工業高校の目的と特徴
こんにちは、私は岐阜県の工業高校で教員をしているすみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、そこで働く人たちの熱い思いを紹介していきます。
今週は、ものづくりの発信をしている現役エンジニアの支部長さんに学校に来ていただき、ものづくりについての心構えなどを話をしていただきました。
1年生の中には、ものづくりをしたいという強い気持ちを持っている生徒もいますけれども、中には部活動をしたい、なんとなく来たという生徒もいます。
そういう中で、工業高校の生活に少し慣れたこの時期から、もう少し工業高校に通っているメリットを感じてほしいなというふうに思いまして、支部長さんにお願いをして話をしていただきました。
今回の話がこれからの高校生活に少しでもプラスになればすごく嬉しいですね。
内容については支部長さんのポッドキャスト、YouTubeでも配信されておりますので、ぜひご覧ください。
さて今週は、工業高校の学習について話をもう少し深掘りしていきたいなというふうに思っています。
そもそも工業高校というのは、前回も話しましたけれども、地域産業の担い手を育成するという目的もあります。
ですから地域産業のニーズに沿った教育内容になっています。
興味深いのは、それが時代によって変化しているというところですね。
例えば今60歳70歳の方の年齢でいうと、その時の高校時代というのはほとんどの生徒が高校を卒業したら働くという時代でした。
中学を卒業して働くという生徒もいたと思います。
ですから工業高校そのもののこの入学倍率も非常に高く、岐阜県でいうと岐阜高校という新学校がありますが、
岐阜高校か岐阜工業かなんてことを言われてたというふうに聞きます。
その時代の卒業生の方の進路、今何やっているのかというところを見てみると、
お医者さんをやっていたりとか、聞いたことのあるような会社を立ち上げてみえたりとか、やはり優秀な方が多かったなというところが見て取れます。
さて学ぶ内容についてですけれども、岐阜工業高校が置かれている、
愛知県との境で一宮市岐阜市というところでは繊維の町とも呼ばれていて、
暴食であったりとか繊維業というのが非常に盛んでした。
岐阜駅の北側には繊維来という、今は大変さぶれてしまっているんですけれども、そのような商店街も存在しています。
昔はこの地域でもガチャガチャガチャガチャこう旗を打っているような音をよく聞きましたけれども、今はほとんど聞かれません。
昔あった繊維家や暴食家というのは、今はデザイン家という名前に変わったり、
その他は電気家だけではなく電子家ができたり、情報家ができたり、いろいろな学科がその時代に応じて誕生しています。
今回は機械家から名前が変わった航空機械工学科、私が所属している学科ですけれども、そこの学習内容について話を深掘りしていきたいと思います。
それでは工業高校の学ぶ内容を3つの視点からご紹介したいと思います。
まず普通高校と同じように、語教科を学ぶ必要があります。
工業高校では語教科はしないんじゃないかという大きな誤解をしている生徒もいますが、一般教養はいくつになっても必要ですから皆さん勉強してくださいね。
普通教科と同じように、工業科目も教室で先生に教えてもらう授業があります。
教科名は設計とか機械工作とかそのような教科名がついてますが、内容はどんなことをするのかといったら、
大まかに言うと物理や科学に近い内容になっています。
その内容を具体的な身の回りの機械的なものとリンクさせながら学ぶ感じです。
例えば飛行機が飛ぶ仕組みについては流体力学でしょうし、自動車のエンジンについては熱力学です。
機械材料がどのように変化するかということは物理の力の作用の部分に関連づけられるのではないかと思います。
そして重要なのはこれらの知識を得ながら実習ということで知識と体験を結びつけていくことです。
普通高校とはここが大きく異なり、座学だけでなく実習や課題研究といった実践的な時間が豊富に設けられているのが大きな特徴です。
座学で学んだ理論を実習で実際に確認し手を動かしてものづくりを体験するこの理論と実践の往復が深い理解につながっています。
例えば工作という授業ではいろいろな材料があるということを知ります。
そしてその材料の特徴を知ってその金属を削るにはどのような条件が必要なのか、工作機械があるのかそのようなことを勉強します。
そして実習で実際にその金属を、例えば旋盤という汎用工作機械、金属を削る機械ですけれども、それを刃物を切り込みながら削ってみます。
そうすると金属が糸のようにきゅるきゅるとこう連続的に削り出されて細くなっていくんですね。
その時に手に伝わる感覚や音、そして熱、そういったものは実習でしかなかなか感じられません。
実はこのような汎用工作機械というものは最近の工場では全く使われてないと言っても過言ではありません。
ですからこのような汎用工作機械を使う意味はないんじゃないかと言われますが決してそんなことはありません。
人間の感覚を持っていろいろなことを知るということはすごく大事なことだと思っています。
例えば自動化された工作機械で金属を同じように削った時に音が何か違うなとか振動が大きいぞとか、そういったことは実際に自分で手で削ったことのある人が敏感に気づくことだと思います。
頭の中でわかっているだけでなく自分の体で体得するということは今後その技術が自動化されても基本的なベースは変わらないと思います。
しかし限られた時間の中で一つの技能を高め切ることはなかなかできません。
学校の授業でできることはやったことがある程度の経験値になります。
しかし私はそれがすごく大事だと思っています。スポーツにその辺は似てるなと思います。
スポーツも小さい頃からやったことがあれば大人になってもやってみようかなというふうに思いますよね。
私も野球をやってましたけれども投げるという動作は非常に難しいみたいで、これは小さい頃からやってないと大人になってから急にボールを投げようと思ってもなかなか投げれないということなんですね。
だけど投げ方というのは小さい時に頭で理解して投げているわけではないです。無意識にやってます。
大人になってからいくら頭の中で投げるという動作を理解してもなかなか体はついてきませんよね。
そんなことでやったことがあるというのは今後大人になってその仕事その機械を触るとかそういったことになった時にすごく役立ちます。
理屈よりもまず体で経験したことは次のチャレンジした時に大きく背中を押してくれるものになります。
ですからなるべく多くのことを実習で取り入れて体験させてあげたいなというふうには思っています。
幸い工業高校には古い機械がたくさんあるんですよね。
中には本当に古くて使えないものもありますけれども、昔ながらのもう自分で動かさなきゃいけないような機械も結構あって、しかしそれが企業の方も経験してほしいというふうに言われるんですよね。
そのような汎用の機械というのは先ほども言いましたが工場で必要とはされていないのでなかなか大量生産されていないわゆる非常に高価なものになっています。
ただ工業高校を除いてみてください。ほとんどの工業高校にはこの汎用の工作機械というのはずらーっと並んでますよ。
本当は大学生でもこのような機械を触るチャンスがたくさんあれば良いというふうに言っておられる方も見えます。
大得したものはその後理論的に知りたいと思って勉強したことと必ずつながってきますから、この後工業高校から工業系の大学に行って理論的なことをさらに学んだ時に必ず深い学びとなって生かされると思います。
一度皆さんも工業高校に足を運んで汎用工作機械というものを実際見てもらえるといいかなと思います。
一つ目の視点ということで、座学で学んだ知識と実習で大得した技能の融合ということで話をしました。
特に何かを体験して体で覚えるということは若ければその習得は早いということです。
次回への期待
高校生のうちになるべくいろんなことを経験するということは知識とともに大切なことですから工業高校は実践しているということです。
今回の放送では3つのうちの1つだけお話をしました。
残りの2つは次回発信したいと思います。
またこんなことを聞いてみたいとリクエストや質問がありましたらぜひお便りいただければ嬉しいです。
番組の感想やご意見もぜひお聞かせください。
SNSでも番組の最新情報を発信していますのでインスタグラムでぜひフォローしてください。
次回の配信は来週月曜日の朝7時を予定しています。
お楽しみに。
それではまた来週お会いしましょう。ありがとうございました。