ディックの世界を深掘り
今日はですね、SF作家 フィリップKディックの世界を、あなたと一緒にちょっと深掘りしてみたいと思います。
おー、ディックですか。いいですね。
ええ。あの、きっかけがありまして、ある方が、映画のブレードランナーを、なんと35年ぶりに見たそうなんです。
へー、35年ぶり?
そうしたら、今のこの生成AIの時代に、なんかこう通じる、予言みたいなものを感じたっていう文章を読んだんですね。
これ面白そうじゃないですか。
ええ、それは非常に興味深いですね。その文章を私も読みましたけど。
あの、レプリカントを見分けるための、ボイトカンプ誕生移入度測定検査ありましたよね。
ああ、ありましたね。あの感情の反応を見るテスト。
そうですそうです。それがなんというか、私たちが今AIが作ったものを見て、これって人間が作ったのかなってこう問いかける姿。それに重なるんじゃないかって。
なるほど。人間らしさとは何かっていうその問いが、もうSFの中だけの話じゃなくて、今の私たちの現実になってきてる。
まさに。
この感覚ってあなたも何か覚えありませんか。
ありますね。日々感じます。
ですよね。で、今回提供された資料をもとにですね、ディックの作品が、なぜただの空想物語じゃなくて、この変化の激しい現代を読むための、ある種の試行実験としてすごく価値があるのか、それを探っていきたいなと。
資料を書かれた方も、中学生の頃に見たブレードランナーの、あのちょっと暗くて退廃的な未来像にまずガツンとやられた後、その後クリエイターになられてからディックの原作小説に深くハマっていったそうですね。
なんかこう、現実がグラグラしてて、自分のアイデンティティも曖昧になっていくような世界、でもその中で、それでも何かを信じようともがく人間の姿っていうのにすごく共感したと。
今、AIが本当に人間みたいに話したり、絵を描いたりするじゃないですか。
そうなると、ディックが投げかけてた問いっていうのが、より一層なんていうか、切実に私たち自身の問題として運んでくる感じがしますよね。
資料では特に、現代にとって示唆深い5つの作品が挙げられてますけど、まずはやっぱりあれですかね、アンドロイドは電気室の夢を見るか。
そうですね。やっぱり基本はそこから、映画の原作ですけど、小説の方だと、その共感能力こそが人間の証だっていう価値観自体が結構揺さぶられますよね。
ああ、なるほど。
資料の指摘にもありましたけど、私たちがAIと話すときって、単に人間ぽいかだけじゃなくて、あれ、これって誰かみたいだなって感じるみたいな。
うんうん。
よりパーソナルな感情移入みたいなものを求め始めてるんじゃないかって、これはもう人間性の定義そのものがテクノロジーで揺らいでる証かもしれないですね。
AIの反応にドキッとした経験、あなたもあります?
ああ、ありますあります。時々、え?って思うような返答が来たり。
未来を探る思考実験
ですよね。で、次に挙げられてるのがユービック。これはまたちょっと雰囲気が違って。
ええ、ユービックは強烈ですよね。
現実そのものが崩壊していく感覚、生と死とか物質と精神とか、その境界がどんどん曖昧になっていく。
うーん。
これって今の情報が溢れてて、フェイクニュースとかディープフェイクとか、そういう中で一体何が本物なのっていう問い自体が、もうあんまり意味をなさなくなってきてる感じ?それと重なりません?
ああ、すごく重なりますね。もしかしたらAIそのものが私たちを取り巻くある種のユービックなのかもしれない、なんて思ったり。
わあ、なるほど。その感覚は、流れを我が民と警官は言ったにも通じるかもしれないですね。
はいはい。
ある日突然、すごい有名だった歌手が誰からも忘れられちゃうっていう。
そうそう。
これなんかは、今のSNS時代のいいねとかフォロワー数とか、そういうある種の身分証明みたいなものが、いかにむろい基盤の上にあるのかってことを突きつけてる気がします。
あなたのアイデンティティって、オンラインの評価と完全に切り離せます?
うーん、難しい問いですね。そして、高い城の男。
ああ、これはパラレルワールドものですね。第二次大戦で、もしスージク国が勝っていたらっていう。
ええ。でもここで重要なのは、その設定自体よりも、誰があるいは何が私たちのこの現実を決定してるのかっていう、その問いかけだと思うんですよね。
なるほど。現実の定義権みたいな話ですね。
まさに。AIがいかにもそれらしい虚構、つまり最もらしい現実をいくらでも作り出せるようになった今、この問いの重みってますます増えてる気がします。
確かに。で、最後に挙げられてるのがアルファ系衛星の種族たち。これは精神的な特性ごとに人々が社会を作ってる惑星の話だとか。
ええ、これもまだすごく現代的ですよね。
ですよね。多様性っていうのが重視されて、合理性だけじゃ割り切れない社会のあり方っていうのが今まさに模索されてるじゃないですか。
はい。
人間って必ずしもいつも合理的なわけじゃない。むしろそういう非合理なところにこそ、なんか人間らしさがあるのかもみたいな。
そうなんですよ。だからDickの作品って未来を当てるっていうよりは、テクノロジーとか社会の変化によって人間とか現実っていう概念自体がどういうふうに変容していくのか、それを探る壮大な思考実験なんですよね。
うーん、思考実験。
資料の筆者の方も言ってますけど、AIが私たちの世界認識にどんどん入り込んできている今、Dickを読むっていうのは、ある意味この不安定な時代を生き抜くための思考の訓言になるんじゃないかと。
SF小説って確かに現実とは違う設定の架空の物語ですよね。
ええ。
でも、そこで描かれる葛藤とか問いを通じて、私たちは今の現実をちょっと違う角度から見つめ直したり、未来に起こり得る可能性とかリスクとかをシミュレーションできる。
そうですね。
それって、変化のスピードがどんどん速くなっている現代社会を生きる私たちにとっては、もしかしたらもう必須のスキルって言えるんじゃないでしょうかね。
そう思います。固定観念を疑って、いろいろな未来を想像して、変化にしなやかに対応していく力。SFってそのための想像力を鍛えるには本当に格好の素材だと思います。
Dickを読むことは、ある意味不確実な未来への備えとも言えるのかもしれませんね。
なるほど。そこで最後にあなた自身にちょっと問いかけてみたいと思うんです。
来年も再来年も、あるいは5年後、10年後、あなたの周りの世界、そしてあなた自身が今と全く変わらないんだと本当にそう胸を張って言えますか。