工場見学の概要
こんにちは。岐阜県の工業高校で教員をしているすみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、
そこで働く人たちの思い、そして工業高校の教育の現場を紹介していきます。
今回は工場見学をしてきましたので、そのことの話をしたいと思います。
しかしだいぶ涼しくなってきましたね。
秋といえば、食欲の秋もありますけれども、読書の秋であったり、
芸術の秋なんて言いますよね。
まさにインプットができる気候になってきたなという感じです。
ちょっと今年は暑すぎましたね。
暑いとなかなか本を開いて読むとか、
そういったインプットをなかなかしにくい時期だと思うんですけれども、
ここに来てやっと秋になってきて、
読書も進むなという季節になってきましたね。
皆さんはどんな本を読んでいますか?
学校の先生もどうしても授業では、
アウトプット、教えるということですよね。
が多くなりがちなんですけれども、
インプットが大事だと思うんです。
しかもそのインプットは教科書やインターネットの情報だけじゃなくて、
リアルな現場を見て感じること、
そういう経験が大切なんですよね。
今回は第2回系統別担当者会議ということで、
電気系、機械系の先生たちが集まって、
川崎重工業航空宇宙カンパニーの工場見学に行ってきました。
この企画、実は私がホストとして準備してきたものなんです。
ぜひ多くの先生方に、
航空宇宙産業の現場を見てほしいと思って企画しました。
ではその様子を今回はお話ししましょう。
航空宇宙産業の現状
私は航空機械工学科の職員ですから、
何度も工場見学させていただいているんですけれども、
今回は電気系の先生もいるということで、
中には初めて見たという方も多く見られました。
航空自衛隊と川崎重工は隣同士の敷地で、
広大な面積の中で飛行機が組み立てられていくんですよね。
C2という大型の輸送機があるんですけれども、
そこの修理工場なんていうのは本当に大きくて、
間近で見る飛行機とも迫力に圧倒されましたね。
これは何度見てもそう思います。
実際に飛行機が組み立てられていく光景に、
みんな感動していましたね。
そして私自身も改めて、
今の航空宇宙産業の現状を知ることができました。
旅客機の需要の右肩上がりという話は、
ボーイングの計画を見て何となくわかります。
しかし現場の話を聞くと、
なるほどこういうことかということを、
改めて実感しますよね。
最近では高い地騒離になって、
皆さんもご存知の通り防衛費が上がったということを、
ニュースによく耳にすると思いますけれども、
しかしそれが実際に企業にどう反映されているのか、
これはなかなか見えない部分ですよね。
実際に話を聞いてみると、
防衛装備品を作った時の企業の利益が上がっているそうです。
どういうことかというと、
今までは防衛装備品、自衛隊の関連する装備品ですけれども、
そういったものを作ると、
そういったものは仕事があっても、
なかなか利益が出ない仕事なんですよね。
企業も手を出しづらかったというところもありますし、
やっても儲けにつながらないので、
辞めてしまう企業も出てくるんです。
それでは防衛関係のものづくりを担う会社が減ってしまうということで、
国としても利益が出る仕組みに変えたそうなんですね。
なので仕事として成り立つと、
利益が出るということになったおかげで、
取り組む会社が多くなる。
そして取り組む会社が多くなれば、
またそこで競争ができて、
精度の高いものができていくと、
教育と企業の接点
そんなような流れになっていくということらしいです。
そして今はですね、
飛翔隊、つまりはミサイルの製造も増えてきているということです。
こういった話はあまり公の場で出ませんが、
生徒たちが将来関わるかもしれない仕事だからこそ、
私たち教員も正しく知っておく必要がありますよね。
ただこうした企業見学って実はなかなかできないんですよ。
特に防衛関係だと外国籍の方は見学できなかったりしますし、
一般の製造業でもちょっと見せてくださいって簡単に見せてくれる会社はほとんどありません。
だから今回のように実際に工場の中を見せてもらえるというのは本当に特別なことなんです。
こういった特別なことを工業高校は生徒はたくさん見学させていただいているので、
実際に製造業もしくは働く環境というのがどのようなものなのかというのはイメージしやすいですよね。
そういった意味では工業高校から製造業に就職するというのは違和感はないかもしれませんね。
その点、商業科や普通科から製造業に行くとギャップがあるかもしれませんよね。
私なんか工場を見に行くと、ついこの会社どこの工作機メーカーの機械を使っているのかなとか、
そんなふうに見ちゃいますね。
ここはあの機械を使っているなとか、この会社はここの機械が多いなとか、
そういったところ職業病ですかね。見ちゃいますね。
そういったことを見るのも楽しいんですけどね。
そしてゴーからは鏡原市内で情報交換会も行いました。
6つの企業さんが参加してくださって、教員と一緒にディスカッションしながら、
お互いの悩みや疑問を率直に話し合うことができました。
今回の参加教員の中には、今年が1年目という若い先生も2名いらっしゃって、
すごく勉強になったと話していました。
やっぱり社会経験がまだ少ない若手の先生が、こういった機会を通して、
企業の現場を知るということは本当に大切なことだと思います。
またこの4月から卒業生がお世話になっている企業も参加していて、
そこでちょっと残念な話もありました。
実はその卒業生が最近会社を辞めてしまったそうなんですよね。
理由は欠勤や遅刻が多かったということでした。
これはですね、彼には在学中に何度も何度も指導してきたことなんですけどね。
本人も社会人になったら変わりますと言っていましたが、
やはり人間はそう簡単には変われないものなんですよね。
だからこそ学校生活の中で良い習慣を身につけることが本当に大事なんだと改めて感じました。
彼には彼の人生がありますから、今後何か相談があるんだったら、
ぜひ学校に足を運んでほしいなというふうに思います。
そして教員として企業とすり合わせていかなければならないのが、
これからどんな人物像やスキルを持った生徒を育てていくべきかという点です。
多様性の時代と言われる中で、一人一人の個性を認めながらも、
社会で求められる最低限の力をきちんと身につけてもらう。
そのバランスを取るのが教育現場の大きな課題ですよね。
みんな一律に一つの基準で人物を見てしまうということも危険ですし、
また何でもいいよというわけにもいきませんからね。
実際今回の見学でも貴重な意見をたくさん聞けました。
企業内教育も昔とはだいぶ変わってきているみたいですね。
少し前までは見て覚えろというスタイルが多くて、
受け身な姿勢が身についている若い社員がついていけずに苦労するケースも多かったそうです。
ちょっと前までは体育会計そのものの文化も根強く残ってましたよね。
俺の仕事はお前やれみたいな、
そういったところも人によっては残ってたみたいですけども、
今ちょっと許されませんよね、そういったことは。
体力や根性といったところでカバーしてきた人昔とはちょっと違う雰囲気になってきましたよね。
そのぐらいコンプライアンスというか厳しい時代になってきましたので、
各会社も教育に力を入れているということを感じました。
時代に合わせて学校の教育も企業の教育も変わっていく必要がありますよね。
実際最近では転職を考えているという卒業生から相談を受けることもあります。
働いてみて初めて気づくこともありますが、
やっぱり最初からどんな仕事をやるのかがしっかり伝わっているとミスマッチも少なくなると思います。
こうした現場の声を聞き、感じたことを教育にどう活かしていくのか。
これから工業高校の大事な役割だと感じた一日でした。
私も担当校として今回企画させていただきましたが、
教員の教育というのも結構大事な課題なので、
来年もこういった会議の企画に立ちしたいなというふうに考えています。
もう少し若い教員に身になるような内容の研修というものを、
自分自身でも企画して提案していけたらなというふうに思っています。
また企業の教育というものにも、
この工業教育の現場の教育方法とかを参考にしてもらえるようなコンテンツなんかあるといいなというふうに思っています。
やりたいことやれることたくさんありますけれども、これから考えていきたいと思います。
ではまた来週お会いしましょう。