kai3
うすだです。
カイです。
杉村
杉村です。
kai3
今回も前回、ひと時期、ゲストに杉村さんをお迎えして、いろいろお話をお伺いしたいと思うんですけど、
前回も話があった通り、やっぱり杉村さんってやっぱり醤油手帖ということで、醤油がいろいろ大きなきっかけだったということで、
結構醤油の話もすごい好きで、ぜひちょっと醤油について語っていただきたいと思うんですけど、
そもそもの一般の人って、普通に醤油って、ヤマサとか売ってて、かけておしまいじゃないですか。
そういう一般人に向けて醤油の魅力を説くときって、どういうキラーワードがあるんですか?
杉村
そうですね。やっぱり難しいのが、ちょっと前提の話になっちゃうんですけども、
多くの人に聞かれるのが、何の醤油がおいしいのっていうキーワードなんですね。
いっぱいすごい醤油を食べ歩いてるこの人なら、もうこの世にある究極にして至高の醤油を知ってるに違いないと。
kai3
なるほど。
杉村
なので、じゃあどの醤油がおいしいの?みたいなことを聞かれることはやっぱり多いんですね。
杉村
ただ、これは本当に難しい問題で、
杉村
結局のところ、僕の個人的な意見としては、その人が育った味が一番というのがあるんですよ。
kai3
それはちょっとわかりますね。九州の甘い刺身が好きなのか、東京の醤油が好きなのかみたいな。
杉村
やっぱり地元で小さい頃から食べていた醤油じゃないと、これじゃないと感があるとか、そういう人ってすごい多いので、
結局のところは、もうあなたが育ってきた味が一番だと思いますよっていう話はよくするんですけれども、
そうでないっていう条件で、他の面白いというか、ちょっと変わり種とかがあるんでそっちも試してみてはどうですかとか、そんなふうにやっているんですね。
なので、なんか醤油の面白さって、すごいややこしい、ややこしいって言うと語弊があるか、ややこしいんですね。
そんな感じで、おいしさってやっぱり個人差がどうしてもあるので、例えば塩辛さで言っても、結局この醤油は塩辛さが物足りないっていう人もいれば、
同じ醤油を味わってもちょっと塩辛いんじゃないのっていう人もいますし、そもそも醤油を単体でペロペロ舐めるとかは、日本でも僕ぐらいしかあんまやってないことなので、
料理に使った時に加熱するとどうなのかだとか、煮込むとどうなるのかとかでもやっぱり変化しますので、なかなかやっぱり難しいですね。
一般の人に実は身近すぎて、それぞれの人の思っている醤油像っていうのがどうしてもあるので、逆にその一般論に落とし込むのが難しいところでもある。
っていうのはやっぱりその醤油の面白いところでもあり難しいところでもあると思うんですよね。
杉村
聞いたことあるかも。
スーパーとかで二段熟成刺身醤油、キッコーマンさんのいつでも新鮮シリーズで出てるんですけども、あれなんかが一番有名ですが、
二段熟成っていう言葉を使っているのは実は採仕込み醤油なんですね。
kai3
味はやっぱり濃くなるんですか?濃口よりも濃くなる。
杉村
そうなんです。濃口よりも濃くて旨味が強くて塩味、塩味がちょっと和らいでるっていう感じですね。
kai3
和らぐんですね逆に。
しょっぱくなるのかと思った。
杉村
これは塩の量を減らしているっていうこともありますし、あと旨味が強いとですね、旨味っていうのはマスキング効果がありまして、
要は旨味のある液体に塩を入れたらあんまり塩を感じなくなるんですよ。
kai3
なるほど。
杉村
こう言われると分かりにくいんですけども、例えばその海の水ってあるじゃないですか、海水。海水舐めるとしょっぱいですよね。
醤油、濃口醤油を頭に思い浮かべると思うんですけど、醤油を舐めるとしょっぱいですよね。
どっちの方がしょっぱいと思います?
kai3
どっちだろう。でもしょっぱさで言ったら醤油かな。
杉村
はい。醤油なんですけど海の水も結構負けないぐらいっていうイメージありません?
kai3
うん、ありますあります。どっちもしょっぱい。
杉村
これね、塩分濃度で言うと濃口醤油はだいたい塩分が15、6%に対して海水って3、4%なんですよ。
kai3
へー。
杉村
それぐらい実は差があるんですけども、なんか口に入れたときの塩辛さとかはそこまで大きな差があると感じないじゃないですか。
kai3
確かに両方同じぐらいしょっぱいかなって悩みましたもんね、どっちって言われたら。
杉村
これも実はその旨味によるマスキング効果も含めてですね、塩味を実は感じないようになってるっていうところなんですね。
杉村
なので、もともとさいしこみ醤油は旨味が強いので塩分をそこまで感じないんですけども、塩分、塩自体もちょっと少なめ。
14%とか塩分濃度で言うとそれぐらいにして作るっていう感じなんですね。
杉村
で、主に中国地方とかがメインで作られているのですが、最近はキッコーマンさんとかが力を入れたりだとかしてるおかげで全国で見かけることができるようになってた。
これがさいしこみ醤油ですね。
kai3
これ普段使いしていい醤油なんですか?それとも何かこの料理に使ったほうがいいとかはあるんですか?
杉村
もちろん基本的には普段使いですね。旨味が強いので、お刺身とかにつける刺身醤油としてキッコーマンさんはいつでも新鮮シリーズを出した時に売り出してるんですけども、全くそれで問題ない。
杉村
もちろん他の用途でも料理に使ってもいいんですけども、まずはそのまま味わってみて、ちょっと濃い口よりも旨味が強いってどういうことなのかなってのを味わってみると面白いんじゃないかなと思いますね。
他のやつも順番に説明していきますと、オーソドックスな濃口醤油。
杉村
これ実は醤油って大豆で作られるってイメージがあるじゃないですか。
kai3
うん、ありますね。
杉村
はい、なんですが濃口醤油は大豆と小麦を半々で作るんですね。
kai3
半分も入ってるんだ。
杉村
小麦は入ってるんですけども、入った小麦と大豆を半分半分でやってる。
杉村
すごい間はすっ飛ばしますけども、大豆は発酵するとうま味が出て色が濃くなる。
小麦は発酵すると甘みが出ると思ってください。
濃口醤油っていうのはその旨味と甘みのバランスが非常にいい醤油なんですね。
江戸時代に濃口醤油が作られて、江戸時代といったらですね、全国から出稼ぎに江戸に来ると。
出稼ぎで来た江戸で味わってなんて美味しいんだって言って、その醤油を持ち帰ったりとかして、向こうでも作ろうっていう形になったおかげで、
もう本当に東日本はほぼ濃口醤油文化圏になってる。
杉村
日本の半分以上ですね、完全な濃口醤油文化圏になっていたりとかするというわけなんですね。
杉村
薄口醤油は、これはよく勘違いされるんですけども、味が薄いという意味ではないですね。
色があくまで薄い。
kai3
なるほど、完全に勘違いしちゃった。
杉村
で、さっき大豆が発酵すると黒くなるって言いましたけども、発酵期間が長ければ長いほど黒くなるということでもあるんです。
ということは発酵期間を短くして温度管理とかをうまくやるとですね、色があんまり黒くならない醤油が出来上がると。
それが薄口醤油なんですね。
kai3
なるほど。しょっぱさはそんな変わらないってことなんですか?
いえ、これがですね、発酵期間を短くして、なおかつちょっと甘味とかを加えたりだとか、色んなものを加える都合上、雑菌の繁殖を防ぐために塩分濃度を高める必要があるんですね。
杉村
なので薄口醤油は19%とか、かなり高めなので。
kai3
むしろ高いんですね。
杉村
そうです。薄口醤油の方が塩分は高いんですね。
なので、漬け醤油とかにはあんまり向いてない。
杉村
ただ近年では、薄口醤油でも香りの良さだとか、色の美しさ、料理に黒色がつかないところのメリットとか、
そういうのを打ち出すために、そのまま漬け醤油かけ醤油でも使えるような味に仕上げた薄口醤油というのはもちろん開発されてはいるんですけれども、
基本的に薄口醤油というのはもう料理用なんですね。
料理の本とかで薄口醤油、小口醤油って書いてなくて醤油とだけ書いてあった場合、薄口醤油でそれを使っちゃうと塩分が濃くなりすぎてしまったりだとか、
kai3
なるほど。
杉村
逆にその薄口醤油のつもりでレシピに書かれていて、小口醤油使ったらなんかちょっと塩分物足りないみたいなことが起きたりする原因でもあったりします。
杉村
これは兵庫県で生まれたもので、兵庫、近畿県ですね。
杉村
あと昆布の出汁と相性がいいので、近畿を中心に広まってよく使われていると。
たまり醤油というのが、これは醤油の元祖みたいなものでして、
杉村
簡単に言うと味噌ですね。
杉村
伝説によると、これは山下醤油の人たちが言っている伝説、伝承なんですけども、
鎌倉時代に新地角心というお坊さんがですね、中国で金山寺味噌の作り方を学んできたと。
それを湯浅、和歌山県の湯浅で広めている時に、ちょっと水を多くして作ってしまったんですね。
そうすると水分がそこに溜まるじゃないですか。
それをじゃあちょっともったいないからって舐めてみたらめちゃめちゃ美味しいと。
じゃあこれを調味料にすればいいんじゃないか。
というわけで味噌桶に溜まった液体ということで、たまり醤油と言います。
これが味噌をベースにしているという言葉からもなんとなくわかるかもしれませんが、基本大豆です。
杉村
濃口醤油は大豆と小麦を使うんですけども、
kai3
たまり醤油は大豆100%もしくは90%です。
杉村
本当に旨味が強くて色が濃くて、その代わり発酵期間も長い。
杉村
旨味があまりにも強いので、味噌と同じように空気を抜いてですね。
雑菌の繁殖を抑えられるので塩分もそんなに高くなくて大丈夫と。
杉村
これが料理とかに使うと照り焼きだとか、ああいうものにはすごい色が綺麗に出るし、料理とかにも使われますし、
一部の地域では刺身たまりと言ってですね、お刺身にたまり醤油をつける文化もあったりします。
杉村
近年では結構注目を集めていて、なんでかっていうとさっきちょっとだけ話した大豆100%ってところに秘密があるんですね。
杉村
秘密ってことじゃないんですけども、これ何を意味するかっていうとグルテンフリーなわけですよ。
小麦を使っていないので、一応発酵するとグルテンは大丈夫と言われてはいるものの、
それでもやっぱり心配は心配じゃないですか、アレルギーだと。
なので自然食品のお店とかで、お子さんが小麦アレルギーだとか、ご家庭はたまり醤油を主に使ったりもしています。
kai3
なるほど。
杉村
これは基本的には東海圏で使われている醤油なんですけども、
最後の白醤油というのは、これが小麦90%、大豆10%です。
大豆は色が濃くなるし、旨味が出る。小麦はちょっと甘いし、色がそこまで出ない。
杉村
というわけで白醤油っていうのは本当にその琥珀色の薄口醤油よりもさらに色が淡い醤油になっているんですね。
杉村
たまり醤油は大豆100%に対して、白醤油はだいたい小麦90%までしかいかない。
これ何でかって言いますと、法律で醤油と名乗るためには大豆を使ってないといけない。
なるほど。
杉村
醤油という調味料は大豆を発酵させたものですよというのがあるので、
杉村
なので小麦100%のものを作っている会社も実はあるんですけども、
それは商品名として、
kai3
それも作れるんですね。
杉村
作れます。作れますけども、その商品のラベルとかには白醤油って一切書いちゃいけない。
へー。
商品名だと、たとえば白たまりっていう名前にしたりとかして、小麦発酵調味料っていう品名にしたりとか、
そういうようなことをやっていたりもします。
kai3
おもしれー。
杉村
もう色が出ないのでおせんべいに塗ったりだとか、
kai3
あ、なるほど。
杉村
そういうのでもよく使われていたりしますね。
でもこれも、要は大豆とかを使ってないっていうのもあって、
杉村
塩分を高くしないと雑菌が繁殖しちゃうので塩分濃度はちょっと高めです。
杉村
うーん。
なので白醤油もそのまま舐めるとちょっとあれなんですけども、
あとはあれですね、白だしにしたりだとかしてよく使われたりしてますよね。
すごいな。
杉村
はい。っていうのが醤油の5種類なんですけども、
その他の醤油で、たとえば卵かけご飯専用醤油だとか、
杉村
ああいうのは結局のところは、
今言った5種類の醤油に何かを加えた醤油加工品という扱いになるんですね。
kai3
なるほど。
杉村
めんつゆとかも醤油加工品ですし。
kai3
そうか、めんつゆも醤油扱いなのか。
杉村
はい、醤油加工品ですね。だし醤油もそうですし。
そういうことなんですね。
杉村
なのでそれらを含めると醤油ってすごいいっぱいあるように見えるんだけれども、
法律上醤油っていうと実は5種類なんですよという話なんですね。
杉村
ところが、魚醤なんでそんなにかかるかっていうと、
杉村
最初に発酵する自己消化が起こるまでが時間がかかるんですよ。
なんて言えばいいんでしょうね。
ちょっと汚い表現をすると、
その死体が分解されるまで時間がかかると腐敗をしてみたいな感じになるので、
しかもそれによって生臭い香りとかも強くなってしまう。
なので魚醤は生臭いっていうイメージを持ってる人も多いと思うんですね。
ところが近年ではそこをですね、覆す技術が開発されまして、
麹を使ってですね、最初の部分を分解を促進させてしまおう。
そうすると生臭いものが出る前に分解が始まるので生臭みも抑えられる。
kai3
なるほど。
杉村
で、その魚の身とかが分解されて旨味とかが丸ごとその魚醤に乗るということで、
2000年代の後半、2010年代前半とかぐらいに、
もう日本全国でですね、そういう形でいろんな魚醤が作られるようになって、
今の日本って実はかなりいろんな魚醤がある。
実は魚醤めちゃめちゃ面白いっていう状態なんですね。
kai3
すげー。
杉村
魚醤が何かを今日初めて知った。
90年代ぐらいまではほとんど日本の魚醤ってなかったっていうと語弊があるんですけども、
しょっつるといしりぐらいしか簡単には手に入らなかったんですけれども、
杉村
今はそんな感じでたくさん手に入る時代になったと。
kai3
それは名前としてはしょっつるでもいしりでもないってことですか?
杉村
もちろんなんとか魚醤、魚の名前がついたなんとか魚醤でついてますね。
kai3
なんとか魚醤っていうのを作るんだ。
杉村
もういろんな魚がいますよ。
鯛だとか鮎だとか秋刀魚とかもありますし、変わったところではホウボウとか。
kai3
面白そう。
杉村
そういう殿様魚と言われたヒゲのあるホウボウですねとか、
杉村
そういうのも結構実は出てる、手に入るんですね。
kai3
それって僕結構魚醤とかの味好きなんですけど、
生臭いのが美味しいと思ってたんですけど、
今の新しい作り方、生臭さ抑えられちゃうとまたそれはそれ違うんですかね?
杉村
また違いますね、味は違いますね。
なんかより魚の旨味がやっぱり増えているので、
なんかちょっとした、何でしょうね、
杉村
醤油の代わりにガンガン使うっていうよりも、
料理の隠し味的に加えるだけで旨味が増すとか、
杉村
そういう使い方の方が多いし楽ですね。
kai3
なんかその新しい魚醤の中で、
割と簡単に買えそうなおすすめのやつあります?
ちょっと気になってきた。
杉村
鮭ですかね。
杉村
鮭。
鮭の魚醤。
杉村
佐藤水産。
杉村
北海道の佐藤水産というところが鮭魚醤っていう鮭醤油かな?
商品名は。
kai3
ありました。鮭醤油。
杉村
ありました。
あれが、僕が関東に住んでいた頃は、
渋谷の東急フードショーとかで買えたんですけども、
サーモンファクトリーっていう鮭の専門店みたいなのが確か出てたんですけども、
あそこで簡単に買えたので手軽に買えるという意味では、
あれが一番かなとも思ったんですが、
杉村
今多分東急も立て替えたし、
杉村
大輝もするので。
kai3
今オンラインでも品切れ中ですね。
杉村
あら、あららら。
kai3
大人気。佐藤水産のページで。
杉村
通販でダメでしたか。
杉村
何がいいかな。
杉村
味的に面白いものとか。
鮭の醤油自体は、
鮭醤油は、
そういった形で、
杉村
サーモンのお店とかを佐藤水産さんが展開してたりやってたりするので、
手に入れやすさは一番かなとはでも思いますね。
これはね、そこまで縁見もきつくないので、
塩漬けの量も減るので、
余計な雑菌が湧かないように管理をして、
麹でスタートさせちゃえばいいので、
なので生臭みも少ないし、塩分もそれほど実はきつくないんですね。
kai3
気になる。
杉村
それこそ、
カップラーメンとかに数滴垂らすのも魚醤って楽しいので。
kai3
その使い方一番いいですね。手っ取り早くてよさそう。
杉村
手っ取り早いです。
あとは生臭系の魚醤で、
杉村
これちょっときついなと思ったら、
杉村
一番おすすめなのは、
濃口醤油とブレンドしちゃう。
杉村
お刺身とかを食べるときに濃口醤油にちょっとだけ魚醤入れてしまう。
濃口醤油っていうのが江戸時代に、
杉村
魚の特にマグロとか血の匂いがする魚の生臭みを消すために、
杉村
香りを強く、味のバランスを良くって進化していった醤油なので、
杉村
魚醤を数滴入れるとですね、
杉村
その魚醤の生臭さが消えて、
旨味だけ加わるという、
kai3
消えるんだ。
杉村
そういうメリットもあるので、
魚醤、そういう使い方をして食べてみても欲しいと思いますね。
kai3
面白い。
じゃあちょっと今度魚醤試してみます。
何かいい魚醤を見つけよう。
いわゆるいしり、しょっつるとか食べたことあるんで、
新しい方試してみたいですね。
杉村
今は本当にちょっと海沿いのところで道の駅とか行くと、
たぶん大抵地元の名産の魚で作った魚醤とかが売られてると思うので、
そういうのを片っ端から買うのも楽しいんですよ。
楽しそう。
kai3
すごいね、やっぱり醤油奥が深いな。
今まで杉村さんが醤油についていろいろ同人だったり、
本出されてると思うんですけど、
今これで醤油に興味持った人が、