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2024-02-10 07:17

朗読「壁人」

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今回は、自作の掌編小説、「壁人」を朗読したいと思います。

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00:01
はい、イタラジ、やってまいりました。今回はですね、趣向を変えまして、私の書いた拙い文章をですね、朗読する回としたいと思います。
パチパチパチパチ。ということで、今回はですね、私の書いた小編小説、手のひらの小説、
中から壁人、壁の人と書いて、壁人という小説をですね、朗読させていただきます。
これは中国の古典文集、怪奇短集の送信機から、送信機より直想された他文であります。
こちらはね、そういう中国の古い話から、直想した話です。
ではお聞きください。
壁人 五感 霊帝の
紀平二年六月 空にはまだらに雲かかり
何かうつうつとした しかし
ともすれば何かうつぼつと どこからか機炎が上がりそうな
よどんだ不満と いやにかっ気づいた日常とが
湿った大気の中で 陰棟に根香した風の
落葉のうつゆは 寒日時の
軒先で雨が止むのを待つ この一人のある小敷には
少々つらいうたた寝をしては 不意にがばと飛び跳ね起き
曖昧な行き通りの中で 悪夢を半数している人通りの少ない通りに
目にした この寺の東の長く続く壁には
ほんのもう足分程度の軒が設けてあって ときたま陰湿な風が
小敷の横っ面にうてきをあざけるように起こす
横たえる土の上にも 寄せかかる壁の表にも
ただれたように歳月が苔むしていた 天女の舞う様を見た
極楽町の棲む山山を見た どこからか飛んできた蝶の羽の模様が笑っていた
それがすべて夢だったと気づくたび 彼の生命力はしなびて
03:00
かえってどうにもならぬ怒りがこみ上げてくる 今度ばかりは
羽を刻まに 壁の前に仁王立ち
きっとその薄汚い表を睨んだ お前は笑っているな
だが 俺も望んでこのような境界に沈んでいるわけではない
俺は 少しばかり前までは
一人の管理であった だが
己の悔しんと自尊のために つまらぬことで
不名誉をこむったのだ 俺は野に下り
私服の時を過ごした いや考えてみれば
それもただのうぬぼれにすぎなかった 少しばかり前までの俺は
まだ世間知らずで 早速身を寄せた裏町のゲスゲロウに騙され
一挙に古事記に転落した そして死ぬ読みもみじめだと自ら思いながら
死ぬことすら不名誉と思って生きさらばえている こんな俺をお前までが笑うというのか
壁が問いに答えると信じるほど 古事記は狂っていたわけではなかった
だが おそらくただの壁に文句をつけるほどに
彼の意識は正常ではなかった もっとも
ゲアの野暮の批判など ガイアの野暮な批評など
この自らの境遇というよりは自らの絶望に苦しむ男のためになるわけもない
何か思案した様子を見せた後 ふんと鼻を一つ鳴らすと
男はいきなり壁を両手でギューと押し込め始めた むろんそれは
単なるうさばらしに過ぎなかった そして
その手触りにギョッとした この壁は間違いなく
人の肉でできている おお
これは死骸だ まるで体裁のような
肉手できた壁なのだ その時すでに
男の腕はもう半分も壁にめり込んでいた やけに柔らかい壁は
男が足掻くために その道体を飲み込んでいった
俺はきっと食われてしまう いや
俺も食われてしまうということか おそらくは
06:04
今までこうして食われたのは 俺一人ではないのだ
それからしばらくして 寺のその壁の前には洛陽の人々が押しかけた
塔壁へ行く人々はみちみちは人であふれた 壁の表に
男の姿をしたシミが現れたという まるで生きているかのように白心な
協調の前触れかと口々に叫ぶ人々は しかし
どこか優越に浸っているようで えらく楽しげである
対して 雨に濡れた壁の中の男の顔は
苦悶に歪んでいる はいというわけで
ヘッキジン自作の小編小説 ヘッキジンをお聴きいただきました
最後まで聴いてくださり ありがとうございました
ではまたの機会に さようなら
07:17

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