承認欲求の理解
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学を、ポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマはこちら。
承認欲求が満たされない、満たされにくい理由。
今回は、承認欲求が満たされない、満たされにくい理由のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも自然とつながっています。
その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、承認欲求が満たされない、満たされにくい理由について。
私たちの誰もが持っている承認欲求ですが、たっぷりと満たされていると感じている人は少ないのではないでしょうか。
なぜそうなのか、その理由を知ることで、承認欲求を満たすヒントが得られます。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」とも、リンクするお話です。
皆様は、よく褒めますか、それとも、滅多に褒めないか、全く褒めませんか。
叱ったり、指摘したりは、いかがですか。
逆の立場では、どうでしょうか。よく褒められますか。
あるいは、滅多に褒められないか、全く褒められませんか。
叱られたり、指摘されたりは、いかがでしょうか。
また、受け止めやすいのはどれですか。褒められることか、叱られることか、指摘されることか。
承認欲求を満たす刺激「ストローク」。言語、非言語、ポジティブ、ネガティブ、いろいろな種類がありますが、このストロークについて、親や親的な人から育てられる中で、私たちはどうも、5つの制限をかけられてきたようです。
その5つというのは、【与えるな】持っているストロークを、与えるな。【求めるな】必要なストロークを、求めるな。【受け取るな】欲しいストロークを、受け取るな。【拒否するな】欲しくないストロークを、拒否するな。
【自分自身に与えるな】自分自身に、ストロークを与えるな。この5つです。
一説には、この制限によってストロークが不足気味になってしまい、育てる人が出すストロークの価値が相対的に上がって、子どもが、より言うことを聞くようになる。需要と供給の法則、とでも言うんでしょうか。そんなものがあるのではないか、と言われています。
こうお伝えしますと、「え~、そんなぁ。」と、思われる方もいるかもしれません。この番組の中でお伝えしている心理学の背景理論、【TA】(Transactional Analysis、【交流分析】では、ブラックユーモアとでも言うんでしょうか。きつく感じられる表現がよく使われます。
ただ、これは、子どもの立場からしたら、それくらい重みのある、大切な意味があること、それを伝えるための表現であり、理論なんだと思います。そして、それくらい重く意味のあることだからこそ、私たちにしっかりと浸透し、根付いている。
大人になった今は、もう自由にしてもいいのに、その制限に従ってしまっている。そのためにストロークが不足し、私たちの承認要求が満たされない、満たされにくい状態になってしまっている。そんな流れです。
ストロークの制限
では、5つの制限について、もう少し詳しくお話をしていきます。しっくりくるかどうか、ぜひご自身で検証してみてください。
【与えるな】持っているストロークを、与えるな。
例えば、身近な人への感謝の言葉「ありがとう」や、いつも作ってくれる食事への「おいしい」など、言うと図に乗るからとか、言わなくてもわかる、言うほどのことではないとか、実際に欲しがっているとわかっていても【与えない】、そんなストロークけちんぼしていませんか。
【求めるな】必要なストロークを、求めるな。
例えば、頑張って成果を上げたから認めてほしい、気づいて褒めてほしい、でもなかなか気づいてもらえない、言ってもらえない、「は~っ」、ただ黙って待ってがっかり。
これについては、私たちは特に、どうも根強く叩き込まれているようです。
求めなきゃ得られないストロークなんて、価値がない、意味がない、そんな根強い気持ち。求めてもいいのに、ということです。
【受け取るな】欲しいストロークを、受け取るな。
例えば、褒めてもらった時、認めてもらった時、思いっきり喜んだり嬉しがったりすると、「いい気になるんじゃない。」とか、「まだまだでしょ。」とか。
いつしか謙遜が美徳ということで、「いえいえ、そんな、それほどのものではないですから。」という言葉や態度を自然と身につけ、言葉や態度だけではなく、心の底から喜んだり欲しがったりするのをセーブするようになったりしています。
【拒否するな】欲しくないストロークを、拒否するな。
例えば、「言ってもらえるうちが花」、「石の上にも三年」、「あなたのためを思って言っているんだから」、「和を乱すな」、などなど。拒否せず、受け取るのが美徳という流れ。ないでしょうか。
確かに、正当なことであれば、受け取ればいいです。でも、どう考えても理不尽だったり過剰だったり、そんなストロークは受け取らなくてもいい、拒否してもいい。そうではないでしょうか。
【自分自身に与えるな】自分自身に、ストロークを与えるな。例えば、「いい気になるな。」 「そこで満足するな。」 「自分は大したことない。」 「自分なんて。」。
自分を下げる、謙譲や謙遜が美徳とされることも多い中、いつしか本当に、自分自身にストロークを与えなくなってしまう。こうなりますと、自己肯定感を上げるのはなかなか大変な道のりとなってしまうんではないでしょうか。
ストロークへの5つの制限。皆様、思い当たるものはありましたでしょうか。実際のところ、このストロークへの制限、ポジティブなストロークとネガティブなストロークの区別もあるかと思います。
もう一度振り返ってみます。【与えるな】持っているストロークを、与えるな。【求めるな】必要なストロークを、求めるな。【受け取るな】欲しいストロークを、受け取るな。【拒否するな】欲しくないストロークを、拒否するな。【自分自身に与えるな】自分自身に、ストロークを与えるな。
実践と気づき
例えば、私にはよくこんなことがあります。話の流れで、ここが良くなかった、こんなところを失敗してしまったと自己分析してお伝えしているうちに、なぜか伝えた相手の中で、一定数、そのことを改めて次々指摘してくださる人がいるということです。
私からすればかなり不思議に思えるんですけれども、「それ、今、私が自分で言ったことじゃないのかしら。」 「まるでこの方が、ご自分で気づいて教えてやってるみたいになっちゃってないかしら?」 「気のせいか、どや顔にも見えるし、何なんだろう。」
これはどうも、私の立場からすると、【求めるな】必要なストロークを、求めるな。かと思います。本当なら、よくやったよ、そんな失敗くらいあるよ、などと言って慰めたり褒めたりしてほしいところ。
「今、落ち込んでるんで慰めてください。」と言って求めてもいいのに、直接求めるのはなんだか図々しいし、はばかられる。そこで遠回しな技とでも言うんでしょうか、あえて自分を下げて、実は求めているという、そんな求め方の癖があるように思います。
そして、慰めたり褒めたりしてくれないまでも、私自身が気づいて言っていることを、あえて指摘してくださる方。これは、【与えるな】持っているストロークを、与えるな。の変形になるでしょうか。
ポジティブな、相手が欲しがっているストロークだったり、共感する姿勢は、与えない。それよりも、教える、指摘する姿勢、立場からの、マウントを取るストロークが固定的になっている、とでも言うんでしょうか。
そして、この後、【拒否するな】欲しくないストロークを、拒否するな。の教えの通りに進みます。
頭の中は???だらけ。正直、欲しくないストロークなんですが、会話の中では、「ありがとうございます。そうですよね。」と、拒否せず受け取ってしまう流れ。
これでは、私の承認欲求がポジティブには満たされない、満たされにくい、ネガティブには満たされる、満たされやすい流れかと思います。
ただ正直、もとはといえば身から出た錆、発端は自分です。それなら、こうしてはどうでしょうか。
欲しいストロークを、ストレートに求める。「きついです。慰めてもらっていいですか。」
それでも欲しくないストロークが来たら、「あ、すみません。自虐しちゃいました。実は今、かさぶたを剥がされたみたいでつらいです。
今日は勘弁してください。」。そんなふうに、拒否してみてもいいかもしれません。
お決まりの問題パターンがあるなら、リラックスした場所、環境、心の状態で、自分自身の承認欲求が満たされない、満たされにくい理由を、5つの制限で検証してみることをおすすめします。
では、今回覚えていただきたいポイントは、「承認欲求が満たされない、満たされにくい理由」。
まずは気づくこと、そしていつもと違う変化を味わってみませんか?ここまで聞いていただき、ありがとうございます。最後に、番組からのお知らせです。
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お相手は、遠藤美保でした。ありがとうございました。