西日本新聞のこども記者やその卒業生が身近な話題から専門家へのインタビューまでさまざまなトピックで番組をお届けします。こども記者とは、毎年8月から1年間の任期で取材・執筆活動をする公募の小学4年生から中学3年生です。
2025年で20周年を迎える九州国立博物館を見学したこども記者卒業生が、学芸員のみなさんに質問をするシリーズ「こども記者質問箱 教えて!九博の学芸員さん」。今回はなぜ太宰府天満宮の奥にあるの? 学芸員さんって普段何してるの? 写真を撮ってはいけない展示品があるのはなぜ? など、博物館にまつわる素朴な疑問を投げかけます。
◆出演:小泉惠英(九州国立博物館副館長)/浦川莉子(第10期こども記者)/梁莉琉(第14期こども記者)/中野慧(MC/こどもタイムズ編集部)/音声編集:中富一史(販売部)/映像編集:井上知哉(ビジネス開発部)
◆収録日:2025年2月2日
◆こどもタイムズ(記事一覧)
https://www.nishinippon.co.jp/category/kyushu/kodomo/
◆西日本新聞こども記者WEB
https://kodomokisha-nnp.com/https://kodomokisha-nnp.com
サマリー
このエピソードでは、九州国立博物館が太宰府天満宮の奥に位置する理由が説明されています。また、博物館の設立に関わった歴史や学芸員の役割についても触れられています。学芸員が太宰府天満宮の奥にある神社や展示品の取り扱いに関して、注意点や工夫を解説しています。特に、作品の状態に応じた取扱い方法や歴史的な価値を守るための配慮が重要視されています。
子ども記者の質問と九博の紹介
西日本新聞Podcast
西日本新聞子ども記者Podcast
この番組は、西日本新聞の子ども記者やその卒業生が中心になっておしゃべりをするPodcastです。
子ども記者とは、毎年8月から1年間の任期で活動する高校の小学4年生から中学3年生の子どもたち、現在は15期74人が元気に活動中です。
子ども記者は年間を通して各地に取材に出向き、記事を書いて長官の子どもタイムズ面にその成果を掲載しています。
活動は今年で15年になり、卒業生は計837人になります。
こんにちは。西日本新聞子どもタイムズ編集部の中野恵です。
さて、今回から子ども記者質問箱 教えて九博の学芸員さんと題したシリーズをお届けします。
スタジオには九州国立博物館の小泉義秀副館長と子ども記者卒業生の2人に来ていただいています。
早速ですが小泉さんより自己紹介をお願いできますか。
はい、皆さんこんにちは。小泉義秀です。九州国立博物館の副館長をしています。
専門は東洋の彫刻、インドとか東南アジアの仏像、そういうのを勉強しています。
よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。
第10期の子ども記者の浦川梨子です。高校2年生です。よろしくお願いします。
第14期生の小泉義秀です。中学1年生です。よろしくお願いします。
はい、1回目の今回は今年20周年を迎える九博を1月に訪れた子ども記者卒業生が、
九博や学芸員のお仕事について小泉副館長に質問させていただきます。
次回からは九博の常設展である文化交流展示室の展示品にまつわる質問もしていきたいと思います。
学芸員の役割
浦川さんは今回九博には初めて行きましたか?
いえ、私は時々自分が興味のあるテーマの特別展が行われているときに九博に行きます。
りょうさんはいかがですか?
そうですね。私は親が九博でやっているテーマとかに興味を持ってそれで行くかなんかで、
私も一緒について手触りはします。
なるほど。今回は初めてではなかったということですね。
はい、そうです。
ありがとうございます。それでは早速ですが、りょうさんから質問を小泉さんにお願いします。
学芸員さんは普段どんなことをしているのですか?
すごくたくさん仕事をしていて全部言い切れないんですけれども、皆さんが博物館に来ると作品が並んでいますよね。
私たちは展示品に作品が並んで、その説明とか解説が書いてありますけど、その状態、皆さんが目にするまでの状態の準備を全部やるということですね。
まずその作品についてとにかく調べないといけない。調査研究というふうに言いますけれども、とにかくまず調査研究があります。
作品を解説で書いて展示室に並べるだけじゃなくて、ミュージアムトークとか講演会、ワークショップ、いろいろ皆さんと直接触れ合う機会もあります。
その対象がお子さんなのか大人の方か障害者の方によっても準備の仕方がそれぞれ少しずつ違いますので、より多くの人たちに楽しんでもらえるようにさまざまな普及活動をするということもお仕事としてやっています。
学芸員さんには専門的な技術も必要なんですか。
先ほど彫刻が専門と私申し上げましたけれども、彫刻の取り扱いにも専門的な技術が要りますし、それ以外のさまざまな文化財でそれぞれに専門的な技術が必要になりますので、そういう技術を身につけるためのトレーニングもしています。
それから文化財は今博物館で皆さんご覧になりますけれども、後の世までずっと伝えていかなければいけないというものなので、その管理、日常的な環境のチェックをしたりとか、それから時々作品の状態も見て修理がいるんじゃないかなみたいなそういう状況になったら修理をする。
そのためにもまた専門の業者さんと丁寧に話をしながらその準備をしていきます。
実際に修理のときに手を動かすのは私たちではなくて専門の業者さんなんですけれども、その途中でもどういうふうに修理が進んでいるかというのをいちいち確認をして一番いい修理になるようにというような形で一緒に仕事をしていくようなこともしています。
それからもう一つ、作品そのものも大事なんですけれども、保管しておく場所の環境のチェックが必要になります。
皆さんも温度、湿度のチェックとか、それから虫の被害を防ぐとか、そういうことをおそらく聞いたことがあるんじゃないかなというふうに思います。
旧博にもたくさんの展示品があると思いますが、それを集めるというのも学芸員さんの仕事なんですか?
博物館には作品がありますけれども、それを集める収集というのも大事な仕事の一つです。
予算を使って作品を買ったり、寄贈を受けたり、それからお寺とか神社、あるいは個人の方に作品を借りたり、それから特別展なんかのときにはよその美術館とか博物館から作品を借りたりということをします。
その作業のときにも一つずつの作品がどういうものなのかということをやっぱり調べていかなくてはならないので、ここでも調査というものが必ず伴ってきます。
実は作品についてわかっていることというのはごく一部なんですね。全体像はなかなかわからない。それをさらにいろいろな視点から調査をしていきます。
歴史が得意な人は歴史的な視点から、それから制作の技術をどうやって作るかとかですね、そういう技法のことが得意な人はそういう視点からいろいろそういう調査があるんですけれども、
あとは作品がたくさん並んできたときに似ている作品があると何か関係があるのかしらとか、あるいはどっちが時代が古いのかとか、研究のテーマというのはそういうふうにいろいろ考えていくと無限にあるわけですね。
だからそれに応じた調査とか研究も本当にやることは無限にあります。でもそれが私たちが一番面白いと思っているところですね。
九博の歴史的背景
本当に私たちが目にするまでに長い時間と手間とかかっていて、私たちが目にすることができるんだなということがよくわかりました。ありがとうございます。続いて六葉さん質問をどうぞ。
旧博はどうして太宰府の奥に太宰府天満宮に併設するような形で建てられたんですか。独立した建物の方がお客さんからのお目も引きやすいのにというふうに思いました。
そうですね。都心部になくてちょっと離れたところにありますよね。実は明治時代に遡るんですけれども、今太宰府天満宮、当時太宰府神社というふうに呼んでましたけれども、そこで博覧会という今でいう展覧会のようなものですけど開かれました。
九州は陳勢という言い方をしますけれども、陳勢の博物館を作ろうという計画も当時ありまして、つまり明治時代から博物館を作ろうという考え方は実はあったんですね。
同じ頃に岡倉天心という日本の文化の中で大変有名な方がおられますけれども、その人も九州に博物館を作ることの必要性というのを述べていました。
九白は今年で20周年ですけど、計画はもう本当ずっと前の100年以上前からあったということなんですね。
岡倉天心というのは明治時代の美術指導家です。昔の福岡日日新聞、今の西日本新聞の紙面でも九州に博物館を作る必要がありますということを言っていた人として知られています。
それからずっと時が流れて昭和の時代になって、私も昭和生まれですけど、もう昭和は皆さんにとっては遠い昔なんですが、昭和の時代になって国とそれから地元の人たちが一体になって、やはり九州に博物館を作ろうという運動がもう一度分け起こってきました。
その時に太宰府天満宮の当時の宮司さんが土地を寄贈してくださったんです。その土地に実は博物館が建っていてということなので、なぜ博物館が太宰府にあるのかということは、長い歴史の中と昭和の歴史を合わせて考えていただくとよくわかるかなというふうに思います。
旧博の立地にはやっぱり太宰府から土地を寄贈してもらったという太宰府天満宮との関係があるなということや、天満宮や地元の人々の支えのおかげで旧博が建てられたんだなということを感じました。
はい、じゃあ浦川さん次の質問どうぞ。
はい。誰がどれくらい前から特別展示の準備を始めるんですか。
これも難しい質問なんですけれども、いろんな場合があります。
短い時は1年以内という急ピッチで作らなきゃいけない緊急事態のような時もあるんですが、普通はやっぱり3年とか5年ぐらいとかそのぐらいの時間をかけるのが一番多いかなというふうに思うんですけれども、
その展覧会の内容も研究員たち、学芸員たちが自分たちでこういうものをやりたいといって企画を作って準備をしていく場合があるのと、同時に外部の例えば西日本新聞社さんもそうなんですが、マスコミメディアの方々が展覧会の企画を持っていて、それをやりませんかというふうに提案していただくということもあります。
その準備は先ほど長くかかるということを申し上げましたけれども、その内容を自分たちで作って考えて決めていくときに、結局その展示する作品を持っている方、所蔵者の方とか、それからお寺だったり神社だったりというところに作品をこういう展覧会やりたいので貸してくださいということでお願いに上がります。
で、大きな作品とかとても重要な作品というのは輸送費がかかったり、あと輸送には必ず保険をかけなきゃいけないんですけど、保険のお金がすごくかかったりということで、実は予算の問題というのは大きな問題なんですけれども、何でもかんでも好きなもの全部借りちゃうと多分お金すごくかかっちゃってできなくなっちゃうので、予算をどのくらい使えてということを考えながら展覧会の実現に向けて今いろいろと調整をしていくという、
そういうことが実際に行われてますね。
3、4年というのは本当に長いスパンかかるんですね。
すぐ経っちゃうんです、その3、4年が。あっという間にもう始まるのみたいな。
いつも未来を見ながら仕事をしているという感じですね。
ありがとうございます。
りょうさんもちょっと関連する質問がありますよね。
作品を展示する際に他の美術館とかと取り合いにならないんですか。
いい質問ですね。
ありがとうございます。
取り合いになるんです。
それを避けるためになるべく早く準備をする。
展示の準備と作品の重要性
基本的にはですね、先にお願いをして持っている方がいいですよって言ったら優先権はそちらにある。
だけどどうしてもその後で必要になった、その作品が必要な企画っていうのが出てきた時には割り込んでいくわけですね。
割り込んでいくんだけど横から横取りするわけにはいかないので、お願いをして少し調整ができませんかとか。
1年に8週間しか展示ができないっていう展示の制限があったりするものを4週間ずつにしてもらえませんかとかそういうことをしたりしますけど、
本当はそれは最初に頼んでた人からすると結構迷惑な話ですよね。
なのでそういうことが起こらないようになるべく早く準備をして一つ一つをちゃんと固めていくっていうことが望ましいんですが、
そううまくいくことはなかなかないかなっていう時もありますね。
やっぱり他の美術館と取り合いになるので取った本勝ちみたいなそんなところがあるのは大変なんじゃないかなって思いました。
そうならないように。
先を先を見越しながら。
ありがとうございます。続いてもりょうさんからの質問ですね。お願いします。
作品を展示するときに大変なことや作品を扱うときに気をつけていることは何ですか。
作品の取り扱いと注意点
日常的に常設の展示の時もそうですが、特別展なんかで作品をよそからお借りするときは作品の状態がわからないことが多いわけですね。
その時にどういうことを気をつけるかということなんですが、古い時代の作品ですので当然壊れやすかったり、
あるいは紙とか絹の品物は破れやすかったりとかしますので取り扱いはとても注意をします。
ただしあんまり状態が悪いものっていうのはもう借りないです。
もう動かしたら壊れちゃうなって分かっているものを壊してしまうことはやっぱりできないので、そういう作品は諦めて借りないです。
個人であってもお寺や神社であっても大切に保管をしている宝物なので、当然その取り扱いは丁寧に取り扱うようにいたします。
具体的には丁寧に扱うっておっしゃったんですか。どのように扱うんですかね。手袋とかやっぱりするんですかね。
手袋ですね。大体博物館の先生の仕事っていうと白い手袋で白衣を着て物々しくやるっていうのがあったりするんですけど、ああいうふうにやるときもあります。
ただし実は私たちの中では手袋を使うケースと使わないケースと両方あって、手袋を使った方が安全な場合で、
例えば漆の製品でラデンというふうに言いますけど、表面にいろんな埋め込みの細工がしてあったりするようなもので、
手袋を使ってやっちゃうと、特に木綿の手袋を使っちゃうと糸が引っかかってラデンのところがポロッと取れちゃったりするようなことがあるので、
そういうときは手袋はしないとか、必ずもちろん手はきれいに洗ってアルコールで消毒をしますけれども、
ですから作品に応じてそれは使い分けをしています。
ただし所蔵者の方がですね、うちのは全部手袋してくださいっていうふうに言ってこられることもあるので、それはもう持ち主の方の考えなのでそれに従うようにします。
あとはそのものを持つときなんですけど、例えば皆さんが家で夜間を持つときにどこを持つかって言ったら取っ手を持ちますよね。
当たり前ですよね。身の方を持ったら火傷しちゃいますよね。
なんですけど、実は私たち文化財でその夜間のような形をしたものを持つときには取っ手は絶対持たない。
絶対とは言わないけどほぼ絶対持たない。
なんでかって言うとそこが一番壊れやすいから。
身の方は下から支えてあげるように持てば一番多分安全ですよね。
そういうふうに一番安全な持ち方っていうのを常に私たちは考えていて、
あとはそのものを触るときにどこが壊れやすいかっていうのを常に注意をして見ているようにします。
私の専門の仏像だと木を繋いで作る寄せ木っていうふうに言うんですけど、寄せ木とか木を剥ぐって言うんですけれども、
その繋いでいるところを両側でそれぞれ持ってしまって力のかかり方が変わるとそこでパキって割れちゃいますよね。
だからそこに力がかからないようにどうやって持つのが一番安全かとかっていうことを常に知識とそれから実物の調査をして、
頭に入れながら自分で持つときは気をつけるし、あと作業する方に持ってもらうときにはここは持たないでくださいとか、
このように持ってくださいっていうことを指示しながらやっていくっていうそういう作業の積み重ねですね。
イメージ的に全部の作品に手袋をはめて定調に扱うのかなと思っていたんですけど、
お話を伺って作品に応じて手袋をはめたり外したりで、
なんかいろいろと柔軟な対応が大切なんじゃないかなと思いました。
はい、その通りです。
聞いてるだけで冷や冷やしましたね。持ち運ぶの話。
小泉副館長、子供記者卒業生の浦川さん、涼さんありがとうございました。
次回も旧博について引き続き聞いていきたいと思います。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
16:19
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