ものづくりコンテストの概要
こんにちは。岐阜県の工業高校で教員をしているすみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、
そこで働く人たちの思い、そして工業高校の教育現場を紹介していきます。
今回は、ものづくりコンテストという大会について説明したいなと思います。
先日、岐阜県大会が行われました。
そもそも、ものづくりコンテストなんですかね、というところですけれども、
高校生にはやっぱりですね、目標を持つということが、すごいモチベーションにつながって、
すごい努力をするきっかけになってくるんですよね。
ですから、各種スポーツだけではなく、ものづくりも大会が設けられているということなんです。
しかし、高校野球といい、世界陸上といい、今年は盛り上がりましたよね。
私も甲子園に足を運んで試合を見たり、たまたま出張先とタイミングが合いましたので、世界陸上も見てきました。
その盛り上がりというのは、もう全国区ですよね。
全国というか、世界的にも世界陸上は盛り上がっていますよね。
そういった大会と比べると、ものづくりコンテストとはどのぐらいの大会なのかというと、
これはですね、工業校長会という、工業高校の取りまとめをやっている協会があるんですけれども、
そこが主催して、工業高校生の成果発表の場というところで企画をしています。
そして、この大会は県大会で優秀な賞を取ると、東海大会、そして全国大会へとつながっていく大会なんですよね。
そう思うと、スポーツの大会とよく似てますよね。
こういった大会で全国に出るために、各地区の工業高校の生徒が頑張っているということが、ものづくりコンテストの位置づけです。
大会の課題
ものづくりの大会といえば、他にもあるんですよ。
若年者ものづくり競技大会というのもあります。
これはですね、工業高校の生徒だけでなく、20歳以下の未就業者ですね、企業に就職していないという方たちですよね。
例えば、高専の生徒であったり、専門学校、もしくは職業能力大学校など、そのような生徒たちが出場する大会です。
そしてさらに上には、全国ものづくり大会ということがあります。
これは技能五輪の全国大会とも呼ばれるものですよね。
これは23歳以下の企業の方も含めたトップ技能者が集まって、高度技術を競うという大会です。
このものづくりコンテストも長年続いておりますけれども、近年なかなか難しい問題に直面してきています。
その内容についてちょっとお伝えしたいと思います。
先ほども話しましたけれども、ものづくりコンテストは非常に教育的にも価値が高いということで、歴史的にも各学校が力を入れてきた分野でもあります。
しかし近年、思わぬところで歪みが出てきているというのも現状です。
どんなことかといったら、まずは誰のためのものづくりコンテストかといったところがブレてきているというところが問題点です。
具体的にどんなところかといいますと、どんな競技でも年々競技レベルというのは上がってきていますよね。
このものづくりコンテストも例外ではありません。
全国に勝ち上がってくる学校にちゃんと差がつくように、課題がどんどん難しくなってきているというところがあります。
本当はものづくりコンテストは授業の延長線上の成果発表の場ということで、それぞれの技能を高め合うための大会だったんですけれども、
大会専用に教育していかないと全国大会に行けない、東海大会に行けないということになってきているんです。
そうなるとどのような副作用が出てくるのかと、必然的にごく一部の生徒を早期選抜して大会専用の指導をするということになってくるんですよね。
そうすると授業と大会の指導が乖離してくるということになります。
例えばものづくりコンテストの選抜部門の様子を見てみると、評価というのはやはり精度、仕上がり、ミスの少なさ、そういったことが点数に反映されやすいですから、
そうすると選抜された生徒をいかに良い工具でいかにたくさん練習させるのかといったことになってきます。
そうなるとそれだけの設備や時間の投資をごく限られた一部の生徒だけにして本当にいいのかといったジレンマが生じてきます。
多くの生徒に還元できるものならいいんですけども、結果的にはものづくりコンテストで全国大会に行ってもその子だけの話になってしまう可能性が高いんですよね。
しかもそのものづくりに関しては創造性はありませんから、決められた課題に対して時間内にどれだけ精度良くできるかといったことなんです。
まあいわゆる自動化された工作機械でも同じようなことができるじゃないかというような批判的な意見もあります。
そして働き方改革の問題で放課後ありきの練習ではやはり到底指導できないということで三重県の学校はもう参加してないんですよね。
そしてだんだん課題が難しくなるということで指導できる教員も少なくなってきていると。
本当にごく一部の限られた学校の限られた生徒が毎年出るような大会になりかねないんです。
そういった側面があり、さてこれは本当にいいのかといったところを今課題として突きつけられているという状況です。
改善策と未来への展望
さて最初にも提示しましたが誰のためのコンテストなのかというところですよね。
ごくごく限られた一部の生徒のためだけではなく多くの生徒が還元されるような内容にするにはどうしたらいいのか。
そしてこの大会を通じてものづくりが面白いもしくは旋盤が面白いといったことが伝わるようなそういった大会にするにはどうしたらいいのか。
いつまでたってもうちはだけの大会ではこれはものづくり人口が増えるような大会とは言えません。
では解決策はどうでしょうか。
実は来年度のものづくりコンテスト東海大会はギフで行われるんです。
その担当校はギフ工業高校になってますから私を中心にいろんな先生と協力しながら東海大会を作り上げていくんですけれども
この課題と向き合いながらどうすればいいのかということを実践していきたいなと思っています。
ではどうすればいいのか。
例えばスポーツクライミングこれも地味で非常にわかりにくいスポーツだったんですけども
例えば色分けをして登るところを見やすくするとか何を登るのかを明確にするとか
あとは選手の物語を積極的に配信するということで結構これ人気出てきてますよね。
あとeスポーツもただのゲームからeスポーツなんて呼ばれているまで成長しましたよね。
ただのゲームではなく実況や解説が入ったりとか大会のストーリーですね。
因縁の対決だみたいな感じでそういったストーリーを作り上げて今では世界的な競技になっています。
あとは一番ものづくりコンテンツに近いロボコンですよね。
テレビでもやっているのを皆さん見たことあるかもわかりません。
交戦の生徒がロボットを作って戦いをするとこれも勝ち負けがはっきりしますからね。
わかりやすいですよね。そしてその学校その生徒の取り組みも紹介されて感情移入しやすいですよね。
ではものづくりコンテストの1000番部門に限ってですけれどもどのような部分が足らないのかといったところですが
やはり実況とか解説必要ですよね。一般的な人がわかんないならそれは興味関心は来ませんよね。
そしてやはり人ですよ。人をいかにクローズアップできるのかここに限るというふうに思います。
それが人を生かすということにもつながってくると思います。
あとは専門的な分野だからこそ誰でもが入り口としてつまずかない優しい解説ですよね。
そういったところも必要になってくるんじゃないかなというふうに思います。
やはり注目度が高くなれば自分もやってみたいという気持ちが起こると思うんですよね。
やはりそうすることで製造業やものづくりに興味ある子を増やしていくという取り組みを私たちはしなければいけないというふうに思います。
ものづくりコンテストを例年通りやって、マイナーなもの、誰も知らない大会、一部のものしか知らない大会にするのではなく、
多くの人が興味を持ってもらえる大会にする。
これを来年度岐阜県で行われるものづくりコンテスト1000番部門の東海大会に何とか行かせれたらなというふうに思っています。
今回はものづくりコンテストという大会について説明しました。
これはものづくりコンテストを否定するものではなく、どうしたらより良いものにしていけるのかといったことを発信したつもりです。
私たちはどうしても例年通りという中でことを進めがちですけれども、時代の流れは目まぐるしく変わってきています。
そして昔と同じではいかなくなってきている部分を直視してどんどん変えていく必要があるんですよね。
その変えるということはすごく労力がいることですけれども、もう一度立ち返りましょう。
誰のためのコンテストなのか、そしてどうあるべきなのか。
やはりこれは例年通りに結果的に行うとしても、常に私たち大人が話をし、考えを揉み合って前に進めていくべきものだというふうに思っています。
同じことを同じようにやる、これが目的ではありません。
いかに今の生徒たちに合うような内容を作り出せるのか。
これは大人しかできませんから、これを皆さんとアイデアを出し合いながら進めていけたらなというふうに思っています。
未来をつなぐものづくりは毎週月曜日7時に放送しています。
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ではまた来週。さようなら。