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2021-09-27 38:58

ぶたさん文庫【赤いカブトムシ】後編7〜12章

📻ながら聴きラジオ「キコアベ」
Bさんの朗読コーナー「ぶたさん文庫」から
江戸川乱歩作「赤いカブトムシ」全12章の後編、7〜12章をまとめました。
📖朗読好きの方、小学生の読み聞かせ、暇つぶしにどうぞ。

楽曲提供:MusMus、OtoLogic

#キコアベ #ながら聴き #はじめまして #朗読 #まとめ聴き #読書 #ぶたさん文庫 #少年探偵団 #江戸川乱歩 #青空文庫 #赤いカブトムシ
00:08
赤いカブトムシ 江戸川乱歩
5月25日午後3時20分、一本杉のてっぺんから入れ、
恐ろしい番人に注意せよ!という手紙の通りに、
小林団長とゆう子ちゃんと木村君と井上君と野郎ちゃんの5人が、
世田谷区の一本杉の原っぱへやってきました。
木登りの名人の野郎ちゃんが、高い杉の木のてっぺんへ登りましたが、
入る穴なんてどこにもありません。
野郎ちゃんはしばらく辺りを見回していましたが、
何を思ったのか原っぱに長く横たわっている杉の木の影を指さしながら叫びました。
「あそこだよ。あそこに入り口があるんだよ。」
それを聞くと小林団長も、はっとそこへ気がつきました。
「ああ、そうだ。てっぺんというのは杉の木のてっぺんの影のところなんだ。」
野郎ちゃんが木から降りるのを待って、みんなで杉の木の影の先っぽまで行ってみました。
その辺には竹の高い草が茂っています。
小林君はこの草の中へ踏み込んで行って探していましたが、やがて、
「ああ、ここに掘らねがある。ここが入り口に違いないよー。」
とみんなを呼び集めました。
それは差し渡し60センチぐらいの狭い穴でした。
中は真っ暗ですから、井上君と木村君が用意の懐中電灯をつけ、
井上君が先になって穴の中へ這い込んで行きました。
狭いところは3メートルほどで終わり、
にわかに穴が広くなって下の方へ石段がついています。
もう立って歩けるのです。
石段を降りると正面に大きな鉄の扉が閉まっています。
魔法博士の手紙には恐ろしい番人に注意せよと書いてありました。
きっとその恐ろしい奴が扉の向こうに待ち構えているのだろうと思うと、
みんな胸がドキドキしてきました。
でも、ここまで来て引き返すわけにはいきません。
井上君は扉の取っ手をつかんで押してみました。
すると、鍵もかけてないらしく、鉄の扉は不気味な音を立てて向こうへ開きました。
03:06
懐中電灯でその中を照らしてみましたが、何にもありません。
ただ真っ暗なホラ穴がずっと奥の方へ続いているばかりです。
5人は井上君を先に立てて、おずおずとその暗闇の中へ入っていきました。
臆病者の野郎ちゃんはブルブル震えながら小林団長についていきました。
それに、ゆうこちゃんは女の子ですから守ってやらなければなりません。
小林君は両手で野郎ちゃんとゆうこちゃんの手を引いて進んでいきます。
少し行くとホラ穴の曲り角へ来ました。
そこをひょいと曲がると、みんなは、「はっ!」と言ったまま立ちつくんでしまいました。
すぐ目の前に途方もなく大きな化け物がうずくまっていたからです。
その顔は黄色で、真っ黒な太いシマがついていました。
洗面器ほどの大きな目が、闇の中で光っていました。
ステッキを束にしたような太いヒゲの生えた大きな口、
その口から2本の白い牙がニューッと突き出ています。
虎を100倍も大きくしたような化け物です。
その恐ろしい顔がホラ穴いっぱいになって顎が地面についているのです。
どこからか生臭い強い風が吹きつけてきました。
ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
かわいい子の美味しそうだ、ご馳走だ。
今、食べてやるからだ。
ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
お化けの虎がそんなことを言って不気味に笑いました。
その声がホラ穴にこだまして何とも言えない恐ろしさです。
そしておばけは2メートルもあるような大きな口をガーッと開きました。
5人は逃げようとしても磁石で引きつけられたようにどうしても逃げることができません。
そしていつの間にかおばけの虎の口の前まで吸い寄せられ、次々と口の中へ飲まれてしまいました。
口の中には真っ赤な大きな舌がうごめいていました。
06:01
5人はその舌の上に転がったまま気を失ったようになっていました。
それにしても地の底にどうしてこんな大きな化け物が住んでいるのでしょう。
化け物に食べられた子供たちはこれから一体どうなるのでしょうか。
小林君と木村君とユーコちゃんと井上君とノロちゃんの子には
ルビーのカブトムシを取り返すために、世田谷区の寂しい原っぱの不思議なホラーなへ入っていきました。
そのホラーなの中には普通の虎の100倍もあるおばけの虎が寝そべっていて、大きな口へ5人を飲み込んでしまいました。
ウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
しばらくして気が付いてみると
まだ虎の舌の上に転がったままで
胃袋の方へ呑み込まれていく様子もありません
井上君はしっかり握りしめていた懐中電燈で
おばけの喉の奥を照らしてみました
すると
この虎の喉の奥には
食堂も胃袋も何もないことがわかりました 首だけの虎だったのです
もちろん生きた虎ではなくて 機械仕掛けの作り物です
吸い寄せられたと思ったのはどこか後ろの方から大きな扇風機のようなもので吹きつけられたのでしょう
井上くんは虎の口から外へ出ようとしましたが もう口は閉じられていてどうしても開けることができません
仕方がないので小林くんと相談して奥の方へ行ってみることにしました 虎の喉の奥は今までと同じコンクリートのホラーなです
懐中電灯で照らしながらそこを進んでいきますと ばったり行き止まりになってしまいました
09:00
ああ ここにドアがあるよ
一人がやっと通れるほどの小さいドアです 井上くんがそのドアの取っ手をつかんで引っ張ると何なく開きました
まるで金庫の扉のようにひどく分厚い頑丈な鉄のドアです 5人はその中へ入りました
すると不思議なことにその重いドアがスーッと一人でに閉まってしまったではありませんか
井上くんは驚いてもう一度開けようとしましたが 今度はいくら押してもびくともしません
それにドアの内側にはとっても何もなくすべすべした鉄の板です
おや ここは
どこにも出口のない丸い部屋だよ それは畳2畳ぐらいの井戸の底のような丸い部屋でした
5人はコンクリートの筒の中に閉じ込められてしまったのです 懐中電灯で天井を照らしてみると丸い筒はずっと上の方へ続いています
まったく井戸の底と同じです
おや あの音は
なんだろう
ノロちゃんが怯えた声を出しました 本当に変な音がしています
遠くでモーターが回っているような音です その時懐中電灯で天井を照らしていた井上くんが
ああ大変だ と叫んだのでみんなびっくりしてその方を見上げました
実に恐ろしいことが起こっていたのです ご覧なさい
天井から鉄のフタのようなものがじりじりと降りてくるではありませんか 丸い筒の内側へぴったりはまった熱い鉄のフタです
それが 静かに降りてくるのです
鉄のフタはモーターの力で少しの狂いもなく降りてきます
もう手を伸ばせば届くところまで降りてきました みんな手を伸ばして力を合わせてあれを支えるんだ
でないと僕たち押しつぶされてしまうよ
小林くんはそう言ってまず自分が両手を挙げました みんなもその真似をして両手を挙げて鉄のフタを押し戻そうとしました
しかし それは非常に重い鉄の塊らしく
12:01
5人の力ではとても支えきれません じりじりじりじりと降りてくるのです
それにつれて支えている手がだんだん下がりとうとう鉄のフタはみんなの頭にくっつくほどになりました
もうしゃがむ他はありません その次には座ってしまいました
それでもまだ鉄のフタは降りてくるのです もう座っていることもできないようになり
みんなは仰向けに寝転んで両手と両足で支えようとしましたが やっぱりダメです
何百キロという重さの鉄が寝ている顔のすぐそばまで降りてきました
ユウコちゃんは泣き出しました ノルちゃんも泣き出しました
助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ
井上くんと木村くんが悲しい声で叫びました 小林くんさえ泣き出したくなるほどでした
ああぁぁぁぁ 五人は一体どうなるのでしょう
少年探偵団の小林団長と団員の木村君とゆう子ちゃんと井上君と野郎ちゃんの5人が
魔法博士の暗号を解いて世田谷区の外れの寂しい原っぱにある掘ら穴へ入っていくと
コンクリートの丸い部屋に閉じ込められ上から重い鉄の蓋がじりじりと下がってきました
鉄の蓋には隙間がないからそのまま下がってきたら大変です
みんな押しつぶされて死んでしまうに決まっているのです 臆病者の野郎ちゃんや女の子のゆう子ちゃんはわーわーと泣き出してしまいました
しかし 団長の小林君はしっかりしていました
忙しく頭を働かせてどうしたらみんなが助かるかということを一生懸命に考えました
魔法博士は人殺しなんかするはずがない こんな恐ろしい目に慌て僕たちの勇気と知恵を試しているんだ
それなら知恵を働かせたらどこかに逃げ道があるのかもしれません そこで小林君は懐中電灯を持ったまま
丸い部屋の周りをぐるっと這い回りコンクリートの壁を調べてみました すると
コンクリートの壁に60センチ四方ほどの四角な切れ目がついているのを見つけました これが秘密の隠し所かもしれないぞ
力いっぱい押してみましたがビクともしません どこかにこれを開く仕掛けがあるに違いない
15:05
小林君は素早くその辺を見回しました 四角な切れ目から少し離れた壁の上の方にコンクリートが小さく膨らんだところがあります
よく調べてみるとそのぼっちはコンクリート色に塗った金物であることがわかりました ああそうだ
鉄の蓋が下まで降りたら僕たちが死んでしまうから下まで降りないうちに逃げ出す 仕掛けになっているのった
鉄の蓋がこの墓地のところを通ると墓地が押される そうすると秘密の戸が外へ開くようになっているのだ
小林君はとっさにそこへ気がつきました それなら手で押したって開くかもしれないぞ
そこで墓地に親指を当てその上にもう一方の手を重ねて力いっぱい押してみました 墓地はなかなか動きません
大変な力がいるのです 小林君は体中汗びっしょりになりました
でも我慢をしてうん押し続けていますとカタンという音がして 四角な切れ目がスーッと向こうへ開きました
小林君の知恵と勇気が成功したのです そこは人間一人がやっと張って通れるほどの真っ暗な穴でした
小林君はみんなを呼んでその穴へ這い込みました 気味が悪いけれどもじっとしていたら鉄の蓋に押しつぶされてしまうだけですから
この穴へ逃げる他はないのです その真っ暗で窮屈な穴は10メートルも続いていました
やがてあたりが急に広くなりました 外へ出たのでしょうか
いやそうではありません まだ真っ暗です
やはり地の底の一室なのです 立ち上がって懐中電灯で照らしてみますとそれは20畳もあるようなコンクリートの部屋でした
みんながその部屋に入った時どこからかギョッとするような声が響いてきました
関心関心 とうとう危ないところを抜け出したね
だが まだこれでおしまいじゃないよ
わしの手紙には恐ろしい番人に注意せよと書いてあった
第一は大トラ 第二は鉄の蓋
さて 第三の番人は何だろうねぇ
18:01
おしまいほど恐ろしい奴が控えているからねぇ 用心するがいいよ
魔法博士の声です どこから聞こえてくるのかわかりません
きっと天井の隅にラウドスピーカーでも仕掛けてあるのでしょう 5人は一塊になってお互いの体を抱き合ってじっとしていました
ノロちゃんの体がガタガタ震えているのがよくわかります あれなんだろう何か動いているよ
木村君が向こうの床を指差して叫びました 懐中電灯の光がさっとその方を照らします
するとそこに なんだか気味の悪いことが起こっていました
地の底から妙なものがムクムクと現れてきたのです 丸い頭のようなものが出てきました
それが みるみる大きくなります
穴も何もないコンクリートの床からムクムクと上がってくるのです 子供くらいの大きさになりました
大人くらいになりました 大人の倍になりました
大人の3倍になりました 大きな頭の真っ青な体ののっぺらぼうな怪物です
それが キリもなく大きくなっていくのです
卵に目と口をつけたようなおかしな奴です それが見る間にだんだん大きくなり大人の3倍もあるような大乳童になってしまいました
そして
と雷のような笑い声が聞こえました みんなは思わず元来た方へ逃げ出しましたが
狭い入り口に這い込もうとしてふと後ろを見ますとおや あの怪物はどこへ行ったのか影も形もなくなっていました
懐中電灯でよく調べてみましたが部屋は全く空っぽで何もないのです 四方の壁は硬いコンクリートでどこにも出口はありません
みんなはいよいよ気味が悪くなってきました 変だなぁ
あいつ煙のように消えてしまったよ
野郎ちゃんが鈍狂な声で言いました あーほらなんか動いてる
またしても地面から不気味なものが湧き出してきました 真っ青のものですそれが顔から肩腹腰と競り出して
21:01
大人ぐらいの大きさになりました はぁ
正道の魔人だ 小林君が叫びました
ずっと前に少年探偵団が戦ったあの恐ろしい正道の魔人とそっくりなのです 正道でできたような青いやつです
耳まで下げた口でニヤニヤ笑っています それがみるみる大きくなってやっぱり大人の
3倍ほどになりました 頭が天井に仕えています
歯車の音がします 正道の魔人の中に歯車が仕掛けてあるのでしょうか
ヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒーヒー
チンピラども よく来たなぁ
君たちの探していた赤いカブトムシはこのわしが持っている
ほら ここにあるよ
真っ青な巨人は恐ろしい声でそう言うと耳まで下げた口をパックリ開けました 三日月型の真っ黒なホラーなのような口です
その口からペロペロと赤い舌を出しました その舌の上に真っ赤なカブトムシが乗っているではありませんか
正道の魔人は口の中にルビーのカブトムシを隠していたのです 少年たちはそれを見ると思わずパッと叫びました
しかし相手は恐ろしい怪物です 取り返すことはとてもできそうにありません
これが欲しくないのかね? 臆病なチンピラどもだなぁ
悔しかったらわしの顔まで登ってきてみろ そしてわしの口の中からこれを取り出せばいいのだ
ヒーヒーヒーヒーヒーヒー その勇気が君たちにあるかね?
正道の魔人は少年たちをバカにしたように大きな体を揺すって笑うのでした 「ちくしょう!みんな来たまえ!」
お父さんから剣道を習っている井上一郎君はそう叫ぶと いきなり怪物の右の足にしがみついていきました
相手は大人の3倍もある巨人です まるでこれはスモートリの足に赤ん坊がしがみついているようです
24:02
その時 恐ろしい音がしてあたりがパッと明るくなりました
闇に慣れたみんなの目には眩しくて目を開けていられないほどの明るさです 一体何事が起こったのでしょう
やっと目を開いてみますと不思議不思議 地下室の天井がなくなっているではありませんか
天井が機械仕掛けで両方へ開くようになっていたのです 上には青空が見えています
太陽の光がさんさんとあたりに輝いています
「はっ!大変だ!井上君が!」 小林君がびっくりして叫びました
本当に大変なことが起こっていたのです ご覧なさい
正道の魔人の体がすーっと宙に浮いたかと思うと そのままふわふわ空へ舞い上がっています
足にしがみついた井上君も一緒に連れたままです これも魔法博士の魔法でしょうか
それにしてもこれから一体どんなことが起こるのでしょう
地下室の天井が大きく開いて大人の3倍もある正道の魔人がふわふわと宙に浮き そのまま空の方へ舞い上がっていきました
魔人の足にしがみついていた井上一郎君も一緒に空へ舞い上がっていくのです
「おーい!井上君!手を離すよ!そして下へ飛び降りるんだ!」
下から小林君が大声で叫びました 魔人の足は地下室の床からもう3メートルも浮き上がっていましたが
井上君は思い切って手を離しパッと飛び降りました そしてコンクリートの床に尻餅をついて顔をしかめています
「あいつ!赤いカブトムシを口に入れたまま飛んでいってしまったよ!早く追っかけなきゃ!よし!縄端子だ!」
小林君はそう叫ぶとお腹のシャツの下に巻きつけていた丈夫な絹紐の縄端子をスルスルと解いて
その一方の端についている鉄の鍵を空いた天井へ投げ上げました 何度もしくじった後でやっとその鍵が天井の穴の縁に引っかかったのです
少年探偵団の縄端子は1本の絹紐です それに30センチごとに大きな結び玉がついていてそこへ足の指をかけて登るのです
「じゃあ僕が先に登るからみんな後から来るんだよ!」 小林君はそう言って絹紐の縄端子をぐんぐん登っていくのでした
27:10
その後からみんな登りました 結子ちゃんは女の子ですから井上君たちが上から手を伸ばして引き上げてあげました
穴の外へ出るとそこは草ぼうぼうの腹っ端でした 最初に登った小林君が向こうへ走っていく姿が小さく見えます
一体どこへ行こうとするのでしょう 空を見上げると青銅の魔人は風船のように高く高く飛んでいきます
わーよく飛ぶねー もうあんなに小さくなっちゃったー
野郎ちゃんが叫びました あとでわかったのですが青銅の魔人は厚いビニールでできていて中に軽いガスを入れたものでした
つまり風船だったのです 地下室の床に小さな穴が開いていてその下にまた小部屋があったのです
そこに魔法博士が隠れていて穴からビニールの魔人を床の上に押し出しながら ポンプでガスを吹き込んだのです
ガスが入るに従ってビニールの魔人は膨れ上がり 姉妹には大人の3倍もある巨人になってしまったのでした
青銅の魔人が物を言ったのは床の穴の下から魔法博士が声を変えて喋っていたのです 魔人が口を開いたのは顎に細い糸がついていてそれを下から引っ張ると口が開き
糸を離すと口が閉まるようになっていたのです 赤いカブトムシは下にくくりつけてあったのでしょう
魔人が出る前に現れた卵のお化けみたいなものもやっぱりビニールでできていて 一度ガスを入れて膨らまし
みんなが逃げ出している間に急にそのガスを抜いたのでビニールはペチャンコになり 床の穴の下へ隠れてしまったのです
地下室が暗いので小林君たちはその小さな穴の仕掛けがよく見えなかったのでした 空の青銅の魔人はだんだん姿を小さくしながら東の方へ飛んでいきます
東の方へ風が吹いているのでしょう 魔人は赤いカブトムシを口に入れたままその風に送られてどことも知れず飛び去っていきます
もう見えなくなってしまった 木村君が叫びました
その時原っぱの向こうから小林君が駆け戻ってくるのが見えました 小林さーんどこへ行ってたの
30:00
あいつは赤いカブトムシを口に入れたまま空へ登ってもう見えなくなってしまったわよ
りゅうこちゃんが呼びかけますとみんなのそばへ駆け寄ってきた小林君が息をはずませて答えました
秋先生に電話をかけたんだよ 秋先生に青銅の魔人のことを知らせたらね先生はすぐに新聞社へ電話してから自動車であるところへ飛んでいってくださったんだよ
そして今に向こうの空から味方が飛んでくるんだよ 小林君が東京の街の方の空を指差しました
一体空から何がやってくるのでしょうか 30分余りも待ったでしょうか
もう夕暮れ近い向こうの空にポツンと黒い点のようなものが現れました ああきたきたあれだよ
小林君が嬉しそうに言いました 点のようなものはだんだん大きくなってこちらへ近づいてきます
それは 1台のヘリコプターでした
皆さん少年探偵団の味方というのはこのヘリコプターだったのです 少年探偵団の応援に行ってきたヘリコプターは強い風を巻き起こしながら
原っ端の真ん中へ着陸しました あっ
明石先生だ 小林団長が叫んでその方へ駆け出しました
ヘリコプターの透き通った操縦室の扉が開いて明石探偵が降りてきました 名探偵は飛行機でもヘリコプターでも操縦できるのです
明石探偵は小林君の電話を聞くと急いで新聞社と打ち合わせ 新聞社のヘリコプターを自分で操縦して飛んできたのです
みんなは明石探偵の周りを取り囲んで地下室で恐ろしい目にあったことを口々に話すの でした
よしそれじゃあこのヘリコプターで聖堂の魔人を追いかけるんだ 明石探偵はみんなに指図をしました
小林君と井上君と2人だけ僕と一緒に乗りたまえ それ以上は乗れない
残った人はみんな家へ帰って待っていたまえ きっと聖堂の魔人を捕らえてみせるよそして
赤いカブトムシを取り返してあげるよ 明石探偵と小林君井上君の2人がヘリコプターに乗り込みました
ヘリコプターはまた恐ろしい風を起こして飛び上がっていきます 腹っ端に残ったノロちゃんと木村君という子ちゃんは手を振ってそれを見送りました
小林君と井上君は初めてヘリコプターに乗ったのです 宇宙旅行にでも出かけるような気持ちでした
33:07
ヘリコプターは高い空を聖堂の魔人が飛び去った東の方へ進んでいきます
振り向くと西の空は真っ赤な夕焼けでした やがて日が暮れるのです
その時の用意に操縦室には小型のサーチライトが備え付けてあります 聖堂の魔人は風に運ばれていったのですから風の吹く方へ追いかければ良いのです
こちらには風の他にプロペラの力があります きっと追いつくことができるでしょう
やがて夕焼けも消えみるみる辺りが暗くなってきました 空には一面に星が瞬き始めました
地上には田舎の街の伝統がこれも星のようにちらほら見えています 上にも星下にも星
本当に宇宙旅行です 先生あそこに
なんとか飛んでいますよ 小林君の叫び声にパッとサーチライトが展示られました
その光の届かないほど向こうの空になんだか黒っぽいものがふわふわと漂っています ヘリコプターはその方へ進路を向けました
やっぱりそうだ人間の形をしている 聖堂の魔人ですよ
やがてそれがサーチライトの光の中へ入ってきました 確かに聖堂の魔人の風船です
小林君これであいつの体を打つんだ 今にあいつの次横を通るからねその時
ドアを少し開けて右手を出して打つんだ
明智探偵はそう言って小林君にピストルを渡しました 小林君は探偵助手ですからピストルの打ち方は知っています
明智探偵はヘリコプターをうまく操縦して聖堂の魔人のすぐ横に近づき 速度を落として並んで飛ぶようにしました
小林君は言われた通りドアの隙間から手を出して 魔人の体にピストルを発射しました
すぐ目の前をふわふわと飛んでいた魔人がグラッと揺れました ピストルの弾が命中したのです続いて2発3発
そのために魔人の風船はグラッグラッと揺れるのです そして弾の穴からシューッとガスが抜けていくのです
よしそれでいい 今度はヘリコプターであいつを押さえつけるんだ
明智探偵はヘリコプターを魔人の前に持って行ってそのままグッと高度を下げました すると
それに押されて魔人は横倒しになりヘリコプターの底にぴったりくっついてしまいました よし
36:06
このままでどっかの原っぱへ着陸しよう もう逃がしくないよ
スワーチライトを下へ向けるとヘゴロな場所を見つけて 探偵はグングンヘリコプターを下げました
そして真っ暗な畑の中へ着陸したのです 3人はヘリコプターから飛び出しました
そして懐中電灯を照らして機体の下を覗きました ビニールの魔人の風船はガスが抜け
ペチャンコになってそこに引っかかっていました 引きずり出して口の中を調べますと下の上に赤いルビーのカブトムシがちゃんとくっついて
いたではありませんか とうとう取り戻すことができたのです
あくる日明智探偵事務所の小林君のところへ電話がかかってきました 魔法博士からでした
君たちの勝ちだよ ルビーは君たちのものだ
いろいろ苦しめてすまなかったねー だが
あれは君たちの知恵と勇気を試すためだったのだよ 少年探偵団
おめでとう 明智先生によろしく
小林君は受話器を置くと横に立って聞いていた 明智先生と顔を見合わせてにっこり笑うのでした
赤いカブトムシ出演 小林団長
福山雅治 木村くんスネ夫
ゆうこちゃん 田中牧子
井上くん デブな柔道家
野郎ちゃん ギルバートクレープのレオナルドディカプリオ
みどりちゃんさとこちゃんさゆりちゃん ノッポチビデブのキャンディーズ
明智探偵 安倍晋三前首相
友情出演 聖堂の魔人
綾野康二イルポンヌクアトロバッジーナ 魔法博士
麻生太郎 読み手 b
編集 a 作
江戸川乱歩
38:58

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