オランウータンの長期母乳育児の実証
この時間はZoom Up。毎週木曜日は科学です。
九州大学などが世界初の実証をしたというオランウータンについて、どんな内容なのか、Zoom Upしていきたいと思います。
毎日新聞客員編集委員の元村有希子さんです。
元村さん、おはようございます。
おはようございます。
九州大学などが世界で初実証ということですけども、オランウータンについてどんなことを実証したんですか?
このオランウータン、野生のオランウータンの子供。
なんと、生まれてから6年半、お母さんのおっぱいを飲んでるんですよ。
6年半も?
そう。
お前、それお母さんも大変じゃないですか。
素朴な疑問として、その間に生まれてないってことですかね。
まさにそこなんですよ。
そうか。
だから、この母オランウータンがどれくらい子供に授乳しているかっていうのは、観察では長そうだって言われてたんですけど、ずっと謎のままでした。
その秘密を解き明かすと、出産しないっていうところの理由もわかるんじゃないかという話なんですね。
人間もやっぱり、授乳している間は妊娠しないっていうのがありますよね。
オランウータンって、だいたい出産間隔が7、8年あるんですよ。
7、8年?
しかも一度に1人、1匹っていうかしか生まない。
なるほど、なるほど。
だから、超少子化なんですね。
そうなんですね。
ですね。
その秘密に迫ったのが、九州大学とかマレーシアの国際共同研究チームなんです。
なるほど。
観察してたら、例えばオランウータンの赤ちゃんとか子どもがお母さんにくっついて、おっぱいを触っているっていうようなことはわかるんですけれども、
これやっぱり人間の子どもも、3、4歳まではちょっと甘えて、お母さんにおっぱいをしたりするじゃないですか。
本当にそれが授乳、お父を飲んでいるかどうかっていうのはわからないわけですよ。
そうですね。
甘えたいとかね。
そこでこの研究チームは新しい手法を使いました。
それがですね、フンプロテオミクス。
え?
フンプロテオミクス。
フンプロテオミクス、何ですかそれ。
フンっていうのはうんちのことです。
そのフン、はい。
プロテオミクスっていうのは、タンパク質を網羅的に調べるっていう意味なんですね。
つまり野生オランウータンの子どもが落としたうんちを採取してきて、それを分析することで、
そのフンの中に、お母さんのお父特有のタンパク質っていうのが4種類あることがわかってるんですけども、
その4種類が検出されれば確実にお父を飲んでるっていうことになりますよね。
そうですね。
これを、この手法を編み出しまして、
そのオランウータン、現地の方々の協力も得てですね、
オランウータンの子どものフンを20種類分析しました。
その20種類のフンがどの子どもから出てるかっていうのは、一応観察の結果わかってるんですね。
何歳の子どもが落としたフンなのかっていうことなんです。
2年7ヶ月間を地道に調査した結果、
2歳8ヶ月の子どもから、それから6歳半の子どもまで、
全ての子どものフンから、この4種類のタンパク質が検出されました。
そういうことか。
そうすると、結果としては一番最年長の6歳の子どもも、
お父を確実に飲んでいるということがありますね。
世界で初めてわかったということなんですね。
で、わかったのはそれだけじゃなくてですね、
母乳をたくさん飲んでいる子どもほど、町内環境がいい。
町内環境ね、ほら町内細菌の量が多い。
これもほら、分かりますよね、フン値から。
そうですね。
それから町内の免疫機能が高いということもわかったんです。
長い受入期間というのは、子どもを少なく産んで、
大切に育てるということに必須の仕組みなわけですよね。
なるほど。
片方で、受入していると妊娠しないということが、
7、8年に1人しか産まないということにもつながっているんですが、
大切に育てるということで、子どもは死なないで住んでいるんですね。
そうか。少なく、そして長く育てるということですね。
ということです。
オランウータンの子育ての進化的な背景
緊急チームによれば、このオランウータンの子どもの死亡率というのは、
先進国の人間並みなんだそうです。
えー、すごい。
低いっていうことですよね。
すごい。医療も特にないのに。
厚生物質も飲まない。病院も行かないのに。
すごい。
もう一つの進化的な背景としては、
オランウータンって、究極のワンオペ育児なんですって。
え?オスは何してるんだ?
オスは繁殖には関わるけど、
妊娠したら後はいなくなるっていうか、
お母さんが一人で産んで育てるんですよ。
じゃあ子どもはお父さんを知らないんだ。
そういうことですね。
それもだから、どっちが卵か鶏が先かっていう話なんですけど、
つまりワンオペ育児のお母さんにとっては、
3匹も4匹も産んでワーって育てるよりは、
1対1で向き合って、じっくり向き合って、
子どもを育てた方が楽じゃないですか。
そうですね。
しかも大切に育てるので死なないので、
確実に独り立ちさせられるっていうことですよね。
その丁寧に育てられた子は、
自然の中で、野生の中で、
ちゃんと社会性も身につけつつ、
独立して、今度は大人として繁殖に携われるっていうことになりますよね。
なるほど。
オランウータンの生息環境と絶滅の危機
よくできた仕組みと思いませんか。
そうですね。
中には、本当に天敵から身を守るために、
授乳期間がもう3日とか、
そういう動物もいるでしょ。
あと、ウミガメとかは100個ぐらい卵を産んで、
あとはもう勝手に。
そうですね。
自力で砂浜から顔を出して出てくるわけですよね。
残ってねっていう。
だからそれがどういう選択によるものかは分かりませんけども、
研究チームによればオランウータンって樹上、
つまり木の上で生活をしているので、
この意味で地上で歩き回ってるよりは天敵が少ないっていうのもあるんですよね。
ただ、隠れた天敵がいまして、
何でしょう。
人間ですよ。
そういうことですか。
オランウータンって、アジアのマレーシアとかインドネシアの熱帯雨林にだけ住む霊長類なんです。
あの界隈、ボルネオ島がメインの生息場所ですけれども、
ボルネオ島は、私も行きましたけれども、
熱帯雨林を伐採して、パーム油のヤシ油の農園がどんどん作られていたりします。
そうすると、住処が失われたり、安全に暮らせない状況が生まれたりして、
大人でも命を落としたりっていうことがあり得るんですよ。
本当にね、進化っていうのは何億年とかっていう進化なので、
例えば急にそんな住みづらくなったから、繁殖行動を変えて、
いっぺんに5匹生もう、みたいなことには絶対ならないんですね。
なので、オランウータンは今、国際自然保護連合のレッドリストに載っている絶滅危惧種なんですけれども、
そこにつまり関わっているのが人間の手であるとすれば、
人間がちゃんと心して、こういった繁殖行動を踏まえて、
超ゆっくり子育てができる環境を整えるっていうことが、すごく大切だっていうことにもなりますよね。
人間はよく、公立とか、早く自立させてとか、そういう子育てが今もっぱらいわれていますけれども、
ここら辺でオランウータンのこういうのんびり育児も見習ってもいいのかもしれませんね。
確かにね。人間以上に少子化の中でも、しっかり種の保存っていうのをやっているっていうね。
まとめと人間の子育てへの示唆
しかし、6歳半まで母乳とはちょっとびっくりしましたね。
うらやましい?
何が?うらやましかないですわ。
うらやましくはないけども、もう6歳半だったらもうすぐ1年生だからね。
お母さんが大変だと思います。
でも面白い内容ありがとうございました。
この時間は毎日新聞客員編集委員の本村幸子さんでした。