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2025-06-16 12:07

#7研磨の世界②

研磨技能の習得と伝承について、前回に引き続き、大堀研磨工業所の大堀社長から話を伺いました。どの企業も直面している若手社員の技能の習得と伝承をどのようにしているのか?一つのヒントになること間違いなしです!

サマリー

今回、研磨技術の継承や技能の習得の重要性が語られ、大堀研磨工業所が実施している具体的な取り組みが紹介されます。特に、展示会の活用やデータベース化の試みが、伝統的な技能継承と現代的な手法を結びつけている点が印象的です。

研磨技術の重要性
こんにちは、私は岐阜県の工業高校で教員をしているすみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、そこで働く人たちの熱い思いを紹介していきます。
前回は大堀研磨工業所の大堀社長に、とても興味深いお話をたくさん聞かせていただきました。
その中でも特に印象的だった、究極の円や究極の平面を作るということについて、少し振り返りたいと思います。
研磨作業にて、究極の円柱を作ることで、その円柱が高速回転できる軸になるということで、それがロケットエンジンやこれからの産業に生かされていくだろうということにも驚きました。
身の回りでは、自動車のエンジンだけではなく、洗濯機やエアコン、高速で回転するものがあります。
そして、それらが滑らかに回転するということも省エネにつながりますから、これからいろんなところに生かされていくんじゃないかというふうに感じました。
そして平面もそうですよね。省エネということが社会課題になっている中で、エネルギーを発揮するには、より少ない力でエネルギーを動力に変えるということが技術で必要になってくると思います。
それを助けるには、いかに周動面と言われる部品と部品が摩擦し合うところを滑らかにするのかというところが課題になっていますが、その手助けにもなるということです。
さらに最も印象深いのは、どこまで行っても人の手がそれらを作っているということですね。
機械部品を作るための機械を工作機械と呼びますが、どんなに高性能な工作機械でも、その機械が持つ精度以上のものは作れません。
例えば1,000分の1ミリメートルの精度の機械では、それ以上精密なものは通常作れないということです。
ところが熟練した職人さんはその限界を超えるんですよね。
工作機械で作った部品を手作業でさらに仕上げていく。機械では到達できない精度まで仕上げてしまいます。
これはまさに職人技ですよね。長年の経験で身につけた感覚で究極の精度を追求する。
これは機械ではなかなか変わりはできないということで、まさに人間だからできる技なんですね。
これから身の回りで回転するものを見かけたら、前回の話を思い出していただけたらなというふうに思います。
技能の継承と実践
今回はその技術をどのように身につけていけばいいのか、そして継承していくのか、そのことについて話を伺いたいと思っています。
どの会社も課題の部分ではないでしょうか。非常に興味深いです。
それでは高い技術を継承していくということは、この人材不足の中ですごく大事な課題だと思いますが、どのようにお考えなんですか。
先ほども見てもらったように、ベテランが根気よく横についてアドバイスをしていくしかないですよね。
実際の品物をやっていかないと、上達していかないんですよね。
練習ワークとか練習の部品でやったとしても、やはりそこには緊張感もないですし、いくらそれを削ったところで、機械の操作方法は覚えるんですけど、技術は上がらないので、実際の品物をどんどんやっていきますね。
失敗が許されないのでプレッシャーが高いですよね。
プレッシャーもあるので、ここでどこらへんまで荒引きで取ったらいいですかとか、こんな感じでいいですかとか、削る方もやっぱり効きますし、教える方も不良になるといけないので、真剣に教えていきますのでね。
それを繰り返していると、結構早く削れるようになってきますね。
削りすぎたら元も子もないですからね、元に戻すことできませんもんね。
そこまでの材料から旋盤やったり焼き入れやったりという工程がありますので、それが全部最初からになるという。
何かもっともっと練習を積み重ねて本番に臨むのかなと、製品作りに臨むのかなと思ったんですけど、そうじゃないんですね。
そうですね、あります。
あと同じ部品もうちの場に流れているんですけど、半分以上は初めてやるような部品ばかりなんですよね。
それをやるときはどうしてもベテランも新人も相談しながらやっていくので、一緒にクリアしていくことになります。
これがやっぱり育成の一番大事なところで、一個一個一緒に達成していくというかクリアしていくというところが、やっぱり一番調達の秘訣かなとは思いますよね。
それをクリアしたら、もしかしたらこれと同じようなものとか同じものが次来るかもしれないので、その加工方法を先輩と一緒に加工記録にまとめていくんですね。
どういう機械で、どういう砥石を使って、どういうスピードで、どこに勘どころがあったのかみたいな。
今はそういうものを紙ベースでやっていたんですけど、なるべくデジタル化して、そのうちAIがそれを引っ張ってきてくれるような蓄積をしているところですね。
ただその人がやってきた勘どころみたいなところは、情報として蓄積したいところなので、
でも誰がその技術を使ってやったかって今なかなか引き出してこれないんですよね。
苦労してやったと思ったら他の人が既に以前苦労してやってたとか、そういうことがよくあるので、
例えば薄いリングの加工っていう風に入れれば、それに関する今までのノウハウみたいなのが出てくるような仕組みが作れればいいんですよね。
そういうものだって他の会社でもたくさんあると思いますよね。
しかし勘どころっていうのは、なかなか数値やデータにするっていうのは非常に難しいんじゃないかなと思いますが、そこはどうやってデータ化したらいいんでしょうか。
力加減とかはなかなかデータにはできないんですけど、申し送りたいようなことってあるんですよね。
あまり強く当てると歪みが出るとか、難しいんですけど、次の人にここは伝えなきゃっていうところがあるんですよ。
そういうところは記録として残すようにしてますよね。悩むポイントがあるんですよね。
なんとなく分かりますね。同じことをやっている人たちだからこそ伝わる言葉ってありますよね。
長島監督がボールはスッときてパンと打つんだみたいなことで伝わる選手もいますし、ポカーンとしている選手もいるっていう話とよく似てますよね。
ある程度やり込んだ人たちだからこそ分かり合える共通言語というのはもしかしてあるのかもしれないですね。
そういうのをベテランも若手も関係なしにそういう情報を引き出せると一番いいなって思いますよね。
苦労し始めると何日も苦労してしまったりするんですよね。
だからその苦労を次の人にさせないためには、未来の自分に言い聞かせるみたいに何かそういうことを記録として残していきたいなというところがありますよね。
あとは展示会とかですね。うちの会社は名古屋の展示会とか東京の展示会とか機械要素技術展というような加工技術を見せる展示会があるんですけど、
そういうのに年に2回から3回出て、そういうところでブースにいろんなうちの製品を置いてお客さんとか各メーカーの設計者そういう人にPRするんですけど、そういうところに若手の子を連れていくと。
そうするとお客さんはこのうちの会社に何を望んでいるのかとか、あとは自分の答えられないようなことに気づきがあるとか、うちの会社の良いとこ悪いとこなかなかまだわかってないなとかそういう気づきもありますので、自分の会社をPRするっていうところでかなり勉強ができる。
もう一つは同業者もしくは前加工後加工の技術を見ることができるじゃないですか。他の展示ブースに行くという。だからそういう勉強の機会っていうのも人材育成の一つ。
確かに前加工や後加工っていうのはなかなかわからないところですよね。実際製造現場ではこれがどのような工程のどの部分かということがわからないままやっている方っていうのは多いみたいです。しかしそこがわかるとこの工程のどの部分が大事なのかということも逆に理解できるということですね。
会社の中にいるとわからないんですけど、そういうところに行くとたくさんの人が営業してますしPRしてますし新しいものを作っているのがわかりますし来場者も何万人できますよね。
普段見えないところでこんだけの人が動いているのか。こんだけの人が商談をしているのか。そういうところが見えると自分のその中で一員だぞということはよくわかりますので。
そういうのも大事かなとは思いますよね。だから自分らの技術がどのぐらいすごいのか。どのぐらい足りないのかっていうところもわかりますもんね。
今回は大堀研磨工業所の大堀社長から人材育成とその技能の伝承についてお話を伺いました。
高い技能を身につけるということは簡単にできることではありません。そしてそれを他人に伝えるということはさらに難易度が上がります。
昔の職人は見て覚えろということでしたが、それは決して不親切だということでありません。言葉にする時点で間違って伝わってしまうからです。
技能を習得する側も語幹を使ってあらゆる感性を研ぎ澄まして身につける気構えがないとできないということだと思います。
現代の教育現場では確かにわかりやすく教えることが重視されていますが、それが学習者の受け身な姿勢を生んでしまう危険性もあります。
しかし大堀研磨工業所では先輩と後輩が密なコミュニケーションを取りながら根気強く技能を伝承していくということがわかりました。
特に社員の感性を魅惑ために展示会への参加を促し、気づきの機会を増やすという取り組みや将来を見据えたデータベース化への挑戦は伝統的な技能継承と現代的な手法を両立させる素晴らしい事例だと思います。
次回の予告
大堀社長の研磨技能をさらに高め、そして確実に伝え続けていくという強い信念が今回の会でよく伝わってきました。
さて次回はいよいよ最終回です。
会社組織という視点からさらに大堀社長の考えをお伺いしたいと思います。
どうぞお楽しみに。
それではまた次回お会いしましょう。
12:07

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