00:00
梅のにおい、ゆめのきゅうさく、一ぴきのぶちねこが、にんげんのまねをして、うめのきにのぼって、はなをかいでみました。
あのえだからこのえだ、はなからつぼみと、いくつもいくつもかいでみましたが、
なんだ、にんげんがいいにおいだいいにおいだというから、ほんとうにしてかいでみたら、つまらないにおいじゃないか。
ばかばかしい、かえろうかえろうと、きからおりかかりました。
ほー、おや、うぐいすがやってきたな。
おれはいちどあいつをたべてみたいと思っていたが、ちょうどいい。ここにかくれてまっていてやろう。
といううちに、うぐいすはぶちのいるうめのきのそばにある、うめのはなのたくさんひらいたほそいえだのところへ、ひょいととまりました。
うぐいすさん、うぐいすさん、とねこなでごえでよびかけました。
おやぶちさん、きょうはいいおてんきですね。
ほんとにいいおてんきですね。
それに、このうめのはなのにおいのいいこと、ほんとにたべたくなるようですね。
いやなぶちさんだこと、うめのはなにおいしいにおいがしますか?
ええ、うめのにおいをかぐと、おなかがきゅうにすくようです。あなたはどんなにおいがするのですか?
あたしはね、うめのにおいをかぐと、なんともいえないいいここちになって、うたがうたいたくなるのです。
そして、あちらこちらとおどりながら、とびまわりたくなるのです。
へえ、さようですかね。
そういえば、あたしもなんだかおどりたくなったようです。
まあ、おもしろいこと。ひとつおどってみせてちょうだいな。
03:06
いえ、あたしはあなたのきもののにおいをかいたら、いっしょにおどりたくなったのです。
ほんとに、あなたのにおいをかぐと、いいこころもちになります。
どうです?いっしょにおどろうじゃありませんか?
いやですよ。あなたとおどるのはこわい。
なぜです。ちっともこわいことはないじゃありませんか。もっとこっちへ来てごらんなさい。
いやですよ。わらわのにおいをかいでおどりたくなったというのはうそでしょ?どうして?
たべたくなったんでしょう?
といううちに、うぐいすはぱっととげだしました。
しまった!とぶちがとびつきますと、どたりとじべたへおちてしまいました。
とうぐいすは、となりのうめのきでないていました。