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2025-12-09 09:41

040 同じ空にあなたへの祈りを

入院中は4人部屋でしたが、私と彼女の二人だけの5日間でした。
部屋はカーテンで仕切られているので見えません。
ただ、聞こえてくるだけです。
彼女の気持ちの良い「ありがとうございます」も、日に日に増すため息も、眠れない夜の嗚咽も、ぜんぶ、音だけです。
相部屋の彼女の人生に触れて感じたことをエッセイにして読ませていただきました。


※この放送は、Spotify、Amazon music、Apple Podcast、YouTube musicでもお聴きいただけます

サマリー

入院生活の中で、病室の後ろにいる女性との出会いを描いたエッセイです。彼女の明るさや痛みが周囲の人々にどのような影響を与えるのか、考えさせられます。

病室での出会い
同じ空にあなたへの祈りを。病室の窓から見えるのは、不規則に立ち並ぶバラバラな高さのビルとマンション。
入院したその日、私は思った。なんて味気ない景色だろうと。同じ部屋の彼女は、まだ20代の若いお母さんだった。
看護師さんに友達のように話し、イヤホンもせずに動画を流し続け、食事をしながら家族と通話する。
その振る舞いが気になって、私は心に距離を置こうとしていた。でも同時に気づいていた。
彼女は誰に対しても、明るくハキハキと、ありがとうございますと言える人だった。
お掃除の方にも、配膳の方にも、看護師さんにも、電話の向こうのお母さんにも、相手を笑顔にさせる力がある彼女のありがとうございますは、
私には少し足りない、透明な強さだと思った。
入院2日目。私は足の手術をしてベッドから出ることができなかった。
夜、息子から電話が来たけれど、今日は電話できる部屋にはいけないからごめんねと言ってすぐに電話を切った。
するとカーテンの向こうから、 あの動けないと思うんで電話していいですよ
と声をかけてくれた。 ありがとうございますと言葉を受け取ったけれど、
それでも病室の中で電話をすることに抵抗があった。 そんな私を察してか、彼女はそっと病室から出て行った。
その気遣いが自然で優しかった。 私は彼女のことを知らなかっただけなんだ。
昨日から彼女は少し元気がなかった。 これからのことについて、医師から家族と一緒に話しようと言われ、
何か嫌な知らせではないかと不安なのだと看護師に話していた。 彼女は
がんを患っているようだった。 今日、医師との話を終えて病室に戻ってきた彼女は静かだったが、
カーテン越しに咳を切ったように泣きながら話す声が聞こえてきた。 進行の早い別のがんが見つかったので。
一度帰宅して、 子供の幼稚園の遊戯会が終わったら、またすぐに入院になったと、
親に告げる電話の声だった。 子供のために頑張るね。
でも、 もう、
結構頑張ってるんだけどね。 そう言って電話を終えてからも、彼女はずっとおやつしていた。
まだ5歳の子がいるのに、なんで? という痛みが伝わってきた。
窓の外の夕暮れが、薄橙色のグラデーションに沈んでいく。 昼間は雪化粧をまとい、美しいと感じた景色だったけれど、
一瞬で、 凍てつく夜へと姿を変えた。
今日はこの後、夫と息子が面会に来てくれる。 その幸せを、
私は迷わず受け取りたいと思う。 私は病室をそっと出て、
談話室で家族を迎えることにした。 幸せを隠すためじゃない。
彼女の痛みに寄り添うためでもない。 ただ、
同じ窓から同じ空を眺めながら、 目の前の彼女の心を少しでも守りたかっただけ。
祈りのメッセージ
我慢せず、 大声で、
泣いてほしいと思っただけ。 退院の日も彼女はずっと泣いていて、
看護師さんが話を聞いていた。 治療しない、洗濯しないからするけど、
子供のために頑張るけど、 もうさ、
心がしんどいよ。 彼女に一言挨拶をしたかったけれど、
私は何も言えずに出て行くことしかできなかった。 私は彼女の物語をすべて知ることはできない。
けれど、 祈ることならできる。
そしてもし、 今聞いているあなたの心が少し動いたなら、
どうか一緒に祈ってください。 同じ空の下で、
誰かの明日が、 少しでも、
光へ近づきますように、 祈りを、
あなたへ。 コンテンツ設計アドバイザーの山田真希子です。
今日は、 先週入院していた5日間にあったこと、
特に、 彼女との
大切な時間について、 エッセイを書いて、
音声コンテンツとしてお届けしました。 彼女から本当にたくさんのことを、
教えてもらったなぁと思っています。 相手が笑顔になるような、
ありがとうを言うこととか、 一日、
一日が奇跡で、 大好きな人、
大切な人と、 会えることも当たり前のことじゃなくて、
だからこそ、 一瞬一瞬を、
本当に、 大事に生きていこうと思いました。
毎晩ね、彼女は、 カーテンを開けて、
空を見て、寝てるんですよね。 病室には大きな窓があって、
晴れの日もあるし、 曇りの日もあるし、
雪の日も、 あるんですけど、
彼女はどんな空を見てるのかなぁって、 カーテン越しに、私も空を見て、
同じ時間を過ごしていました。 彼女が今泣いてないといいなぁと思っています。
私にできることは、 祈ることしかないんですけど、
発信をすることで、 その祈りがエネルギーになって、
彼女の心を、 癒してくれるといいなぁと思っています。
では、 今日の放送はここまでです。
最後まで聞いてくださって、 ありがとうございます。
コンテンツ設計アドバイザーの 山田真希子でした。
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