいぶ様変わりした組織を預かってるんですよね。
こういう状況の中で、しかも徐々に人手不足、なかなか採用がうまくいかないっていうのも、にわかに現実になってきているので、そこでそのエンゲージメントサーベイをやるとか、あとはそのキャリア自律っていうキーワードのもと、
メンバーの方のキャリア面談もしてあげてくださいね、みたいなものがどんどん増えてるわけですよね。
特に今言った、多様性が高い組織をうまくマネージして、それを事業の成果に結びつけるのに必要なKPIをされているエンゲージメントとか、その中でも必然的になってくるキャリア自律っていう考え方の実践を
今、今まで通り管理職に渡してるんだけど、実際のところ、これ本当にメンバーの方がその施策に、例えばエンゲージメントとかキャリア自律に、一人一人が納得して行動してくんないと、会社全体で見たときにこの施策って実践されたことにならないじゃないですか。
そういう意味で、一人ひとりの納得度を高め、行動が変わるように管理職が接することができてるかって言ったら、ほぼ全ての会社でノーだと思うわけ。
で、これなんでなのっていうところをちゃんと考えて紐解かないと、最終的にその企業にとっても採用が難しくなったり、人がパフォーマンスが上がらず、企業価値が上がらないっていう、せっかくいい戦略書いても最後のラストワンマイルでどうも止まっちゃうんですよね。
これなんでかって言うと、やっぱり管理職にそこを渡してるっていうのが結構問題。今の構造のまま問題かなと思っていて、シンプルに言うと、はじめに言った、そもそももともと忙しいですよね。
そこにさらにこういった一人ひとりに向き合うっていう時間を捻出しろっていうのって、どうすればいいんですかねっていうのが一つ。でもそこに加えて、もう二つ課題があると思っていて。
2つ目は、やっぱり今の管理職の皆さんは、そうやって自分がこう、自分のエンゲージメントを高めるような関わりを上司にしてもらったこともなければ、キャリア自律につながるような関わりを自分は上司にしてもらったことがない。
それを、さあ部下にやんなさいって言われても、途方にくれるばかりである。それはね、もちろんそういった会社さんは皆さんちゃんとしてるから一定研修とかあると思うんですよ。
学ぶ機会は。だけど、こういうのって座学、一発座学で3時間ぐらいこうやって話しかければいいのにって学んだからって、うまく成果出るもんではないから、人の心が相手なので。難しいんだと思うんですね。これが2つ目。
3つ目は、仮にそれがある程度やってもらったことないけど、何とか学んだとして、学んでやろうとするとすごい痛感するんですけど、上司と部下、特に評価者である、自分はこの人の評価者である。部下からすると、この人に何かうっかり言ったら評価下がるかもしれないって思われるような関係の下で、
未来の管理職像
本当の意味でエンゲージメント上げるとか、キャリアについてじっくり話すって、もうね、無意識レベルで無理。
そうですよね。本当はこの仕事やりたくないんですとかって、迂闊には普通は言えないですよね。
よくこの話をすると、それやっぱりその関係性がそこまで信頼関係がないからですよねっていうコメントもらうんですけど、私はそれじゃないと思っていて、
むしろ信頼して尊敬する上司だからこそ言えないっていうことっていくらでもあるんですよ。
ありますよね。
山田課長との仕事、私本当にもうこの人に巡りあえて良かったって思ってるけど、それはそれとして、私はもうちょっと違う仕事もやってみたい。
そうですよね。
申し訳なくて言えないっていう心情ってある。
はいはい。
だからこれ信頼関係があるとかないとか、関係性がうまくいってるいってないではないんですよね。
どっちもありますよね。信頼関係がないともちろん言いづらいはあるにしても、それだけで全て語りきれて、信頼関係とか心理的安全性みたいな言葉でほわっとまとめてもやっぱりダメで、構造的にそこに無理がある。
非常に難しさがあるよねってことですよね。
だからここのその人的資本の価値を上げていくって結局一人ひとりのそのなんて言うんでしょう、この自分の今の仕事とか会社の方針に対するその人なりの納得度が上がって、それに伴って行動が変わってくるっていうことにもう全て帰着するんだけど、
その環境整備を今までの構造の中での管理職にわさって下ろしてるのってちょっと、いやそれ何度も言いますけどそれ無理でしょって。
シンプルに、篠田さんの話されたことの繰り返しですけども、シンプルにそもそもプレイングで忙しい、プレイングマネージャーばっかりだし、これ確かパーソル総研の小林さんの本で見たんだと思うんですけど、組織のフラット化が進んでいるっていうと、単純に比率が下がっている、管理職人数のっていうのも含めて忙しさが増してるよねって話だし、
多分ですが、これ前も過去の回で話していたんですけど、もうちょっと今現場に近い方よりも、今のその想定している方々の上司ぐらいの方って、多分篠田さんと同世代の方も一定数いらっしゃってっていう中だと、当時その今の部長さんとかその上ぐらいの方の見てた景色からすると、全然違う働き方とか多様性とか生きてるっていう中なので、
その今の想定しているマネージャー管理職ぐらいの方がやってもらったことがないコミュニケーションだったりを、とにかく研修だけでどうにかせいって言われているみたいな、すごい雑に言えばっていうのは違いますよね。
全然違うんですよね。本当になんか、組織の構造の前提が変わっているのに、前者のこういった組織系の施策の解決策、管理職に下ろして管理職にやってもらうっていうところに、もう30数年前から同じ挙動。
このずれを何かね、つくづく痛感しますね。
どうぞどうぞ。
その状況をスムーズにというか、うまく、いびつだなっていう状況に対して、例えば、評価制度、人事評価制度を変えますっていう打ち手になってみたりとか、何か配置してみたりとか、何か同じ課題を何となく見ながら、いろんな打ち手をやっている気もするんですけど、
僕の知っている中でのいろんな企業の人事の方々が、それぞれ専門性と矜持があって、良かれと思ってやってるっていうのが、全部それぞれやってるみたいなことはもしかするとあるのかもしれないですね。
全体として本当は、先ほど篠田さんおっしゃったように、前提が本当に変わっているっていう変化に対して、良かれと思っていろんなことやってる感じがもしかするとあるかもしれないですね。
これをですね、あるグローバルな大企業の人事のトップの方にちょっとお話を伺う機会があって、その方の表現、おっしゃってる課題感っていうのがここと重なるけど、おっしゃってたのが、
そうやって、いわゆる本社、コーポレートとされるところが、それぞれの理由で会社全体の方針を実践してくださいって言って、管理職に渡して、人事は今の話ですけど、他にもサステナビリティがどうとかコンプライアンスがどうとか。
当然のことながら、事業計画っていうのもありまして、それぞれあるわけですよね。それで渡すんだけど、じゃあマネージャーの方がそうは言っても限られた時間、例えば残業時間入れても年間2000時間っていうのはもう上限があるわけ。
これの中をどう配分するんですかっていうガイドラインは誰も出してない。
あーなるほど、確かに。さっき僕人事っぽい話だけで一旦語りましたけど、それこそサステナビリティだったりとか環境にどう配慮するんだとか、なんか多様な観点で経営のある種複雑さが増しているとか考える観点が増えている中で、その時間の使い方はすごい委ねられているというか。
本当にもう丸投げなんですよ。丸投げ。そのために何時間必要なのかって、その本社の各機能が。逆に言うと最大こんだけの中で収めてもらえればいいですみたいな、そういった観点での渡し方っていうのはほぼされてないということなのかなと思いました。
これでもあれですよね、すごい2つ真逆のことを思ったんですけど、1個はホワイトカラーとあえて呼ぶならば、その方々の時間の使い方って経営リソース配分の最たるものの1個じゃないですか。っていうのに対してガイドラインがないんだっていう、その着眼点の驚きと、もう1個も真逆で思ったんですけど、じゃあ全体に対して何に何割使おうってガイドライン出すことのその無意味さも半端ないじゃないですか。
そうなんですが、おっしゃる通りで特に2つ目ね、そのまさにそこってその職場の状況によって当然違うわけで、だからこそ管理職なわけで、管理職ってまあ当たり前ですけど前提は裁量労働ですから、そこを自分の裁量でやってねっていうのはある種当然なんだけども、
管理職の罰ゲーム化の背景
だからじゃあ山田課長はこれ何時間使ってくださいっていうことを渡すのは全然裁量労働じゃないし管理職じゃないから違うけど、でも考え方のガイドラインみたいなものを私はその方からお話聞いたときに、そこの考え方のガイドラインが突然なんか極めて抽象度の高いパーパスみたいになっちゃうときつい。
確かにすごく抽象度高くその会社の目指すこととか社会善みたいなことか、すごく具体の一人一人の納得度っていう両極端だけで言われても、すごく難しい問いをそのまま渡されてることになっちゃうんですね。
難しいと思いますね。この中、さっきのフラット化っていうところをパーソル総研の小林祐児さんの『罰ゲーム化する管理職』という書籍に詳細な分析があったように、
本当はその組織がフラットになっていくって、これまでのこのオーガナイズで何回かその例えとして言ってきた、ブロック塀型か石垣型かでいくと、より石垣的な発想だからフラットになるんだけど、
ブロックな発想のまんま階層だけ抜いてると、これは地獄ですよ。
確かに。この表現で考えたことなかったです。そうだと本当に丸投げ、押し付けっていうことがそのままで、ある種抽象度の高い難しい問いを少ないブロックに委ねるっていう構図にしかなってないっていうのは。
なってないから。
なるほど。
それはむずいでしょうね。
それはつらい。
っていうことなんだなって、さっき出していただいたので、私の中でもつながりましたね。
本当、何て言うんでしょう。きっかけはリモートワークが広がったようなことで、さすがにこれまでの管理職と一人ひとりの社員のコミュニケーションの利用っていうのを、やっぱり考え直さないといけないなっていうのは、肌感覚的に多くの職場が気がつかれて。
で、1on1っていう仕組みを取り入れて、このこと自体は、私はマイナスかプラスだったらプラスが大きいと思っているのですが、逆に1on1っていうマネジメントの手法が、
欧米で生まれた背景を思うと、それって石垣のように多様なメンバーをマネージする手法として発達したわけなのですよ。
でもそこを抜いて、手法だけペロってブロック塀的な発想の組織運営のところに持ってくるのも、きついよね。
本当にしつこいですけど、組織っていうものの大前提の、ほぼ暗黙の前提になっているものが、実は変わっているっていうことをもう一回踏まえ直さないと、
そういった1on1しかり、エンゲージメントサーベイを取ってそれを改善する運動しかり、キャリア自律しかり、ちょっと管理職がしんどいかゆえに、思ったほど成果が出ないっていうことになっちゃうんじゃないかなっていう、ちょっと思っておりました。
組織の捉え方の変化
そうですね。ぼちぼち、今日の分、いい時間になってきている中で言いたいことがいろいろあるんですけれども。
僕自身のちょっとだけ補足をすると、ティール組織という本が日本だと2018年に出ていて、原著は2014年に英語で出てるんですけど、この間ちょうど10周年があって、グローバルでオンラインのパーティーみたいな感じでイベントやってたんですけど、
あの本で語っていることも、実は今の今日の話の文脈で言うと、根底の組織の捉え方ってもっとアップグレードされ得るよねっていう可能性を示したかったのが、あの本の著者のフレデリック・ラルーさんのやりたかったことなんだなって思っていて、
あの本、僕すごい個人的に好きなのは、やっぱり3つのブレイクスルー、この3つを超えていくっていうことが次の進化の方向性だよねって示してるけど、別にそこに答えとか提示してないんですよね。
っていうのって、そこは多様になるよねって示したっていう本だなって思ってるんですけど、今日の話につなげると、さっきも言った、組織というもの自体の捉え方が変わり得るっていう本がグローバルで今7、80万冊売れてるらしいので、それだけやっぱりそのテーマにいろんな世界各国でやっぱり問題意識があるんだなっていうことに、今日の話から見てもあるんだなって感じがするので、
そこの変化は、過去もこのPodcastでも語ってきましたし、いろんなところで今まさに語られてるんだなっていうのが改めてお話を伺いながらすごい思いました。
なるほどね。つまりあれですかね、今の話って、さっき私はあくまでも日本の職場だけを見てると本当に均質な、ちょっと他の先進国ではありえない均質さ、全員新卒で年次で上がっていくっていうようなところから比較すると多様性が上がってきた。
だから過去の超均質な状況でのマネジメント手法が、やっぱりそのキャリア採用の方がいたり、年上部下がいたり、契約形態が違う人がいるという多様性の中ではムズくなってるよねって言ったんですけど、今の山田さんの話は世界に目を広げたときに、今の日本の状況は大前提なわけですか、ある意味。
な上でさらなる多様性っていうものに目が向いてるっていうふう、そういうふうに理解すればいいんですか。
そうですね、ちょっとだけ僕の理解ですけど、この間その著者のラルーさんが10周年のイベントで話されてたのをすごい覚えていて、あの本出してから、彼が10年前に出してから、いろんな世界各国の人から、旧来的な人を物として扱うような管理するっていうやり方が、とにかく合わなくてフラストレーションを抱えていたけど、どうやっていいかわかんないって人が世界中にいっぱいいたんですよ。
ただ、あの本を出したことによって、お互い知らなかったけど、そんなことにみんなフラストレーションあったんだっていうことを言語化して理解できた、知り合えるようになった人がすごい出たんですっていうのが見えた事象だったって方とかもすごい覚えてるんですね。
今日の話とつなげると、各国の雇用環境と働き方とかもちろん全然違うので、日本的な中途が増えるとか、働き方が変わるとかは日本的な文脈が多分にあるんだと思うんですけど、今日の篠田さんのお話のメインのメッセージって、組織というものをそもそも捉え方が違うんじゃないの?っていうことをおっしゃってるんだとすると、各国で状況が違えど、
今までのやり方じゃないっていうフラストレーションを抱えた方が、あの本にすごい喜びを見出したっていうことだなって思うと、抽象化すると似てるんだなってことなんだなってことを、今日の話を聞いてすごく思いました。
なるほど、それはちょっといいですねっていうか、大きな世界の潮流の中にプラス日本の固有の文脈がのっかった、という理解を今。
そういう理解だなっていうのを、今日の話を聞いて初めて僕もこういう整理をしてとらえました。
ありがとうございます。
はい、ということで。
今日はさんざん無理無理って言ったけど、次回どうすりゃいいのっていうのもちょっと。
その兆しもいろいろ見えてるなって話が次回できるかなというふうに。
では続きは次回にしたいと思います。
篠田さん今日はありがとうございました。
ありがとうございました。