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2024-10-16 38:24

#7−7 見たいものがここにある!ストリーミング時代へ 〜TVリモコンが一等地?〜

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2007年、ついにNetflixはストリーミングサービスを開始。当時は高速インターネットの普及も進んでおらず、技術や著作権の課題が山積みでした。そんな中、Netflixは競合を凌駕してストリーミング市場で大きな成功を収めます。今回はストリーミング事業がどのようにスタートし、成長していったのか、その背景に迫ります。


▼「s07 Netflix編」再生リスト:

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▼MC:

尾原和啓(IT批評家) https://twitter.com/kazobara


京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を専門とし、内閣府新AI戦略検討、産総研人工知能研究センターアドバイザー、現在13職目 、近著「アフターデジタル」は11万部、元 経産大臣 世耕氏より推挙。「プロセスエコノミー」はビジネス書グランプリ イノベーション部門受賞


▼サブMC:

けんすう(アル株式会社代表取締役) https://twitter.com/kensuu


アル株式会社代表取締役。学生時代からインターネットサービスに携わり、2006年株式会社リクルートに入社。新規事業担当を経て、2009年に株式会社nanapiを創業。2014年にKDDIグループにジョインし、2018年から現職。


▼番組への感想、MCへのメッセージは以下までお寄せください。

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▼音声編集:株式会社BOOK


▼アドバイザー:株式会社BOOK代表取締役 樋口聖典

サマリー

ストリーミング時代の到来に伴い、ネットフリックスはDVDからストリーミングへ移行する際の戦略を探ります。ネットワークエフェクトやコーナードリソースの重要性が強調され、成功に至るまでの苦労が語られます。ストリーミング時代の到来により、テレビリモコンの役割と重要性が変化します。NetflixやHuluの競争と、事業モデルの転換に伴うユーザーの反応について考察されます。ストリーミング時代におけるネットフリックスの進化と、インターネットプロバイダーとの複雑な関係性が議論されます。特に、ネットフリックスがコンテンツデリバリーネットワークを導入することで競争力を高めた方法が紹介されます。

ストリーミングの始まりの戦略
けんすう
はい、というわけで前回はですね、ストリーミングにいよいよ手を出したNetflixというのと、ブロックバスターと激突してブロックバスターが倒産しちゃうよっていう話をしましたが、今回いよいよストリーミングの始まりのところをお話しいただくという感じですかね。
尾原
そうですね。で、ここの今日の、さっきのがですね、ハードシングスを切るだけ伝えたいために歴史を細かく細かく喋っていて、これだけの競争というものは常に相手があるものの中でどう生き残るかって話が中心だったんですけど、今日は戦略の片辺です。
今日はもうセブンパワー使い倒し。もうセブンパワーは何回か話をしたので覚えてるよね、当然ケンス君も。
けんすう
いやいやもうそうですね、だからもうあえて言うとね、皆さんもまたかよってなっちゃうのであえて言わないですけどね。7つあるんですよパワーが。
尾原
そうですよね。7つあって、その7つっていうものが、実はネットワークエフェクトって最強ですって言ってるものの、立ち上がるまでが大変なわけじゃないですか。
けんすう
そうですね、コールドスタートと呼ばれるやつですね、なりましたね。
尾原
特にストリーミングになってくるとネットワークエフェクトがむちゃくちゃ大事になってくると同時に大変でもあるんですよね。
けんすう
まあそうですよね、だって10人しか会員いなかったら、もうめちゃくちゃ設備投資とかコンテンツ投資でお金使う割に収入が入ってこないわけですもんね。
尾原
そうなんです。だから2007年にネットフリックスはストリーミングを開始していくわけなんですけども、おっしゃる当時で、当時と今のストリーミングネット配信の大変さって全然違うんですよ。
これはもう3つあってですね。
1つはそもそものストリーミングでお客さんの方が見れるっていう環境が、2007年でいうとまだまだ広がってないっていうところが1個。
だから結局ネットフリックスさんはDVDが普及するっていうところの波にうまく乗るかっていう話の次に、今度は高速インターネットに波に乗るかっていう話があるわけですよね。
さらに言うと皆さん2007年のタイミングっていうと、その1年前に素晴らしいことが起こってるわけですよね。2006年って何の革命の年でしたっけ。
けんすう
僕がリクルートに入社した年ですね。
尾原
そうですね。やっぱりいわゆる世の中がWeb 2.0という概念が生まれ始めた年で。
なぜこのWeb 2.0っていうものが生まれたかっていうと、ネットの速度が速くなってきたからユーザーがいろんな情報をアップできるっていうふうにいろいろ情報を配信していく環境のコストが劇的に安くなったってタイミングなんですよね。
けんすう
そうですね。パソコンの普及とかもでかかったですよね。
尾原
そうなんです。もちろんそうです。だから正確にと実は2006年っていうのはケンスがリクルートに入ってくれた栄光の年っていうだけではなくて、iPhoneの発売日っていうのがあるんですけれども。
iPhoneが普及して動き出すのってやっぱり2010年とかぐらいなので。
ネットフリックスに影響があるタブレットで見るみたいな需要が生まれてくるのってのはやっぱり2015年ぐらいなので。
2007年のタイミングで言うと、まずこの高速インターネットが急激な普及期に入るんだけれども、一方でまだ動画を配信するためのサーバーとかそのための配信コストがむちゃくちゃ高いって時期なんですよね。
けんすう
そうですね。そもそも世の中で言ってもYouTubeとかニコニコ動画が見られ始めるかぐらいの年ですもんね、まだ2007年って。
DVDレンタルからストリーミングへの移行
尾原
あともう一個、この話はネットワークエフェクトが回すのが大変なのがストリーミングなんですよって話から入ったわけなんですけど。
DVDからストリーミングになった時に、ユーザー側の獲得っていうのはすでに低学生からかなりユーザーついてきてますよね。さっき言ったように400万人超えてるから。
でももう一個のサイドが実はゲーム全くあるんですよね。
けんすう
配信を許可してくれるかどうか。
尾原
そうおっしゃる通りです。結局DVDの場合は世の中に売られているものをうちでも貸していいですかっていう話だし。
ましてやビデオレンタルですからがあったから、ビデオレンタルと同じですからっていうとDVDレンタルに移行できたわけですよ。
けんすう
これ日本だと確か裁判やって著作権的にOKみたいな判例があるからビデオレンタルやって確かできたんですけど。
多分アメリカでも同じような流れでこれは合法だよってなってるからDVDレンタルは全然OKみたいな。
そんな感じですよね。
尾原
それに対してストリーミングの配信というのは初めてのことで、映画の供給会社から一個一個うちにストリーミングをさせてくださいっていうことを開拓していかなきゃいけなかったんですよね。
なのでいわゆるさっき言ったネットワークエフェクトのコールドスタートっていう、うちにストリーミングをOKにしてくれますかって言ってる企業が増えないとユーザーがそっちに乗っからないし。
一方で配信事業者側からすると、わざわざストリーミングでデータ渡して大丈夫ですかみたいなことをやっていかなきゃいけなくなった。
けんすう
確かに権利者がOK出さないから日本のネットフリックスもスポティファイもやっぱりだいぶ遅れたっていう感じがありましたよね。
尾原
そうなんです。
けんすう
今だと多分信じられないと思うんですけど、当時だとやっぱりインターネットに載せるってすごいリスク高そうだし安っぽいみたいなイメージありましたよね。
尾原
なのでさっき言ったセブンパワー、フル活用の巻という話なんですけど、セブンパワーっていうのはもう件数もご存知のようにさっき言ったネットワーク効果。
あと大きくなれば大きくなるほどコンテンツ一人当たりの値段めっちゃ安くなるよねっていう規模の経済。
それ以外に前回ちょっと話したコーナードリソースっていうオセロの四隅をちゃんと取りましょうねって言われるもの以外に、
あとカウンターポジショニングとプロセスパワーとブランディングっていうものとスイッチングコストっていうこの7つなんですけど、
これ大事なのが結局必要な7つの戦略の武器もタイミングっていうやつがあるわけでしょ。
けんすう
確かに。
尾原
要は離陸する前の最初の力を蓄えるっていうのは何でやるんですかっていうオリジネーションという言い方をするんですけど、
力の源泉を作るための武器っていうのがカウンターポジションとコーナードリソース、この2つ。
じゃあ離陸したらめちゃくちゃ強くなんじゃんっていうのが、売り手が買えてよ、読んで買えてよというネットワーク効果だったり、
売り上げが10倍になったら今まで1億円かけて制作してたのが100万人の時は1人当たり100円だけれども、
これが1000万円になったら10円になっちゃうみたいなスケールの規模の経済。
さらに言えばお客さんがデータをどんどんどんどん貯めていくから他にスイッチできなくなるスイッチングを起こすというのが効いてきて。
さらに言うとこういったものが回り始めた後に何のかのよって持続的な競争を強くしてくれるのが
スタビリティっていう言い方するんですけど、ブランディングとプロセスパワー。
まとめ直すと最初の力の源泉になってくれるカウンターポジショニングとコーナードリソース。
離陸したらめっちゃどんどん強さが増していくぜっていうネットワーク効果と規模の経済とスイッチングコスト。
安定性を増してくれるブランドとプロセスパワーっていうものがあるんですけど、これフル活用するんですよ。
けんすう
なるほど。この順番大事ですね。
競争と提携の重要性
けんすう
確かに。
尾原
まずこの最初の力の源泉を何にしたかっていうと、やっぱりNetflixはストリーミングでもまずはコーナードリソースから確保していこうってするんですね。
そもそもコーナードリソースとして、最初はネットって配信が遅いから、自分たちでボックスを作って、そこにデータを貯めていくことで快適に見れるようにしましょうというストリーミングっていうよりかはダウンロードからの再生方式でやろうっていうことを最初はコーナードリソースとして考えたわけですね。
これはもう完全にNetflixがDVDの配送の時に配送ハブにしましょうとか、郵送のものを封筒サイズで送れるようにしましょうみたいなところの、やっぱ配送っていうところがボトルネックだから、そこをきちんと勝てるようにしましょうっていうのが最初だったんですけど、すごいのが前にちょろっと話したんですけど、1年で諦めるんですよ。
それはなぜでしょう?
けんすう
ネット回線が普通に普及したから。
尾原
いや、というよりは、むしろそれを作ったことで他の家電メーカーの競合につながるから、うち諦めますって言ってROCKっていうサービスにスピンアウトするんですよ。
けんすう
はいはい。
尾原
つまり何かっていうと、自分たちで最初に方式作ってみて、いけるっていうのが確かめられて、このまま突っ走るかって思ったけど、いや、落ちた。
僕たちは、もともとDVDのレンタルの時って、要はソニーとか東芝のDVDレンタルBOXと提携したことによって伸びたわけじゃないですか。
これまずいって言って諦めるんですよ。
けんすう
うーん。
尾原
1年で。
けんすう
はいはい。
尾原
じゃあどこと組んだかっていうと、次生まれたのがこのタイミングで伸びてきたXBOXっていうゲームマシンだったりプレイステーションだったりするわけですね。
けんすう
なるほどなるほど。面白い。
尾原
だからやっぱりこの辺は、たぶん自分たちで開始してみないと分かんなかったと思うんですよ。この辺の感覚っていうのは。
そこをしっかりやるんだけれども、そこを捨てるっていうことができるっていうこともすごいと思うし。
さらに言うと、これ日本にいるとあんまり存在感ないんですけど、このROCKって今も結構主要プレイヤーで残ってるんですよ、アメリカで。
けんすう
なんかね、アメリカでは未だにちょっと大きいですよね。
尾原
だからむしろROCKは単独の企業として、ネットフリックスをコンテンツパートナーとしながら、セットボックスを競合も配信受けるよっていう形で伸びていくので。
けんすう
むしろあれもともとネットフリックスだったんですか?
そうなんです。
それすら知らなかったっす。
尾原
1年ぐらい。だって1年で諦めてスピンアウトさせてるから。
けんすう
なるほどな。Xboxとかプレイステーションの中にネットフリックスのソフトがあって、そこでダウンロードできるようにしたみたいなイメージなんですか?
そうです。
なるほど。
尾原
これの伝統はずっと続いてて、今はテレビのリモコンのめっちゃいい場所にネットフリックスボタンあるじゃないですか。あれと同じなんですよね。
けんすう
メーカーさんと仲良くして、誘導してもらうように組んでいるみたいな。
なるほどな。
尾原
だから今、ネットフリックスとテレビメーカーの間でいくらぐらいお金がやり取りされているかっていうと、おそらく十数億円年間にやり取りされていて。
けんすう
あそこを空け渡すことでリモコンの製作費用がほぼ作るだけで、コストがゼロになるみたいな話は聞いたことありますね。
尾原
そうですね。全体的な契約は1ボタン1リモコンいくらっていう形なのか、総額ぐるっと取引をされていらっしゃるのかわからないですけども、そういう形で普及するためのデバイスっていうところがオシャローの四隅なので、まずそことを組むっていう話だし。
あともう一個大事な話が、リクルート編でも話しましたけど、結局ネット事業に変われば変わるほど、いかに良いユーザーを早く安く仕入れるかっていうのが大事なわけですよね。
そうすると、これのわかりやすい典型例がGoogleとApple、iPhoneの提携とかで。
けんすう
検索窓をGoogleにしましょう。めっちゃお金払いますってやつですね。
尾原
あれいくらだったか知ってます?
けんすう
あれめっちゃ高いんですよね。何兆円みたいな。
尾原
3兆円。
けんすう
3兆円ですよ。
尾原
ちなみにこれ、Appleの年間利益の15%ぐらい占めてるんですよ。
けんすう
Googleからで。
尾原
全部利益じゃないですか。検索窓の場所って。
なので、実はアメリカの中では、株式の公開する会計基準としてTACっていうのがあって。
要は外部のパートナーからユーザーを仕入れるときに、トラフィックを獲得するためのコストはいくらですっていうことを計上しなきゃいけないんですよ。
けんすう
なるほど。
尾原
なぜならばそこって外部に依存してるから、ものすごい販売チャンネルであると同時にものすごいリスクでもあるので。
ちなみにGoogleはTACが売上の10%から15%ぐらい占めてるんですね。
けんすう
なるほど。
ストリーミングの影響
尾原
こういうふうに実はネット時代になっても、むしろそれを表示する端末っていうところが一等値になっていくので。
そうすると、実はネット時代といっても、銀座の一等値にお店を出すみたいな感覚ですよね。
けんすう
そうですよね。あれもそこで売れるかどうかよりも、あそこに出すことがすごい重要みたいなことをよく言いますもんね。出したくても出せない。
尾原
そういうところをきっちりやっていくってことが、コーナードリソースとして大事っていうのは変わらないところなんですね。
けんすう
なるほど。
尾原
その次にもう一個大事なことが、やっぱりカウンターポジショニングで。
これは何かっていうと、要はライバルの嫌がることを頑張ってしましょうって話になるんですよね。
だからさっき言ったように、ヘトヘト競争の中でどうにか生き残ったということはあれ、ブロックバスターからしてみると、最大のライバルブロックバスターはDVDの定額レンタルまではお店にもちゃんと還元されるからいけるけど、
ストリーミングになっちゃうの、お店にお客様すら行かなくなるので、最も嫌なことなわけでしょう。
けんすう
まあそうですよね。手も出せないですよね、従業員がいるので。
尾原
そうなんです。さらに言えば、この当時ライバルとしては日本でも普及しているHuluもこのタイミングに入ってきてるんでしょう。
けんすう
なるほど。
でもHuluは一方で、これどっちかというとテレビ陣営の方々がストリーミングに入ってきた流れなので、コンテンツがテレビの再配信中心だから、やっぱり広告無料モデルでやりたがるんでしょうね。
尾原
なるほどね、確かに。
そうするとやっぱりこのタイミングで言うと、台数がまだ少ないし回線も重たい中で、広告では事業が成り立ちにくい。
尾原
だから皆さんもう忘れてると思いますけど、この当時のやつで言うと、セットトップボックスに広告を別でダウンロードして記憶にためておいて、広告をわざわざ表示することで無料で見れますみたいなことがいけるんじゃないかみたいな夢のモデルで語れるわけですよね。
けんすう
はいはい。
尾原
なんですけれども、やっぱり事業の筋としては広告モデルっていうものはあまりにも合わなすぎたっていうところで、ある意味Netflixが唯一専業としてDVDのレンタル、定額レンタルからストリーミングっていうスムーズな移行ができるけど、
ライバルからするとそれは嫌なことっていうカウンターポジションっていうところがあったから、軌道に乗せるところまで頑張れたって話なんですよね。
Netflixのビジネスモデル
けんすう
なるほどな、ストリーミング専業でできるところがそもそもほとんどなかったってことですね。
尾原
そうですね。
けんすう
でも逆にNetflixもDVDレンタルとストリーミングはかなりカニバルというか、コンフリクトしそうですけど、そこはできたんですね。
尾原
そこはすごい良い指摘で、後で話そうと思ってたんですけども、そもそも最初セット価格にしてたんですよ。
けんすう
なるほどね。
尾原
だからさっき言ったNetflixの最上位のプランだと月額2000円ぐらいなんだけど、この2000円だと18時間まで見れますよというプランで開始して。
その後、さっき言ったようにNetflixの安さ競争に入ってたから、DVDがいっぺんに2000円のプランだと4枚借りれるわけなんですけれども、9ドルだと2枚、5ドルだと1枚というプランでやってたんですが、
なんと5ドルのプランだと月2時間までストリーミング見れると。
けんすう
なるほどね。それ結構刻んでたりしたんですね。
尾原
そうなんです。っていうか、みんなさっきから繰り返して言うけど、この時のネットの配信費用って高いから、そんな無制限にできるもんじゃないんだぞって話なんですよね。
けんすう
まさに。なるほどなあ。これは面白いなあ。
尾原
でも逆に言えば、レンタル定額というビジネスとストリーミングは見放題という観点では変わらなかったから、唯一イノベーションのジレンマがなかったわけですよ。
けんすう
結構ビデオとDVDでDVDだけを撮るとか、そこの都度課金からサブスクにするとか、ストリーミングにするみたいな転換期の一番難しいところを何やかんや上手くやってるのがすごいですね。
尾原
そうなんですよね。この辺は定額レンタルだけに専念できたっていう、専念するプレイヤーがこういうインフラの移行期は得をするっていう場合があるっていうところが戦略的な学びですよね。
けんすう
そうですね。そこでちゃんとカウンターポジションを取って、オセロの四隅を取るっていうのをやってるから次の戦略ができるっていうことなんですね。
尾原
そうなんです。だから一見するとHuluとかはテレビのコンテンツが供給できるよっていうところで成りもろいに入るわけですけど、さっき言ったようにテレビという関係でCMモデルがみたいな話になったりとか。バランスなんですよね、結局は。
けんすう
なるほどな。だから、どこが四隅なのかとか、どこのカウンターを取ればいいのかはすごく難しいですね。
尾原
そうなんです。そこがすごい学びで。でも一方、結局それを間違えてしまったブロックバスターは、結局トータルアクセスで一見すると低額DVDでネットフリックスを圧迫できたって思ったら、逆に自分の首を絞めることになって3年で。わざわざ3年ですからね。
だって2010年って、そこまでまだストリーミングがえげつなく普及しているタイミングでもないわけですよ。
けんすう
そうですよね、本当に。でもHuluもテレビ番組ってすごく貴重なコンテンツがあって、CMで無料で見れるみたいなの作るのって、逆に言うとネットフリックスのカウンターポジションとしてめっちゃ良さそうみたいに思っちゃいますけど、やっぱりネットフリックスの方がすごかったわけですもんね。
尾原
そうですね、だからそこはさっき言った広告モデルっていうものがテレビの再配信から来るっていう、自分たちがコンテンツを確保できた分ビジネスモデルに縛りがあって起こっちゃったっていうパターンで、これの似たようなものとしては、どっかでこれも特集したいんですけども、オークションあるじゃないですか。
日本だとYahoo!オークションがモデルから来るまでは圧倒的な地位なわけなんですけど、実は日本でネットオークション、一番最初に立ち上げたのって楽天オークションなんですよね。でも楽天オークションってまくられるんですよ、Yahoo!オークションに。
それなぜかというと楽天は市場を月額いただいて店舗を出していただいたのに対して、彼らの流れから楽天オークションもやっぱり出品料をいただかないと始められなかったんですよね。もし楽天オークションの方を出品無料に採賞しちゃうと、市場の方が崩れちゃうじゃないですか。
けんすう
そうですね。店舗さんもそっちで売ろっかなーになりますよね。
尾原
なので、孫さんがやったことは簡単ですよね。ということで、初期の頃は楽天オークションを出品無料でやれたので、そうするとどんどん流れていっちゃって、ネットワークエフェクトが回っちゃいましたよね。
典型的なカウンターポジションの例なわけです。
けんすう
なるほどなぁ。孫さん得意なパターンですよね。関連をすごく高くするとか、シンプルで本質的で力強いやつが好きですよね。
尾原
そうなんですよ。でも、Netflixの場合は純粋なスタートアッププレイヤーだったから、逆に言うとカウンターポジションを取れたっていうところができたし。
あともう一つ大事なことは、とはいえネットワークエフェクトを回すためにはコンテンツを出してくれるプレイヤーがコンテンツを出してくれないと困るので。
そこのための準備っていうのは、右を曲折があったもののIPOをして400万人以上いるっていうところの一定量まで足りていたっていうことだったりとか、ユーザーがやっぱりやめないっていうところをプロセスパワーとして丁寧に丁寧に配送がいいですよとかユーザーエクスペリエンスがいいですよってことを積み上げてブランディングも作っていたっていうところから、
コンテンツプロバイダーも提供してくれるようになったので、ネットワークエフェクトが回り始めるっていう話なんですよね。
けんすう
なるほど。でもやっぱりここが一番すごいなと思うのが、普通にDVDレンタルやってたらストリーミングにほぼ負ける未来の方が可能性高かったと思うんですけど、ここでこのタイミングで転換できてるのはやっぱりちょっとここが凄まじいですね。
ユーザーの反発
尾原
そうなんですよね。
逆に言うと彼らからすると、一番最初に言ったように、逃げることで頑張ったっていう話の中で、こっちに勝つのを見出さなかったら、言い方悪いけどDVDの定額だけだと安さ勝負の中で誰も儲からないビジネスになっちゃうよなっていう焦燥感があって。
当時のCEOであるは、ストリーミングでいかに戦略優位性を確立するかっていうことにしかないっていうところまで絞り込まれたっていう話でもあるんですよね。
けんすう
なるほど。じゃあブロックバスターが参入してなかったりしたら、全然変わってたかもしれないですね。
尾原
そうなんですよ。
けんすう
そこまで追い込まれずに、逆にストリーミングのタイミングを逃して他のスタートアップが来ちゃったとかもありそうですね。
尾原
そうなんですよね。
そういう状態で来て、次に起こるのがさっきのセブンパワーの総括をしていくと、結局プロセスパワーとブランディングがあるからコンテンツがゲットできて、ネットワークエフェクトが回り始めると、
もともとの優位である次何見たいっていうリストが次どの動画を見たい。ストリーミングだとどんどん次に見たい動画がDVDで借りるよりもすぐ見れますから、ものすごい強力な力になってきて、ここがスイッチングコストになっていくわけね。
けんすう
そうですね。
特に今と比べて当時は映画ですから、今はNetflixで最新作を見るっていうものになってますけど、このタイミングのストリーミングはまだまだ新作を見た後に旧作も見るかっていうところがポイントだったので、そこが強力なスイッチングバリアになってくるし。
尾原
そうやってユーザーを集めていくと、結局今度は規模の経済が働いてくるので、コンテンツを持っている映画配給元との交渉も楽になってくるし、このタイミングで言うとインディーズの映画配給会社を買収して確保するみたいなことが回り始めるっていうことで、ストリーミングが落ち着いてきますっていう話なんですよね。
けんすう
時期もスマホの普及と回線の強化みたいなので、ちょうど著しく良くなっていく時代に合わせてたので、その意味でもユーザー獲得はどんどん楽になっていくわけですもんね。
尾原
そうなんです。
でも実はまだここで2つの波乱がまだあるんですね。
まだある。
これはちょっと時間過ぎちゃうけど行こうかな。
ストリーミングをやるときに、当たり前ですけど、どっかのタイミングでDVDレンタルを畳むなりなんなりしなきゃいけなくなってくるわけですよ。
けんすう
まあそうですよね。かにばっちゃいますからね。
尾原
そうなんですよ、最終的には。
そうすると結局、2007年で4年間で順当にユーザーが増えてくるんですよね。
そういう中で2011年の夏に、DVDレンタルとストリーミングを今まで一緒で成長させてきたけど、DVDレンタルはストリーミングの値段を分けるって発表するんでしょう。
で、DVDレンタル事業はクイックスターっていう名前で、さっきのロックと一緒でスピンオフするんだっていう感じで。
そしたらネットフリックス100万人会員が減ります。
えー、100万人。
何言ってくれるんだと。まだDVDとストリーミングは一緒の方がいいんじゃいって。
けんすう
だって2011年ですもんね。
みんながTwitterをやり始めたとかそのぐらいですよね、日本で言うと。
尾原
そうすると、わりと僕ら的な感覚、ネットを見るからすると2011年って比較的ネットで見れるようになってるし、
当たり前だけどこのぐらいのタイミングっていうか、正確には2009年ぐらいからネットフリックスも最上級のプランでは無制限で見れるようにしますっていうぐらいインフラはうまく動き始めてたんですよね。
それでもやっぱりまだDVDの方が崩すっていう話になったら、そういうちょっとした暴動というわけじゃないけど、やっぱりユーザー違反も起こっちゃう。
けんすう
なるほどな。未来で考えるとヘルダローはその時から分かってたと思うんですけれども、このタイミングは難しいですよね。
尾原
そうなんですよ。
みたいなことも逆にハードシングスとして抱えながらどうにかこうにかやってったんですよね。
ネットフリックスの戦略
尾原
あともう一個、逆のコーナードリソース、ネガティブなコーナードリソースって話も最後にこれ入れときたくて。
ネットフリックスがもう一個伸びたのは、高速なインターネットを配信するためには高速なインターネットの会社と当時は契約するのがものすごい大事だったんですよね。
アメリカでいうとケーブルテレビ会社さんが高速なインターネットを提供したりとかっていうことをもっぱらやってて。
ここもコーナードリソースになるわけですよ。
つまり、ネットの配信会社からすると、高速プランに入れるとネットフリックスが見やすいですよっていうのは初期の頃すごく嬉しいわけですよね。
なので、当初はこのインターネットの配信事業者と宣伝になるからっていうことで提携しながらやっていくんですけれども。
これが逆に論争を生みます。
あ、覚えてないか。ネットニュートラリティっていう話って覚えてる?
けんすう
いや、僕知らないですね、そもそも。
尾原
そっか、意外と日本だと知られないんだな。
要は、インターネットって無料のインフラじゃん?
だけど、ネットフリックスがバカすかバカすか、動画でデータの高速道路を渋滞で埋めて、あいつらだけに儲かってるのっておかしくない?ってなるんですよ。
けんすう
なるほどね、回線っていうみんなの公共の共有物を一部のユーザーがめっちゃ占めてるっていう感じですね。
尾原
だから、ちょうど2011年ぐらいに、ネットの配信がだんだん主力になってくる中で、もうDVDレンタルやめますぐらいになってくると、今度逆に、今までコーナードリソースとして密月に一緒に育ってきたインターネットプロバイダーさんから、お前は敵だって言われ始めるんですよ。
けんすう
確かに制限しなさいとかそういう話とか一回論争になりましたよね。
尾原
そうなんです、おっしゃる通りです。結局どういうふうになっていったかというと、法律でまず闘争するんですね。
こうやって一時期、もうネットフリックスが使われすぎるから、逆にインターネットの配信事業者の方がネットフリックスだけは配信の幅、他は高速道路5列全部使えるんだけど、ネットフリックスは1列しか使えないからねみたいな形にすることによって、ネットフリックスのアクセスユーザーが増えてくるとめっちゃ遅くなるっていうような現象まで起きたんですけど、
結局最終的にはこれは法律違反であるっていうことになって決着するんですけど、ただ逆にこれを得手としてプラスに転換するんですね、ネットフリックスは。
けんすう
これは法律違反っていうのはプロバイダーがそれ制限しちゃダメですよっていう。
尾原
そうです、ダメですっていう決着になります結局。
なんですけど、ネットフリックスはその他の法律の結論が出る前に、だったらネットフリックスが各ネットフリックスの専用のキャッシュをもうインターネットの配信業者のところに置いてきますよっていう話を提携していくんですよ。
つまり何かっていうと、結局ネットフリックスが混雑してるのって、みんなが人気の動画をいっぺんに見たいからじゃないですか、配信が始まった日とか。
そうすると今までインターネットの配信業者からすると、インターネットの配信が混んでたのってのは、いちいちネットフリックスのサーバーまでみんなが最新作を見に行くというときに、その高速道路を占拠するからなんですよね。
けんすう
だったらインターネット配信事業者のところに1個サーバーを置いておいて、同じ作品を見るんだったら、そこを見るだけでOKだから、インターネットの後ろをこまさずに済みますよっていう、今でいうコンテンツデリバリーネットワークですね。
尾原
はいはいはい。CDNと呼ばれるね。
けんすう
これをネットフリックスは自分でやるんですよ。
尾原
へー。結構すごいですね。
そうなんですよ。で、主要なプロバイダーと提携をしていって、当たり前だけれどもコストはネットフリックスが負担して。
そうすると今までライバル関係だったところが、むしろネットフリックスのコンテンツデリバリーネットワークを装着したプロバイダーの方が、人気作がうちはサクサク見れますよってアピールできるようになるわけですよね。
けんすう
強い。これは面白い。しかも他のストリーミングサービスが出てきても、ネットフリックスだけサクサク見れて、他は遅いみたいなことが起こり得るわけですもんね。
尾原
そうなんです。
こういったものは、今でこそAmazonさんだとか、そういうサーバーをやってるところは当たり前のように提供しているサービスで、今は月学生とか大道に使われたときはそこが使えますよっていうふうにやられてたりするんですけれども、
この当時っていうものはやっぱりそこまで踏み込んで、ある種訴えられるぐらいの関係性になりながら、ネットフリックスは逆にそこを逆手に捉えて、むしろキャッシュで貯めておくところを各配信業者のところに、インターネットサービスプロバイダーさんに置いてきますよということをやることによって、
ネットフリックスだけが人気作品をサクサク見れるってポジションに変えていくことによって、もう一度コーナードリソースに変えていったんですね。
オリジナルコンテンツの制作
けんすう
見事ですね、これは。
尾原
こういうふうに、どうしてもインターネットのサービスってユーザーに対して革新的なことをやるっていうことに思いを置かれがちなんですけれども、いかにこのコーナードリソースみたいなことを丁寧にやり続けるかとか。
それを実施可能にするために、オペレーションをどんどん磨いていくプロセスパワーだったりとか、こういうようなところが大事なんですよっていうところが、今回戦略の型として実はしっかり理解しておくといいよっていう話で、当然件数は7POWERSをもう一回暗証できるよね。
けんすう
あえては言わないですが、完璧に言えますね。
尾原
そうだね、というふうな形が、ストリーミングにおける戦略の型、ソドイというお話なんです。
けんすう
面白い。いっぱい詰まってるんですね、このストリーミング1本だけでも。
尾原
そうなんですよ。というわけで前後編を含めて、だってこれも大延長してるからな。
けんすう
そうですね、いや素晴らしい。
尾原
1時間超話してしまってるっていう話なんですけど。
じゃあ次回はこのストリーミングの中でも。
いよいよ皆さんが知ってるNetflixに変わっていくわけです。つまりオリジナルコンテンツの制作ですね。
けんすう
こっちのイメージの方がみんな強いでしょうね。
尾原
じゃあオリジナルコンテンツになぜ入るのかっていう部分と、やっぱり歴史的な構造理解だったりとか、一部話しましたけど、オリジナルコンテンツでどうやって勝てたのかっていう話に入っていきたいと思います。
けんすう
はい、わかりました。じゃあ次回はオリジナルコンテンツの話です。
というわけで今日はありがとうございました。
尾原
よろしくお願いします。
38:24

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