責任を取らない人の特徴
信用できない人の特徴3つ目、責任を取らない人に大事は任せられない。
私が若い頃、ある職場で見た光景が今でも忘れられません。
一つのミスが起きて、大事な得意先に迷惑をかけてしまったことがありましてね。
その時、当事者の一人が、「私ではありません。指示が曖昧だったんです。」と言って、責任を他の人に押し付けたんです。
その場にいた人間は、みんな黙って聞いていましたが、心の中では、この人には何も任せられないと思ったはずです。
責任を取らないというのは、自分を守っているようで、本当は自分の信頼を削っている行為なんです。
失敗は誰にでもあります。完璧な人間なんていません。
けれど、その後の態度が全てを決める。
すみません、私の判断ミスです。
たったそれだけで、周りは、「ああ、よく言った。」と思うものです。
逆に言い訳ばかり並べる人は、「またこの人だな。」と思われて、どんどん信頼をなくしていく。
私は何度もこういう場面を見てきました。
そして、確信しました。
責任を取る有義のある人間こそ信頼される、と。
責任を取るというのは、損をすることではありません。
むしろそれができる人にこそ、周りは安心して仕事を任せられるんです。
一度のミスよりも、その後の態度がその人の器を示すものだと、私は思っています。
ある日、工場で製品に不具合が見つかりましてね。
取引先に送った後だったから、私も冷や汗者でした。
すぐに現場の責任者を呼んで事情を聞いたら、「これは部品を組み立てた班のせいだと思います。」と。
よく確認もせず、他に責任を振ろうとする。
私は言いました。
いいからまずはお客さんに頭を下げに行こう。話はそれからだ。
結局原因は、その責任者自身がチェックを怠ったことでした。
後になってそれがわかって、本人もがっかりしていましたが、すでに取引先との信頼には傷が入ってしまったんです。
失敗は防げるものばかりではない。
けれど、私が悪いございましたと言える人は、必ず次のチャンスをもらえる。
それをせず、自分を守ることばかり考える人は、たとえ優秀でも、大事な場面では使えません。
私はよく社員に言っていました。
責任から逃げるな。逃げた先に成長はない。と。
責任というのは荷物みたいなものです。
最初は重たく感じるけれど、背負うことで足腰が鍛えられる。
その重みを知った人間だけが、本当に人の上に立てるんです。
責任を引き受ける姿勢は、たとえ失敗しても周囲の心を打つ、それが信頼という土台になるのだと私は信じています。
私が社長になってからも、責任に向き合う人と逃げる人の違いをよく見てきました。
ある中堅社員が、新しいプロジェクトを任された時のことです。
はじめは順調だったんですが、途中でトラブルが起きて、計画が狂ってしまった。
その時、彼は私のところに来て、こう言いました。
全て私の見通しの甘さです。やり直させてください。と。
その言葉を聞いた瞬間、私はこの人にもっと任せたいと思いました。
反対に、他人のせいばかりにする人間もいました。
何か起きるたびに、部下が動かなかった、害虫のミスですと言い訳を並べる。
それを聞いているうちに、周りはあの人とは仕事をしたくないと口を揃えるようになった。
責任というのは、信頼を得るチャンスでもあるんです。
逃げたら失う、受け止めたら積み上がる。
それがこの空き内の世界で私が学んだ一番大きな教訓かもしれません。
この人に任せたら安心だと思ってもらえる人間になるには、まず自分の失敗を自分で受け止める覚悟がいる。
その覚悟がある人は、たとえ最初は失敗しても周りが助けてくれます。
失敗を責めるのではなく、姿勢を見ているんです。
私も数え切れないほどの失敗をしてきましたが、そのたびに私の責任ですと言ってきました。
その一言が信頼の第一歩になる。
それを忘れたら、大事は任せてもらえません。
怒りの感情と信頼
信用できない人の特徴四つ目。
すぐ怒る人は心が定まっていない。
怒りというのは人間らしい感情の一つです。
けれどそれがすぐに顔に出る人というのは、心の奥がまだ整っていない証拠だと思います。
私が若い頃に出会ったある店の主人がいましてね、
その人はちょっとでも気に入らないことがあるとすぐ声を荒げるんです。
なんでこんなこともできないんだ、バカじゃないのかなどと。
従業員はみんなビクビクして顔色ばかりうかがっていました。
最初は厳しいけれど仕事に真剣なのだろうなと思っていたけれど、
だんだん見えてきたのは本当は余裕がないだけなんです。
すぐ怒る人というのは相手に矛先を向けているようで、
実は自分の中の不安や焦りをごまかそうとしているだけのことが多い。
その主人は自分の思い通りにいかないことを全部人のせいにしていました。
けれど本当の原因は自分自身の感情をコントロールできていないことだったんです。
私がその店を離れてから何年かして噂を聞いたら、
従業員は次々に辞めてお客さんも離れていったそうです。
人は安心できる場所に集まります。
怒りの火花ばかり飛んでいるような場所には誰も長くはいません。
すぐ怒るというのは一見正義感が強いようにも見えるけど、
それは心が未熟なままだと私は思っています。
私が経営を始めた頃、ある社員がね、
ちょっとしたことでイライラしてすぐ声を荒げる癖があったんです。
例えば年表のミスがあっただけで、「誰がこんなものを売ったんだ!」と怒鳴る。
それを聞いた若い子らは萎縮してしまう。
誰もその人に話しかけようとしなくなる。
私はある日、そっとその社員に言いました。
怒るのは簡単だ。けれどそれで誰が得をするんだと。
本当に大切なのは相手に伝わる言い方をすることです。
ただ、怒るだけでは人の心には届きません。
むしろ壁を作ってしまって大事な信頼を失うんです。
怒りは時として相手を動かすこともあるかもしれませんが、それは短期的なものです。
恐れから動いている間は心から信頼しているわけではない。
その社員も最初は聞く耳を持たなかったけれど、ある日後輩から怒られるのが怖くて仕事が手につかないと言われて、初めて自分の態度を反省したそうです。
そこから少しずつ変わっていった。
怒鳴る代わりに問いかけるようになった。
すると周りの空気も和らいできて、その人の評価も自然と上がっていきました。
怒りを抑えることは弱さではなく強さなんです。
自分の感情に振り回されず人に安心を与えられる、そんな人が本当に信頼される人だと私は思っています。
感情のままに起こる人とじっとこらえて相手に寄り添う人、その差は年を重ねるごとに大きな信頼の差になっていきます。
私が見てきた中で本当に信頼される人というのは、どんなに腹が立つことがあってもすぐに声を荒げるようなことはしなかった。
一呼吸を置いて相手の話をちゃんと聞いて、それから静かに自分の意見を言っていました。
ある日、私のところに部下がミスをして腹が立ちます。どうしたらいいですか?と相談に来た若い経営者がいました。
私はこう言いました。
そうだけどな、ミスの時こそ器が試されるんだぞ、と。
怒鳴るのは簡単だけど、それで相手が育つとは限らない。
むしろ何も言わなくても、この人は自分を見てくれる、と思わせるような人間こそ長い目で見て信頼を集めるのだと私は思います。
感情をぶつけるのではなく、相手の成長を願う姿勢を持つ、それが本当のリーダーというものではないかと思います。
それは家庭でも同じことだと思います。
態度の重要性
子供が失敗した時すぐに怒鳴るのか、それとも黙って受け止めて後からゆっくり話すのか、その違いが信頼関係を作るんです。
怒りを我慢するのは難しいことです。
けれどその一瞬をこらえた人だけが本当の意味で相手の心に届く言葉を持てるのだと思います。