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精神科の知識を学べる番組、歴史から学ぶ精神科ラジオ。この番組では、精神医学を作った人々、現在のトピックスを精神科医が解説します。精神科専門医30年、医学博士で現在、開業医のマリモと。
その姉で、障害を持ちの方の就労支援事業所を経営していて、つい先日生まれた初孫。生まれた日からミルクだけでどんどん大きくなる写真を楽しんでいる、桜がお送りします。
強制イースの問題
フィリップ・ピネルが鎖を取る物語。これを4回に分け、その第3回として、ベンジャミン・ラッシュの強制イース。19世紀初めの精神科医療、です。
前回の続きからお送りします。
ラッシュさんが行っていた治療で、一つ有名なというか、悪名が少し立っているのもあって、それをちょっと言おうかなと思うんですけどね。
それがこの強制イースっていうやつです。
この強制イースって見えてますかね?
めちゃくちゃ衝撃的です。
あ、そうですか。確かにあんまり見ないですよね。
初めて見ました。
いわゆる背もたれのあるイースに、手足をくくりつけられていると。手と足だけじゃなくて、胴もくくりつけられて。
頭に、頭を固定するものもついているんですよね。
箱みたいなのがかぶせられてますよね。
箱みたいなのがかぶせられて、だから頭も動かないようになっていると。
目もあまり見えないように目隠しされていると。
このお尻のところにバケツみたいなのがくっついているじゃないですか。
これは排泄を受けるオマールのような。
そのままってことですか?この姿勢で。
そうですね。
っていう強制イースっていうのを開発したというのが、
ベンジャミさんが?
ラッシュさんです。
衝撃です。
そうなんですよ。その人道的な行為を治療を前進していたラッシュなんですけどね。
この強制イース問題っていうのがあるんですけども。
これ今から思うととんでもないことと思うんですけれど。
ちょっと見ていきましょうか。これ開発する過程ですね。
なぜこれができたのか。
19世紀の治療方法
まずですね、精神科の治療ってその当時19世紀の始めとか18世紀の終わりぐらいですね。
どんなことをしてたかって言いましたらですね。
まずやっぱり薬物治療ですね。
ただやっぱり薬物治療と言っても、今みたいな薬じゃないんですよね。
使える薬っていうのは今で言うアヘンとかこの薬草ですな、ヒオスっていうのがあるんですけど。
これ毒物なんですよね。毒なんですよ薬で。
これを飲むとちょっと落ち着くと言われてて。
確かに量が少なかったら落ち着くんですけれども、いっぱい飲むと死んじゃうというような毒草があるんですけど。
それが割と使われてたり。
アヘンっていうのは麻薬として考えられることが多いですけれども。
アヘン少量で使えば痛みを取ったりとか落ち着くという作用もあったりするので。
うまく使えば薬と使えないこともなかったんですけど。
アヘンとかそういう鎮静系の薬草だったりとか、あと下剤とか利尿剤とかっていうのはあったので。
薬ってそのぐらいだったんですね。
怖いやつですね。
そうですね。いずれもあんまり効果がパッとしないというか、ないこともなかったんだろうと思うんですけど、やっぱりなかなか難しかったんですよね。
やっぱり薬ってもともと毒から来てるんですね。
そうですね。
精神科の中でめっちゃよう効く薬っていうのはこの当時当然なかったんだろうなと思うんですけどね。
じゃあ主にどんなことをしてたかというと、実は物理的に治療をしてたっていうのが主でした。
一番有名なのが。
物理的に対応する。
物理的に対応する。一番有名なのが射血っていうやつですわ。
はい。
この射血って難しい字ですけどね。
そうですね。普段は使わない気がしますけど。
そうですね。射血っていうのは血を抜くっていうことなんですよ。
血に抜かれるんですか?治療で。
そうなんです。
なんで?
なんで?なんですけど、実はこの当時ね、血を抜くことっていうのは結構医学的な治療と考えられてて。
精神科の病気もそうなんですけど、それ以外の病気でも射血することで治療できるよっていうふうに考えられてました。
実際射血されてました。
この考え方があってですね。
なんで射血が治療に結びつくのかっていうのは、古代ギリシャ以降ですね、人間の体っていうのは4体液説って言われる体液のバランスによって健康が保たれてるんだっていう考え方があったんですね。
血液、念液、大胆汁、黒胆汁っていう4つの体液ですね。
これのバランスで健康が保たれるんだっていうふうに考えられてて。
その4つの体液を調整するのに、精神疾患っていうのは熱しすぎた血液とか黒胆汁の過剰とか血の欠帯とかというふうに考えられてて、血液を抜くことで体液が整うと考えられてて。
精神疾患だけでもないんですけど、割と血液を抜いてたらしいです。
暴れたりするから熱くなってるみたいなイメージなんですかね。
そうですね。
すごい直接的ですよね。
健康のバランスが体液のバランスで起こってるっていうふうに本当に考えられてたとしたら、確かに血を抜くということは何かしらのバランスを整えるんだろうなというか何かしらバランスが変わるんだろうなってわかりやすいかなとは思うんですけどね。
そう状態の患者さんには鎮静の目的で割と血液抜いてたっていうことですけどね。
なるほど。元気なくなりますよね確かに。
なくなりますよ。
すごいね。しんどいですもん。
射血って言ったら、輸血とかが割と現代の僕たちだったらわかりやすいと思うんですけど。
でもね、この当時って射血は注射器ないんですよ。
そう、どうやってするんと思って。
そう、それを調べたんですけど。
怖い怖い。
ちょっと言いますけどね。
怖い話ですよね。
ちょっと怖いです。
注射するときに手をくくりますやんか。
ゴムで縛るやつですね。
ゴムで縛るでしょ。血管が縄膜がプクッと受け出ますやんか。
そこに注射器を刺して血液を抜きますやん。
この当時はプクッと膨らんだ血管を切るんですよね。
怖いよ。
で、血を出して、ある程度取ったら板底みたいなのを貼って止めると。
止まるんですか?
縄膜ですからね。圧迫して血で止まると思うんですよね。
でもね、これは興奮している人にもするし、あるいは体が弱っている人の場合にもね、この射血っていうのが治療だったのでしてたんですよね。
でもそんなんでね、体が悪い人にこんなのやったらほんまに亡くなっちゃうよねっていうことも実際あったみたい。
それはあるでしょう。売金入ることもあるでしょう、そこから。
売金も当然あったと思うんですね。
例えば射血です。
あともう一個有名なのが肝臓ですね。
なんで肝臓やねんっていうところなんですけど。
ちょっと突っ込みたかったですけど。
便秘もしてないのに肝臓をすると。
精神疾患の原因はこの消化管の異常とか便秘によって毒素が停滞してて精神疾患になってんじゃんかなと言われてて、超きれいにすれば精神も整うとされて肝臓もされてたと。
日常的な治療として肝臓されてたということですね。
辛いですね。元気なくなりますね。
これなくなりますよね。
でもこれも面白い話があって。
最近ですよ。この10年ぐらいの話ですけど、腸内細菌が脳に影響してるっていう話もあったりするんですよ。
そうなんですか。
そうそう。腸脳循環とかって言うてね。
腸の良い細菌が増えると精神的に落ち着くとか、あるいは認知症に関連してるとか、うんぬんかんぬんとかって脳の病気と腸内細菌が関係してるみたいな話が最近わりと有名なんですよ。
流行ってるんですよ。
そうなんですか。
そうなんですよね。腸の治療というかね。
そういう腸にこういう菌を移植したりすると、中枢神経のこういう病気が良くなるんちゃうかとか、どうだこうだみたいなことって、わりと真面目に今現代ですね、研究されてたりもするって言われてて。
だからこの肝臓って丸々おかしい話でもないかもわかんないんですけど。
もしかしたら将来的にはめちゃくちゃあってた。
将来的には何かしらあってたかもわかんないんですけど。
まあまあこの時代の話とはね、ちょっとまた違う話ですけどね。
矯正椅子の役割
それ以外にも冷水浴って言って、冷たい水に患者さんを浸けるわけですよね。
絶対元気なくなりますね。
それと落ち着くというようなことであったり。
それの一環としての矯正椅子なんですよね。
なるほど。
この矯正椅子っていうのは、普通患者さんをおとなしくさせる時には、普通はこの鎖とかを使って壁に吊るしてたんですよね。
それよりもこの椅子にくくりつけた方が、まだ人道的でしょっていうことなんですよ。
椅子に座ってるからね。
そう。
普通その壁とかに吊るされるというか。
つかまった囚人みたいなイメージですよね。
そうなんです。
それよりも座って固定されるということなんですよね、この矯正椅子っていうのはね。
なるほど。
だから人道的っちゃ人道的っていう発想だったんですよ。
考え方によりますね。
そうなんですね。
この当時、こういう治療をしている中での矯正椅子っていうのは、確かに一つの治療、落ち着かせるためにはやむない状態の一つでもあったんかなと思うんですけどね。
こういう椅子に固定することで本当に治療になるんですかっていうような考え方があって、一応そういう理屈も考えてたみたいですよ。
そうなんですか。
感覚入力とか過剰な刺激っていうのが少なくなったりとか、あるいはこの頭の血流が変わることで精神症状も変わるんですよというふうに考えられてて。
この矯正椅子のバージョンがアップすると、この椅子の下にくるくる回る台座をつけてですね、患者さんをくるくる回転させるということもあったみたい。
縛り付けたまま?
縛り付けたまま。
目回るじゃないですか。
で、吐き気が出てきて吐いてね。で、興奮が収まるみたいなね。
それ、しんどくなってるだけですけどね。
そうなんですけどね。ただ吐いたりすることっていうのが、むしろ治療効果だというふうに考えられた時代もあったみたい。
なるほど。外へ出させよう出させようとするわけですね。
そうですね。これも一つそんなに考えられてたみたい。一応、ラッシュが考えたとされてて。
この後の時代も、ちょっとこの矯正椅子っていうのが使われる時代が数十年、五十年ぐらい続くんですよ。
そんな長く続くんですね。
割と続きます。で、割とこれが乱用されることもあってね。乱用っていうか、
懲罰的に使われたりとか、不必要に使われたりとかって当然することになってね。
だって拷問ですもんね。使い方によったら。
拷問に近いとね、言われてそうそう。これが結構おてんだと、精神医学のおてんだみたいな考え方があったりもするんですけど。
ただ始まりとしては、やっぱり治療として頑張ったし。
で、ラッシュの書いた本によると、適切に使わないといけないと。注意深く観察して使ってくださいと。
道徳的に使ってくださいというようなことも書いていたんですよね。
この当時としてはまあまあだったとしても、適切に使わなかったらやっぱり拷問になったりするので。
そういうのが後世で起こったっていうことですね。
使う人による解釈によるってことですね。
電気ショック療法の発展
そうですね。実は同じようなことっていうのは今後いろいろ精神医学の治療で起こりますね。
行きつ戻りつするんですよね。
良かれと思って作るけど、使う人たちが間違えるっていうパターンですね。
そうそう、その通りです。
電気ショック療法って知ってます?聞いたことあります?
聞いたことないです。
電気ショック療法知りません?
知らないです。
頭に電気をかけて精神疾患を治すっていうものなんですけどね。
命大丈夫なんですか?
はいはい、それは命大丈夫なんですよ。
割と実は今も使ってます。
そうなんですか?
はい、今もやってますよ。
知らなかったです。
そうですか。電気系電療法っていうのがありましてね。
今も実は非常に有効な場合があって使われてるんですけど、
もっと初期に、でもね戦前とかから始まって電気ショック療法っていうのが。
一時期ね、1960年代ぐらいですわ。
僕らが生まれた頃なんですけど、なんか不一様に使われだしたんですよ。
それごと懲罰的に。
で、各校のその上でっていう映画があるんですけどね、60年代に。
それがその精神科病院を描いた映画で、この電気ショック療法がとても不適切に使われてたと。
懲罰的に使われてたっていうような訴えるような映画があるんですけどね。
で、一旦その電気系電療法っていうのは良くない治療だということで廃れてはいくんですけど、
でもある種の精神疾患にはとてもこれが有効っていうことになって、
リバイバルして現状も使われてるということなんですけどね。
こんな風に精神科の治療ってちょっと行きつ戻りつしたりとか、行き過ぎたりとかっていうようなことがあったりして、
そういうのって割とあるんですよね。
ラッシュの治療法
あともう一個ね、ラッシュがやった治療で、特筆すべきことなんですけど、環境による治療っていうのも有名でした。
道徳的治療って言われてて、人道的で温かみのあるケアをすることで良くなりますよっていう治療なんです。
これバッティの時にも言いましたけどね、道徳的に正しいことをお伝えして、
規則正しい生活をして清潔な環境で生活する中で良くなるというやつですね。
これがラッシュも進めました。
ラッシュがやった中で一つ有名なのがあって、この作業療法っていうやつですわ。
今まで通じるやつですね。
そうですね。この作業をすると、経営作業とか手芸とか脳作業とか音楽書いたりすることで、割と元気になると言われてて。
ラッシュの書いてる本の中にあるんですけどね。
入院してる男性患者は気を切ったり火を食べたり庭園を掘ったりしたり。
女性患者の場合は洗濯したりアイロン掛けをしたり床をこすったりすることでしばしば良くなると。
お仕事ですね。
そう、仕事をすることで良くなるって書いてる。
ただ、階級が高くてそのような作業を免じられている患者はずっと病院の中で人生を送ることになると。
ということは注目に値しますよって書いてます。
なるほど。
だから作業療法する人は良くなって退院することもできたけど、それをしなかった人っていうのはずっと入院してたよっていうことは書いてて。
だから作業療法っていうのは大切なんじゃないかみたいなことをラッシュは書いています。
すごいですね。19世紀に。
19世紀に。
これで割とアメリカでは作業療法っていうのが精神科病院で流行るっていうことにもつながるみたいですね。
っていうようなラッシュのその当時の治療でした。
まとめとしては、このラッシュっていうのは精神科医療をアメリカ外出国で始めたというか先進的に広めた。
いろんなプラスな面も多かったし、ちょっと失敗したというかやりすぎたところも若干あったんですけれども、アメリカ精神医学の知識として考えられているということですね。
以上になりました。
衝撃的な話もありますけど、こうやって歴史を重ねて現代に至って未来に続いていくんですね。
そうですね。
そうなんですよ。
行きつ戻りつっていうところがね。
本当そうですね。
でもその時ではやっぱり最良のことをやってたと思うんですよね。
そうですね。
できるだけのことはね。
だからちゃんと理解して使える人が使うといい治療になるんだけど、間違った解釈とか安易にやっちゃうと間違ったことになるよっていうのは今も同じですもんね。
そうなんですよね。
まさにそういうことでね。危険性はあるんですよ、どんな治療にも。
ただ頑張ってリスクもあるけどやりましょうということになるんですよね。
命かかるから怖いんですけど、トライアンドエラーは本当に必要ってことですもんね。
そうなんですよね。
ギリギリの線でどの時代もやってるっていうところもありますかね。
今から思うとほんまにやりすぎやんってなぜ気づかないんだろうと思うけど、その時は精一杯なんですよね。
精一杯っていう側面もあるんですよね。
まあまあその辺のバランスですよね、医療ってね。
はい、ではそんなんです。ありがとうございました。
ありがとうございました。
ということでエンディングに入りたいと思います。
今回ラッシュさんの話をですね、2回に分けて話しましたけれども、どうですか?感想とかございます?
バティさんの時から18世紀だったでしょ?
その時に今の精神学に通じるものが生まれたんやなと思ってて、
今回のラッシュさんになると19世紀、結構今に通じるものがはっきり見えてきたなと思って、作業療法だったりとか。
そうですね。
やっぱすごい1世紀ずつ100年ごとに進化はするんだなっていうのをすごい感じてます。
その中でね、たくさんの人がいろんな事情で亡くなられたりとかっていう歴史ももちろんあるんだけど、
人間ってすごい進化する生き物やなってつくづく思ってます。
そうですね。この時代はやっぱり科学を信じて、僕たちは理性を働かせるといい世の中になるんだって皆さん考えてやってて、
もちろん僕らもそれに通じてやってるところではあるんですけれど、いろいろ改善をしていったっていう時代ですよね。
そうですよね。すごい現代に通じるのが見えてくるのが意外でした。
お医者さんが考えてることはきっと変わらないし、精神の病気もきっと変わってないんだろうなと思います。
そうですね。この時代もラッシュの息子長男みたいに、なかなか退院できないっていう重篤な病気もあったんだろうなと。
今も変わらないなっていうところですね。
そうですね。
ありがとうございました。
ありがとうございます。
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