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こんにちは。私は岐阜県の工業高校で教員をしている#です。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、そこで働く人たちの熱い思いを紹介していきます。
製図の重要性
前回の放送の続きで、製図と実習についてもう少し詳しく話をしたいと思います。
製図という授業では、平面に描かれた図面を立体としてイメージしたり、立体であるものを平面の図面にしたりということをする能力が問われます。
具体的に言うと、ボールのような球体だったら、真正面から見ても、真上から見ても、右から見ても円になると思いますが、円柱だとどうでしょうか。
円柱だと真上から見ると円ですが、真正面や右から見ると四角に見えるんじゃないでしょうか。
このように立体を正面、平面、右側面という3方向に分けて考える力が必要になってきます。
そしてまた逆に正面、平面、右側面図を見て、立体としてどのような形なのかということもイメージする力が必要になってきます。
この能力というのは、普通教科の5科目とはちょっと違う能力だと思っています。
立体を平面に、平面を立体にする力というのは、人それぞれ違うということです。
ですから、この製図をやった時に分かるという生徒が必ずしも、5教科の点数がいいという生徒ではありません。
むしろ、5教科で自信をなくしていた子が、これで自信を持つということもあります。
工業高校に来る生徒の中で、5教科が苦手であったり、もしくは勉強してもうまく点数が取れなかったということで、
中学校の時に自分は勉強ができないとか、頭が悪いなんて勝手に自分で思ってしまっている生徒も中にはいます。
でも大人になってみると、そのような知識というのは本当に人間の能力を表すごくごく一部であるということは分かるんですが、
中学生の段階ではなかなかそれに気づかずに、自分に悪い方のレッテルを貼ってしまいがちです。
ですから、星図という授業でもう一度何か自分の中で優れているものがあるとか、そんなことに気づいてくれる生徒がいたら嬉しいなというふうに思っていますし、
実際に5教科の点数関係なく星図が得意だということで、工業高校からスイッチが入って勉強に取り組み始めた生徒もいます。
そういったのを見ていると本当に面白いなと、人間の可能性はすごいなというふうに思っています。
実習による成長
実習という授業においても同様なことが起こります。
つまり、5教科の点数とは必ずしも実習でのものづくりというのは比例しないということです。
実習というのは知識経験よりも興味関心というのが大きいのではないかなというふうに思います。
興味を持ってどんどんチャレンジしてやってみるということが、結果的には失敗してもトライアンドエラーを人よりも多くすることができます。
そのような経験の積み重ねが自分の能力を高めることになります。
中には慎重に慎重に周りを見ながら実習、ものづくりを行う子もいますけれども、
やっぱりどんどん伸びていくなという生徒の特徴としては、
誰がやっててもやってなくても自分の思ったことをまずやってみようという気持ちを持っている子がその後どんどん伸びていくのではないかなというふうに経験上思います。
ですから航空機械工学科では多くの実習内容があるんですが、それぞれの実習で生徒は自分の得意分野を見つけれるということです。
これは苦手だけどすごく興味があるとか、興味があってすごく上手にできるようになるとか、いろんなパターンがあると思いますが、
今まで出会わなかった自分の得意を知るという機会にもつながります。
自分にも得意なことがあるという自信を獲得していく、そんなような授業でもあると思っています。
資格取得のメリット
最後に資格と工業高校の授業についての関係を話したいと思います。
工業高校では資格が取れるというイメージはあると思いますが、それは工業高校では授業を受けることでいろいろな資格が取りやすくなっているということがあります。
例えば二級建築士については、所定の単位を収めれば、実務経験なしでも卒業後に受験できるようになります。
電気工事士二種については、同じように卒業時に筆記試験が免除になり、あとは実務試験を受ければ合格ということになります。
三級自動車整備士の受験資格については、自動車科を卒業すれば受験資格をもらえます。
その他の学科を卒業した場合は1年間の実務経験が必要です。
ただし機械科であれば6ヶ月の実務経験で足ります。
このようにそれぞれの学科の単位を習得することで、卒業時に受験資格が得られたり、一部分免除になったりというメリットがあります。
逆に言うとそのような内容を勉強しているということにもなります。
工業高校にはこのような資格を持っている先生方も多いというのが強みです。
そして専門的な機材もあり、資格が取りやすい状況にあります。
社会人になってからではなかなか資格は取りづらいんですけれども、
高校生のうちからこのような資格にチャレンジして取得をしておけば、社会人になってからその資格を生かした仕事に就けるということはメリットですよね。
しかも生徒は実習という授業の中で日常的に実技を勉強しているため、
ただ資格を取得しただけの人よりも実際に技術を身につけた即戦力として企業から評価していただけるという大きなメリットがあります。
前回に引き続き工業高校の授業について話をしました。
工業高校は従来の学力評価では見えなかった生徒たちの才能を発見し、自信を育む場所です。
そして同時に社会で即戦力として活躍できる技術と資格を身につける場所でもあります。
ご教科の成績だけで判断されがちな現在の教育システムの中で、工業高校は多様な能力を持つ生徒たちに新たな可能性を提供し続けています。
中学校の時に自信をなくした生徒が高校で自信を取り戻し、笑顔で卒業していく、そんな光景をたくさん見てきました。
これからも生徒たちの隠れた才能を引き出し、自信を持って社会に羽ばたいていけるよう私たちも日々教育に取り組んでいきたいなと改めて思いました。
次回からはいよいよ企業とのコラボをやっていきたいなというふうに思っています。
現段階で数社すでにアポを取って動き始めようとしています。
また新たな取り組みが始まりますがどうぞお聞きください。
またこんなことを聞いてみたいというリクエストや質問がありましたらぜひお便りをいただければ嬉しいです。
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次回の配信は来週月曜日の朝7時を予定しています。
お楽しみに。
それではまた来週お会いしましょう。ありがとうございました。