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インベストメントブリッジがお届けする、いろはにマネーのながら学習。
この番組では、インターン生2人が、株、投資、経済関連の気になる情報を分かりやすくお伝えしていきます。
インターン生の会話をながら聞きする感覚で、一緒に勉強していきましょう。
おはようございます。インターン生の斉藤です。
おはようございます。インターン生の塚田です。
USスチール買収の背景
斉藤さん、一時期日本でもかなり話題になっていた、USスチールの買収ですけど、最近になって大きな動きがあったことをご存知ですか?
なんか最近、ニュースとか日経新聞で見たような気がします。
でも正直、このUSスチールの一件って、事態が長引きすぎていて、結局何がどうなっているのかあんまり分からないんですよね。
確かに、買収発表があった2023年末から、もう1年半ほど経ってますからね。だんだん追うのも面倒になってきて。
そうですよね。途中で大統領も変わって、さらに大統領の言うこともコロコロ変わっているので、いつしか最新情報を追うのを諦めちゃいましたね。
今回はそこも踏まえて、今までのUSスチール買収の状況と、これからの展望を解説していきたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。
さて、本題に入る前に、投資初心者が知っておきたい株用語の解説をするちょこっと株辞典のコーナーです。
今日の用語は何でしょうか。
本日の用語は黄金株です。黄金株とは、一定の特権を持つ株式のことを指します。
特に拒否権が付与されることが一般的で、一株でも取締役の選任、解任や株主総会決議の内容を拒否することができます。
国連の常任理事国みたいなのを想像してもらうと、イメージしやすいかもしれません。
日本ではエネルギー系企業のインペックスの例が有名ですよね。
エネルギー供給という経済安全保障に大きく関わる業種であることから、日本政府が黄金株を保有しています。
ちょうど今回のUSスチールでも出てくるんですけれども、黄金株って政府が関与する場面で登場することがかなり多いんですよね。
拒否権の内容によっては経営の自由度が大きく制限される可能性がありますので、黄金株の存在がリスクとみなされ株価の評価が下がるパターンも見られます。
USスチールをめぐって黄金株がどう登場するのか気になりますね。
それでは早速本編に入っていきましょう。
まずこれまでの流れを整理してみましょう。
お願いします。
2023年12月18日に日本製鉄がUSスチールを約141億ドル、日本円換算で約2兆円で買収すると発表したんですね。
2兆円って改めて見てもすごい金額なんですけど、すんなりはいかなかったんですよね。
そうなんです。アメリカではこれが政治問題化してしまって、2025年1月3日にバイデン大統領が国家安全保障所の理由から買収中止命令を出したんです。
国家安全保障所の理由ってそもそも鉄工業がそんなに重要な産業だと思えないんですけどそうなんですか?
ちょっと意外に思われるかもしれないんですけれども、アメリカにとって鉄工は国防にも直結する機関産業なんですよね。
軍事装備品や砲弾の製造にも使われていたりして、実際トランプ政権の防衛政策文書には米国内で生産できる砲弾数が必要数の3分の1に過ぎないという指摘もあるんです。
なるほど。だから慎重になるって言うわけですね。
トランプ氏の意見転換
そうなるとトランプさんも買収には否定的な姿勢だったんでしょうか?
大統領選を踏まえた発言だったっていうのもあるんですけれども、最初はトランプ氏も買収には反対していました。
でもここ最近で本当にガラッと意見を変えたんですよね。
トランプさんって結構言い方難しいんですけど頑固なイメージっていうのを持っていたのでガラッと意見を変えたっていうのは意外ですね。
具体的にはどんな流れだったんですか?
4月7日にCFIUS、簡単に言えば外国企業による米国機器を買収の安全保障リスクを審査する政府機関に新たな審査を指示して、そして5月23日に一転して承認の意向を示したんです。
トランプさんは自身のSNSでUSシチールと日鉄の計画的パートナーシップで少なくとも7万人の雇用を創出し米国に140億ドルの経済効果をもたらすと投稿しました。
経済効果が140億ドルですか?140億ドルってさっきも出てきたように買収額と同じ金額ですよね。これってどこから湧いてきた数字なんでしょうか?
日本製鉄は当初、買収額とは別で14億ドルの設備投資を予定していたんですね。ただ、ここに来て買収に成功した場合、約10倍に当たる140億ドルの追加投資を検討すると表明したんです。
ここがトランプ大統領の心を動かした要因の一つだとも言われていますね。
10倍ってすごいですよね。確かにインパクトありますもんね。具体的にはどんな投資なんでしょうか?
ペンシルベニア州のモンバレ製鉄所に22億ドル、それから他の州の製鉄所の現代化や新施設建設に70億ドルなどです。
トランプ大統領も鉄鋼は永遠にメイドインアメリカになると強調していて、アメリカ国内の雇用創出を重視する姿勢も見せています。
なるほど。それを聞いたらアメリカにもかなりメリットの大きい話に聞こえてきますね。ただ、まだ完全に決着したわけではないんですよね。
黄金株と買収の課題
そうなんですよね。ここで黄金株の話が出てくるんです。先ほど株辞典で話した黄金株ですね。
ここで出てくるっていうことは、アメリカの政府が黄金株を取得しているっていう感じですか?
はい。具体的な買収スキームは出てないので確定ではないんですけれども、その可能性がかなり高いと言えるかと思います。
拒否権の内容としては取締り厄介や生産削減など重要事項の決定に関わるものが中心になってくると予想されていますね。
それって日本製鉄が買収してもアメリカ政府が実質的にコントロールできるっていうことになりますよね。
めちゃくちゃ鋭い指摘だと思います。まさにその通りで。さらに言えば合意条件として、
USシチエルのトップが米国人であることや取締り厄介の過半数が米国人を占めることも条件として含まれていて、
あくまでもトランプ氏はアメリカ人が経営をコントロールできることにこだわっているんですよね。
買収と言いながらトップも過半数もアメリカ人って本当に買収って言えるんですかね。
なんかすごい中途半端な感じがしますね。
しかも日本製鉄としては2兆円も払ってそんな条件で大丈夫なんでしょうか。
そこが今回の焦点に当たるところですよね。
日本製鉄は完全子会社化を目指していたので、この条件をどこまで受け入れるかが課題となってくるかと思います。
今後はどんな展開が予想されますか。
まずですけど、バイデン前大統領の買収差し止め判断を正式に覆す必要がありますね。
それから黄金株の詳細な条件や140億ドルの追加投資にあたる具体的な配分についても調整が続くかと思います。
実は6月18日、ちょうどこのポッドキャストが出る予定の日付なんですけれども、
こちらの日付が買収中止の一つの期限だったんですけれども、おそらくは先延ばしになるかと考えられます。
なるほど。投資家としてはこの展開をどうやって見るべきなんでしょうか。
正直に言うと望ましくはないですよね。
日本製鉄の株価も交渉に振り回されて1年で約25%安。
買収できなかったらM&A費用が水泡に帰す上に800億円以上の医薬金を支払わなければならないし、
買収できたとしても買収額投資額合わせて4兆円以上の出費で、
にもかかわらず拒否権とか取締役会の過半数がアメリカサイドにつく可能性が高くて、
かなり割高で株価の重しにもなってきそうだなとはぶっちゃけ思います。
なるほど。買収の効果も即時的にはわからないですもんね。
そうですね。ただ中国市場が今結構渋い中アメリカ市場へ進出できたり、
日本企業がアメリカ企業を買収するモデルケースになり得る点は魅力的だと思います。
いずれにせよまだ買収は決まったわけではありませんから、
最終的な合意条件だったり買収スキームの報道を気長に待つのが得策かなと思います。
はい、そうですね。リスナーの皆さんもこの買収劇の行方をぜひチェックしてみてください。
企業の海外展開であったり、国際政治と経済の関係を考えるいい材料になりそうですね。
最後までお聞きいただきありがとうございました。
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