2025-11-09 18:26

#1624. known の2音節発音に思いをめぐらせて

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サマリー

ニュージーランドのダニーデンにあるオタゴ第一教会について話し、スコットランド移民がこの教会を設立した歴史を振り返っています。また、ニュージーランド英語における二音節発音の特徴や、その背景にある古英語との関係について考察しています。このエピソードでは、英語の二音節発音の歴史とその変化について探求されています。特に、ニュージーランドの方言における二音節発音の継続と、その背景にある言語の歴史が語られています。

ダニーデンの教会
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語詩ブログの管理者、英語のなぜに答える初めての英語詩の著者、そして6月18日に研究者から刊行された英語語源ハンドブックの著者のホッタリュウイチです。
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ハッシュタグひらがな6文字で井上なぜとしてご意見やご感想をお寄せください。 特設ホームページも概要欄のリンクからどうぞ。
英語の語源がミニつくラジオヘルディオ、英語詩王チャノマニをもとに英語の歴史の面白さを伝え、
裾野を広げるべく毎朝6時に配信しています。 本日は11月9日日曜日です。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今日もニュージーランドはダニーデンよりお届けしておりますが、
今日の話題はニュージーランド英語とも関連するこんな歴史の話題です。
ノーンの二音節発音に思いをめぐらせてです。
どうぞお聞きください。
今私はニュージーランドは南島の南部にあるダニーデンという街に来ています。
その市内、ほぼど真ん中といっていいところにあるんですけれども、
First Church of Otagoと呼ばれる教会があります。
ダニーデンを含むこの地域、オタゴ地方というふうに呼んでいるんですが、
ここに作られたFirst Church、最初の教会ということなんですね。
ここはダニーデンがスコットランド移民たちによって設立された街の中に作られたスコットランド系の、
Scottish Free Church of Scotland、スコットランドの自由教会として建てられたものです。
今その教会の芝生のベンチで仕掛けながら教会を眺めつつこの収録をしているところです。
日中は教会の敷地全体が開放されておりまして、
もう本当に市の中心部なので道路、車の音も聞こえるかもしれませんが、
そんなど真ん中にありつつ比較的人は少なくひっそりしているという、
ちょっとあまりない感じの教会だなというふうに思っているんですけれども、
いわゆる大聖堂というほどのところではなく、
先頭もそれほど大きいわけではありません。
今本当にその足元にいるのでちょっと見上げながらという感じではありますが、
全体としてものすごく高いわけではないんですが、
この市の中心部が盛り上がっているところなんですね。
そこに立っているので、市の中心からちょっと離れたところからは大体見えると、
異様を眺めることができるといったふうなんですね。
この教会を立てたのはスコットランド移民の選挙団たちといいますか、
主だった牧師たちですね。
スコットランド自由教会の牧師たちなんですが、
その中のリーダー閣と言ってよいのが、
昨日の配信でも名前を出しました。
トマス・バーンズという人なんですね。
かのスコットランドの大詩人、ロバート・バーンズの老いっ子です。
ニュージーランドの地にやってきて、とりわけこのオタゴダニデンにやってきて、
熱心に教会活動、そして教育活動も展開したということですね。
そしてオタゴ大学の初代学長にもなった人ということで極めて影響力のある人なんですが、
その宗教的教育的情熱でもってこの教会も立てたんだろうなぁと思いを馳せているところなんですね。
スコットランド移民の影響
さてそのニュージーランドに渡ってきたスコットランド移民たち、
もちろんその中にはイングランド植民者であるとかですね、
アイルランド系の植民者とかいろいろ混じってはいたと思うんですが、
このダニーデンについては主にスコットランド系が最初期の移民団を形成していたというところで、
当時の、つまりざっと200年ほど前ですかね、のスコットランド方言を携えて、
18,000キロ離れた地球の裏側、このダニーデンにまでやってきたんだろうなと想像してみるわけですよね。
一方で現代のニュージーランドの英語の特徴などを今学んでいる最中なんですけれども、
ちょっと面白い発音の癖というのがあるんですね。
これはニュージーランドの英語は、みんながみんなということでもないかと思うんですが、
一つニュージーランド英語の特徴として指摘されることが多い特徴なんですね。
それが今日の本題なんですけれども、
know、知っているという動詞の過去分詞は、know new knownのこのknownっていうことですね。
k-n-o-w-n、knownというふうに一音節で発音されます。
他に似たようなものとして、throw、投げるもthrow through thrownということで、thrownと一音節で発音されます。
他にもう一つ、grow、成長するをあげておきましょうか。
grow, grew, grown、これも過去分詞の形は一音節ということですね。
ニュージーランド英語では特徴的にこの単語ですね、この3つ挙げた過去分詞とその仲間たち、他にもあると思うんですけれども、
これが二音節で発音されるというんですね。
つまりですね、knownではなくknow when、know whenということですね。
それからthrownではなくthrow when、throw when、そしてgrownではなくgrow when、grow whenというふうに二音節かけてこの単語を発音するということが特徴的として本には記述されております。
耳をすませていてですね、それが聞こえてくるかというのは待っているんですけれども、待っているとなかなかやってこないということでですね、
気にしつつ、あまり気にしないようにしつつですね、ニュージーランド発音を聞いていこうと思っているんですけれども、そういう特徴があるということなんですね。
これはですね、英語史研究をしていると、これもたまらなくエキサイティングなんですね。
なぜかというと、古英語ではいずれも二音節で発音されていたからなんです。
つまりですね、1000年以上の間、二音節発音がニュージーランド英語には残されているということなんですよ。
これニュージーランド英語だけの特徴ではなく、例えば本場のイギリスの英語でもですね、非標準的な発音としては二音節発音、まあまあよく聞かれるんですね、現代でも。
ということで、もちろんニュージーランドだけを取り立ててですね、述べるということではないんですが、コンテクストがニュージーランドなんで、そこに引き付けて今お話ししているという状態なんですね。
世界のいろいろな方言でですね、二音節発音あり得ると思うんですね。
ニュージーランド英語の特徴
これはですね、古英語、1000年前の発音、少し覗いてみたいと思うんですけれども、
knowですね、これ知っているお代表に挙げたいと思うんですが、これと先ほどのthrow、growも合わせてですね、実は強変化の第7類というふうに分類されている動詞群なんです。
強変化というのは、ざっくりと言えば、イレギュラー、不規則動詞です。
そしてこのknowの類はですね、どのように活用したかと言いますと、現代だったら、know, new, knownというふうに、先ほど読み上げたように、
現在形、あるいは現形、過去形、過去分詞というふうに3つ重ねてですね、唱えながら覚えるということを我々やるわけなんですけれども、
古英語ではですね、過去形に2系列ありまして、そうするとですね、全体、読み上げたり唱えたりするとですね、4つになるんですよ。
knowの場合、最初にkがありますよね。で、あれが古英語ではcと書かれていて、きちんとkで発音されたんですね。
さあ、それでは、いわゆる現形、古英語の文法では不定詞って言うんですけれども、不定詞、第1過去、第2過去、過去分詞というこの4つで唱えてみたいと思います。
くなわん、くねおう、くねおわん、くなわん。
ですね。 もう一度いきます。
くなわん、くねおう、くねおわん、くなわん。
4つ目のくなわんに注目です。 これが現代英語のknownになっていくわけなんですけれども、
発音を聞いてお分かりの通り、古英語では2音節なんですね。くなわんとなります。
さあ、これがいくつか音変化は遂げるんですけれども、次の中英語の時代になりますと、まだ中英語ではですね、くの音、kで表せられるような音がですね、まだはっきり残っていたと思うんですよね。
近代にかけてこのくがなくなって、今風のknownに近づいてくるんですけれども、このくの後の部分ですね、
二音節発音の歴史
特に過去文史ではどうなったかというと、くのうえんのような形が最も多かったかなと思うんですね。
k-n-o-u-e-nみたいな綴りが典型だと思います。これ中英語の話ですね。
方言によっても、それから和紗個人によっても、多少発音のズレはあったかもしれませんが、この辺りがおそらく最も典型的だったのではないかと。
k-n-o-u-e-nという、つまり未だ二音節語ですね。
ところが、中英語に入ってからですね、このつづり字いうところのeが落ちて、つまりk-n-o-u-nのように一音節になった節があるんですね。
これはつづり字のバリエーションから模試さされますし、おそらくですね、メインはまだ二音節のもの。
ただ、場合によっては、とか方言によっては、すでにeが落ちてですね、k-n-o-u-nと一音節になっていたものもあるかと思うんですね。
そしてご想像のとおりですね、この新しい発音と言いますか、母音が脱落して一音節化したものが、後の近代、現代と標準の形になり、今n-o-u-nと言っているわけなんですが、
近代にかけて比較的少数派になったと思われるk-n-o-u-nという二音節語、これは標準にこそなりませんでしたが、様々な方言あるいは個人の発音の癖として、少なくともバリエーション、バリアンツとしては残っていた、連綿と続いていたと考えられるんですね。
それが未だに発音されているのがイギリスの諸方言であり、そのうちの一つから発生したと考えていいですよね。ニュージーランドの方言でもあるということなんです。
ニュージーランドの方言でもですね、n-o-u-nと発音する人は多いですし、それが標準的な発音ということではあるんですが、n-o-u-nという二音節発音もある。
おそらく中英語記以降ですね、この2つはそれぞれの頻度差、割合は別としてですね、両方とも常に並存して発音されてきたんだろうと思うんですね、2種類の発音。
その中で、とある方言ではこちらの方が優先になる、別の方言ではあちらの発音の方が優先になる、みたいなことがおそらくイギリスから発生して生まれてきた様々な英語ではですね、繰り返されてきたんだろうと思うんです。
そしてこと、ニュージーランドにおいては比較的、このニュージーランド英語に特徴的な発音として、二音節発音、k-n-o-u-n、th-r-o-u-n、g-r-o-u-n、というのがある。
ということで、千年以上、連綿として二音節発音が続いてきた一つの証拠とまで言えるかわかりません。
近現代あたりに色々な複雑なことがあったんだろうなと、そしてこれはしっかりと裏取りをするなり調べていきたいなと思っているんですけれども、おそらくはですね、このシナリオ、千年間連綿と二音節発音が続いてきたということはですね、言えるんじゃないかなというふうに思っております。
ニュージーランド英語の特徴
千年の歴史をもって、19世紀の半ばにダニーデンにスコットランドからスコットランド方言を引き連れてですね、移民たちがやってきた。
そして、その発音が直接ではないにせよ、現代のニュージーランド英語の一つの特徴ともなっているというのはですね、なかなか言葉の歴史ですけれども、壮大な時間の流れを感じさせますよね。
ということで、First Church of Otagoよりお届けしました。
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。言葉というのは千年間続くものなんですね。
変わったものもあれば変わらず受け継がれるものもある。
このあたりが英語史の面白さでもあるんですよね。
世界の英語を見渡すと、イギリスよりも古い語法を保っている、そんな英語方言、英語編集というのはあります。
特に現代標準英語ではすでになくなってしまったような発音とか語形、これが他の方言、世界英語の編集で見つかったりすると、
これはもしかして古い英語をそのまま残しているのかもしれない。
あるいは、一回途絶えた後に新たに復活というか、新たに作り出されたのかもしれない。
これは一つ一つ丁寧に歴史を追いかけていかないとわからないんですね。
このあたりを調査するというのも英語史の魅力の一つだと思います。
このチャンネル、英語の語源が身につくラジオヘルディオでは、あなたからのご意見、ご感想をお待ちしています。
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それでは今日も皆さんにとって良い1日になりますように、英語史研究者のほったりうちがお届けしました。
また明日!
すいません。最後に一つお知らせです。
本日11月9日日曜日の朝日新聞長官に、私がインタビューを受けまして、英語帝国主義について語っているインタビューまとめ記事が掲載されております。
よろしければぜひ覗いてみていただければと思います。
朝日新聞の紙面に載っているのは、実はフルバージョンの半分の長さのもので、フルバージョンのものはデジタルの方で昨日公開されております。
そちらもURLリンク貼っておきますので、ご関心のある方はぜひどうぞ。
そして英語帝国主義や世界英語ワールドイングリッシュについて皆さんもお考えいただければと思います。
それではまた明日!
18:26

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