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2025-04-28 19:52

【第22回】王者インテルが見逃したGPU革命〜「設計と製造の分離」が招いた半導体業界の主導権交代〜(epi6)

ジェンスンを深掘ろうシリーズの番外編、GPU市場への参入に3度目の失敗をするインテルについて話しました。失敗の原因はもちろん、大手にも関わらず挑戦し続ける姿からは学べることが沢山ありました。是非お聴きください!


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サマリー

このエピソードでは、インテルがGPU市場に三度目の参入を試みたものの失敗に至った経緯を探っています。特に、設計と製造の分業化が進む中で、インテルのIDM体制がもたらす限界や、チップ設計に専念するNVIDIA、製造を標準化したTSMCとの違いについて議論されています。インテルのGPU市場における失敗や、設計と製造の分離による半導体業界の変革が考察されています。また、TSMCがファブレス企業から受託生産を行うことで競争力を持ち、技術革新を進めている点が重要であるとされています。

インテルのGPU市場への挑戦
nocallマーケット担当の佐藤と、CEOの林です。
今回は番外編ということで、前回エピソード5でインテルが3回GPU市場に参入して失敗したよっていうところをお話ししたんですけど、
3回目は長いので割愛するって言ったところを早速3回リクエストいただいたので、3度目のGPU市場参入の失敗ってところをお話ししたいと思います。
やっぱりね、スタートアップは失敗から学ぶべきなんですよね。
なるほど。それは先人たちのですか?
そうですそうです。同じところを踏みたくないんで。やっぱりそれは知りたいですね。うちが1兆円企業になった後も10兆円になれるように。
だとしたら確かに今日はそこから何か教訓を得たいです。
お願いします。
前回の話でいくと、インテルは2005年にデータセンター市場の将来性を見据えて200億ドルでNVIDIAを買収しようみたいなところを取締役界で議題に上がるんですけど、
インテルの一部幹部がこれを断固反対ってところで、インテルはララビープロジェクトっていうのでGPU市場参入にかけるしかなかったっていうところで終わってます。前回は。
そうでしたね。
ただこれ失敗に終わっちゃったってところで、なんで失敗かっていうのは前回また聞いていただければと思うんですけど。
製造体制の違い
そこから1年した2006年にCPU市場での競合であったAMDがGPU企業のATIを買収したことを受け、
あれ競合がGPU買収してるってとこでインテルは再度GPU市場参入を試みようとします。
ただAMDとインテルはGPU市場参入の戦略に決定的な違いがありました。
それが製造体制なんですけど、AMDはNVIDIAと同じように工場を持たないっていう戦略を採用しました。
つまりは工場を売ったっていうことなんですけど、工場を持たないチップの製造に専念する企業のことをファブレスでファブレス企業って言います。
設計に専念するということですね。
はい、設計だけに。
インテルは一方でGPUにAMDと同じタイミングで参入しようとした時に、自分たちの持っている工場を売却せず一貫生産をするIDM、インテグレイテッドデバイスマニファクチャー体制を維持する判断を下しました。
設計から製造まで全部自分たちでやるってこと?
そうです。
なんでこういう風にインテルはIDMに強いこだわりを持ったかっていうと、
インテルの認識では設計と製造の分業化っていうのが最先端の性能を実現するために必要な綿密な調整っていうのを難しくして、製品開発のスピードとか確信性を損なうっていう風に考えていました。
なんかそんな気もしますけどね。
そうですよね。チップ設計して無理だったなってなって設計し直してくださいって言って、
じゃあ設計し直しました。じゃあ量産しますみたいなこのプロセスっていうのは自社内でやってるからこそスピードが速く質が高くできる。
フィードバックサイクル遅れる気がしますか?一応したら。
こだわりというかそれが常識だったんですかね。それでそのままIDMでやるんですけど。
自分もそうしそう。テスラとかもそうしてますしね。設計から製造までやってますしね。
確かにそうですよね。ただそれが正解だったんですけど業界構造が変わっちゃうんですよね。
それがなぜかというとTSMCの存在です。
出た出た出た。熊本で頑張ってるやつですね。
これ結構やばくて。TSMCが製造プロセスを標準化します。
どういうことかっていうと製造プロセスと設計ルールっていうのを共通化するんですけど、
それがどういうことかっていうとどの顧客企業であってもTSMCが提供する製造ルールに沿って設計を行えば高い品質で安定した量産が可能になるっていう仕組みを整えました。
なんかちょっと難しいな。難しいんですけど。レゴブロックイメージしてもらうとわかりやすいかもしれないんですけど。
TSMCがレゴブロックをいっぱい持っててそれを公開します。こういうレゴブロックのピースがありますよっていうのを公開して
NVIDIAとかAMDとかいうチップの設計に専念するファブレス企業はそれをもとに組み立てればいいだけなので、今までのように綿密な擦り合わせみたいなのが不必要になった。
なるほど。でもそんなレゴブロック作られてそれを組み合わせ方法みたいなものにNVIDIAとして価値が出るんですね。
具体的に言うと、各プロセスノード。プロセスノードっていうのは微細化の技術の世代を表す指標なんですけど、
5ナノミクロン、3ナノミクロンみたいな感じでちっちゃくする技術の世代を表す指標に対してトランジスタ間の間隔とか配線の幅とか金属層の構造みたいな細かく定めた設計ルールっていうのをTSMCが査定して公開しています。
今しゃべったのは標準化をどうやっているかっていう話です。
そうです。あとは標準IPっていう回路の部品ブロックも提供します。
これによってファブレス企業っていうのはチップを基本構成要素をゼロから作る必要なくて、
TSMCが提供するIPをさっきのよりレゴブロックのように組み合わせるだけで設計ができます。
つまり開発期間も短縮できるし、設計コストの削減もできるし、品質も安定するっていうメリットがあります。
TSMCに委託するメリットとしては、この後も出てくるとは思うんですけど、
最先端の設備を持っているっていうところで安くいいものを作れるっていうのでNBでは結構メリットあるのじゃないかなと思います。
このプロセスの標準化とか設計ルールの共通化によってTSMCはいろんな企業のニーズに一貫して対応できるプラットフォームを作った。
なのでファブレス企業は自分たちで大きな不採となる可能性もある設備っていうのを持たずに、
高性能な設計製造技術にアクセスできるようになります。
失敗の要因と産業の変化
これで安導体業界における設計と製造の分離、分業体制の加速を実現させました。
TSMCすごいですね。
公開するっていうのは業界としては工場を丸裸にされるようなものなのでありえないことだったんですけど、
早くから自分たちは製造一本でやるっていうのを決めていることによってできたみたいですね。
それでも諦めずに、インテルは2017年にAMDの社員さんをヘッドハンティングします。
GPUに関わっていた社員さんがいるんですけど。
GPU事業に本格的に参入しようとするんですけど、
結局2020年の単体GPUインテルXEっていうものの製品で、
生産遅れによって遅れてしまって、
2023年にTSMCに最先端のチップの製造を委託するという皮肉な結果に終わっちゃいます。
なんでこれ遅れちゃったのかっていうと、再度またGPU市場で。
これがインテルの従来の開発モデルの限界が繋がっています。
というと、インテルは2007年以降にムーアの法則っていう半導体の収積度が、
18から24ヶ月ごとに2倍になるっていう法則を提唱してるんですよね。
あれインテルが提唱してるんですか、ムーアの法則って。
インテルの創業者ムーアっていう人が提唱していて。
あれインテルの創業者なんですね。
それに2倍になるよみたいなのを実現させるために、
TIC-TOCモデルっていうのを採用してました、製造で。
このモデルが半導体のプロセスの微細化。
TICっていうのが微細化で、
TOCっていうのが新設計によるアーキテクチャの性能向上。
なので、きっと2年周期で性能を上げて製造してみたいなのをやってたんだと思うんですよね。
だから半導体ムーアの法則が実現していた。
ちょっと待って、そもそも何の話してますか。
なぜ遅れだしたかっていうのが、このTIC-TOCモデルっていうのに関わっていて。
このTIC-TOCモデルっていうのが、2年周期で製品の革新を継続していたよっていうモデルなんですよね。
つまりなんで失敗したんですか。
それは、このTIC-TOCモデルっていうのが1回通用しなくなるんですけど、
その理由が、2014年頃からどんどん微細化の技術が複雑になってきたときに、
それに伴って投資コストが増加したんですよね。
2年周期で工場の機械も買い替えていたので、TIC-TOCモデルでは。
ただ、この投資コストが高くなっちゃうと、短いサイクルで投資が回収できないよね。
投資額がっていうところで、このTIC-TOCモデルっていうのは限界に達しました。
でも、それって別に古い機械で作ればいいだけだった話じゃないんですか。
システム回収しなくても、新しいシステムしなくても、昔のシステム作れなかったんですか。
やはり、このTSMCとかNVIDIAみたいに、設計と製造に専念する企業たちが起こすイノベーション、
あとはTSMCっていうのは最先端の機械をどんどん入れていくので、
そこに対応するには、やっぱりこの古い機械ではダメだったんだと思います。
なるほど。
でもTSMCができてて、2年おきにイノベーションをやっていくみたいなTIC-TOCモデルっていうのは、
インテルが提唱しているものではあるけど、TSMCもやっていて、TSMCはそれができたってことですか。
インテルのみがやっていることで、TIC-TOCモデルっていうのは設計で性能を上げて、製造で2年間その設計を維持して、
次の2年で設計でもっといいものを作ってみたいな段階を追っていくものなんですけど、
TSMCはやっていないですね。
インテルが設計と製造のみを持っているからこその、たぶんモデルだと思うんですけど。
なるほど。
投資コストが2年では回収できないっていうところで、2016年頃からインテルは従来の2年のみその機械を使っていたっていうのを4年に延長しますっていう風にします。
はいはいはい。
でもその4年に長引かせる代償として、2年で上げる性能の幅をもっと高くするよっていう目標を掲げました。
うんうんうん。
しかし、2017年くらいにこの戦略が目に見えて失敗するんですけど、それが17ミクロンっていうプロセスで、材料選択とか技術的な課題で大ゴケします。ミスします。
新しいモデルではうまくいかなかったんですよね。開発がかなり遅延を起こしました。
インテル自身これはすごいこの性能を一気に上げようとしすぎて盛り込みすぎましたみたいな感じで言ってて。
うん。
たぶん調整が難しかったんだと思うんですけど、でまぁ結果としてインテルはこう自分で生産するっていうのを断念せざるを得なくてTSMCに委託するっていう流れになるんですけど。
うーん。
3度目にこれで失敗するという流れです。
つまりどうして失敗したんですか。
つまりは半導体産業の業界構造が変わったっていうところで、NVIDIAは設計に専念するからよりいい設計に注力できるわけじゃないですか。
で、インテルが設計に注力して作った最先端のチップを最先端の機械を持っているTSMCに委託してそれが作れちゃうことによって半導体の産業は分業化したんですけど、これによってインテルが従来持っていたIDMっていう自社で全部作っちゃうよっていうメリットがなくなっちゃったから失敗した。
からNVIDIAとTSMCが起こすイノベーションについていけない。
まとめが長いんですけど。
つまりなんでイノベーションについていけなくなっちゃったんですか。
なんでイノベーションについていけなくなったかというと。
運が悪かっただけっていう感じなんですか。要するに。
それはGPU市場に参入しなかった点でってことですか。
いやいや参入したんですよね。今しゃべってるのはGPU市場にインテルが参入した上でなぜNVIDIAに負けたかっていう話をしてますよね。
でなぜ負けたかっていうところで今話してる中で私が理解してるところで言うとNVIDIAは自社で設計だけをやって製造を外注してますと。
インテルの設計と製造の失敗
でインテルは設計も製造も自分で抱えましたと。
でそれによってインテルが失敗しましたと。
でなぜその差分によってインテルが失敗したかっていうのがあんまり今の話ではわからなかったんですけど。
私は個人的にはその意思決定自体はそんな間違ったものなのかなとは思っていて。
それこそテスラとかも自分で設計して製造も金型方式みたいなのを編み出してボンって作ることによって成功してたりするし。
そのフィードバックだったり進化みたいなところも設計でいくら素晴らしいものを設計しても
ASMCがそれ作れないみたいなそのレゴブロックの組み合わせが作れないみたいなものになったらそれ負けてた可能性って全然あるじゃないですか。
でそうならなかったっていうのはそれはつまりそのさっき言ってた業界がすごく進化していくごとに設計だったり製造っていうのもどんどん新しくしないといけなくて。
その変革みたいなのが設計のイノベーションも製造のイノベーションもすごいものだったからそれを分散してたのが良くて一社では抱えきれなかったっていうことですかね。
でもこのTSMCっていうのは多くのファブレス企業から生産を受託されるわけなので学習曲線と規模の経済っていうのは働くわけじゃないですか。
ってなるとTSMCはまずは自身で技術投資を積極的に行えるし最先端のものを安く作れるっていう基盤が整う。
しかしインテルは自分たちのものしか作ってないのでその面でいうとTSMCよりも稼働率は上げられないし工場の設備の。
でもいろんなところから受けたらより汎用的なものを作ろうとするじゃないですか。
A社にもあってB社にもあってNVIDIAにもあってみたいないろんなところで使えるものっていう汎用的に使えるっていうのが売上が最大化できるじゃないですか。
でも自社でやってたら自社の設計に合わせたものだけに研ぎ澄まされた製造っていうのができるからもっと尖った素晴らしいものが作れるんじゃないのかなって思うんですよね。
ただきっとこの自社で作ってたとしたら製造設備を自分たちで持ってるわけじゃないですか。
そうするとやっぱりその最先端の機械にしなければ半導体産業っていうのはお金のゲームって言われるほど設備をどんどん入れ替えなければいけないっていうところで追いつかないんじゃないかなって思います。
なんで設備をどんどん入れ替えないといけないんですか。
それはどんどん微細化をしていくMUAの法則に従って、どんどん性能を上げていくっていうことが求められるので、従来の設備じゃ叶わないみたいな、作れないみたいなことが多々起こるんじゃないかなって思います。
育れた技術になっていく、どんどん。
確かにな。自分でNVIDIAのGPU買って、インテルのCPUとマザーボード買ってパソコン組んだりしたことあるんですけど、
どんどん安くなるし、どんどん性能上がるなっていうのは本当にすごいスピードだなって感じていて、その度に作らないといけないみたいなのをシステム入れ替えていくっていうところで投資が回収できないと。
ということは結局TSMCみたいにそこだけに特化していて、お客さんの投資から回収できたっていうのは、つまり割とお金の問題って感じなんですかね。
投資分を回収できるほどのコストメリットっていうのをインテルは製造部分だけでは生み出せなかったと。
でも逆に言うと本当にインテルの設計がNVIDIAよりも尖って素晴らしいものになっていて、いやもうインテルしかないよねってなってたら投資は回収できてたってことですよね。
TSMCの影響と学習曲線
まあでもそれが言うとGPUじゃないですか、今売れてるのは。確かにインテルがGPU市場に参入してたとしたら過去に、買収で。もしかしたらいけてたのかもしれないですけど、TSMCの存在は結構でかいと思っていて、わかんないですねそれは。
まあでも結局設計とその性能による勝負で負けて、それがコストに響いてきて、コストメリットを持っているTSMCに委託している方が正解だったよねっていうことが後からわかったっていう。
そうですね。しかもスピードが尋常じゃないので。進化のスピードがね。そうですね、そんなスピードにはやっぱりついていけないっていうところがインテルにはある。
あとはそのTSMCみたいにファンドリー事業をしようってインテルも2021年くらいに宣言するんですよ。自分たちも他の会社のチップ制度をやりますって。
200億ドル投資するんですけど、結果的に120億ドル赤字になるんですよね。それがなぜかというと、インテルってチップの設計もしてるじゃないですか。
はい。
なのでNVIDIAとかいうファブレス企業からしたら、自分たちと同じ事業を持っているインテルに、じゃあ製造してくださいっていうのは言えない情報漏洩の可能性があるので。
しかもインテル側も親身になってTSMCのようにすり合わせ、話し合いみたいなのを受け入れなかったってところで、誰も頼まないっていうので赤字になるんですけど。
結局インテルとしても稼働率を上げるために、やっぱりTSMCみたいに工場、誰かから委託されたいなみたいなところがあったんだと思います。
でもインテルすごいですね。ずっと勝負仕掛けてるんですね。かっこいいですね。
確かにそうですね。私はめっちゃ負けてるなと思ってたんですけど、確かに大手だからこそ頑張ってるってことですよね。
大手だからこそ、というか大手なのに負けても負けても全額別として投資し続けてるっていうことですよね。
こういう株は買ったほうがいいですよ。
本当ですか?なるほど。
いつか成功するんで。そういうカルチャーがあるんですよ、その会社の中に。
負けても負けから学んで勝負をするっていうカルチャーがあるっていうのは、それ自体がだいぶ奇跡的なことだと思いますけどね。
もうちょっと話がそれました。
確かに。
インテルがCPUを作ったんですけど、その前の製品もあったんですよ、インテルには。
その前の製品のちょっと名前忘れちゃったんですけど、その前の製品からCPUに移行する時はすごいスピードで移行したんですよね。
視力製品を。なのにGPUの時は全然できてないじゃないですか。3回も参入しようとして失敗してみたいな。
そこにはやっぱ大手だからこそ体が重くなっちゃって、データセンター買収しようみたいな時もできないしみたいなところで、
大手だからこそできなくなっちゃったのかなって私は思ったんですけど、視点変えてみるとずっと戦い挑んでる感はありますね。
そうですね。大手だったら基本的には何も戦わずに参入もしようとせずに負けるっていうのが大手ですからね。
あー。
まあ時価総額983億円で1000億円もない。なんかめっちゃ割安な気がしますね。
え、じゃあ買った方がいいですかね。
まあまあまあ、あの、自己責任で。
ちょっと今回難しかったんですけど、新しい視点を得ました、私は。
うん、だし、なんか次インテルがどんな戦いをしようとしているのかっていうのはIR資料を読みたいなって思いました。
えー、確かに。じゃあ次お願いします。
え、それ。
隠します。
まあまあちょっと、もしここまで聞いてる人がいたら各自読んでください。
確かに。いろいろ教えてほしいです。はい、ということで終わりまーす。
今日もお聞きいただきありがとうございます。また次回も聞いてください。
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