よろしくお願いします。
今回は、「チーム性医療って何が違うの?」という疑問からスタートしたいと思います。
日本の多くの病院では、主治医が患者さんを最初から最後まで一人で見る主治医制だと思います。
一方、徳島県立海部病院は、医師がグループを作り、患者さんをチームで診療するチーム性を徹底されているそうです。
まずはこの2つの仕組みの要点を整理させてください。
チーム性医療について、けいすき先生、どういった医療体制なんでしょうか?
まず、主治医制というものがイメージしやすいのですが、
1人の先生が患者さんに対してずっと見させていただくということで、
休日中も夜間も何かあれば対応するということになっています。
チーム性というものは、当院で採用しているものですが、
複数の先生で情報共有をしていますので、夜、夜間、休日、自分がいないときに
別の先生でもカバーし合えるというような体制をとっています。
そうした休日もしっかりとれるし、自分一人で責任を負う必要がないというのは、すごくいい体制だなと思いますね。
河森先生は何かチーム性のメリットみたいなところって何だと思いますかね?
自分の働き方に関しては、夜間休日に連絡が来ないというのは、
子育てをしている先生もしていない先生も、もちろん仕事を離れて休む時間というのはすごく必要だと思うので、すごくいいというのと、
あとは、私たち内科医は若手が多いので、たくさんの患者さんとか病気を自分で経験したいと思うものなんですね。
そうなったときに、自分が主治医生で見ていると、自分が見ている数名しか経験できないところが、
チーム性だとチームで見ている患者さん、今、海部病院は2チームでやっているので、
内科の患者さんの半数を自分の受け持ち患者として経験できるというところは、
地方の病院でもいろんな症例が経験できるというのがすごく大きなメリットかなと思っています。
いろいろな患者さんの診察・診療ができるというのがすごいところなんですね。
チーム性医療の仕組みについて詳しくありがとうございます。
仕組みが分かったところで、実際に働いてみると何か変わるのかというところが気になります。
ここからはお二人の体験談を交えながら、チーム性が生むインパクトを具体的に聞かせてください。
インパクト。
何か具体的に何か。
主治医生で働いていた病院のときは、本当に夜も、例えば旅行に行っているときとか出かけているときも、
必ず自分のスマホを気にしていないといけなくて、何か連絡があったらすぐに駆けつけられる状況を保っておかないといけない。
それが24時間365日その体制だったというところが、すごく勉強になった部分はもちろんあるんですけれども、
小さい子を育てながらというのは結構しんどかった部分もあって、
別々の病院で働いていたときは、どっちかが到着のときは、どっちかが一人で家で子供を見ていたので、
呼ばれませんようにと祈りながら、夜寝るみたいな日々でした。
休みと言いつつ、休みでないみたいな。
気にしておかないとダメなんですね。
お風呂にスマホを持って入っていたりとか、いつ電話が来ても取り忘れないようにとか。
あとは寝るときも目がちょっと悪いので、すぐ携帯を触れるように眼鏡をかけたまま寝ていたりとか。
ああ、そうなんですね。
そこまでしなくてもよかったのかもわからないですけど、それぐらいの精神的な負担というのはあったのかなと思っています。
精神的負担もそうですけど、実際にやっぱりなることも結構多々あったんですよね。
そうですね。
電話だけで済むこともまあまああるんですけれども、
実際にやっぱり自分の患者さんが悪くなって病院に行かないといけないとなるときのために、
家族で出かけるときも必ず車2台でどっちかがすぐ呼ばれても行けるように。
お祭りに行くときも買い物に行くときも必ずどこかご飯食べに行くときも必ず2台で行ってました。
家族で出かけているのにもう別々。
しかも実際に呼ばれることもある。
やっぱりあるんですよね。
呼ばれたから戻るわって。
あるんですよ。
クリスマスに家族で出かけてたときにこっちが呼ばれるっていう。
クリスマスツリー選んでた。
ツリー選んでたとき。
世間はクリスマスの華やかなツリーで、今日は電話かかってこないやろうと思ってたら、かかってきて泣く泣く病院に向かって。
そのときはもうけっすけ先生お一人で残ってツリーを選んでとかですか。
子供の世話をしながら。
子供の世話をしながら。
それは大変ですね。確かにそれはちょっとやっぱり主治医生すごく大変だなと思いますね。
チーム性医療だといろんな患者さんを見れるっていうところはすごくいいところだなと思いますね。
次は実際にどういうふうに回ってるのかっていう仕組みの面もちょっと気になるので聞いていきたいと思うんですけども、
海部病院ならではのオペレーション、チームの組み方や情報共有の方法、休暇をどう回しているのかといった実務の裏側を具体的に深掘りできたらなと思うんですけども。
朝チームでカンファレンスを15分内し、患者さんが多かったら伸びてはしまうんですけど、
15分から30分程度カンファレンスをして夜間何か変化がなかったかっていうのを共有しています。
日中は手が空いてる先生、外来で当たってる先生は外来に行ったりするので、
それ以外の先生で会診をして、日中するべきことを情報整理をしてという形になっています。
夜、日勤が終わった後は当直の先生が1人、病院全体で1人が当直で残るんですけど、
その先生に必要なことを申し送りして、後は全員帰るというふうになっています。
待機というものが内科で1人当番を当てているんですけど、
それは遠方の工事医療機関、大きな病院に患者さんを転院でお願いするときのための救急車に乗っていく当番として1人担当をおいています。
なので、自分の患者さんが夜中悪くなって大きな病院にお世話になるというときも待機の先生が呼ばれるので、
自分には翌朝状況が悪くて転院になったということを知ることもあります。
連絡は次の朝になって、出勤したときに初めて共有いただくみたいな。
ただ、ほったらかしでそうなるというわけではなくて、ご家族とも相談して、患者さんともお話しして、
状況が良くなかったら転院でお願いすることもあるということで申し送りをしているということが多くはあるかなと思います。
今、海部病院は内科医師が10名ぐらいいるんですけれども、半々に5名ずつぐらいで分かれてチームを編成しています。
だいたいその昼間、業務が偏らないように、誰か1人は必ず病棟で耳患者さんを見れるような体制でやっていますので、
主治医生だと、例えば自分の患者さんに対する診療の甘さだったりとか、見込みの甘さというのが全部自分にかかってくるんですけれども、
チーム制でやっていると、いろんな可能性をみんなで考えられるということと、
別の先生に常に見てもらっているという安心感もありますし、
あとは別の先生にお願いしないといけないというところで、いろんな可能性を自分が主治医で見ていたときより考えるので、
それはすごいトレーニングになっているなと。
逆に自分が当直のときは、
人間患者にどんなことがあっても、自分一人で対応しなければいけないので、
全部ほったらかしばかりではなくて、自分も必ず対応するときがあるというところで、スキルアップではないですけど、あるかなと思います。
みんなで責任を分散しつつも、実際当直のときはしっかりとすべての患者さんの症状だったりとか、
という状況は把握して、しっかり責任もありつつというような形なんですね。
なるほど、ありがとうございます。
仕組みはよくわかりました。
チーム性が医師の教育とかの分野でどのような効果を発揮するのか、もたらすのかというところに関してはいかがですかね。
アメリカの研究なんですけれども、かつて完全主治医生でやっていた文化がアメリカにもあったんですけれども、
それがやはり医師の過労だとか、そういうのでチーム性になりつつあったときに、
チーム性と完全主治医生でやはりかなり治療のスタイルが変わるので、かなり現場を戸惑ったかと思うんですけれども、
主治医生と比べてチーム性の方が治療方針を決めたりとか、処方内容も適正になっているという傾向があったりとか、
あと教育に関してもチーム性になったところで一人当たりの教育の質というのは落ちなかったという研究がありまして、
なので研修院の先生だとか若い先生って一人で見るということを経験するというのも必要な時期はあるかとは思うんですけれども、
やはりそうでなくてちゃんとみんなの目を入れてというか。
やはり一人で全てを任されても戸惑うところも多いと思うので、誰かが見てくれているという安心感は確かにありますね。
あとはやはり一人だけでもかなり方針に困ることとか、倫理的にも逸脱してしまいがちなこともあるので、
そういったところをちゃんと適正にできる、みんなの意見で方針を決められるという良さはすごくあるかなと思います。
わかりました。ありがとうございます。
チーム性というのが心情そのままの質だったりとか、医師の教育の分野に関してもすごい効果を発揮しているということがよくわかりました。ありがとうございます。
こういった仕組みに関してはまさに海部病院ならではの強みなのかなと思います。
本日はすごくためになりました。
けいすけ先生、かおり先生、本当にありがとうございました。
ありがとうございました。
最後にお知らせです。
徳島県では、医師・看護師など医療従事者がまだまだ足りていません。
移住して常勤で働くのはもちろん、週一日の非常勤や半期の応援といった関わり方でも大歓迎です。
少し興味がある、まずは話を聞いてみたいという方は、番組概要欄の問い合わせ先までお気軽にご連絡ください。
あなたの経験とスキルを徳島の医療現場で活かしてみませんか。
皆様からのご連絡をお待ちしています。
よろしくお願いします。
今回は徳島県立海部病院のチーム性医療の秘密を深掘りしました。
次回はシリーズ最終回です。
テーマは、プライベートとキャリアを両立する職場文化、海部病院で働く理由です。
休むときは休み、働くときは集中する。
そのメリハリがあるからこそ、家族を大切にしながら医師としても成長できる。
そんな働き方のリアルを今回に引き続き、
けいつけ先生、かおり先生をゲストにお迎えしてお話しいただきます。
第1回でお届けしたのは暮らし、第2回は働き方、そして最終回は暮らしとキャリアの両立がテーマとなります。
次回もぜひお聞きください。
お相手は大野幸介でした。さようなら。
さようなら。