00:00
この時間はZoom Up。毎週木曜日は科学です。
昨日で東日本大震災の発生から15年が経ちました。
地震そのものの被害はもちろん津波によっても多くの犠牲が出ました。
そしてその津波によって福島第一原発では事故が発生しまして、その日から今日で15年ということにもなります。
今日はこの東日本大震災にZoom Upしていきます。
毎日新聞客員編集委員の元村有希子さんです。
元村さん、おはようございます。
おはようございます。
よろしくお願いします。
15年ですね、もう。
そうですね。長いといえば長いし、短いといえば短い。
やっぱりこういう出来事って被対象っていうのがどうしても出てくるんですよね。
例えば被災地の人と被災地から遠く離れたところに住んでいる人では当然受け止めが違いますし、
もう大人になってそれを直面した人と、当時は生まれていないとか、
幼くて覚えていないっていう人との間にはやっぱり記憶の被対象っていうのが出てきます。
そこからこうやっぱり歳月とともに風化というのが懸念されるわけですが、
災害って必ず起きるので、風化はさせていいわけがないんですよね。
そうですね。
どんな形で一人一人の痛みとともに教訓を継承するかというところに注目して、
今日は一つの取り組みを紹介したいと思います。
震災の記録プロジェクトという取り組みなんですが、
これは兵庫県の関西学院大学の金渕清先生とそのゼミが取り組んでいるんです。
去年の12月に2年がかりでまとめた本を出したので、
今日はそれを中心に紹介したいと思いますけれども、
その本のタイトルは大災害と相対的トラウマ。
相対的トラウマって何?って思った方も多いと思いますけど、
その前に金渕さんのことをちょっと紹介させてください。
金渕さんは大阪生まれで関西学院大学に入学して、
その後社会学者になるんですが、2度震災を経験しているんです。
1回目は受験の直前に阪神大震災が起きました。
直接お家が壊れるとかっていうことはなかったんですけれども、
ずっと語り継ぎとともに大学生活を送っているっていうことですよね。
社会学者になって就職先が東北学院大学仙台市にあるんですが、
03:00
そこに社会学者として教育研究に当たっていた時に東日本大震災を経験します。
なるほど、その両方ってことですね。
その時に学者として思い至るのがですね、
例えばその震災を記録するときにインフラがどれだけ壊れたかとか、
犠牲者が何人だみたいなね、そういう大ぐくりの記録は残るんですけれども、
個々の被災者の胸の内っていうのは、なかなか学術的な記録に残ってこなかったなということに気がついて、
自分のゼミ生と一緒にそれを残そうっていうプロジェクトを始めるんです。
東北学院大学には5冊本を出してるんですけれども、
その中で比較的引用されたものがあって、
これある学生さんの卒論なんですけれど、
津波に飲み込まれて何もなくなった被災地で、
タクシーの運転手さんが幽霊を乗せたっていう告白をするんですよ。
幽霊って科学的にはそんなわけがないって否定されて終わりなんですけれども、
タクシーの運転手さん自身が被災者であって、
そして単なる恐怖体験ではなくて、
この人幽霊かもしれないと思いながらも温かく乗せて降ろしたっていうわけです。
そういう霊的な、あるいは心の内のひだの中に踏み込んで、
そういう幽霊を見たっていう経験そのものを受け止めるっていうようなアプローチっていうのがあるはずだっていうことなんですね。
そういった今までなかった手法で、
震災の体験を文字に落としていくっていうことをしていて、
金道先生は2020年に関西学院大学母校に教授で戻って、
今度は阪神大震災をテーマに記録を続けるという取り組みをしているんですね。
一連のものが震災の記録プロジェクトなんですが、
この先ほどちょっと出てきた相対的トラウマ。
トラウマって最近よく聞く、一般化した専門用語ですよね。
大変な悲惨に暮れるような出来事が心の傷になってしまうこと。
その心の傷をトラウマと言って、精神科の治療などではそのトラウマをなくすことを目指して治療が行われますよね。
金道先生の相対的トラウマっていうのは、それをなくすことを目指さない。
常に自分の日常に組み込んで抱きしめながら、時には自分の立ち直りの糧にしていくっていう。
06:06
こういう心の傷として捉え直すっていうのが物語の発端なんです。
否定せずに癒していくっていうか。
そうですよね。
つまりトラウマを消すっていうことは、被災者にとってはその経験そのものです。
あるいは愛する人を失ったということも消すっていうことにつながるわけです。時にはね。
そういう心の動きを今回も本に込めているんですけれど、
今回の本はカネビシゼミの学生さん24人が3人一組のチームを編成して、
それぞれにトラウマについて勉強しながら、被災、震災の当事者のところを訪ねていくんですね。
1年以上にわたって何回も聞き取りを行って、関係を築き上げながら、その人の心の声を聞き取っていく。
そういうフィールドワークなんです。
あっては阪神大震災だったり東日本大震災だったり、熊本地震だったり、野党半島地震だったりするんですけれど、
用意された人をどうぞ取材してくださいじゃなくて、取材する人もまず自分たちで探し出して、訪ねていくということをしています。
この相対的トラウマの一つの一例としては、東日本大震災で大川小学校が津波にのまれるという出来事がありましたよね。
74人の児童が亡くなったり行方不明になったりしているんですけれども、その遺族、お父さんであり地元の中学校の校長先生をしていた人に学生チームは聞き取りをします。
このお嬢さんは津波にのまれてその日には見つからず、5ヶ月後に遺体の一部として見つかるんです。
この5ヶ月間の地獄のような日々、教員として何もできなかったという後悔の念とか、いろんなことを抱えながら、トラウマを抱えてもがきながらも、この人は全国の学校を回って命の尊さを訴えてきたというんですね。
決して悲しみを乗り越えるなんて簡単なもんじゃない。だけど当事者にしか発せられない言葉があると言ったり、一方で毎月11日に墓参りに行くそうなんですけれども、当時は安らかにと声をかけ続けていたのが、いつしかありがとうという言葉に変わっていたという語りを引き出すんです。
09:01
つまり、お嬢さんが亡くなったことはとっても悲しいんだけど、そのトラウマに向き合い続けることによって、自分は多くの人に娘の記憶を語れる立場になって、ありがとうという言葉が娘さんに向けて感じる感謝の気持ちになったという、そういう10回を学生たちに聞き取って、この本に記述しています。
彼ら彼女らも、生まれは2003年とか2004年ぐらいの学生さんですよね。
当然阪神大震災は全く知らない年代だし、東日本大震災だって、地元の学生さんだったら東北で起きた地震なんか、たぶんちっちゃい頃だから覚えてないんです。
それでも当事者に誠実に向き合って心の叫びを記録することで、彼らなりに災害と向き合う人の気高さとか尊さっていうのを理解して、一生懸命紡いだ言葉が後世に引き継がれていきます。
こういう地道で時間のかかる営みですけれども、こういったものを学生たち、つまり震災を知らない、直接知らない世代が受け継ぐ、それを後世に残していくという取り組みも一方であるんですよね。
本当に現地の方々の声を聞いていくっていうことと、一人一人の頭の中の想像力っていうものが、いかに被災された方々の気持ちに寄り添えるかどうかってこともすごく大事なのかなと思うので。
想像力ってとっても重要で。
とっても大事ですよね。
震災って人ごとに受け止めがちですけども、想像する、しかも一人一人のスケール、2万人とかいう犠牲の大きさじゃなくて、一人一人の心を想像するっていう、そういうことの大切さをこの大災害と相対的トラウマっていう本は私に教えてくれました。
素敵な活動、取り組みを紹介してくださってありがとうございます。
本当にありがとうございます。
こちらこそ。
この時間は毎日新聞客員編集員の本村幸子さんでした。
本村さんありがとうございました。
ありがとうございました。
12:00
ありがとうございました。