言葉の軽さと信用
信用できない人の特徴五つ目。言葉が軽い人は信頼も軽い。
世の中にはよく喋るけれど中身のない人がいます。 口を開けばいいことばかり言っていますが、いざという時に何一つ実行に移せません。
私が若い頃、ある商人の話を聞いたことがあります。 任せておいてくれ絶対大丈夫だと何度も言っていた人がいました。
みんな最初はその言葉を信じていたんです。 ところが約束の期限が来ても品物は届かず電話しても言い訳ばかり。
結局その人は信用を無くし誰からも相手にされなくなりました。 言葉は誰でも簡単に言えます。しかしそれを行動に移すことができるかどうか、
そこに人の本当の価値が出るんです。 私自身、デッチ暴行の頃から口で言ったことは必ずやり遂げなさいと教えられました。
本当の信頼とは黙っていてもやるべきことをやる。 そういう姿を見て周りが自然と抱くものだと私は思っています。
ある日私が掃除をしていると番頭さんがそっと言ったんです。 コーノスケ、いいことを言うより一つ動く方が信用になるぞ、と。
それがずっと胸に残っていましてね。 口ばかりで動かない人にはいつかツケが回ってきます。
その場は取り繕えても人の心はそんなに甘くはありません。 信頼というのは言葉で得るものではなく行動で気づくものです。
それを忘れたらどんなに立派なことを言っても中身のない器と同じだと思います。 ある時、うちの工場に一人の若い者が入ってきました。
やる気もあるし元気もある。 けれど何でもかんでもできます。
任せてくださいと言ってくる。 最初は頼もしいなと思いました。
しかし仕事が増えてくるとだんだん遅れが出てくる。 行っていた納品が守られない。
準備も足りていない。 けれどあの子はいつも笑顔で大丈夫ですという。
ある日お得意先に納品が間に合わない事態になりましてね。 できると言っただろうと問いただしたらちょっと予想外のことがあってとまた言い訳が帰ってきた。
私はその時きっぱり言いました。 予想外のことが起きるのが仕事だ。それを見越して動くのが責任だぞと。
その場しのぎの言葉で逃げても信頼は戻りません。 口でどれだけいいことを言ってもそれに行動が伴わなかったらその言葉はただの飾りです。
その若い者も自分の軽い言葉がどれだけ周りを困らせたかに気づいて、そこから少しずつ言葉に責任を持つようになりました。
信頼というのはつぶのに時間がかかりますが崩れる時は一瞬なんです。 人は口先だけではついてきません。
この人はやると言ったら本当にやる人だとそう思われて初めて信頼されるのだと私は思っています。
私がまだデッチだった頃の話です。 毎朝店の前を掃除するのが日課でした。
冬の朝は手もかじかんで正直つらい時もありました。 けれどある日番頭さんがぽつりとこう言いました。
「コウノスケ、その手の動きが信用になるんだぞ。」と。 最初は何のことかわからなかったです。
でも毎日黙って掃除を続けていると近所の人がいつもきれいにしてくれて
ありがとうさんと声をかけてくれるようになった。 その時初めて気づいたんです。
信用というのは見ている人が自然と感じてくれるものなんだなと。 言葉ではなく行動で示す。それが本当の信頼だと思いました。
私が社長になってからもそれは変わりませんでした。 社員にはよく言っていました。
いいことを言わなくていい。黙ってやったらそれで伝わると。 ある日若い社員が現場の片付けを黙って最後までやっていた。
誰にも言わず汗だくになりながら黙々とやっていたんです。 後でその姿を見た取引先の人がいい社員さんだなぁと褒めてくれました。
派手な言葉よりも静かな行動。それが人を動かす力になる。 どれだけいいことを言ってもやることが伴っていなかったら信頼は得られません。
逆に何も言わなくてもやるべきことをやっている人はちゃんと周りから一目置かれます。 だから信頼を得たいならまずは黙って動くことだ。
それが私の長年の実感なのです。