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2025-12-08 13:30

#29かっこいい名称

最近、工業高校の統廃合で科学技術高校という名前など名称がかっこよくなった学校が設立されています。今回はその一つである高校の説明会に行ってきました!

サマリー

埼玉県の新設校である大宮科学技術高校の説明会に参加し、工業高校の変化や新しいエアロスペース学科について考察しています。特に、名称変更がもたらす影響や、教育課程の整備が求められている現状に言及しています。岐阜県の航空機械工学科においては、教育内容や設備の充実が求められているものの、生徒の応募が芳しくない現実を描写しています。今後、進学志向の高まりとその背後にある構造的な不安について掘り下げる予定です。

新設校の説明会
こんにちは。岐阜県の工業高校の教員をしている、すみです。
この番組、未来をつなぐものづくりは、地域の魅力ある企業や、工業高校の教育現場、そしてそこに関わる人たちの思いを伝えていくポッドキャストです。
今回は、来年4月に開校する、埼玉県立大宮科学技術高校の説明会に参加してきました。
最近、工業高校が党配合されたり、もしくは名前を科学技術高校というふうに変えたりですね、色々変わってきています。
今回も大宮工業高校と浦和工業高校が統合してできる新設校なんですね。
そこにエアロスペース化という新しい学科ができるということで、IHIの方や専門学校の方が保護者と中学生に説明をするんだということを伺いまして、
どのような内容の学科になるのか、もしくは具体的な方向性などを少しでも私の所属している航空機械工学科に活かせれないかなと思いまして、足を運んできました。
先ほども話しましたが、工業高校でも名前を工科高校に変えたりとか、総合工科高校、科学技術高校、色んな名前に変わってイメージチェンジをしている、
もしくは具体的にカリキュラムが変わっているというところもあるんですけれども、身の回りにも結構名前を変えてブレイクしている品物というのもあるんですよね。
例えば私が調べたところによると、ティッシュで花セレブですね。これはですね、もともとは違う名前だったんですよね。
モイスチャーティッシュという名前だったそうですけれども、何かパッとしないということで、花セレブという、中身は全く同じなのに、名前とパッケージを変えただけで、なんと売上が10倍に伸びたというものなんですね。
その他にも、皆さんよくお茶といえば、大いお茶って知っていると思いますけれども、これに関しても、もともとは缶入り煎茶という名前だったみたいです。
そもそも煎茶という呼び名が浸透していなかったりとか、パッと見なんだがよくわかんないということで、これを大いお茶という名前にしたら、お茶をペットボトルで買おうということが浸透したということらしいですね。
そんなことで、中身は変わらなくとも名前を変えてイメージを定着させるということは商品開発では結構行われていると思うんですけれども、
実際、工業高校でもこのようにイメージを変える一つの手として名前を変えるということは、ここ最近行われていることです。
ただですね、やはり良いものは名前を変えてイメージチェンジしたときに、これ良いねということで広まっていく可能性があるんですけれども、
もともと良くないものを名前を変えただけで売れるかといったら、そういうことはないと思うんですよね。
今ですね、工業高校に人が集まらないということで、名前を変えようという流れもありますけれども、果たしてそれが良いか悪いかということを今回の件も含めて検証していきたいと思います。
まず私は埼玉に行って浦和駅に降り立ちました。浦和駅の目の前にパルコが入った商業施設があるんですけれども、
そこの10階の大きなホールがあるんですが、そこで説明会をするということで足を運びました。
今年に入っても7回目の説明会ということで、さすがに7回もしたらあんまり人は集まらないんじゃないかなと思いましたけれども、もうすごい人が集まっていました。
200人ぐらい、もっとかな。結構な人がそのホールにぎゅうぎゅう詰めで入っていました。
イメージチェンジと商品開発
すごい注目度が高いなということを改めて知らされました。
そこでパンフレットをいただいたり、現場の先生と話したり、もしくはIHIの方、日本国大学の方と話をさせていただき説明会の方に臨みました。
まずは工業高校を合併して新たにできた科学技術高校というのはかなり進学に舵を切ったなという印象です。
45分の7時間授業があって、普通科目が工業高校よりも多く入っています。
それは大学に進学するということに対応するためです。
そしてさらに工業科もあるので、結構盛りだくさんのカリキュラムになっているなというふうに思いました。
埼玉県がこの学校を目玉にしたいんだという強い意気込みを感じられたのは設備です。
金属3Dプリンターというのが入っていますという話でした。
だいたいこれ1億円ぐらいすると思うんですよね。
普通はプラスチックの樹脂を積層していくとか、光造形とかそういったタイプありますけど、できてくる製品は樹脂製なんですよね。
ただこれ金属の粉をレーザーで溶かして積層していくというのは本当に企業でも持ってないような高価な設備です。
これが入っているということであったり、5軸のマシニングセンター、通常3軸のマシニングセンターを工業高校では使うんですけども、
5軸が入っているとこれはすごい加工ができるんですけども、私もちょっと購入をですね、検討した時があったんですけども、
教員が使いこなすっていうのが本当にハードル高いなと、そしてその教員がいなくなっちゃったら誰が使えるんだっていう話とか、
まあ工業高校もしくは教員の世界で使うにはちょっとハードルが高いんじゃないかなというふうに思ってたので3軸になりましたが、
これを使える教員や使い続けるようなシステムとか、どんなふうに考えているのかなっていうのも気になりましたね。
あとはランニングコストがどこまで埼玉県が見越しているのか、そこもちょっと気になっています。
さて肝心のエアロスペース化という学科の話なんですけども、2年生3年生の詳しい実習内容、実はまだ決まっていませんという回答でした。
来年4月から開校なんですけどね、なかなかそこが見えないということで現場の先生方困ってみました。
逆にあの岐阜工業高校の航空機械工学科はどんな内容なんですかと、一度見学させてもらえませんかと頼まれてしまったぐらいです。
これは先行き不安だなというふうに思いました。
実際に使う教材も当然カリキュラムが決まらない以上購入もしてませんし、これからといってもあともう残りスタートしてしまったらあっという間に2年生になりますから、
それまでに教員のスキルも上げなければいけない、もしくは外部講師の手配をしなければいけない。
まあいろんなことがちょっと間に合うのかなということを私自身思ってしまいました。
実はエアロスペース化だけではなく他の学科も同じようなことが感じ取られましたね。
情報関係の学科ではすごい高額なコンピューターを揃えますとおっしゃってみましたが、後で保護者の方から質問が出まして、
そのハイスペックなコンピューターに似合う実習内容なんですか、どんなことやるんですかという質問があって、それに対してもこれから考えていきますという話だったので、
ちょっと先行きがいろんなところで見えてないのに見切り発車的なところがあるなというふうに正直思いましたね。
教育課程の課題
本来ですね、まあ卒業生がどのような姿、もしくは技術者になるのかというゴールを見据えて、
それに必要な技能を3年生、2年生、1年生と逆算して積み上げていくためにはどうしたらいいのかというのがこれがカリキュラムで設計するところなんですよね。
その設計図がないまま今は高価な機械が置いてあるということで、
まあこれはその機械も活用しなければいけないということが逆に縛りになってきますから、
これは非常に難しい選択を強いられるんじゃないかなというふうに感じました。
これはですね、埼玉県が目玉の学校を作るんだということで、
ちょっと現場の意見や現状ですね、把握しきれないまま見切り発射しちゃったところもあるんじゃないかなというふうに推測します。
実は私も航空機械工学科を立ち上げる前は、まずは岐阜県の県庁の航空宇宙産業課の方ともべったりですね、いろんな企業を回りました。
そして今、企業の方が求めている人材について徹底的に調査しました。
航空機人材って何を必要としているのかといったところを調査しました。
そして実際に航空専門学校などに行き、どのような実習内容、施設設備があるのか、これも徹底的に調べました。
地元の中日本航空専門学校だけではなく、石川の航空専門学校まで足を運んだりして調べました。
そういったことをしながら、なおかつ岐阜県の産業が航空機産業だけではないということも念頭に置きながら、航空機械工学科で学ぶ内容は何かということを絞っていき、
さらに転勤がある公立高校でもあらゆる先生が対応できる内容、そして時代が変わっても必要とされる普遍的な内容は何かということに絞って、実習機材の購入を決めていきました。
これは本当に頭を使って足を使って情報を得て、まあそういったことをディスカッションしながらですね、まあ築き上げてきたものなんですけれども、
こういった時間を与えられてもらえるならまだしもですね、県からのトップダウンで科学技術高校を作れということで、
物と金をドンと投入されて、あと現場よろしくということではですね、これは非常に現場の先生は厳しいなというふうに感じました。
まあやはりですね、現場の先生方もちょっと曇った顔してましたね。
この学校がこれだけ注目を浴びているにもかかわらず、倍率が今のところ1倍を切っているということなんですよね。
定員に対して希望者が埋まっていない。逆に近隣の工業高校は1倍を超えている。定員をオーバーしているんですよね、希望者が。
そういった皮肉な格好になっているんです。
今のこのままでは、この学校が周りの工業高校の当て馬になってしまっているんじゃないかという感じもします。
名前は科学技術高校と格好良くなり、設備も最新鋭、進学もできます。一見完璧なパッケージに見えます。
しかし説明会を受けた中学生や保護者が出した答えは非常にシビアなものでした。希望調査の結果を見れば明らかです。
これは何を意味しているのかということですよね。
先ほどの花セレブが売れたのは中身が良かったからです。私たち工業高校も同じです。
看板だけを掛け替えても中身であるカリキュラムや情熱が灯わなければ、生徒はやっぱり離れていってしまうんじゃないでしょうか。
今回の視察は逆接的ですが、私たちのやってきたことは、おおむね間違いではなかったなということは確認できました。
私たちは長年本物の航空機を使って実際に実習をしたり、それがいろいろな分野に波及できるような中身を日々考えています。
その必要性が今回改めて確認できたなというふうに思っています。
大宮科学技術高校のエアロスペース科の先生が、ぜひ岐阜工業高校の航空機械工学科を見に行きたいとおっしゃってみえたので、
同じ教員として生徒たちにがっくりさせないような、そんな内容のカリキュラムを構築できるように少しでも協力できたらなというふうに感じております。
名前を変えて進学に舵を切ったということは、今の時代の流れでは間違いないんですよね。
でもこれもう少し深掘りしてみると、なぜそれだけ進学をさせるという流れになってきているのかということなんですけれども、
これを私思うには、今の日本の社会が抱えるある構造的な不安が隠されているんじゃないかなというふうに思うんですよね。
次回はなぜ今工業高校でも進学なのかというところをテーマに、さらにこの問題を深掘りしていきたいなというふうに思っております。
進学志向の背景
次回の配信もぜひ楽しみにしてください。
13:30

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