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ちょっと想像してみてほしいんですけど、表天下30度の国間の街に家族で引っ越しで、しかも家の園土地からは、野生のスカンクが落ちてくるかもしれないっていう。
なかなかすごい状況ですよね。 これ普通に考えたら、完全にサバイバルの悪夢じゃないですか。絶対に避けたい環境のはずなんですけど。
でも、今日私たちが深掘りする今回のディープダイブの資料の筆者によれば、新しい生活における一番の脅威っていうのは、そんな大自然の猛威でも野生動物でもなかったって言うんですよね。
そうなんですよ。もっと身近で、もっと恐ろしいものだったんですよね。
それがなんと、現地の日本人コミュニティだったと。これすごくないですか。
いや本当に。今回のディープダイブで扱うのは、アメリカのミシガン州に移住した日本人家族。筆者のナッキー氏と、当時13歳だった息子のゲンタ君が経験したお話なんですけど。
単なる海外生活のノウハウ本とかではなくて、物理的な環境から目に見えない人間関係の罠まで、人間が未知の環境にどうやって適応していくかを描いた非常に興味深いケーススタディになっています。
いや本当に面白かったです。新しい国に住むって単に住所が変わるだけじゃなくて、重力とか呼吸のルールが全く違う別の惑星に着陸するようなものじゃないですか。
まさに別の惑星ですね。
その惑星で生き抜くための戦略、そして異文化における真の居心地の良さとは何なのか。まずは彼らが最初に直面した物理的な惑星の違い、つまりアメリカンな住宅事情のカルチャーショックから見ていきたいんですが。
到着して早々ですね、彼らは玄関の消失という謎に直面するんです。
玄関の消失。
はい。筆者が住むことになったのはロータリー状、つまり行き止まりになっている完成な住宅街なんですが。
あのクルドサックって呼ばれるやつですね。
そうですそうです。で、家々の玄関ドアはお互いから見えないように絶妙に角度をずらして配置されているんですよ。
広大な国土を持つアメリカならではのプライバシーへの強いこだわりを感じますよね。
すごく考えられた設計なんです。
でもここからがこの話の奇妙なところで、せっかく立派な玄関ドアがあるのに、なんと誰もそのドアを使わないんですよね。
そうなんです。誰も使わないんです。
建築のコスプレじゃないんだから、なんで玄関を使わないんですかって話ですよね。
その最大の理由は気候と車社会の組み合わせなんですよ。
気候と車社会。
はい。ミシガン州の冬はとてつもなく過酷で、氷点下は当たり前なんですね。
そんな環境で、毎朝出勤前に車の雪下ろしとか下取りをするのは現実的ではありません。
いやー氷点下30度で外に出て車の雪下ろしとか、想像しただけでも凍えそうです。
ですよね。だからこの地域の家には屋内ガレージが必須条件なんです。
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筆者の家にも白い板張りの外観に2台分の巨大な屋内ガレージが備わっていました。
なるほど。つまり家族全員が家の中からガレージに出てそのまま車に乗り込んで外出するから、外の玄関を歩いて通る機会がないと。
そういうことです。スクールバスに乗る子供以外は本当に誰も使わないってことですね。
スクールバスの子供だけが唯一玄関から外に出るわけですね。
はい。その結果としてガレージが自絶状の本当の玄関に昇格してしまって、通りに面した立派なドアは実用性のないただの飾りになってしまうんです。
いやー面白いですね。誰も玄関を使わないからこそ起きる小包み問題のエピソード、あれには笑っちゃいました。
あーあの置き配の話ですね。
はい。配達業者が玄関前に荷物を置いていくのに家族はみんなガレージから出入りするから荷物が届いていることに何日も気づかないっていう。
えー旅行から帰ってきたら置き配された小包みの上にご丁寧に玄関マットがかぶせられていたって言ってましたね。
いやいや全然隠しきれてないですからねそれ。マットが不自然に盛り上がってるだけじゃないですか。
夫婦配達員なりのあの盗難防止の気遣いだったんでしょうね。誰も歩いていないからこそ成立するのどかすぎる風景です。
ほんとですね。
そして人間の動線がすべてガレージに吸い込まれる一方で、家の裏側には全く別の壮大な空間が広がっているんです。
はいはいバックヤードつまり裏庭ですね。
ええこれがまた企画外なんですよ。
テニスコート3面分の広さがある裏庭ってちょっと日本の感覚だと想像つかないですよね。
しかも隣の家との境界線はちょっとした溝があるだけで柵もないんですよね。
そうなんです。50メートル先にある裏の家のウッドデッキまでスコーンと見渡せてしまうんです。
13歳の息子さんも最初は喜んで飛び出したものの、あまりに広すぎてどうやって遊べばいいのかわからないってすぐに家に戻ってきちゃったそうですし、広すぎる空間って逆に人間を不安にさせるんですね。
実はこのバックヤードのあり方というのは文化的な空間認識の違いを拙実に表しているんです。
文化的な空間認識ですか。
はい。例えば欧米、特にイギリスのガーデンと比較するとその違いが際立ちます。
イギリスの庭園ですね。
イギリス人は限られた空間で春から秋にかけて色彩や畑を緻密に計算して花壇を作り上げるガーデニングに情熱を注ぎますよね。
すごく計算し尽くされているイメージがあります。
つまり庭を完全にコントロールして美的に支配しようとするわけです。
資料にもありましたけどイギリス人の先生が帰国するときに故郷の庭が恋しいと言い残したエピソードがありましたね。
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ええ。彼らにとって庭は単なる家の敷地じゃなくて人生を投影する作品みたいなものなんですよね。
でもアメリカは違うと。
そうなんです。イギリスを源流とする移民が多くを占めるアメリカにおいてそのガーデニング文化は驚くほど衰退しているんです。
それはなぜなんでしょうか。
広大な大陸に移り住んだ彼らは自然を細部まで美しくコントロールしきることを諦めて空間をただオープンで実用的なもの、つまりヤードとして扱うようになったんです。
なるほど。
私はこれを大陸化という精神的なシフトだと捉えています。
大陸化。でもちょっと待ってください。
自然のコントロールを手放したって言いますけど、アメリカの田舎の人たちって夏になると毎週月ものすごい護音を立てて巨大な常用芝刈り機に乗り回してますよね。
ええ。走らせてますね。
人間がやることといえばひたすら芝を刈るだけっていう。あれってある意味で究極の自然への支配じゃないですか。コントロールを手放したわけじゃない気がするんですが。
いや、それは非常に鋭い指摘です。確かに彼らは芝を刈ります。
しかしそれは微的なコントロールではなく機能的なコントロールなんですよ。
機能的なコントロール。
はい。彼らが求めているのはバーベキューをしたり子供が走り回ったりするための平らで安全なキャンバスとしての表面的な実用性なんです。
ああ、なるほど。花の色や配置にこだわるような精緻な支配じゃなくて、とにかく面を整えるだけということですか。
そうです。そしてそのキャンバスの境界線は開けっぱなしにして野生とつながったままにしているんです。
なるほど。表面だけは人間の使い勝手のいいように整えるけど、外枠のバリアは張らないんだ。
だからこそあのバックヤードには鹿やウサギ、リス、夜にはアライグマやオポッサムまで野生動物が当たり前のように入り込んでくる動物の楽園になっているわけです。
そういうことなんですね。自然を完全に締め出すんじゃなくて、野生と隣り合わせのまま放置していると。でもその野生が牙を剥くのがミシガンの過酷な浮遊ですよね。
ええ、ここからが一気にサバイバルの話になってきます。
のどかな売れ庭の話から一転して、今度は家の中にある暖炉が精子を分けるサバイバルツールとして登場するっていう。
そうなんです。ミシガンの家には強力なセントラルヒーティングが完備されているんですが、リビングにはクラシックな暖炉も備え付けられています。
おしゃれですよね暖炉。
でも普段使いするには薪の準備も灰の掃除も面倒なので、多くの家庭はただのインテリアとして放置しがちなんです。
まあスイッチ一つで家中温かくなるならわざわざ薪なんて燃やさないですよね。
ところが実はこの暖炉、冬場には絶対に欠かせない命綱なんですよ。
命綱ですか。
はい。アメリカのインフラって結構脆くて、停電が頻繁に起きるんですよね。しかも復旧に数日から1週間かかることもあるんです。
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1週間も?
ええ。ミシガンの冬にサンパが来て氷点下30度になった時、セントラルヒーティングが止まったらどうなるか。
いや文字通り投資の危険がありますよね。
そうなんです。実際にホテルに避難する人も多いですが、もし逃げ遅れたり道が凍結して動けなかったりした場合、自力で熱源を確保しなければならない。そのための暖炉なんです。
ロマンチックなインテリアだと思っていたものが、実は極限状態を生き延びるためのサバイバル設備だったと。
二面性があるわけですね。
でもこの家を借りる時に、親さんから言われた警告がまたすごいんですよね。火の不始末に気をつけろとか、一酸化炭素中毒に注意しろとか、そういう実用的な話じゃなかった。
ええ。暖炉の煙突からスカンクが落ちてくることがあるから気をつけてね、という衝撃的な一言でした。
サンタクロースの代わりにあの強烈な悪臭を放つスカンクが落ちてくるってどういうことですか。しかも氷点下30度のサバイバル生活の最中に。
本当に予想外のリスクですよね。
でも私がこの資料ですごく惹かれたのは筆者のナッキーさんが、その悪臭の恐怖よりもそんな規格外のトラブルが起きるかもしれない環境にワクワクしたと語っているところなんです。だからこの家を選んだんだと。
彼女は予測可能で無菌状態のような安全な環境よりも、未知の変数が飛び込んでくるワイルドな環境をあえて面白がったんですね。物理的なリスクを受け入れる弾力があったといえます。
煙突からスカンクが降ってくるような物理的なサバイバル環境をあえて選んだ。でもこれって本当に皮肉な話で。
と言いますと。
そのワイルドな自然環境を笑顔で受け入れた筆者が、13歳の息子の学校を選びという社会的なサバイバルにおいては、全く別のもっと巧妙で恐ろしい脅威に直面することになるんですよね。
ここからが目に見えない社会的環境、つまり人間関係の罠についての分析になります。
ここからが本番ですね。
ご主人の勤務先はデトロイト近郊の富裕層エリアで治安も良く学校の評判もトップクラスでした。
最高の条件じゃないですか。治安も良くて教育水準も高いなら普通は迷わずその地域の学校に入りますよね。
ところがその地域には白人が多すぎるという懸念がありました。
白人が多すぎる。
富裕層の郊外都市というのは他の人種や多様な文化に慣れていない人が多い傾向があるんです。
そこへ英語力がゼロの13歳のアジア人中学生がたった一人で放り止まれる。
筆者はその状況を想像して言葉も通じず誰ともかわえれない息子の姿を危惧したんです。
資料にあった水の淵にこびりついて流れてゆかないもという表現、あれはすごく生々しかったですよね。
ええ、孤立の恐怖をよく表しています。
中学生ってただでさえ人間関係が難しい時期なのに、言葉が全く通じない完全なアウェーの環境に放り込まれる。
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それは親として絶対に避けたいですよね。
そうですね。
となると自然な防衛策としては日本人がたくさんいる町の学校を選ぶということになりますよね。
そうです。候補は二つに絞られました。
一つ目は州で一番日本人が多く住んでいる町。
週末に通う日本語補習校も近くて、生活するにも非常に便利です。
そして二つ目は国際色豊かな大学街である阿那阿波。
日本人もそれなりにいますが、補習校までは片道約50キロも離れています。
さあ、ここが今回のディープダイブの最大のハイライトです。
普通に考えたら言葉の通じない異国にいるんだから、一番日本人が多くてインフラも整っている一つ目の町を選びますよね。
そう考えるのが自然ですよね。
同じ言葉を話す同胞のコミュニティって嵐の中の安全な避難所のはずですから。
でも筆者は迷わず二つ目の町、片道50キロも離れた阿那阿波を選んだ。それはなぜですか。
彼女は過去の海外赴任の経験から、外国に形成される駐在院社会は日本社会のしくずであるという恐ろしいメカニズムを知り尽くしていたからなんです。
日本社会のしくず?
異国という孤立した環境下では同胞同士の結びつきが強くなる一方で、その関係性が極端に煮詰まって強烈な同調圧力と階層社会を生むんです。
資料では駐在院社会の隠れ爆弾と表現されていましたね。それって具体的にどういうふうに爆発するんですか。
例えば現地のスーパーマーケットでの奥様同士の何気ない立ち話や日本人学校でのPTAの役員決めを想像してみてください。
はい。
そこで誰の夫が東京本社でどの役職に就いているかとか、どの部署に属しているかといった企業のヒエラルキーがそのまま近所の公園でのヒエラルキーに直結してしまうんです。
うわー、それはきつい。スーパーでのちょっとした会話が実は夫の出世や自分の子供の公園での立ち位置にまれ、見えない糸で繋がっていると。
そうなんです。日本国内であれば会社関係のAというグループで息苦しくなっても、趣味のBグループや地元のCグループといった別の逃げ場がありますよね。
ええ、コミュニティを切り替えられます。
しかし狭い海外の日本人コミュニティでは会社の人間関係、学校の人間関係、ご近所付き合いのグループがすべて完全に重なり合っているんです。
なるほど。つまり、嵐の海で沈みかけた船から小さな救命ボートに乗り込んで、ああ助かったってほっとしたのもたまないか。
ふと前を見たら、そのボートの土地を握って指示を出しているのが会社で一番嫌いなパワハラ上司だった、みたいな状況ですか?
ははは、その例えは状況を完璧に表していますね。
しかも周りはサメだらけの海だから、ボートから飛び降りて逃げることもできないっていう。
まさに逃げ場がないんです。上司の子供が自分の子供に意地悪をしてきても、親は文句が言えない。
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ちょっとした噂話が翌日にはコミュニティ全体に知れ渡っている。
うーん。
異国で唯一の味方であるはずの同胞が、実は一番逃げ場のない息の詰まるストレス源に変わるリスクがあるんです。
怖すぎますねそれ。だからこそ、筆者は日本人だらけの街という一見安全なぬるまいを全力で拒否した。
はい。
そして、週末の日本語補習校まで毎週土曜日に時速100キロでトウモロコシ畑をぶっ飛ばして30分、約50キロの草芸をするという、とんでもなく不便で過酷な道を選んだわけですね。
物理的な不便さ、つまり毎週トウモロコシ畑を時速100キロで走破する疲労と、社会的な生き苦しさ、つまり逃げ場のない日本人コミュニティでの精神的消耗を天秤にかけた結果です。
なるほど。
彼女にとっては、車の運転による肉体的な疲労の方が、人間関係の罠にはまるよりも遥かにコントロール可能で健全な代償だったわけです。
スカンクが落ちてくる暖炉の話と全く同じ構図ですね。
ええ、本当にそうです。彼女は物理的なワイルドさは笑顔で引き受けるけど、自分の精神が縛られるような見えないルールだけは絶対に受け入れなかった。
これ、ミシガン州に移住する駐在院だけの特殊な話に聞こえるかもしれませんが、実は私たちの日常にも全く同じことが起きていませんか?
どういうことでしょう。
例えば、子どもの保育園のママ友グループとか、会社の特定の部署とか、とりあえずここに属しておけば安全だろうと思って入ったコミュニティの暗黙のルールに縛られて、気づいたら自分自身が身動き取れなくなっていることってよくありますよね。
ああ、確かに。
私たちが普段、コンフォートゾーンとか安全策だと思い込んでいるものって、実は一番危うい罠かもしれないなと。
まさにその通りです。環境に適応してサバイバルするというのは、ただ多数派に同調して安全そうな場所に身を隠すことではありません。
ええ。
何が自分にとって本当の脅威で、何が本当の自由なのかを、自分自身の頭で見極めるということです。時には、一見不便でリスクがあるように見える選択の方が、精神的な自由を守ってくれるんですよね。
いやー、深いですね。新しい惑星に着陸した時、本当に警戒すべきなのは、未知のエイリアンじゃなくて、自分たちが地球からわざわざ持ち込んでしまった見えないルールの方だった、というわけですね。
ええ、そういう教訓が詰まっていますね。
さて、リスナーの皆さん、今回のディープダイブを踏まえて、最後に一つ、ご自身の生活に引き寄せて考えてみてほしいことがあります。
はい。
あなたが今、安全だからとか、みんなそうしているから、という理由だけで選んで留まっている環境。その中に、実はあなたの息を詰まらせている見えないヒエラルキーや隠れ爆弾は潜んでいませんか?
潜んでいるかもしれませんよ。
安全なガレージの中から一歩も出ない生活は、確かに波風が立たず快適かもしれません。でも、あなた自身の人生にほんの少しのスカンク、つまり予測不可能でコントロールできないけれど、ワクワクするような異物を、あえて招き入れることで得られる本当の自由とは一体どんなものでしょうか?
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うーん。
次にあなたが人間関係や環境を選びで、とりあえず無難な安全策を取ろうとしたとき、ぜひこのミシガンのトウモロコシ畑を時速100キロで駆け抜ける家族の決断を思い出してみてください。