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2025-03-11 31:50

111エドガー・アラン・ポー「黒猫」(朗読)

111エドガー・アラン・ポー「黒猫」(朗読)

黒猫の復讐。可愛いんだけどその態勢を写真で撮るの難しいよね。今回も寝落ちしてくれたら幸いです。


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サマリー

エドガー・アラン・ポーの短編小説「黒猫」において、主人公は自己の堕落と罪の意識に苦しみながら、不幸な運命に翻弄されています。この物語では、愛する猫に対する乱暴な行為が引き起こす恐怖と最終的な破滅が描かれています。主人公は黒猫への憎しみから次第に破滅的な行動をとり、猫との関係が悪化する中で内なる恐怖や罪悪感が深まっています。そして、ついには凶悪な犯罪を犯すことになります。「黒猫」では、暗い物語が展開され、猫と人間の間で繰り広げられる恐怖が描かれています。

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寝落ちの本ポッドキャスト。こんばんは、Naotaroです。
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エッセイには面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
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さて、今日はですね、エドガー・アラン・ポーの黒猫です。
主人公の告白
エドガー・アラン・ポーは、読み上げた記憶がありますが、
エドガー・アラン・ポーは、初めてですかね。
はい。
エドガー・アラン・ポー、アメリカ合衆国の小説家、詩人、評論家。
代表作には、アッシャー家の崩壊、黒猫、これ今日読みます。
モルグガイの殺人などがあり、最高傑作としては盗まれた手紙があるそうで、
これらの小説に登場する名探偵、C・オーギュスト・デュパン。
名探偵の代名詞、シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロなどに多大な影響を与えたとされるそうです。
影響力はあんぱない。
エドガー・アラン・ポーってどんな人とか出てくるの。
根っこの部分の人ってことですね。
この遥か先にコナン君がいるわけですね。
東の敬語のノミネートとか、エドガー賞ってのがあるんだな。
と、その中で今日は黒猫を読んでいこうと思います。
初めて読むよ。
どんな内容なんでしょうか。
外国の作品なので、佐々木直次郎役となっております。
それでは参ります。
黒猫。
私がこれから書こうとしている極めて機械な、また極めて素朴な物語については、
自分はそれを信じてもらえるとも思わないし、そう願いもしない。
自分の感覚でさえが、自分の経験したことを信じないような場合に、他人に信じてもらおうなどと期待するのは、
本当に正気の沙汰とは言えないと思う。
だが私は正気を失っているわけではなく、また決して夢見ているのでもない。
しかし明日私は死ぬべき身だ。
で、今日のうちに自分の魂の重荷を下ろしておきたいのだ。
私の第一の目的は、一連の単なる過程の出来事を、はっきりと、簡潔に、注釈抜きで世の人々に示すことである。
それらの出来事は、その結果として私を恐れさせ、苦しめ、そして破滅させた。
だが私はそれをくどくどと説明しようとは思わない。
私にはそれはただもう恐怖だけを感じさせた。
多くの人々には恐ろしいというよりも怪奇、バロックなものに見えるであろう。
今後あるいは誰か知者が現れてきて、私の幻想を単なる平凡なことにしてしまうかもしれん。
誰か私などよりももっと冷静な、もっと論理的な、もっとずっと興奮しやすくない知性人が、
私が意識をもって述べる事柄の中に、ごく自然な原因・結果の普通の連続以上のものを認めないようになるであろう。
子供の頃から私は大人しくて、情け深いタチで知られていた。
私の心の優しさは、仲間たちにからかわれるくらいに際立っていた。
とりわけ動物が好きで、両親も様々な生き物を私の思い通りに飼ってくれた。
私は大抵、それらの生き物を相手にして、時を過ごし、それらに食べ物をやったり、それらを愛護したりする時ほど楽しいことはなかった。
この特質は、成長するとともにだんだん強くなり、大人になってからは自分の主な楽しみの源泉の一つとなったのであった。
忠実な利己な犬を可愛がったことのある人には、そのような愉快さの性質や強さをわざわざ説明する必要はほとんどない。
動物の非利己的な自己犠牲的な愛の中には、単なる人間のさもしい友情や、薄っぺらな真偽をしばしばなめたことのある人の心を直に討つ何者かがある。
私は若い頃結婚したが、幸いなことに妻は私と性の合う気質だった。
私が家庭的な生き物を好きなのに気がつくと、彼女は檻さえあればとても気持ちのいい種類の生き物を手に入れた。
私たちは鳥類や金魚や、一匹の立派な犬やウサギや、一匹の小猿や、一匹の猫などを飼った。
この最後のものは非常に大きな美しい動物で、体中黒く驚くほどに利口だった。
この猫の知恵のあることを話すときには、心ではかなり迷信にかぶれていた妻は、
黒猫というものがみんな魔女が姿を変えたものだという、あの昔からの世間の言い伝えをよく口にしたものだった。
もっとも彼女だっていつまでもそんなことを本気で考えていたというのではなく、私がこの事柄を述べるのはただ、ちょうど今ふと思い出したからにすぎね。
プルートというのがその猫の名であった。
私のお気に入りであり、遊び仲間であった。
食べ物をやるのはいつも私だけだったし、彼は家中私の行くところへ、どこへでも一緒に来た。
オーライへまでついてこないようにするのには、かなり骨が折れるくらいであった。
私と猫との親しみはこんな具合にして数年間続いたが、その間に私の気質や性格は一般に、
酒癖という悪気のために急激に悪い方へ、白状するのは恥ずかしいが変わってしまった。
私は一日一日と気難しくなり感触持ちになり、他人の感情などちっとも構わなくなってしまった。
妻に対しては乱暴な言葉を使うようになった。
姉妹には彼女の体に手を振り上げるまでになった。
飼っていた生き物も、もちろんその私の性質の変化を感じさせられた。
私は彼らを構わなくなっただけではなく虐待した。
けれどもウサギや猿やあるいは犬でさえも、何気なく又は私を慕ってそばへやってくると遠慮なしにいじめてやったものだったのだが、
プルートをいじめないでおくだけの心遣いはまだあった。
しかし私の病気は募ってきて、ああアルコールのような恐ろしい病気が他にあろうか。
ついにはプルートでさえ、今では歳をとってしたがっていくらか怒りっぽくなっているプルートでさえ私の不機嫌の戸ばっちりを受けるようになった。
ある夜、町のそちこちにある自分の行きつけの酒場の一つからひどく酔っ払って帰ってくると、その猫がなんだか私の前を避けたような気がした。
私は彼をひっとらえた。
その時彼は私の手荒さにびっくりして歯で私の手にちょっと傷をつけた。
とたちまち悪魔のような憤怒が私に乗り移った。
私は我を忘れてしまった。将来の優しい魂はすぐに私の体から飛び去ったようであった。
そして人種におだてられた悪鬼以上の憎悪が、体のあらゆる筋肉をブルブル震わせた。
私はチョッキのポケットからペンナイフを取り出し、それを開き、そのかわいそうな動物ののどをつかむと、ゆうゆうとその眼下から片目をえぐりとった。
この憎むべき強行をしるしながら、私は表をあからめ、体がほてり身ぶるいする。
朝になって理性が戻った時、一晩眠って前夜の乱行のどっけが消えてしまった時、
自分の犯した罪に対して半ば恐怖の半ば快感の情を感じた。
がそれもせいぜい弱い曖昧な感情で心まで動かされはしなかった。
私は再び無節制になって、まもなくその行為のすべての記憶を酒に紛らしてしまった。
そのうちに猫はいくらかずつ回復してきた。
目のなくなった眼下はいかにも恐ろしい様子をしていたが、もう痛みは少しもないようだった。
彼は元通りに家の中を歩き回っていたけれども、当たり前のことであろうが、私が近づくとひどく恐ろしがって逃げていくのだった。
私は前にあんなに自分を慕っていた動物がこんなに明らかに自分を嫌うようになったことを、
はじめは悲しく思うくらいに昔の心が残っていた。
しかしこの感情もやがて感触に変わっていった。
それからまるで私を最後の取り返しのつかない破滅に陥らせるためのように天の邪悪の心持ちがやってきた。
この心持ちを哲学は少しも認めてはいない。
けれども私は自分の魂が生きているということと同じくらいに、天の邪悪が人間の心の原始的な衝動の一つ、
人の性格に命令する分かつことのできない本源的な性能もしくは感情の一つであるということを確信している。
してはいけないというただそれだけの理由で、自分が邪悪なあるいは愚かな行為をしていることに人はどんなにかしばしば気づいたことであろう。
人は掟を単にそれが掟であると知っているだけのためにその最善の判断に逆らってまでも、その掟を破ろうとする永続的な成功をもってはいはしないだろうか。
この天の邪悪の心持ちが今言ったように、私の最後の破滅を来たしたのであった。
何の罪もない動物に対して自分の加えた生涯をなおも続けさせ、とうとう仕遂げさせるように私をせっついたのは、
魂の自らを苦しめようとする、それ自身の本性に暴虐を加えようとする、悪のためにのみ悪をしようとする、この不可解な絶望であったのだ。
結末の恐怖
ある朝礼前と私は猫の首に輪縄をはめて一本の木の枝に吊るした。
目から涙を流しながら心に忠切な快感を感じながら吊るした。
その猫が私を慕っていたということを知っていればこそ、猫が私を怒らせるようなことを何一つしなかったということを感じていればこそ、吊るしたのだ。
そうすれば自分は罪を犯すのだ。
自分の不滅の魂を、いとも慈悲深く、いとも恐るべき神の無限の慈悲の及ばない彼方へ置く。
もしそういうことがあり得るなら、ほどにも危うくするような極悪罪を犯すのだということを知っていればこそ、吊るしたのだった。
この残酷な行為をやった日の晩、私は火事だという叫び声で眠りから覚まされた。
私の寝台のカーテンに火がついていた。
家全体が燃え上がっていた。
妻と召使いと私自身とはやっとのことでその火災から逃れた。
何もかも焼けてしまった。
私の全財産はなくなり、それ以来私は絶望に身を任せてしまった。
この災難とあの恐慌との間に因果関係をつけようとするほど私は心の弱いものではない。
しかし私は事実のつながりを詳しく述べているのであって、一つの勘でも不完全にしておきたくないのである。
火事の次の日、私は焼け跡へ行ってみた。
壁は一箇所だけを覗いてみんな焼け落ちていた。
この一箇所というのは家の真ん中あたりにある私の寝台の灯板に向かっていたあまり熱くない仕切り壁のところであった。
ここの漆喰だけはだいたい火の力に耐えていたが、この事実を私は最近そこを塗り替えたからだろうと思った。
この壁の周りに真っ黒に人がたかっていて、多くの人々がその一部分を綿密な熱心な注意をもって調べているようだった。
妙だなあ、不思議だねえ、という言葉やその他それに似たような文句が私の好奇心をそそった。
近づいてみると、その白い表面に薄肉ぼりに掘ったかのように巨大な猫の姿が見えた。
その後は全く驚くほど正確に現れていた。
その動物の首の周りには縄があった。
最初この妖怪というのは私にはそれ以外のものとは思えなかったからだが、
お見たとき私の驚愕と恐怖とは非常なものだった。
しかしあれこれと考えてみてやっと気が休まった。
猫が家に続いている庭に吊るしてあったことを私は思い出した。
火事の警報が伝わるとこの庭はすぐに大勢の人でいっぱいになり、
その中の誰かが猫を木から切り離して開いていた窓から私の部屋の中へ投げ込んだものに違いない。
これはきっと私の寝ているのを起こすためにやったものだろう。
そこへ他の壁が落ちかかって私の残虐の犠牲者をその塗りたての漆喰の壁の中へ押し付け、
そうしてその漆喰の石灰と火炎と死骸から出たアンモニアとで自分の見たような像が出来上がったのだ。
今述べた驚くべき事実を自分の良心に対しては全然出来なかったとしても、
理性に対してはこんなに容易く説明したのであれが、
黒猫との出会い
それでもそれが私の想像に深い印象を与えたことに変わりはなかった。
いく月もの間、私はその猫の現像を払い抜けることが出来なかった。
そしてその間、開墾に似ているがそうではないある漠然とした感情が私の心の中へ戻ってきた。
私は猫のいなくなったことを悔やむようにさえなり、
その頃、行きつけの握手でその代わりになる同じ種類の、
またいくらか似たような毛並みのものがいないかと自分の周りを探すようにもなった。
ある夜、極太地の悪い酒場に半ば漠然と腰掛けていると、
その部屋の主な家具を担っているジンシュかラムシュの大樽の上に、
なんだか黒いものがじっとしているのに突然注意を引かれた。
私はそれまで数分間、その大樽のてっぺんのところをじっと見ていたので、
今、私を驚かせたことは、自分がもっと早くそのものに気がつかなかったという事実なのであった。
私は近づいていって、それに手を触れてみた。
それは一匹の黒猫。非常に大きな猫。で、フルートぐらいの大きさは十分あり。
一つの点を除いて、あらゆる点で狩りにとてもよく似ていた。
フルートは体のどこにも白い毛が一本もなかったが、
この猫は胸のところがほとんど一面に、ぼんやりした形ではあるが大きな白い半点で覆われているのだ。
私が触ると、その猫はすぐに立ち上がり、盛んにゴロゴロ陰燈を鳴らし、
私の手に体をすりつけ、私が目をつけてやったのを喜んでいるようだった。
これこそ私の探している猫だった。
私はすぐにそこの主人にそれを飼いたいと言い出した。
が主人はその猫を自分のものだとは言わず、
ちっとも知らないし、今までに見たこともないというのだった。
私はアイブを続けていたが、家へ帰りかけようとすると、その動物はついてきたいような様子を見せた。
で、ついてくるままにさせ、歩いていく途中でおりおりかがんで軽く手で叩いてやった。
家へ着くとすぐに居ついてしまい、すぐ妻の非常なお気に入りになった。
私はというと、まもなくその猫に対する嫌悪の情が心の中にわき起こるのに気がついた。
これは自分の予想していたこととは正反対であった。
しかし、どうしてだかまたなぜだかは知らないが、猫がはっきり私を好いていることが私をかえって嫌がらせ、うるさがらせた。
だんだんにこの嫌でうるさいという感情が麹じて激しい憎しみになっていった。
私はその動物を避けた。
ある懺悔の念頭、以前の残酷な行為の記憶とが私にそれを肉体的に虐待しないようにさせたのだ。
数週の間、私は鬱とかその縦荒なことはしなかったが、次第に次第にごくゆっくりと、言いようのない嫌悪の情をもってその猫を見るようになり、
悪役の息吹から逃げるようにその忌むべき存在から無言のままで逃げ出すようになった。
疑いもなく、その動物に対する私の憎しみを増したのは、それを家へ連れてきた翌朝、それにもプルートのような片目がないということを発見したことであった。
けれどもこの事柄のために、それはますます妻に可愛がられるだけであった。
猫への憎しみ
妻は、以前は私の立派な特徴であり、また多くの最も単純な、最も純粋な快楽の源であったあの慈悲深い気持ちを、前にも言ったように多分に持っていたのだ。
しかし私がこの猫を嫌えば嫌うほど、猫の方はいよいよ私を救うようになってくるようだった。
私の後を付け回り、そのしつこさは読者に理解してもらうのが困難なくらいであった。
私が腰かけている時にはいつでも椅子の下にうずくまったり、あるいは膝の上へ上がってしきりにどこへでも忌々しくじゃれついたりした。
立ち上がって歩こうとすると、両足の間へ入って私を倒しそうにしたり、あるいはその長い鋭い爪を私の着物に引っ掛けて胸のところまでよじ登ったりす。
そんな時には殴り殺してしまいたかったけれども、そうすることを差し控えたのはいくらか自分の以前の罪悪を思い出すためであったが、主としてはあっさり白状してしまえばその動物が本当に怖かったためであった。
その怖さは肉体的災害の怖さとは少し違っていた。
だ、それでもその他にそれを何と説明してよいか私にはわからない。
私は告白するのが恥ずかしいくらいだが、そうだ、この重罪人の看房の中にあってさえも告白するのが恥ずかしいくらいだが、その動物が私の心に起こさせた恐怖の念は、実にくだらない一つの妄想のために強められていたのであった。
その猫と、前に殺した猫との唯一の目に見える違いといえば、さっき話したあの白い毛の反転なのだが、妻はその反転のことで何度か私に注意していた。
この反転は大きくはあったが、もとは大変ぼんやりした形であったということを読者は記憶せられるであろう。
ところがだんだんに、ほとんど目につかないほどにゆっくりと、そして長い間、私の理性はそれを気の迷いだとして否定しようと焦っていたのだが、それがとうとう全くきっぱりした輪郭となった。
それは今や、私がなお幽夢を見ぶるいするようなものの格好になった。
そしてとりわけこのために、私はこの怪物を嫌い、恐れ、できるなら思い切ってやっつけてしまいたいと思ったのであるが、それは今や恐ろしい、ものすごいものの公衆大の形になったのだ。
おお、恐怖と罪悪との苦悶と死との痛ましい恐ろしい敬愚の形になったのだ。
そして今こそ私は実に単なる人間の惨めさ以上に惨めであった。
一匹の畜生が、その仲間の奴を私は呆然と殺してやったのだ。
一匹の畜生が私に、糸高き神の形にかたどって作られた人間である私に、かくも多くの耐えがたい苦痛を与えるとは。
ああ、昼も夜も私はもう安息の恩恵というものを知らなくなった。
昼間赤の動物がちょっとも私を一人にしておかなかった。
夜には私は異様もなく恐ろしい夢から毎時間ぎょっとして目覚めると、そいつの熱い息が自分の顔にかかり、
そのどっしりした重さが私には払い落とす力のない悪魔の化身が、いつもいつも私の心臓の上に押しかかっているのだった。
こういった過酌に押しつけられて、私のうちに少しばかり残っていた善も敗北してしまった。
邪悪な考えが私の唯一の友となった。
最も暗黒な、最も邪悪な考えが、私のいつもの気難しい気質はますます募って、
あらゆる者やあらゆる人を憎むようになった。
そして今では、幾度も突然に起こる抑えられぬ激怒の発作に盲目的に身を任せたのだが、何の苦情も言わない私の妻は、
ああ、それを誰よりもいつも酷く受けながら辛抱強く我慢したのだった。
ある日、妻は何かの家の用事で貧乏のために私たちが仕方なく住んでいた古い穴蔵の中へ、私と一緒に降りてきた。
猫もその急な怪談を私の後へついて降りてきたが、もう少しのことで私を真っ逆さまに突き落とそうとしたので、私はかっと激怒した。
怒りのあまり、これまで自分の止めていたあの子供らしい怖さも忘れて斧を振り上げ、その動物をめがけて一撃に打ち下ろそうとした。
それを自分の思った通りに打ち下ろしたなら、もちろん猫は即座に死んでしまったろう。
が、その一撃は妻の手でさえぎられた。
この邪魔立てに悪気以上の憤怒に駆られて、私は妻に掴まれている腕を引き離し、
斧を彼女の脳天に打ち込んだ。
彼女はうめき声も立てずにその場で倒れて死んでしまった。
この恐ろしい殺人をやってしまうと、私はすぐに極めて慎重に、死体を隠す仕事に取り掛かった。
昼でも夜でも、近所の人々の目に留まる恐れなしには、それを家から運び去ることはできないということは私にはわかっていた。
いろいろな計画が心に浮かんだ。
あるときは、死骸を細かく切って火で焼いてしまおうと考えた。
またあるときには、穴ぐらの床にそれを埋める穴を掘ろうと決心した。
さらにまた、庭の井戸の中へ投げ込もうかとも、商品のように箱の中へ入れて普通やるように荷造りして運搬人に家から持ち出させようかとも考えてみた。
最後に、これらのどれよりもずっといいと思われる工夫を考えついた。
中世紀の僧侶たちが彼らの犠牲者を壁に塗り込んだと伝えられているように、それを穴ぐらの壁に塗り込むことに決めたのだ。
そういった目的には、この穴ぐらは大変適していた。
そこの壁は存在にできていたし、近頃粗い漆喰を一面に塗られたばかりで、空気が湿っているためにその漆喰が固まっていないのだった。
その上に一方の壁には、穴ぐらの他のところと同じようにしてある見せかけだけの煙突か暖炉のためにできた突き出た一箇所があった。
ここのレンガを取り除けて紫外を押し込み、誰の目にも何一つ怪しいことの見つからないように、前の通りにすっかり壁を塗りつぶすことは造作なくできるに違いないと私は思った。
そしてこの予想は外れなかった。
金手粉を使って私は容易くレンガを動かし、内側の壁に死体を注意深く寄せかけるとその位置に支えておきながら、大した苦もなく全体を元の通りに積み直した。
できる限りの用心をしてモルタルと砂と毛髪等を手に入れると、前のと区別のつけられない漆喰をこしらえ、それで新しいレンガ細工の上をとても念入りに塗った。
恐怖の末の犯罪
仕上げてしまうとバンジュがうまくいったのに満足した。
壁には手を加えたような様子が少しも見えなかった。
床の上のくずはごく注意して拾い上げた。
私は得意になって辺りを見回して、こう独り言を言った。
さあ、これで少なくとも、今度だけは俺の骨よりも無駄じゃなかったぞ。
次に私のやることは、かくまでの不幸の原因であったあの獣を探すことであった。
とうとう私はそれを殺してやろうと固く決心していたからである。
その時、そいつに出会うことができたなら、そいつの命はないに決まっていた。
が、そのずるい動物は私のさっきの怒りの激しさにびっくりしたらしく、私が今の気分でいるところへは姿を見せるのを控えているようであった。
その嫌でたまらない生き物がいなくなったために、私の胸に生じた深い、この上なく幸福な安堵の感じは、記述することも想像することもできないくらいである。
猫はその夜中姿を現さなかった。
で、そのためにあの猫を家へ連れてきて以来、少なくとも一晩だけは私はぐっすりと安らかに眠った。
そうだ、魂に人殺しの重荷を負いながらも眠ったのだ。
二日目も過ぎ、三日目も過ぎたが、それでもまだ私の化石者は出てこなかった。
もう一度私は自由な人間として呼吸した。
あの怪物は永久にこの屋内から逃げ去ってしまったのだ。
私はもうあいつを見ることはないのだ。私の幸福はこの上もなかった。
自分の強行の罪はほとんど私を不安にさせなかった。
兄さんの尋問は受けたが、それには造作なく答えた。
家宅捜索さえ一度行われた。が、無論、何も発見されるはずがなかった。
私は自分の未来の幸運を確実だと思った。
殺人をしてから四日目に、全く思いがけなく一隊の警官が家へやってきて、
再び屋内を厳重に調べにかかった。
けれども自分の院とかの場所はわかるはずがないと思って、私はちっともドギマギしなかった。
警官は私に彼らの造作について来いと命じた。
彼らは隅々までも残る隈なく探した。
とうとう三度目か四度目に穴蔵へ降りて行った。
私は体の筋一つ動かさなかった。
私の心臓は罪もなくて、眠っている人の心臓のように穏やかに行動していた。
私は穴蔵を端から端へと歩いた。
腕を胸の上で組み、あちこち悠々と歩き回った。
警官はすっかり満足して引き上げようとした。
私の心の歓喜は抑えきれないくらい強かった。
私は外科のつもりでたった一言でも言ってやり、
また自分の潔白を彼らに確かの上にも確かにしてやりたくてたまらなかった。
恐怖の始まり
皆さん、ととうとう私は一向が階段を上りかけたときに言った。
お疑いが晴れたことを私は嬉しく思います。
皆さん方のご健康をお祈り、それからも少し礼儀をおもんぜられんことを望みます。
ときに皆さん、これは、これはなかなかよくできている家ですぜ。
何かをすらすら言いたい激しい欲望を感じて、私は自分の口にしていることがほとんどわからなかった。
素敵によくできている家だと言っていいでしょうな、この壁は。
お借りですか、皆さん。
この壁は頑丈にこしらえてありますよ。
と言って、ただきちがいじみた空い針から手にした杖でちょうど
愛妻の死骸が内側に立っている部分のレンガ細工を強く叩いた。
だが神よ、魔王の牙より私を守り、また救いたまえ。
私の打った音の反響が静まるか静まらぬかに、その墓の中から一つの声が私に答えたのであった。
はじめは子供のすすり泣きのように何かで包まれたような切れ切れな叫び声であったが、
それから急に高まって全く異様な人間のものではない一つの長い高い連続したかなきり声となり、
地獄に落ちてもだい苦しむ者と地獄に落として喜ぶ悪魔との喉から一緒になって
ただ地獄からだけ聞こえてくるものと思われるような半ば恐怖の半ば勝利の号泣、
どうこくするような悲鳴となった。
私自身の気持ちはかたるも愚かである。
気が遠くなって私は反対の側の壁へとよろめいた。
一瞬間階段の上にいた一行は、極度の恐怖と憎悪とのためにじっと立ち止まった。
次の瞬間に幾本かのたくましい腕が壁をせっせと崩していた。
壁はそっくり落ちた。
もうひどく不乱して血痕がかたまりかけている死骸がそこにいた人々の眼前にすっくと立った。
その頭の上に赤い口を大きく開け、乱々たる片目を光らせてあの忌まわしい獣が座っていた。
そいつの観察が私をおびき込んで人殺しをさせ、そいつの立てた声が私を光景裏に引き渡したのだ。
その怪物を私はその墓の中へ塗りこめておいたのだった。
1951年発行。
物語の反響
新庁舎。
新庁文庫。
黒猫。
黄金虫。
より独領読み終わりです。
はい。
なんだよ。猫殺すなよ。
ねえ、何やってんだよこいつは。
ああ、違うか。そういう話じゃないか。
うーん。
うーん。
これが全ての怪奇物の祖たる江戸川アランポーね。
暗いね。
猫殺して人も殺した。嫁も殺したもんね。
ったくもう何やってんだよ。
何考えてたらこんなストーリー書くんだよ。
猫の片目えぐる描写とかなんか1日読み切れなかったですね。
2日書けました。1回やめました。
もうやめだって。
だって僕これ読んでるとき周りに猫いますからね。
はあ。
江戸川アランポー危険だな。
てかうっかり猫題材にする話と怖い作家の掛けざま危険だな。
だってこれ全体で30分しかないですけど、累計延べ3日?4日?
4日ぐらいかかりましたね。収録終わるのに。
全然進んでいかない感じ。
はあ。
次はもう少し明るいのを読もうと思います。
読んでみるまで分かりません。明るいかどうか。
無事に寝落ちできた方も最後までお付き合いいただいた方も 大変お疲れ様でした。
今日のところはこのへんで。また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
31:50

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