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おしゃべり本棚 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
グリム兄弟作 楠山雅雄訳
狼と七匹の子供ヤギ 昔あるところにお母さんのヤギがいました
このお母さんヤギには、かわいい子供ヤギが七匹あって、それをかわいがることは、人間のお母さんがその子供をかわいがるのと少しも違ったところはありませんでした。
ある日、お母さんヤギは子供たちの食べ物を取りに森まで出かけて行くので、七匹の子供ヤギを呼んでこう言い聞かせました。
お前たちに言っておくがね、母さんが森へ行ってくる間、気をつけてよくお留守番してね。
決して狼を家へ入れてはならないよ。
あいつはお前たちを残らず丸のまんま、それこそ皮も毛も余さず食べてしまうのだよ。
あの悪者はわからせないとして時々姿を変えてやってくるけれど、なあに、声はしゃがれてガーガー声だし、足は真っ黒だし、すぐに見分けはつくのだからねと言いました。
すると子供ヤギたちは声をそろえて、母さん大丈夫、あたいたちよく気をつけてお留守番しますから、心配しないで行っておいでなさいと言いました。
そこでお母さんヤギは、めえめえと言って安心して出かけて行きました。
やがて間もなく誰か表の扉をトントンと叩くものがありました。
そして、さあ子供たち開けておくれ、お母さんだよ、みんなにいいお土産を持ってきたのだよと呼びました。
でも子供ヤギたちはそれがしゃがれたガーガー声なのですぐに狼だということがわかりました。
そこで、開けてやらない、お母さんじゃないから、お母さんはきれいないい声してるけどお前はしゃがれ声のガーガー声だもの、お前は狼だいと叫びました。
そこで狼は荒物屋の店へ出かけて、大きな薄木を一本買ってきて、それを食べて声をよくしました。
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それからまた戻ってきて戸をたたいて、大きな声で、さあ子供たち開けておくれ、お母さんだよ、みんなにいいものを持ってきたのだよとどなりました。
でも狼は真っ黒な前足を窓のところにかけていたので、子ヤギたちはそれを見つけて、開けてはやらない、うちのお母さんはお前のような真っ黒な足をしていない、お前は狼だいと叫びました。
そこで狼はパン屋の店へ出かけて、つまずいて足を痛めたから練り粉をなすっておくれと言いました。
でパン屋が狼の前足に練った粉をなすってやりますと、今度は粉へ駆けつけていって、おい前足に白い粉をふりかけておくれと言いました。
狼のやつまた誰かだますつもりだな、そう粉屋は思ってぐずぐずしていました。
すると狼は、すぐしないと食っちまうぞとどなりました。
そこで粉屋は怖くなって、狼の前足を白くしてやりました。
まあこういうところが人間のだめなところですね。
さて悪者は三度目に狼のお家の戸口に立って、トントンと戸をたたいてこう言いました。
さあ子供たちや、開けておくれ。お母さんが帰ってきたのだよ。お前たちに森でいいものを見つけてきたのだよ。
すると狼たちは声をそろえて、
先に足をお見せ。うちのお母さんだかどうだか見てやるからと言いました。
そう言われて狼は前足を窓にのせました。
子供ヤギたちがそれを見ますと白かったので、狼の言うことをすっかり信じて戸を開けてしまいました。
ところが入ってきたのは誰だったでしょう。
狼だったではありませんか。
みんなわーっと驚いて震え上がって天然に隠れ場所を探して隠れようとしました。
一人は机の下に飛び込みました。
次は寝床に入り込みました。
三番目はストーブの中に隠れました。
四番目は台所へ逃げました。
五番目は戸棚の中に上がりました。
六番目は洗面台の下に潜り込みました。
そして七番目は柱時計の箱の中に隠れました。
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ところが狼は造作なく一人一人片っ端から捕まえて、ただ一口にアングリーやってしまいました。
ただ大時計の箱の中に隠れた一番小さな子だけは見つからずに済みました。
さて、たらふく食べてお腹がくちくなると、
狼は表へ出て木の陰になって青々としている芝の上に長々と寝そべり、ぐうぐうといびきをかき出しました。
それから間もなくお母さんヤギが森から帰ってきました。
お母さんヤギはその時何を見たでしょう。
表の戸はいっぱいに開き広げてありました。
テーブルも椅子も腰掛けも放り出されていました。
洗面台は粉々に壊れていました。
パジャマも枕もベッドからころげ落ちていました。
お母さんヤギは子供たちを探しましたが一人も見つかりません。
一人一人名前を呼んでも誰も返事をするものがありません。
おしまいに一番下の子の名前まで来て、初めて細い声で
母さん、あたい時計のお箱に隠れているよというのが聞こえました。
お母さんヤギはこの子を引っ張り出してやりました。
そこでこの子の口から初めて狼が来て
他の子供たちがみんな食べられてしまったことを知りました。
その時お母さんヤギはかわいそうな子ヤギたちのことを思い
どんなに泣いて悲しんだかみなさん察してみてください。
やっとのことでお母さんヤギは泣くのをやめて
末っ子ヤギと一緒に外へ出ました。
原っぱまで来ると狼はやはり木の陰に長々と寝そべって
それこそ木の枝も葉もブルブル震い動くほどの高いいびきを立てていました。
ところでお母さんヤギが狼の様子を遠くからよく見ますと
そのふくれ返ったお腹の中で何かもそもそ動いているのが見つかりました。
まあありがたい。狼のやつうちの子供たちを夕食にして丸のまんま飲み込んだから
きっとみんなまだ生きているのだよ。
こう思ってお母さんヤギはさっそく家へ駆け込んで行って
ハサミと針と糸を取ってきました。
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それからお母さんヤギはこの狼のどてっぱらをちょきんとハサミで切りました。
するともうそこに一匹の子供ヤギがぴょこんと頭を出しました。
お母さんは喜んでまたジョキジョキとお腹を切って行きますと
一人二人でとうとう六匹の子供ヤギが残らず飛び出しました。
みんな無事で誰一人けが一つしていませんでした。
なぜならこの狼はむやみにガツガツとしていて
ただもうぐっくぐっくそのまま子ヤギたちを噛まずに
のどの奥の方へ放り込んでいたからです。
まあ嬉しいこと。子供たちはお母さんヤギにしっかりと抱きつきました。
それからお嫁さんをもらう式の日の舌手屋のように
ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ね回りました。
でもお母さんヤギは子供たちを止めて
さあみんなそこらでゴロ太子を拾っておいで
このバチ当たりな狼が寝ている間にお腹に詰めてやるのだからと言いました。
そこで子供たちは一目散に駆け出していって
えんやらえんやらゴロ太子を集めて引きずってきました。
そうしてそれを狼のお腹の中に詰め込めるだけ詰め込んで
詰め終わるとお母さんヤギがちょちょっと手走国
元のように縫い付けてしまいました。
それがいかにも早かったので狼はまるで気がつかず
こそりと目を覚まして起きてしまうこともありませんでした。
しばらくして寝たいだけ寝た狼はやっとのことで立ち上がりました。
何しろ胃の中は石でいっぱいです。
喉がカラカラに渇いてたまらないので
井戸のところへ行って水を飲もうとしました。
ところが体を動かしかけますと
お腹の中でゴロ太子がぶつかりあって
ガラガラゴロゴロ言いました。
ガラガラゴロゴロ何がなる。そりゃどこでなる。
腹でなる。六匹の小ヤギの鳴く声か。
いやそうじゃない。ゴロ太子。
狼はこう歌いました。
さてやっとこすっとこ井戸のところまで来た狼は
水を汲もうと井戸を覗き込みました。
するとお腹の石の重みに引かれて
狼は前のめりになり
いやおなしに水の中に落ちてしまいました。
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この様子を遠くで見ていた七匹の子供ヤギは
みんな駆け寄ってきて
狼をやっつけた。狼をやっつけた。と叫びました。
そしてお母さんヤギと手をつなぎながら
大喜びで井戸の周りを踊り回りました。
落語家の立川翔子です。
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