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2024-03-20 16:12

【ネタバレ篇】トーマス・S・マラニー『チャイニーズ・タイプライター』比護遥訳(中央公論新社)

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読み終わった本の感想をネタバレ気にせず喋り倒します。

紹介した本 → トーマス・S・マラニー『チャイニーズ・タイプライター』比護遥訳(中央公論新社)

#声日記 #読書 #本

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続きチャイニーズ・タイプライターの話ですが、今度はちょっと内容に触れていきたいと思います。
どちらかというと、この声日記は僕の読書メモ代わりに使っていこうという魂胆に今はなっておりますので、
ちょっとこちらからはネタバレ全開でお話をしていくので、
読むぞという気になっている方は、ぜひ本を読んでからこの話を聞いていただければなというふうに思いますが、
チャイニーズ・タイプライターは、前回お話したように、中国語のタイプライターというものがいかにして出来上がっていくかということを話すお話なわけです。
極論言えば、前回話したように、中国語のタイプライターなんて無理なんだから、
中国語やめちゃえば、もう漢字やめよ、みんなアルファベットにしちゃおうというような人が中国の国内にもいましたし、
国外の人たちに関しては、そもそも自分たちの工場ラインの生産の企画に全く当てはまりそうにないので早々にローカライズを諦めていくというような経緯がありました。
そんな中、とはいえ、近代化というものはある意味キーボードでものを考えるというようなことと、
ほぼイコールになってしまった世界観の中で、じゃあ中国の人たちはどのようにこのタイプライターに準ずる技術を作っていくのかということが考えられるわけです。
これはもう様々な試行錯誤があって、ある意味これすべて失敗の歴史なんです。
なんで歴史に本来残っていない敗者たちの歴史なんですけれども、まず何をやったかというと、常用漢字というものを作り出そうと。
本来中国語の文字ってのは数万字あるかもしれないが、実際日常生活で使っているものに限っていけば、
4000字ぐらいまでは縮めることができるんじゃね?ということをいろんな人が考えたわけです。
4000字だったらいけるか?というところでちょっと考えながら、あれこれと組み合わせていって、
キーボードの配列を考えていく。
結論から言うと、基本的に中国タイプライターではキーボードじゃないんですね。
4000字の閲覧表がずらっとあって、その中から一個一個探していくという印字技術になっていくので、
そこで膨大なリストが出てくるというのがまず一つ。
これは限りなく絞った上で全部乗っけるというやり方。
もう一つ、我々のだとイメージがしやすいですけど、部品に分かれているわけですよね、漢字って。
部首とかね、作りみたいな。
ああいったものをパーツごとに分解していけば、パターンとしてはそんなに多くないんじゃないかというふうに考えた人たちがいる。
それでいけば、だいたい500、600ぐらいのパーツを作っておけば、
理論上結構な数の漢字はカバーできるんじゃないかということを考えていくんですけど、
これもまたね、例えばキヘンみたいなやつ。
このキーがね、右にあるか左にあるか、もしくは真ん中に大きく上にあるか下にあるかみたいなところで、
大きさとか作りが微妙に違う。デザインが違う。だから美しくない。
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その美的観点からなかなかこの組み合わせっていうのは難しい。
さらに言うとタイプライターってのは基本的に、一時打ったらそのまま次に動いていくって機構になってるわけですね。
これを同じ位置で漢字を構成させて組み立てていくっていうあり方と、
それを次のフェーズに移って、その下の段階に移していきましょうっていう時期とっていうのが、
どう区別すればいいのかみたいな問題もまた出てくると。
これをまたどうしたらいいか知らんという話になっていくわけです。
そこで基本的にこの打ったらその文字が出てくるっていうことの発想をする限り、
なかなかうまくできない。どうしたらいいんだろうかっていうところで、
基本的にこの中国語タイプライターってのは確かに全く実用的ではないような形でできていくわけですね。
基本的にどちらかというとその作りを組み立てていくようなあり方の方が筋が良さそうというか、
次数としての効率はいいんですけれども、結果的に中国において実用化されたのは、
常用漢字をなるべく網羅的に出して、キーボードの配列を諦めて、
一個一個その文字を見つけ出しては印字していくっていうタイプライターが、
キーボードのないタイプライターの形式が一時、出来上がりはしました。
しかしこれを西洋圏文化の我々クエルティーキーボード世界観の人たちからすると、
それはとても同じタイプライターとは見えない種類のものではあったのではないかっていうのが一つあるわけです。
ここでもう一つ技術的に言うと、タイプライターと同じような時期に、
さらにもう一つ伝達技術として一つの革新がありました。
それは何かというと電信技術。モールス信号みたいなやつですね。
この2トン2ツーみたいな、この形でいかにして文字に変換していくかっていうような技術問題もまた一つありました。
これもアルファベットであれば2トンだけで、ある程度網羅性があるんだけれども、
漢字をどのようにその数でやろうとするかっていうと、
基本的に5桁の数字と英数字の組み合わせに漢字を振るんです。
今、2トン2で4つから5つの英数字をまず受信する。
それを元に、この1243番に当てられている文字はこれだから、まず一つはこれだっていう形で、
アルファベットであればすでに4文字伝達できるところ、
4つの数字を元にようやく1文字だけ得られるみたいな、そういうような技術になっていたりして、
そもそも電信の読み換える技術っていうものもかなり大きな壁として立ちはだかっていたんですが、
ここが一つのブレイクスルーの大きな鍵になるんですよ。
というのも、これはすごいですよ。
この凄さは絶対に我々からすると伝わらない。
辛いんだけど、すごいんだよ。
西洋のタイプライターはAという文字を打つとAが出てくるっていう発想で、
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入力したらそれがそのまま出力されるっていうその発想でタイプライターを作る限り、
中国語タイプライターっていうのは不可能なんです。
じゃあどうしたか。
キーを打つっていうのは検索なんだ。
電信におけるその2と2と2の組み合わせが、
何番のどの漢字を指示していたかっていうその電信の発想から発展させて、
打鍵で音を何個か押すと、
その音に紐づいている字の候補はこれがありますよっていう検索システムとしてキーボードを発想するっていう方向を発想した天才がいるんですよ。
これはマジで天才だと思う。
もう打った文字がそのまま紙に出てくるっていう発想じゃない。
自分たちが標文字的に打と打てば、
打という読みの漢字はこれとこれとこれとこれですが、
どれですかっていうのが8種類ぐらい飾り窓のところに候補の字が浮き上がってくるんですよ。
その浮き上がってきた字のうち私が打ちたい打は3番ですっていうので、
3番のキーを押すとようやく1文字打たれるっていう発明をした人がいて、
これによって飛躍的に打鍵システムっていうのは出来上がっていくわけですよ。
そうすると限られた、本当に音だけだからアルファベットにほぼ順次たような30弱のキーボードさえあれば、
そこでタイプライターに内蔵された漢字の組み合わせを検索して、
その検索した結果の中から最適のものを選んでいくっていう、
もうこの入力出力でなく入力すると検索されてその後出力するってこの検索っていうものを
初めに考えた人はもう本当に大天才なんですけど、
残念ながらこの人はこの発明を作るのに大きな借金を作ってしまい、
さらには太平洋戦争が始まってしまうことによってこのキーボードはほぼ実用化されないまま消えていってしまったんですよ。
でもこれ今聞くと全然大したことないですよ。
なぜなら今我々が使っているパソコンにおけるワープフローにおけるキーボードのあり方、
日本語のキーボードのあり方でまさにそれをやっているから。
だけどこれは英語圏のタイプライターだけの発想では絶対に出てこない未知の技術なわけです。
未知の発明なわけですね。もうここが一つのブレイクスルーであって、
そこのタイプライターとしては結局実用化されなかったんだけれども、
今我々が当然のように使っているこの日本語のキーボードの入力の仕方っていうのは
まさにこの入力と出力の間に検索をかませるっていう発想があるっていうところでね、
この本を読んでいくとだんだんそのことを忘れてくるので、
この数万字もある感情を一体どうやったらキーボードに実装できるんだろうかっていうので、
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何もわからないまま一緒に西洋人として頭を抱えたくなってくるんですが、
そうか!検索するんだ!っていうところでかなり興奮して見ていくわけですよ。
でもさっきも言ったように基本的にこの技術っていうのはあまりの資金繰りがうまくいかずに、
実用化に至らずに、結局先ほど言った常用漢字の数千字のキーボード、
数千字の参照する入力システムっていうものが使われるタイプライターと呼ぶには、
そもそもキーボードを実装されていないタイプライターっていうのが、
基本的に中国では戦後も広く活用されていくことになるんですが、
これがまたもう一つ面白くてですね、
共産主義の国家にだんだんなっていくわけですよ、中国ってのは。
共産主義のあれこれいろいろありますけど、
農民たちの地べたから資本家というのを打倒してやっていこうっていうのが、
中国におけるスッキリ雑な共産主義のあり方だとすると、
大衆たちっていうのが科学だったり文明だったり文化っていうものになっていくんだっていう発想の国づくりでもあるわけですよ。
そうなってくると、それまでいかにその作りであったり音の配列であったり、
どうしたらこのキーボードが美しく体型だった並びで、
参照検索性の高いような形に並べられるだろうかっていうふうに考えていた人たちっていうのが、
とは全然違う発想でこの配列文字の組み合わせっていうのを考えていくようになっていくわけです。
どういうことかというと、そもそもタイプライターってアナログなので、
打ったキーと出てくる文字との対応関係っていうのは自分たちで組み替えられるわけですね。
なので自分たちで作りやすいようにキーボードの配列を勝手に変えちゃうんですよ。
自分たちが打って作る書類において近くにあるとすぐに1個このボタンを押したとき、
この文字を押した後に押す文字がだいたい決まってくると、
その文字をより近くに置いておけばその分早く打てるじゃないかってことになるわけですね。
わかりやすいところでいくと毛髪の毛、髪の毛の毛ですね。
毛の漢字があると。毛の漢字の近くに何を置けばいいかっていうのは、
代表的なところでいうと毛の下には沢があるんですよ。
で、沢のさらに下には東があるんですよ。
要するに毛沢東っていうのを一列で打てるようにする。
で、毛沢東の毛の右側には首っていう字があるんですよ。
で、そのさらに右側には脊って書いてあるんです。
だから毛主席、毛沢東主席を逆L字の打拳システムですぐに打てるようになる。
これだけでもすでに5文字がすぐに打てるようになっていく。
このような形で基本的に近くに革命とか農村とか、
あらゆる毛沢東主席に関連する言葉っていうのを全部そこに近づけておくと、
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もう何だったらだいたいの共産主義のパンフレットに関しては片手で打てるようになっていくっていうような形で、
どんな人たちが打つのかっていうのを自由に組み合わせることによって、
品質する熟語っていうものが自分たちの一望できるところに収めていくっていうことが出てくると。
これは要するに今のiPhoneのフリック入力における予測変換と同じことなわけですね。
この文字を打ったときにだいたいあなたはこういうことを書いてるよねっていう予測変換の仕組みっていうのは、
あれは基本的にシステムによってパーソナライズされているわけですが、
共産権の黎明期の中国においては、
それをタイピストたちっていうのは自分たちなりに自分たちがよく打つ言葉っていうのを予測変換のキーボードとして、
自分たちで勝手に組み上げて個人的に作り上げてしまっていた。
これが面白いのは、それまでは常に自分たちにとって普遍の文字列とは何か、
自分たちにとって普遍のキーボードの配列とはどういうものかっていうものを
あれこれいろんな人たちが考えながらトップダウンで考えていったんだけれども、
結局のところ最適解はボトムアップで自分たちが作る文章に最高率で打てるように、
自分たちのなりに、本当に一人一派の配列を自分たちで作って、
それを地肉化していくっていう方向に向かっていったっていうところで、
これはでもね、その毛沢東時代に初めて出てきたっていうのは、
要するに上からインテリたちが誰にでもできるような、
誰にでも通用できる配列を考えている間は出てこない発想で、
それぞれの人民たちが自分たちの共産主義を内面化した上で、
自分たちが作り出すドキュメントに最適なキーボードを個人個人で作っていく。
これ逆説的なんですが、
つまりキーボード配列においては徹底的に個人主義的であることが、
何よりも自分たち、一人一人が共産主義というものを内面化して文書化する能力を身につけることと、
イコールになっている時期でもあるっていう、なかなか興味深い時代でもあるんですけれども、
そのような形で、もともとその入力、変換、出力っていう一つのブレークスルーと、
そのもう一つ、自分たちの個人個人に合わせられた予測変換のシステムっていうものがここで用意されていた。
これがそのまま今のパソコン時代の入力方法っていうものに、
そのまま流用されているっていうところで、
実はそれはパソコンが生まれたから何となくできちゃってる仕組みではなくて、
この中国語タイプライターを巡るものすごいアクセントが、
今の情報大国中国というもののありようっていうものを準備していたんだということが、
こう、明らかになる本なんですね。
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ちなみにこのトーマス・エース・マラニーさんは後書きや前書きでも、
この本は二部作の第一作だという風に予告をしていて、
続幹ではそれこそこのタイプライターからコンピューターになった後の世界について、
あれこれと考えていきたいなというような予告をしています。
まだこの本が出て、調べた限りまだ翻訳は出ていないですが、
本国でもその本がもうすでに出ているのかどうかもまだ調べきれていませんが、
もし出ているんだったら読みたいなというような風に思ってワクワクしております。
超面白い本なので。
そして研究書、学術書としては異例なくらい一つ一つのエピソードがめちゃくちゃ面白いので、
今骨格の部分についてはある程度話してしまったかもしれませんが、
そんなことは関係なしにディテールの部分が非常に面白い本ですし、
僕が今話さなかったところでもね、
もうね、ここどうしたら本当にこうなっていくんだろうみたいなところがすごいいろいろある本なので、
超面白いと思います。
ぜひ読んでみてください。
トーマス・S・バラニさんのチャリニスタイプライターのお話。
ネタバレ編でした。ごきげんよう。
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5 Stars

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