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こんにちは、73才 薬膳&料理研究家の木下 賀律子です。
今日は、6月17日、あと少しで24世紀の下旬となります。
下旬は、1年のうちで、最も昼が長くなり、最も陽気が高まる時です。
この時期の前半は、雨が続きますが、下旬の日以降は、暑さがどんどん増してきます。
熱中症にかかりやすくなるので、適度に水分を補うとともに、十分な睡眠をとり、免疫力をつけておきましょう。
さて、本日のお話は、小泉武雄町江戸の健康食から、梅干しの香を抜粋してお伝えしていきます。
梅干し
昭和前期の人なら、梅干しと聞けば、まず日の丸弁当を思い起こすに違いない。
戦後の混乱期には、焼け跡の整地上で四角い弁当箱の飯の中に、梅干しただ一つを埋め込んだ質素な飯を食べながら、苦難と欠乏を耐えしのんだ日本人。
この赤い小さな玉こそ、粗い粗食の日本人を支えてきた食生活の原点と言ってよいだろう。
梅は、中国原産の薔薇花、桜族に分類される落葉椒木で、中国文化とともに薬木、薬の木として奈良時代に土来した。
禅僧は天神として、武士は出陣や外戦の携帯食として、またそれぞれの家では家での食べ物というよりは、常備品として大切に食べ続けてきた。
今日のように各家庭に常備され、毎日のように食べ始められたのは江戸時代の頃からである。
梅は塩漬けにすると食塩の作用で浸透圧が高くなり、細胞の原型質分離が起こって、身から新質液が出る。この液が梅酢だ。
この場合の梅酢は白梅酢と呼んでいます。
塩漬けされた梅には途中赤じその葉を加えて着色し、成果の晴天には梅酢から一度出して日干しする。この赤じそを加えた時の梅酢というのが赤梅酢と呼ばれているものです。
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そして再び戻してしばらく置いた後、果肉が柔らかくなったところで梅酢とは分けて容器内に密封貯蔵して味をならす。
梅干しの強い酸味の主体はクエン酸で、他にリンゴ酸やフマール酸を含むが、これらの有機酸は現代学でも成長、腸を整えると書きます。成長や食欲増進、殺菌作用などに効果があるものとされている。
そのことを体験的に知っていた日本人は梅干しを実にうまく使ってきた。
疲れると元気回復にと食され、風邪といえば湯に溶いて飲み、子供の食あたりには下痢止めに良しと飲ませ、夏負け防止にとしゃぶり、座りに良しと妊婦が好み、時には米紙に梅肉を貼り付けて頭痛薬ともした。
食べ物が腐りやすい季節には弁当やおむすびに入れて防腐の効果も期待した。梅干しはまさに日本人にとってオールマイティの家庭薬という存在であった。
梅干しに薬膏があるのは、梅から溶出した様々な有機酸のほかに、種子の核や、シソの葉から溶出した心地よい香りを伴った薬膏成分、方向俗あるでひろいとか、テルペン系化合物、ペリラ化合物など、その薬膏成分のためである。
これらの化合物群は、前述した様々な症例のほかに、咳を沈めるとか、下熱、尿を胃を健やかにする牽引作用、発汗、下毒、精神安定などに効果がある。
梅を単に塩に漬けただけでなく、そこにシソを加えて着色させ、見た目を美しくしようとした一方で、梅成分と共にシソ成分の薬理効果、やはり咳を沈めるとか、胃を健やかにするとか、下毒とか防腐などの作用ですね。
それも併せて、期待した日本人の知恵には驚かされる。
梅干しの都合の良いところは、何と言っても長期間保存の効く食品であることだろう。
いつ、どんな時でも即席食として、梅干し1個で飯の2杯は食べられるだろうから、休耕食品としても重宝され、有事の際はいつも日本人を守ってきた。
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以上です。
6月の中旬を過ぎようとしている今、お店で梅を見かける時期となりましたね。
私は今年も大きめの梅、和歌山県産の南高梅を購入し、梅の量の14%のアラジオで漬けているところです。
重石は梅の2倍量で、塩が溶けて白梅酢が上がってきたら少しずつ重石の量を少なくしていきます。
しっかり塩が溶けたら、赤じその葉を塩もみして梅漬けに加えていき、梅汁が開け、晴天が続く土曜の頃に天日干しにして完成です。
考えてみれば、梅と塩、そして赤じそ、それが材料のすべてです。
こうした昔ながらの製法で作った梅干しは、市販品では少なくなっているので、作っておくと大変重宝するのではないでしょうか。
家庭薬と、また保存食として使えると思います。
1年に1回の梅仕事、おすすめします。
今日は、江戸の健康食から梅干しを取り上げ、今年も梅を漬けています、という音声でした。
最後までお聞きいただき、ありがとうございました。